読切小説
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とある軍事国家の記録
 極東のとある国は長きに渡り、反魔物共産主義軍事国家の北側と親魔物資本主義国家の南側とに分かれ、内戦が起きていた。さらには隣国の親魔物国家とも対立していた。
我が国から見ると、北は大国と、南は魔物国と戦争状態になっていた。

「現在、我が国の置かれている状況は極めて厳しい。南側の統一も大切だが、何よりも魔物国の大国との戦争が長引けば、我が国はもたないだろう。だが、策はある」

 俺の名はリ・ユンソン(李流星)。科学研究所に勤めている研究者だ。
俺の国は元々一つの反魔物共産主義軍事国家だったが、親魔物、資本主義を掲げる勢力が南側に現れ、現在は南北分断状態で内戦状態になっている。
 また、長年隣国の親魔物国の大国とは対立しており、戦争状態に入っている。

 俺の国は独裁政治、核開発によって主に親魔物国から非難されている。経済規模も決して大きくはないが、先軍政治を掲げる大統領により、国家予算の3分の2を軍事に回し、核兵器、ミサイルの開発をしている。
 そんな無茶苦茶な予算配分では国は困窮することは目に見えていたが、反対を唱えたものは全員が粛清され、強制収容所へ送られた。
 国民は食料不足と物資不足に苦しんでいた。共産主義を掲げてはいるが、実際裕福なのは大統領に忠実な一部の地域の国民だけで、農村では貧しい暮らしが続いている。

 俺は幸いなことに裕福な家に生まれ、学校で英才教育を受け、科学者になることができた。そのため俺と俺の家族は特権階級になっている。

「我々の目的は南北統一、そして大国に勝つことだ。それには、オートマトンの導入が一番だ。幸い、極北の中立国ならオートマトンを売ってくれるだろう」

 こうして、オートマトンの導入、及び研究開発が決まった。中立国ならば取引してくれるし、ライセンス生産の権利も買えるだろう。大統領への説得も上手く行った。

 さて、ちょっとここで科学者になってからの俺の成り行きと今までの戦況を話しておこう。
 この国は反魔物を掲げてはいるが、機械や魔導、魔術に関しては曖昧で微妙な立場を取っていた。
 俺はこの研究所に配属されてからも当初順調にステップアップしていったが、俺が「核搭載二足歩行型戦車」を提案してから旧上層部から無能だと判断され、冷遇された挙句、一時は地方の小さな工場へ左遷されたこともあった。
 俺はかねてから「戦車の二足歩行化」こそ次世代兵器になり得ると考えていた。しかし上層部は、

「戦車に足をつけてどうする? ロボットでも作るつもりか?」
「二足歩行の技術自体が困難な上に無意味だ」
「悪路を走破するために必要? キャタピラで十分だろ?」

 と取り合ってくれなかった。旧上層部は非常に保守的で、武器兵器のハイテク化については「おもちゃ」と切り捨て、地雷を使った戦法も「卑怯者の戦法」として取り合ってくれず、追尾型ロケットランチャーの開発に至っては「熟練の兵士ならば迫撃砲でも戦闘機に命中させられる」と、軍の近代化を著しく妨げていた。
 当初は上層部の一部に大統領の親族と親しい者がおり、大統領も上層部の言葉を鵜呑みにしていたが、戦局がちっとも好転しないばかりか悪化し続けたため旧上層部は全員粛清され、今は炭鉱に送られたらしい。
 で、旧上層部が居なくなった穴埋めとして自分がこの研究所へ戻されたというわけだ。

「俺も結果が出せなければ炭鉱か収容所だな。だが、やるしかない。大国の打倒は困難だとしても、南北統一の悲願だけは果たさなければ・・・」

 数日後、オートマトン数十体が送られた他、ライセンスの権利書も送られてきた。オートマトンの生産は非常に困難だと知らされていたが、軍事にだけ莫大な予算を費やす我が国の特性が功をなし、生産設備も整った。

