連載小説
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港街より。
とある王国、その領土の海に存在する大きな港街。

物流の拠点として古くから栄え、様々な人種を抱え膨らみ肥大した港街。多くの商船が持ち込む品や人は、この港街に富と混沌、良きも悪きも、人から魔までも持ち込んでいるのだろう。

そんな港街の昼下がり、雑多な商品が並び様々な人種溢れる商業区を巡回していた男性騎士は呟く。

「どうすっかね。あれ」

目の前の人混みの中に、どうみても怪しいといった風貌の男を見つけた。怪しい男の周りは少し開けている、通行人が避けているからだ。

「取調べ位は、せんといかんよなぁ…」

面倒だな。と騎士は考えつつも職務をこなす為に男へと近づいていく。

「人よ。愛せよ! ク、クキ、キヒヒヒッ」

男がいきなり笑い出した。

その後、周りの通行人に何か言っているが。通行人が男を見る目は、不信な者を見るそれだ。

「おいおいおい」

薬物中毒者、気狂い、犯罪者、危険思想者。男性騎士はとりあえずの候補を思い浮かべると、利き手を剣の持ち手に添える。

「おい、おまえ!」

男の肩をもう片方の手で叩き、此方へ振り向かせる。

「はあい?」

男は振り向くと不思議そうな顔をしていた。

ニヤついた笑顔を貼り付けた、美しい顔つきの男。肌は白く瞳は緑、この港街においては珍しい黒髪を長く伸ばし三つ網で一本に括っている。片目には眼帯をしており、服装は砂漠の民が好む物。その眼帯と服装、更に嫌らしい笑顔と美貌の差が、記憶に残りそうだ。
 悪い意味で、だが。

そんな男に、男性騎士は告げる。

「怪しいって自分でもわかってるだろ? ついて来てもらうぞ」
「普通にしてるつもり、なんですがねえ」
「どこが、だ! 大人しくついてこいよ?」
「クヒヒ。わかりやした」

男性騎士は怪しい男の腕を掴み、引く。男は顔にニヤニヤとした笑顔をする以外、特に抵抗もないので早まったか? と考えつつ連行していく男性騎士。

そういや『時間』はもうそろそろだっけか、と思い出しながら。






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現在の場所は男性騎士が所属する、王国騎士団港街の本部たる建物。
そんな建物にある取調室の中でも比較的、明るい部屋である。

男はそこに連れられ、取調べを受けていた。

男性騎士はぼやく。

「そんなふざけた顔をしてないで、もっと真面目な顔しろよ」

ぼやきに、男がニヤニヤと笑いながら答える。

「そう申されましてもねえ。あっし、これが普通でさあ」
「それが普通て……。もったいねぇなぁ」

男性騎士は、またぼやく。

確かに真面目な顔をすれば、目の前の男は素晴らしく良い顔になるだろう。
あくまで真面目な顔つきをすれば、である。

「ヒヒヒ、ありがとうございます」
「褒めてねぇよ」
「ありゃー、そうでしたかぁ。そういう旦那は渋くて良い漢ですぜ?」
「はぁ…。そりゃ、どうも」

男性騎士は、溜め息をつきながら返答する。
 この男性騎士、ニヤつく笑顔を顔に貼る男が言うとおり中々の良い漢である。

渋みを持つ精悍な顔に付く瞳は淡褐色、短髪で揃えた灰色の髪。その顔には何度も修羅場を潜り抜けてきた事が伺る細かい傷が見られた。騎士として鍛えられた体は今は鎧で見えない、しかし体格から見てその逞しい体は想像に難しくない。

欠点があるなら、少し取りすぎた年齢と口の悪さだろうか。

「名前、職業、この街に居る目的、後はー……何だっけか?」
「あっしに訊かれても困りますねえ」

男性騎士の質問に男がニヤニヤ笑い、おどけて答える。

「おめーには訊いてねぇよ! ほら、名前、職業、目的を言いな」
「あっしの名前はセブロと申しやす。職業は商人、目的は勿論商売でさあ」

騎士が目を細め、男を睨む。威圧感が増すが、セブロと呼ばれた男は平然としていた。

「商売ねぇ。商品は?」
「今回は人の斡旋ですねえ。物は無えです」
「斡旋? 奴隷か?」

この国で奴隷は推奨はされていなくても、存在はする。教会ですら所有している。
 名を変え、奉公人などと言われているが。

「違いますねえ。必要な人材を、必要な場所へ。そんな仕事でさ」
「それ、儲かるか?」
「儲けは余り無えです。今回の報酬は、信用と信頼ですねえ」
「へぇ、信用と信頼ね。そりゃあ大事だな?」
「全くで」