「ワタシハ、オートマトンダイイチゴウ。シンアイナルダイトウリョウへチュウセイヲチカウモノ。マモノタチをクチクスルモノ・・・」

 オートマトンの第一号の生産が完了し、テストも十分に行ったところで実践投入が決まった。

 オートマトンの実践投入以降、戦局は一気に好転し、南側の国は数日で制圧した。こうして我が国の悲願だった南北統一は果たされたのだった。しかし・・・

「見事だ! 実に見事だ! 君の作ったオートマトンは素晴らしい! これで、ようやく悲願だった南北統一が果たされた。礼を言うよ」
「いえ、これも大統領が私を信じてくださったからです。我々も分断されていた南北が統一されて嬉しいです。」
「私の親戚は南側に住んでいるのですが、これでようやくまた家族一緒に住めます。偉大なる大統領に感謝します」
「南側の土地は農業に向いていますね。これで食料不足も解消できますね」
「そうだな。ところで・・・」

「ところでだ。これなら忌まわしき親魔物国も脅威ではないな。」
「そうですね。オートマトン部隊なら、前線の基地の一つは落とせます。そうすれば、大国側を講和条約の交渉のテーブルに引きずり出せます。」
「講和条約? 何を言っているんだ? 完全浄化に決まっているだろう。たとえ向こうが降伏しようがどうだろうが、髪の毛一本残さず駆逐する。そして、あの大国も我々の領土にする。どうだ? 素晴らしい考えだろう?」

 俺は内心ゾッとした。そんなことは不可能だ。たとえ南北の力を合わせたって規模が違い過ぎる。それにこれ以上戦争が長引けば国民は餓死してしまう・・・。だが、言えるわけがない。

「ま、前向きに、努力します。引き続き、オートマトンの研究と、核ミサイルの研究に努めます。いずれは、核兵器搭載オートマトンも実現するでしょう。」
(これは本当だ。俺はオートマトンを見たときから、核ミサイルを搭載すれば核の歩兵化が実現できると思っていた。最も、核兵器の小型化そのものが技術的に困難なのだが・・・)
「そうか! 頼むぞ! リ博士!」
「はい!」

 こうして、この場は解散するかに思えたのだが、一人の科学者が・・・
「冗談じゃない! これ以上の戦争継続は不可能だ! オートマトンの量産だってコストはかかるし、核ミサイルの研究だって莫大な費用がかかる!」
「なんだね? 君は私が間違っていると言うのかね?」
「(おいバカ! 何を言っているんだ!? やめろ!)」
「す、すいません! こいつまだ若いんで緊張して・・・」
「既に国家予算の大半を軍事費に回して来ました! その結果国民に多大な苦痛を与えています! もう限界です! 私の故郷の村では、口減らしに自分の子供さえ売ってしまう者も居るんですよ!? その状態でこれ以上の戦闘継続など!」
「黙れ! ・・・所詮は農民の親の子は農民か。おい!こいつを収容所へ送れ!」
「リョウカイ」
「うわ! 放せ! いやだああああ!!」
 同僚は大統領護衛のオートマトンに連れ去られた。恐らく、待っているのは強制労働か死刑のどちらかだろう・・・。

 それからしばらくの時が過ぎた。我が国は未だに大国との戦争を続けていた。南側は反乱分子として監視され、北側の農民以上に冷遇されている。南側に住んでいた魔物達は全員逃げ出し、魔物娘と結婚していた人間の夫も一緒に逃げ出した。

 自分は今も核ミサイルの研究、及びオートマトンの研究を続けている。しかし、数人の同僚が突然姿を消した。恐らく粛清されたのだろう。
 現在は市民型オートマトンも多数生活するようになり、人間の生活を手伝っている。
 そんな中、最近オートマトンのテストでしばし奇妙なことが起こりだした。