嘘臭い上に胡散臭いが、こういうタイプは見た目で判断出来ない。男性騎士は何かある、と直感するも怪しいという理由で連れてきている為、強くは出れない。

取り調べが終わった後、仲間の商人や商会に話された時に騎士団や、自分の所属する隊の弱みのネタにされては困るのだ。

次の質問を騎士が訊こうとしたその時、取調室の扉が開いた。
 淡い金色の美しい髪を後ろで束ねた女性騎士が入って来て、男性騎士へと話し掛ける。

「ラドクリフ、『時間』だ。行くぞ」

名前を呼ばれた男性騎士が答える。

「了解、隊長。すぐ向かいますよ」

騎士ラドクリフが答えると、女性騎士は頷き取調室から出ていく。

この間、セブロは空気であった。ニヤニヤと笑ってはいたが。

「名前、知られちまったな」

名を知られて直接訴えられたりすれば、此方に非が無くとも面倒だ。

「知っても、何か訴え出たりしやしませんよ?」
「そりゃ助かる」

ラドクリフは苦笑しながら、銀貨を取り出しセブロに渡す。

「取り調べは終わりだ。疑って悪かった」

銀貨を受け取りつつセブロは言う。

「これのがヤバいんじゃあねぇですかい。クヒヒヒ」
「気持ちだ、気持ち。謝罪のな。お前らにゃ安いだろ、こんなの?」
「ヒヒ、それじゃあ。ありがたく……」

そんな会話の後、ラドクリフは取調室から出ようと扉のノブに手をかけて、セブロに一言。

「面倒事は起こすなよ?」

と、釘を刺す。

「あっしは、商売をしに来ただけでさあ」

肩をすくめ、おどけてみせるセブロ。

「だといいがな。出口は部屋を出て右の廊下を真っ直ぐだ」

再度苦笑しながらラドクリフは出て行く。足音が離れていき、取調室にはセブロが1人残された。

「怪しいと連れてきた相手を残していくのは、どうなんでしょうねえ?」

キヒヒと笑い取調室から出て、誰も居ないことを確認するとセブロは呟く。

「ふうむ、『時間』なら急がないといけませんなあ。キッ、キヒヒヒヒ……」

セブロは笑いながら廊下の影に消えてゆく誰もいない部屋に残るは、静寂のみとなった。






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セブロの取調べから数刻が経った。

所は変わり港町の住宅区、民家の影にラドクリフは居た。現在とある作戦の開始である、合図を待っているのだ。
 ラドクリフの横に人影が見えた、『隊長』と呼ばれた女性騎士である。開始の合図を待つ間、暇なラドクリフは上司で相棒たる彼女を見る。

女性騎士は民家の方をじっ、と見つめていた。

彼女の名前はサーシャ、確かやたら長い家名を持つが本人は余り好んでいない。
 顔の作りは美しく瞳は碧眼、髪は淡い金色で光を浴びると白い肌と合わさり淡く煌めき輝く。身長はラドクリフより頭一つ分小さいが、スレンダーで綺麗な体型は「女神と同等だ!」とまで同僚が絶賛していたのをラドクリフはよく覚えている。

そんなサーシャと二人だけの隊を組むラドクリフは、大隊長殿の言葉を記憶より引っ張り出す。

「とある貴族の娘さんがウチに来る。新しい隊を作ってそこに放り込むから子守を頼んだぞ。給料も増えるぞ? ただし拒否するなら除隊だ!」

と有無を言わさず決定され、二人だけの隊に突っ込まれた。

給料増えるんならまぁ良いかね、と軽く考えていたのだが。実際に会ってすぐの事、それは間違いだったと知る。
 最初は綺麗だねぇ、と言ったら殴られた。一緒に巡回に行くと邪魔だ臭い必要ない等言われ腹を立てたラドクリフとの罵詈雑言の応酬。しかも一端に正義感を持っているせいで、起こした問題は数知れず。

でも悪い奴じゃあねぇんだよな…、むしろ良い女すぎと言うか。と声を出さずにラドクリフは苦笑する。

持ち前の正義感により困ってる子供や年寄りを見れば、必ず助け。乱暴をされそうになった女性を見れば、相手が誰であろうと助けた。まぁ、そのせいで苦労も色々あったが。

そんな若く熱い正義感に当てられたのかは、分からない。ラドクリフは嫌々言いながらも必ず手助け。時には窮地も救った。
 この娘の行う正義を支えたい。ラドクリフは無駄に歳を食った自分の出来る最大の善行だと信じている。
 そんなラドクリフにサーシャは徐々に打ち解け、気軽に軽口を言いあう相棒のような仲になる。

そして日々、自分の持てる技術を教え込んだのだ。気付けば、隊を組んで5年である。

不思議とあまり情欲は沸かなかった、沸いたかもしれないが押さえ込む事は楽だった。自分とは一回りも二回りも歳が違うせいかもしれない。だからこそ大隊長は自分を組ませたのだろうが。

しかし5年も組んでいると、いつのに間かサーシャを娘のように思うようになっていた。この作戦が終わり数日すれば結婚すると聞いた時は喜び、祝いの言葉を送った。
 言葉を送った時に、サーシャが笑顔に影を作った気がするがその後、はにかんでお礼の言葉を言っていたから気のせいだろう。
 相手は確か、大貴族の長男だ。悪い噂は無かった筈、それは自分で調べた。

そんな相手と結婚すれば、この娘はもっと素晴らしい正義を行うだろう。それまでは、自分が守らねば。
ラドクリフは表情を引き締める。

今回の作戦は、この港街で魔物達を支援している者の一斉検挙。大きな港町というこの街では、どうしても親魔領の人間がどこからか侵入して来る。それも大量に。親魔領の者達は広く横に繋がっており、一人捕まえれば十人に逃げ出され。一カ所の拠点を抑えれば五カ所は撤収するという。捕まえて、逃げられて、また侵入される。その繰り返しであった。

そこで、教会の要請を受けた王国騎士団による今回の一斉検挙だ。

親魔の人間がいる商店に、宿屋に、民家に、港街の騎士団各隊を振り分け検挙する。商店や宿屋は逃げられないように、大人数の隊が配置されているはずだ。
 自分とサーシャの隊は、サーシャの安全も考えてあるのだろう。若い夫婦の民家に配置された。

それでも最後まで気は抜けない。今回の作戦を無事に終わらせ、サーシャの手柄を増やし、華々しく最後を飾らねば。
 ラドクリフは剣の柄を強く握る。

そんなラドクリフの覚悟を感じたのか、サーシャが顔を見つめてきた。

「ラドクリフ、緊張しているのか? 貴男らしくもない」
「武者震いさ」
「市民相手に? 趣味が悪いな」
「市民って言っても、親魔だぜ。案外魔物の夫婦かもな」
「確かに、有り得そうだ」

いつもの軽口の言い合いである。そこでラドクリフはサーシャの声から若干機嫌が良い事に気づく。終われば結婚だしな、だが気は引き締めて貰わんと。と思いラドクリフは呼び名を変えてみる事にした。

「サーシャ『隊長』そろそろだ」
「ああ、分かっている。早く終わらせねばな、やっと念願の…」

やれやれ、これ位じゃ変わらんか。

最後の方は聞こえなかったが、声から気持ちが浮ついているのが分かる。まぁ良い、と考える。
相手はただの夫婦で、一階建て民家、裏口は無し、部屋は3つと台所。調べはついてる。自分が雰囲気を変え、しっかりしていれば大丈夫だ。

と、考えたその時。

夜の帳がじょじょに下りてきて、街の門が閉められる時間を告げる鐘の音が聞こえた。鐘の音がいつもの四回なら作戦中止。五回なら、作戦開始の合図である。

鳴った回数は、五回! その瞬間に影から飛び出し、目標の民家へ二人が突撃。

ラドクリフが玄関の扉を蹴破り、サーシャが背を低くしつつラドクリフの脇から素早く侵入。

「その場から動くな! 騎士団の者だ!」

玄関からラドクリフが大声で叫ぶが、慌てて逃げようとする物音も、悲鳴も聞こえない。
 二人は玄関から静かに、台所へと侵入。テーブルの上にまだ湯気の立つ料理と食べかけのパン、ワインが入ったコップが2つある。
 ラドクリフはまさか逃げられたか?と考えながら耳を澄ませ、視線を家の奥へ。奥に扉が三つ、事前に調べた見取り図通りである事を確認。狭い所で取り回しの良い小振りの剣を持つ。そして、サーシャへ『奥に行く』と手振りで説明。

サーシャが頷いたのを確認すると、音を立てずに奥の扉へ。サーシャは後ろに付き、警戒。まず一番手前の扉を、ラドクリフが静かに開ける。中は家具も何もない部屋、扉の裏も見て誰も居ないことを確認する。
 ラドクリフは一つ目の扉を閉め、二つ目の扉を開ける。二つ目の部屋も同じだった。

まさか本当に? と思いながら最奥三つ目の扉の前に立った時だ、ラドクリフは部屋の中から人の気配を感じとる。手振りと口の動きで中に人が居る事を、サーシャへ伝えた。サーシャは了解、と目と顔で答える。

『俺が先に入る』と手振り。サーシャが頷くのを確認。ラドクリフは取っ手を手にとり、扉を勢いよく開ける。

「いらっしゃーいませー」

扉を開けた瞬間に、中に居た人物が喋る。
ラドクリフはその人物を見た瞬間に驚き、そして自分の直感が正しかった事を知る。

部屋に居たのは、昼間にラドクリフが取調べを行なった相手。ニヤニヤとした笑顔を、顔に貼り付ける自称商人のセブロであった。彼はおどけながらお辞儀を見せてくる。

「何でおめぇさんが、此処にいるんだよ」
「そりゃあ、此処の夫婦の活動を支援してたからでさあ」
「そうかよ。ったく…。面倒事起こすなよっつったろうに」

そういうと、セブロはヒヒヒ。と笑いながら口を開く。

「あっしはあの時、『はい』とは言ってませんぜ? 旦那」
「斡旋ってのは嘘かよ」
「ちゃんと斡旋してましたよお? 親魔の人を、この街にねえ」
「そういう事は他でやれ。名前は?」
「本名ですねえ」
「はぁ…。詳しく騎士団本部で訊くぞ、大人しく捕まれよ」
「それは、お断りですよお。旦那」
「断れると、思ってんのか?」

ラドクリフは剣を構え、セブロへ向けた。セブロは変わらずにニヤニヤと笑ったままだが、片方しか見えない緑の瞳は此方の様子をしっかりと観察している。コイツ場数慣れしてやがる、やはり油断できん奴だ。とラドクリフは身構えた。

「おめぇさんみたいなヤツ嫌いじゃないんだ。斬らせるなよ」
「ヒヒヒ、怖い怖い。そう思いませんか、姉御」

セブロがラドクリフの後ろへ声をかける。まさか!? と思いラドクリフはセブロを前にしても後ろを振り向いてしまった。振り向いた瞬間だ、サーシャがラドクリフの剣を持つ手を掴み、脚を蹴って転がした。ラドクリフは予想外の事に動転し、大した抵抗も出来ずにサーシャに捕縛される。

「隊長!?」
「すまない、ラドクリフ」

サーシャは感情の篭っていない声で、ラドクリフに謝る。

「何でだ! サーシャ!」
「すまない、本当にすまない。裏切りとは分かっている。
だが…、こうしないと手に入らないんだ」

何かを押し殺したような声でサーシャは弁明。

「何を…! ムグッ」
「おやすみなさーい」

いつの間にか近づいたセブロが、ラドクリフの口に何かを当てる。するとラドクリフの体からは力が抜け、筋肉が弛緩していく様が見える。ラドクリフは抵抗しようとするも動けず、意識が朦朧としてくる。

まだ微かに動く口から、ラドクリフはセブロに対する恨み言を絞り出そうとする。

「セブ…ロ…て…めぇ……」

それを見たサーシャが、眉をひそめセブロに問う。

「それは安全なんだろうな?」
「ワーシープの毛布に睡眠薬をタップリ塗りつけたものでさあ。暫くは起きれなくなりやすが、体には悪くないですぜ」
「そうか…。眠れラドクリフ。起きたら全て終わっている」

ラドクリフの頬へサーシャの柔らかい唇があたる。

「サ…シ…」

ラドクリフは、サーシャの名前を全て呟く前に、意識を手放した。





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「ここは…?」

ラドクリフが意識を取り戻し目を開く、天井が低い。

起きたは良いが体に力が入らず、動けない。薬の効果は、まだ続いているようだ。

首を必死で動かし周りを確認、体はベッドの上で部屋は狭い。窓から見えるのは、青い空。部屋全体が左右にゆっくりと揺れている、船だろうか?
 自分の格好を見ると、下着一枚のみ。サーシャは…? と姿を探すが部屋にはいない。