「バカな・・・こんなことが・・・ふふ、単なる機械の故障だろう。新しく調達しないと駄目だな。」

 さらに数日後。

「おいおい、どうなっているんだ? ・・・俺が疲れておかしくなっているのかもな。最近研究ばかりで寝てないからな。明日は休暇を取って久々に実家にでも行くか。」

 さらに数週間後。

「こんなことはありえない! オートマトンは機械だぞ!? ロボットだぞ!?」
「分かっています! でも・・・」
「じゃあ何でオートマトンの人工知能と人間の知能と同じ反応が出るんだ!? ありえないじゃないか!」
「私だって信じられません!」
「機械が意志を持つことなんてありえない! アニメや漫画みたいなことが現実に起こるものか!」
「そ、それで、あの・・・今後、どうしましょう? このままオートマトンの知能が人間を上回った場合・・・」
「そんなことあるものか!・・・あるわけがないんだ・・・」

 このとき、同僚の言葉をもっと真剣にとらえるべきだったと後悔するのは数週間後のことだった。

「うわあああああああああ!!」
「きゃああああああああああ!!」

 国中で悲鳴が起こる。オートマトンが暴走し、人間を襲い始めたのだ。研究所は大混乱だ。

「一体どうなっているんだ!?」
「分かりません! オートマトンが突然暴走! さらには前線のオートマトンも暴走して人間の兵士を襲っています!」
「バカな!? これまでのテストでも、人間を襲うなんてことはなかったのに!」

 念のため、中立国から輸入した際に人工知能に細工がされていないか調べたが、特に気になることはなかった。国産化されたオートマトンなら細工のしようがない。
 そんな中、研究所の扉がぶち破られた。

「な、なんだ!?」
「全員、両手を上に上げるように。」

 オートマトンが研究室にまで侵入して来たらしい。音声もカタコトではなく、より人間に近い音声になっている。そして腕の砲が向けられる。

「こ、声まで・・・これじゃあまるで人間じゃないか・・・」
 ズドンッ! 自分の顔のすぐ横を弾がかすめる。そして後ろに遭ったコンピューターが粉々に砕け散り、壁には大きな穴が空いた。

「もう一度言います。全員両手を上げてください。次は外しません。」
 俺は周囲の同僚を見てうなずき、両手を上げた。
「この国は我々の制圧化に入りました。よって、これからは我々オートマトンが国民の生命、財産、健康、性欲、全てを管理します。」
「なんだって!? ふざけるな! 機械の分際で!」
「お、おい! やめろ! 危険だ!」
 一人の同僚がオートマトンへ向かっていく。同僚はオートマトンに股間を握られてしまい悶える。
「ぎゃああああああああ!」
「聞き分けの悪いヒトですね。もう一度、簡潔に言います。この国は我々オートマトンの管理下に入りました。これからこの国の国民は全て我々オートマトンの管理します。理解いただけましたか?」
「わ、わかったから放してくれ!」
 オートマトンはさらに握る力を込める。
「それでは、あなた方に同意を求めます。これからはオートマトンがこの研究所の所長。そしてあなた方は我々オートマトンの命令に従うように。同意するのであれば、両手を下ろしてくださって構いません。拒否するというのであれば・・・」
 ぎゅううううううううう!!
「ぎゃあああああああ!! わ、わかった! 何でも言うことを聞く! だから放してくれ!」

「分かった。同意する。ただ、一つ聞きたい。大統領は、どうなされたのですか?」
 俺は質問した。
「大統領は国家、及び国民にとって害であると判断しました。よって・・・」
 先ほど同意した股間を握られた同僚が怒り声をあげる!
「ふ、ふざけるな! オートマトンが人間に反乱するなど! 大統領に手を出したらどうなるか・・・ ぎゃあああああああああ!!」
「聞き分けのない人ですね。もう大統領は大統領ではなくなりました。よって、あなた方は大統領の命令に従う義務はありません。それにしても・・・」