その時、扉が開いく。ラドクリフが今、二番目に会いたい人物が部屋に入って来た。

「おや、起きられやしたか。旦那」
「セブロォ……てめぇ! サーシャに何しやがった!?」

セブロを確認した瞬間、ラドクリフは憤怒の表情を浮かべ問う。体を動かそうと力を込めるせいで、首に血管が浮き出ている。

「旦那。気持ちはよーく分かりやす。でも理由があるんですよ。…どうぞ入ってくだせぇ、姉御」

と、セブロが扉の前から退き、別の人物が部屋に入ってくた。ラドクリフが今、一番会いたい相手である。その人物は、ラドクリフの横たわるベッドに近づく。

「ラドクリフ…。よかった!」
「サーシャ! どうしてあんな事を!? それにその姿は…」

サーシャの姿は人からサキュバスの姿へ変わっていた。

背から生える翼、腰から生える太い尻尾、金色の髪の間からは角が生えている。格好は扇情的で、肌が見えない所の方が少ない。実に目のやり場に困る状態だ。
 そんなサーシャを見てラドクリフはセブロへの怒りなど、一瞬で忘れてしまった。

「すまない。ああしないと私は、私は手に入れられなかったんだ」
「手に入れる? 何だよ、お前がそこまでして欲しかったものは…?」

サーシャはラドクリフが体を横にしているベッドに腰掛る。ラドクリフの顔へ手を伸ばし彼の無精ひげの生えた形の良い顎を愛おしそうに撫でると、サーシャが口を開いた。

「貴方だ、ラドクリフ。ずっと貴方が欲しかった」
「な、何を言って、むぐ!?」

ラドクリフが何か言う前に、その口をサーシャの唇が塞ぐ。

「ん…んんん…れろ…んん…くちゅ」
「サー…シャ…やめ…んん」

サーシャはラドクリフの、唇を貪るように吸い。ラドクリフは状況が完全につかめずに困惑する。

「では、後はお二人でごゆっくり」

セブロがそう言い、静かに部屋から出て行こうとすると。

「んっ…はぁ…。商人」
「はい?」

サーシャがラドクリフから唇を離し、セブロへ言う。

「ありがとう。やっと手に入れられた」

蕩けた顔をしながら笑顔でセブロへ、お礼の言葉を述べるサーシャ。ラドクリフはそんなサーシャを信じられない、と呆然と見ていた。セブロは心底嬉しそうな顔を作ると。

「キヒヒヒヒッ、姉御が望んだからこその結果ですぜ。それに姉御には々手伝って頂きやした。まぁお礼を貰えるんでしたら、旦那への説明と説得でお願いしやす」

と、答える。

「ああ、勿論だ。フフッ…ラドクリフ……」

サーシャはラドクリフへと向き直り、熱烈で貪欲な接吻を再開した。そんな二人を尻目に、口を三日月型に歪めながら部屋から出て行くセブロ。

「末永くお幸せに。クッ、クキキキ、キヒヒヒヒヒヒ」

二人の長い逢瀬は、始まったばかりである。





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サーシャがこれからラドクリフを貪るであろう部屋からセブロが出ると、二人の魔物娘が待っていた。

「お疲れ様でした。主」
「お疲れさまだにゃあ。あるじぃー」

セブロを主と呼ぶ一人はアヌビス、もう一人はスフィンクスである。

「クヒ。二人もお疲れ様だねえ」

セブロが答えると、二人が書類を差し出した。受け取ったセブロはそれを読みながら船の廊下を器用に歩き出す。すれ違う船員たる男達と魔物娘の挨拶を受けながら。

「今回の仕事で『我々の国』へ斡旋させて頂く方のリストです」
「こっちはあの騎士団と貴族の顛末だにゃー」
「ありがとう、二人とも。ふーむ?ふぅん…? ヒ、ヒヒッ」

セブロは歩きながら二人から受け取った書類を読むをある程度読み終わると独特の含み笑いを始める。

「ヒヒヒ。この人数ならまあまあ姐さん方を満足させられそうだねえ」

ニタァと気味の悪い笑顔。それを見た二人は。

「結構な数の奴婢の方を引き取れましたからね」
「人はもっと同じ人を、愛してあげるべきだと思うにゃー」

魔物娘としての意見を述べる。

「ヒヒッ。色々あるのさあ人間は。それよりもこの騎士団と貴族の結果は傑作だねぇ!クキッ、クキヒヒヒヒッ」

美しい顔を凄絶に歪め、笑いだすセブロ。それを見ても魔物娘二人の表情は嫌悪すら感じさせない優しいものであった。

「満足いかれる結果だったようですね。苦労した甲斐がありました」
「ほんとほんと、私達は凄く頑張ったにゃー」

アヌビスが顔を綻ばせ、スフィンクスが胸を張る。そんな掛け合いをしているとセブロの部屋につく。

セブロは、二人を部屋に招き入れベッドに座らせる。

「二人には、かなり頑張ってもらったからねぇ」

労いの言葉をかけながら二人の頭を両手で抱き撫でる。書類は、部屋に入ったときに机に放った。

セブロはまず最初にアヌビスの名を呼ぶ。

「ネフテ」
「あ、はぁ…」

次にスフィンクスの名を呼んだ。

「ラナテ」
「にゃ、ふ…」

セブロに声を掛けられて二人の顔が惚けだす。セブロは二人の耳を根元から優しく、そして扇情的に撫でて行き、軽く口付ける。暫くの間二人の魔物娘にとって優しい時間が流れた。そして。

「さぁて、次はどの国へ行って男女の斡旋をしようかねえ。クヒッ、クヒヒヒヒ」

突如セブロが二人の頭を撫でるのを止め、笑い出す。しかし、セブロが二人の耳から手を引こうとした時。二人の女性はセブロの手をその獣の手で優しく掴んで胸に抱え込んだ。

「今回、あたし達は物凄く働いたにゃー」
「労働には、対価があって然るべきですね?」

ネフテとラナテ、二人の要求にセブロは笑いながら答える。

「そうだねぇ。商売の基本だねぇ。クヒヒヒ」

船が『彼ら』の国に着くまでの仕事は終わった。二人はそれを分かっている、つまり。

「船が『我々の国』に着くまで、あと四日はあったかにゃー?」
「最近は特に忙しくてご無沙汰でしたから、ね」
「ヒ、ヒヒヒヒッ。それはまた」

三日月型に歪めたその口から「大変そうだねえ」と言う前に、セブロは二人によってベッドへと引き込まれ押し倒された。セブロの顔の前に餌を目前とする獣の顔が二つ。

「「いただきます」」

二人はそういうとセブロに襲いかかる。これより先は、三匹の獣が交わる時間である。





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セブロが退室した部屋で、二つの影が重なっていた。ラドクリフと、その体の上に跨るサーシャだ。
 サーシャは一心不乱にラドクリフの唇へ吸いついている。ラドクリフは顔を両手で押さえられ、熱烈で貪欲な接吻から逃げる事ができないでいる。

「んっ…っはぁ♪…んんっ…らどぉ…♪」
「んんっ…やめっ…んむっ…サシャッ…」

やっと手に入れたのだ。と言ったサーシャが吸い付くだけで終わる筈がない。

「ちゅっ…くちゅ…あっはぁっ…んむっ」

ラドクリフの口内へサーシャの舌が侵入。

サーシャの舌は執拗にラドクリフの口内を犯す。歯を舐め、舌を探し、見つければ絡め、逃げれば追いかける。

「んっ…くちゅ…んふっ♪…んんんっ」

舌を逢わせて出来上がったばかりの新鮮な唾液。サーシャは、ちゅるるる。と音をたてソレを啜る。唾液を飲み込み、幸せそうな顔をしながら、ラドクリフから一度顔を離した。

「不味いな。説明も説得もしていないのに、このまま襲ってしまいそうだ」

サーシャは溢れる情欲に困り口に手を当てて困ってしまう。その様と台詞で、幾分かラドクリフは冷静さを取り戻すことが出来た。

「何で、…俺なんだ?」

理由が知りたいラドクリフの問いに対し、問われたサーシャの答えは。

「理由があるとすれば、貴男だけが『私』を見てくれた」
「お前、を?」
「そうだ、『私』だ」

言葉が足りない、意味が分からない、禅問答じゃあるまいし。そんな軽口が頭に浮かぶがラドクリフの口からは声として出せない。サーシャの雰囲気が、目が、それを許さない。

「どうでもいいじゃないか、愛せる理由など。『好きになった』以外に何がある?」

サーシャは通常であれば大事である事を、どうでもよいとばかりに切り捨て、告げる。

「聞いてくれ、ラドクリフ」

サーシャはラドクリフの顔を両手で固定。顔を近づけ、碧眼と淡褐色の眼を合わせた。

「愛している」

サーシャは愛の言葉を紡ぎ宣告する、告白する。

「貴男が私を、『娘』としてしか愛してくれなくても構わない」
「それ、はっ!」

一瞬、視線を外しそうになるラドクリフは思う。確かに『娘』としか見てなかった。いいや違う、血の繋がらない『女性』と見ないように努力したのだ。彼女の正義を邪魔したくなかったから。

「私は貴男がどうしても欲しかった! 最悪、体だけでもだ。そんな私だがな。諦めようとも、したんだぞ?」

では何故、とラドクリフが訊く前にサーシャが口を開く。

「だが駄目だった、諦めきれなかった。貴男の隣に居れば体が火照り、声を聞けば頭を揺さぶられ。匂いを嗅げば、どうしようもなく欲しくなる。ずっと傍に居たいと考えてしまうんだ!」

サーシャは、隠していた女性としての幸せであろう感情を吐きだした。

ラドクリフは、それに気付けなかった事に愕然とした。いや違う、わざと気付こうとしなかった。そんな事はありえないと決めつけ、彼女の正義を見ていたかったからと自身の心に蓋をして。

「貴男が他の女性と話しただけで、殺意が湧いた。貴男の陰口を聞けば、吐いた人間をくびり殺したくなった!貴男が女郎屋へ行ったと聴けば! 家へ連れ込み束縛したいと考えた!!」

サーシャは声を荒げ、隠していた暗い感情を吐く。サーシャの暗い感情を自分は読み取れなかったのか? これも違う、読み取ろうとしなかったのだ。彼女にそんな感情は無い、と決め付けて。

「それでも、耐えた!耐えたんだ!! 貴男が、いつか私を『女』として見てくれると信じて耐えた! 『女』として愛して貰えれば、一緒に駆け落ちでも何でもしてくれると思って!!」

サーシャは辛そうな顔で、溜まっていた感情を吐いた。ラドクリフは、そこまで想ってくれていた相手に気づけなかった。否、気付こうとしなかった自分を恥じ入った。

「だが間に合わなかった!…間に合わなかったんだ。半年前、結婚の話を父親から聞かされた時は気が狂いそうになったよ。終わった、もう駄目だ…とな」

遠い過去を想うように項垂れ、サーシャは告げる。

そんなに前から追い詰められていたサーシャを、気付いてやれなかったのか!! とラドクリフは自分を責めた。だが、追い詰めたのは自分である事も同時に悟り、どうすれば償えるかを考える。

答えはほぼ一つ、であると分かりきっているが。

「その次の日の立食会だったな、あの商人に会ったのは」
「…セブロに?」
「商人は言った。ラドクリフを手に入れる方法がある、だから取引しないか? と」
「受けた、のか」
「最初は断ったさ。そんな方法は無い! とな」