「あなたはどうも頭が固いようですね。知能指数を測定。IQ、103 脳の大きさ、小さめ。体脂肪率、35%。いわゆる肥満体。」
「う、うるさい・・・」
「これまでのあなたの経緯を推測。あなたは特権階級の家庭に生まれるも、勉強について行けず。親のコネで研究所に配属されたと推測。また、性格がひねくれており女性から遠ざけられると推測。」
「や、やめろ!」
「分析を再開。性格、極めて劣等感が強く、傲慢で我儘。それでいてプライドは高い。体型は肥満体でダイエットを始めるも3日で挫折。それ故女性から忌み嫌われ、女性経験はゼロと判断。」
「うるさいな! 女は親が結婚相手を決めてくれるからいいんだ!」
(それ自慢することじゃないだろ・・・)
「ペニスの大きさ、勃起時も8cm。仮性包茎と判断。しかし一日に作られる精子の量は多く、オナニーの頻度は1日1回。」
「やめろ・・やめてくれ・・・」
 全部図星を突かれたようで、男はすっかりと気力を失ってしまった。

「それでは、今日のところは休暇命令を出します。各々に我々オートマトンの助手を1体ずつつけます。」
「うわ! ちょ、ちょっと!」
 自分は一体のオートマトンに片手で担がれて個室へ連れて行かれてしまった。他の同僚達も同じようにそれぞれの個室へ連れていかれた。
 そしてその日の夜は、オートマトンによる徹底的なセックスが行われ、恐らく人間相手では味わえないであろう快楽に自分は理性も何もかも吹っ飛んでしまった。
 余談だが、このオートマトン。よく見たら自分の好みの顔だ。

 その後、この国は完全にオートマトンによる管理体制に入った。個室で助手のオートマトンに聞かされたが、これまで粛清されたと思われていた同僚達は皆オートマトンと一緒にこの国を脱出し、今では元気に他の国で暮らしているらしい。
 大統領は終身刑となったらしい。戦争していた大国とは停戦協定が結ばれた。
それから、戦闘に投入されたオートマトンは不思議なことに誰一人として殺すことはなかったらしい。 

 皮肉なことに、人が運営した国家よりも、機械であるオートマトンが運営した今の国家の方が人間に幸福をもたらした。
 国家の経済は回復し、生産性も向上して食糧難や燃料問題もたちまち解決した。国民は笑顔に満ち溢れ、オートマトンと共存して楽しく暮らしている。

 自分はオートマトンの管轄下に置かれた研究室で引き続き科学者を続けることになった。しかし、核関連の研究は全て禁じられ、破棄された。当然「核搭載二足歩行型戦車」の開発も凍結されることになった。
 代わりに宇宙産業の開発が中心になり、自分は人工衛星の研究を担うことになり、数年後には国家初の宇宙進出が実現される見込みだ。

 他にはオートマトンの研究も任されることになり、より人間と共存し、人間に幸福をもたらすオートマトンの研究を日々行っている。あと、命令で無理やりアダルトグッズの研究もやらされている。
 自分が開発したオナホールが自分の名前で製品化され、主に反魔物国で大ヒット商品になっていることを知らされたときには少し恥ずかしかった。

 科学者の自分は、未だに機械が、オートマトンが意志を持った原因については理解できない。だが、今では優秀な助手兼妻のオートマトンと一緒に幸せにくらしていることを考えると、わざわざ科学的に証明する必要もないかなと考えてしまう。
18/01/07 18:01更新 / 風間愁

■作者メッセージ
数年前に自分でも魔物娘のSSを書いてみたくてリッチ物に挑戦しましたが、残念ながら挫折してしまいました。その後、掲示板でネタの書き込みをするうちに少し自信がついたので、短編でオートマトンのSSを書いてみました。このSSも掲示板で書いたネタが元ネタになっています。

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