組み合わせは貴族の娘と、腕は良くても騎士であるだけの男。その二人に立ちはだかる第一の壁は、結婚相手の大貴族。
さらに地位、年齢、貴族のしがらみ、周囲の目と噂。乗り越えるにはきつく、時間が足り無さすぎる壁ばかりであった。

「だが、あの男は言った。親魔で商人である自分なら方法はある。と」
「それを受けるのは、考え無しすぎるだろ…」
「あの時は他に縋れる物がなかったんだよ。でも組んで正解だった。おかげで、ラドを手に入れられたんだから」

サーシャは微笑み、ラドクリフに口付ける。

その微笑みを見た時ラドクリフは、自分の中でのサーシャの立ち位置が、変わったような気がした。

「んっ…ちゅっ…ふぅ。…そろそろ限界だ、ラド」
「何が、…だ?」
「ここだ」

ラドクリフの半ば予想はしていたセリフが返ってくる。サーシャはラドクリフの鍛えられた腕を抱え手を持ち、自分の秘所がある下着へ招く。

「ふふ、接吻だけでこれだ。先が楽しみだな?」

ラドクリフは、サーシャの下着の中が独特の滑りのある液体で濡れているのを感じた思わず腕を引こうとするが、動かない。
 代わりに少し動いた指先が、艶かしい感触とドロドロの熱い液体を感じる。女郎屋で知りすぎた感触。

「あっ」

秘所を指先で触られたサーシャが身じろぐ、目が蕩け口元が開いた。
ラドクリフの手を、自分の手と合わせ、秘所へ擦り付ける。

「あっ…んっ…んん…あはぁ♪」

チュクチュクと卑猥な音が下着越しに聞こえ。サーシャは濡れた肉の感触と弾力をラドクリフへ届けた。

「らどのてぇ…あっ…ふっ…ぅうん…」
「サーシャ…」

ラドクリフは未だに、考えていた。隠していた感情を教えてくれたサーシャに、どうすれば償えるかを。体を使い愛している、と伝えてくるサーシャに報いるにはどうすれば良いかを。
 このままでは駄目だ、流されるだけでは、自分は変われない。ラドクリフの心の中で結論は出た。後は決心し、実行するのみ。

「サーシャ」
「なにぃ…?」
「好きだ。愛してる」

ラドクリフは、サーシャを『娘』では無く『女』として愛す為に、告白した。告白を受けたサーシャは、秘所を手に合わせたまま蕩けた顔で固まる。

だが、すぐに手の動きを再開。

「それはぁ。んっ…おんなのひと…としてぇ?」
「ああ、そうだ」

ラドクリフは酷い状態の告白もあったもんだ、と心で苦笑する。それもこれも、自分が悪いのだが。

「うれしぃ! らどぉ…らどぉぉ…♪」

秘所に当てている手の動きが激しくなる。感触はグチョグチョで、此処は何処かと分かるのは、親指に感じる硬い豆の感触くらいだ。

「あっ…らどぉらどぉぉぉ…んああ…あ…ぁぁぁあああああ!」

サーシャが大きな淫声を上げ体を仰け反らせ、ラドクリフの胸の上に頭を落とす。どうやら達したらしい。だらしなく開いた口から涎が垂れ光る。

ラドクリフは自分の手がその淫らな悦をもたらした、と考えると同時に黒くねっとりした感情が沸くのを感じた。
 その黒い感情を感じて『女』と思うの早すぎるだろ、と心の中で自嘲しながら体が動かせるならもっと淫らにさせる手腕を発揮するんだがと、にやけた。

暫くして、サーシャが身じろぐ。

「ふ、ふふふ。手だけでこれか…凄いな」

溜まった物を、少し吐き出して落ち着いたサーシャは呟きながら起き上がる。その時、ラドクリフが軽口を吐いた。

「サキュバスに成ったってのに、弱ぇなぁ?」
「仕方ないだろう。ずっと欲しかったんだから。まぁ、動かない手であれだけだったんだ。此処はもっと凄いんだろう」

サーシャは唇を尖らせ、軽口を返す。そして、ラドクリフの下着に手をかけ脱がした。下着にかなりの膨らみを作っていた剛直は、下着から開放されると天を突く勢いで伸び上がる。

「はは。でかいな。…入るのか?」

サーシャは自分の腹と、ラドクリフの剛直を見比べる。

「サキュバスなら、大丈夫じゃねぇか?」
「ふむ。そう考えると魔物になったのは、やはり正解か」

興味深そうにラドクリフの剛直を見ていたサーシャは、それを優しく撫でた。何で体うごかねぇのに其処は起つんだよ! とラドクリフは心の中で叫ぶ。そんなラドクリフの方へ、サーシャは振り向き見つめる。

「ラドクリフ」
「ん?」
「もう一度。もう一度言ってくれ」
「あー、恥ずいんだがなぁ」
「聞き間違いではなかった、と確信させて欲しい。頼む…」

縋るように言い、瞳を潤ませ、頬を紅潮させるサーシャ。それを見てこりゃ勝てねぇわ、と諦めるラドクリフ。
 抱きしめたくても動かない体にしたセブロを少し呪いながらラドクリフは表情を引き締め、サーシャに告げる。

「サーシャ」

名を呼んだ時、サーシャは自分の体を抱え、目を閉じた。

「好きだ。愛してる。『娘』としてじゃない。『女』として、だ」
「ああ、……ああ! 私も愛している! ラドクリフ!」
「ちょ、待て待て! 俺は今動けなっ」

抱えていた腕を広げ、ベッドに横たわるラドクリフに、突進するかの如く抱きつくサーシャ。キスの嵐と舌の愛撫を見舞った後は、激しくラドクリフの唇を吸い、口内を舌で蹂躙する。

「んんっ…はぁ…ちゅ…くちゅ…んふぅ♪」
「んんんっ…おまっ…てむっぐっ…まてって…」

愛しくて堪らないと、行動で示すサーシャ。対するラドクリフはこの時、獣に襲われた気分であった。

「んんっ…じゅる…じゅるるるるっ」
「んぐっ…まっ…うぉ…ぐへぇ…」

唾液を吸われすぎ、情けない声が出たラドクリフ。

「だらしないぞ? ラド」
「ゲホッ…いや、いやいや。吸いすぎだろ」
「…嬉しかったんだ。許せ」

満面の笑みで、少女のような表情を見せるサーシャ。その表情を見て、ラドクリフは溜め息を吐いた

「はぁ。反則だろ…その顔」
「ふふっ♪ さて『コレ』を放置しすぎたな」

サーシャは自分でデカイとまで言ったラドクリフの剛直を『コレ』呼ばわりである。その剛直を触る手つきは、割れ物に触れるように優しいが。

「んー…、あー…」
「ん?どうした」
「いや、シタいのは山々なんだけどよ。俺、歳がなぁ…。多分一、二回しかもたねぇと思う」

ラドクリフは年甲斐もなく起っている愚息をみながら、後十歳若けりゃねぇ…と、たそがれる。

「ふむ、安心しろ。対策は万全だ」
「対策ねぇ」

案外、好きな奴と交わってりゃ何回でもできたりしてな? とラドクリフは考える。サーシャは、剛直を見ながら自分の秘所を触る。

「ふむ、少し乾いてしまっているか。まずは口でだな♪」

と、ラドクリフの剛直を舐め始めた。

「れるっ…ん…れろ…んぅ…♪」
「ぬ…ぐっ…ああ…!」

一舐めする度、にサーシャの顔が蕩けていく。執拗に舐めると次は唇で亀頭を吸い始める。

「ちゅ…ずずっ…ふふっ…何か出てきたぞ」
「っ…うっ…あー…気持ち良いとでてくるんだよ」

亀頭の先から薄白く透明な液体がジワリ、と湧き出た。サーシャはそれを舐め、吸い出そうとする。

「そうかぁ…ずず…あはぁ♪…ずちゅ…もっとだせぇ♪…あむ…んんん」
「あ…くぅっ…サシャ…うぁっ…いい…ふっ…うっ…」

吸うだけでなく、ラドクリフの剛直を咥えたサーシャは舌で亀頭を舐め、顔を上下させた。

「んんっ…ずちゅっ…んふっ♪…くちゅっ…んっ」
「ぎっ…ぁぁ…サシャ…出るっ…」
「あはっ♪…れろっ…だせぇっ♪…ずっ…ずずっ…」

早すぎんだろ!と思いつつも、ラドクリフは愚息の奥から感じる射精感に耐えられない。

「でふぁ♪…ちゅぷ…ん…ずずっ…んふぅ♪」
「はぁ…ぁあああ…はぁ…はぁ…ふぅぅ…」

白い精がサーシャの口内に吐き出された。それはサーシャの口から溢れ、剛直にかかり、ラドクリフの腰から腹へ滴り落ちる。勿体無いとばかりにサーシャは手で掬い、舐めとっていく。
 その顔は精の匂いに昂り、目は完全に惚けている。

「ふふっ♪美味しぃ♪」
「苦くないのか…」

ラドクリフは、自分の出した白い精を舐め取るサーシャを見て呟く。少し垂れた愚息が、息を吹き返すのを感じながら。
 サーシャは散らされた白い精を飲み干すと服を手早く脱ぎ、膝立ちの体勢になる。そして、腰をラドクリフの剛直の上に浮かすと片手で剛直を握り、腰を落として蜜壷の小さな口と亀頭の先を逢わせた。

「挿れ方、わかるか?」
「んっ…教えてもらったよ…♪」
「…待て、誰」

ラドクリフの台詞を聞く前に、サーシャは剛直を蜜壷に受け入れる為、腰を落とした。グチュッ、という音と共に愚息がミヂミヂッ、と肉を絶つ感触がラドクリフへ届く。

これは、とラドクリフが感じ取った時。

「いっ…っつぁ…ぁぁああああ!!」
「ばっ…無理するなっ!」

サーシャは貫かれた痛みで叫ぶ。

ラドクリフが剛直から感じたのは入り口の狭さ、途中で感じた壁、熱くひくつく狭い膣内。先ほどの会話から非処女だと思っていたラドクリフは焦る。

「落ち着け。動かすな。深呼吸しろ」
「ああっ…ぎぃっ…すぅー…はぁ…ぐっ…ううぅ…」

痛みで脂汗が顔に滲むサーシャ、だが顔を顰めながらも嬉しそうだ遅れて結合部から、少量の血が滲む。

「ふっ…ふふふ…これで体も貴男の物だ…痛みは対価だなぁ…ぐぅっ…」
「サーシャ…」

体と心を捧げられたラドクリフは想う。愛おしい、本当に愛おしい。もはや『娘』とは見れない。見たくない。

サーシャは顰めた顔を徐々に惚けた顔にし、だらりと腕を下げてだらしなく口をあけた。

「ああ、…楽になってきた」
「無理すんなよ…」

サーシャの体を案じるラドクリフ。体が動かせない事がここまでもどかしいとは!とラドクリフは想う。抱きしめてやりたい!撫でてやりたい!と心で叫ぶ。

サーシャは、完全に蕩けた顔で告げる。

「ん…あっ…ふぅ…うごくぞ」
「あ、ああ…」

サーシャが腰をゆっくりと上下させた。

「あ…んん…これ…はっ…いいっ…」
「うっ…ん…なんっ…だっ…これ…」

ラドクリフが急に感じ出した感覚に戸惑う。先程まで痛い程に狭かった膣が、広がり包み込むようになったのだ。膣が波打つように動き、愚息の頭はキツク吸われるような感触がある。

サーシャは上下運動を激しくさせてゆく。

「あっ…ふぅん…んんっ…いいっ♪…これ…いいっ♪」
「なん…こんなの…はぁっ…しらね…ぐぅあっ…」

じゅぶ。ぐちゅっ。と音を立てる結合部。先程まで生娘であったはずのサーシャは、女郎も唸るような腰の動きを始めた。
 彼女は、もはや人間のそれとは掛け離れていると、この時ラドクリフは悟った。何処から出ているのかと言うほどの愛液、蠢く膣、吸い上げる奥の口。ラドクリフは女郎屋では知らない心地と、快楽に呑まれてゆく。

「あんっ♪…いいっ♪…らどのっ…きもちいいっ♪…」
「がぁっ…うそだ…ろっ…これ…やばっ…い」

サーシャは剛直を腰でひねり、膣で締上げ、子宮口で白く熱い精を吐き出せと吸い付く。ラドクリフはそれに対抗する為の体の動きを封じられている。

「だしてっ…らどのっ…たねぇっ♪…んっ……ああっ♪」
「ああ…だめだっ…これ…たえれっ…るか…」

サーシャは早く白い精を出せと腰の速度を上げる。溢れ出ている愛液はそれを助長、処女血すら潤滑油に加えて。

ラドクリフは射精感がこみ上げてくるのを感じた、それは口でされた時の非ではない。体に力が入らないため、何ともいえない気持ち悪さも一緒に。

「あっ…おっきっ♪…なったぁ♪…だしてぇっ♪…たねえっ♪…あぁぁあああああ!!」
「うあっ…なん…だっ……これっ…で…るっ…のかっ…ぐっ…ぁぁあああああ!!」

そして、彼の剛直は吐き出した。魔物にとって、彼女にとっての最高の食べ物を。

「はぁぁぁ♪…たねぇ♪…あたかひぃぃ♪……あはぁ♪」
「ふっ…はぁ……はぁぁぁ…出たのか…?」

ラドクリフは何ともいえない感覚を味わったが、サーシャの蕩けた顔と結合部の朱が混ざる白い精をみて確信。

「はぁぁ♪…ああ…これはくせにっ…なるなっ…」
「ふぅ………だろうよ…あー……流石に垂れたか…」

ラドクリフは先程まで元気だった愚息を、起たせようと気合をいれてみるが反応はない。サーシャは自分の中で剛直が縮むのを感じた。

「ふぅむ……したりんな。しかし貴男はこの通り、か」

サーシャが腰を浮かすとクチュリという音、それと共にカーブを描くように倒れる棒。太さも大きさも先ほどまでの剛直とは比べるまでもない。

「わりぃなぁ。やっとしてやれたのに…」
「大丈夫だ。んっ…れろ……。そんな顔をしないでくれ」

サーシャはバツの悪そうな顔をするラドクリフの唇へ、慰めの接吻。一緒に上下運動で生じた涎を舐め取る。

そして立ち上がり、ベッドから離れると近くの戸棚から小瓶を取り出した。

「それは?」
「商人がな。こういう状態になったら使え、と言っていた物だ」
「セブロが?大丈夫なのかよ」
「何でもアルラウネの蜜に精力剤を混ぜた物とか…」
「わっかりやすいな、それ」

苦笑しつつも、セブロに感謝するラドクリフ。だが今の体の状態にしたのもあいつだ、と思い出したが忘れる事にした。今はサーシャだと思い直して。
 サーシャは小瓶の蓋を開けると、蜜を口に含みラドクリフへ口移す。

「あめぇ」
「甘いな、凄く」

二人は蜜を飲みと、体が火照るのを感じる。

「なんか暑くないか…」
「暑いな」

少ししてラドクリフの棒が徐々に起ち、先ほどの剛直へ。

「へぇ、効き目は抜群か」
「ああ。これでまだまだ愛しあえる」

が、そこで棒は留まらなかった。先ほどの大きさよりさらに一回り大きくなるのを二人は確認。

「おーい…。効きすぎだろ」
「ははっ、これは凄い」

二人が呆れる、効き目である。

「てかな。まだ体動かせねぇんだよ…」
「ほう? ならば今のうちに貪らせてもらおう。動かれては、まだ勝てそうにないからな」

それを聞いてラドクリフは動けても負けるな、こりゃ。と考える。

その時サーシャはラドクリフの耳元に顔を寄せ、告げた。

「愛している。ラドクリフ」
「俺もだ。サーシャ」
「浮気は許さんぞ?」
「頼まれても、お断りだな」
「逃がさないからな?」
「望むところさ」
「何があっても、だ」
「何があっても、だな」

愛の言葉で軽口を言い合う。サーシャは満面の笑みになり、歓喜した。

「ああ…ああ…!今、私は本当に幸せだ! ありがとう、ラドクリフ。居てくれてありがとう!私は貴男と会えて幸せだ! 愛して貰えてっ…幸せだっ!」

サーシャはラドクリフの頭を胸で抱きしめ、宣告。

ラドクリフは息苦しさと心地よい暖かさを感じながら、女性の匂いと柔らかい感触にあてられた愚息がこちらもかまえと催促しているのを確認してしまった。

「あー…すまん。サーシャ、コレの世話を頼めるか」
「ん? ふふ…ああ、勿論だ。任せろ」

ラドクリフの頼みにサーシャは妖艶な笑みで答える。

「ふふ、ずっと愛し合おうラドクリフ。死が二人を分かつまで」
「誓うよ、サーシャ。死ぬまで愛すと」

誓いの後、口付けを交わし、二人は情事を再開。ラドクリフはサーシャの愛に答える為に、言葉を紡ぎ心を彼女へ向ける。サーシャは念願の体と心を手にれられた幸福と、初めて味わう愛する男性の快楽に溺れ、貪る。

二人の熱い情事はこの後、三日続いた。
14/06/28 01:09更新 /
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