連載小説
[TOP][目次]
『玩弄』
これは、ある魔界での出来事である。

石造りの殺風景な浴室に、巨大な百合の花が鎮座していた。
花弁の中央には裸身の男が立ち尽くしており、その左右には見目麗しい魔物の双子が、これまた一糸纏わぬ姿で寄り添っている。
3人の足元……百合の中央には、強い媚薬の効果を持つ蜜が溢れんばかりに貯まっていた。
彼らはそれに、膝の下まで浸かっている。

男は酷く肥え太っていたが、不思議とそこに肥満体特有の『だらしなさ』は感じられない。
白髪交じりの髪や髭は丁寧に揃えられており、肌は血色も良くはりつやがある。手の側面、小指の傍にはうっすらとインクの汚れが残っており、彼が普段から身だしなみに気を遣っていること、よく書き物をする事務職にあること、また衣食住の整った高い地位にあることを示していた。

花弁に背を預けた男は、百合の根とも茎ともつかぬ緑の触手によって四肢の自由を奪われていた。のみならず、猿轡を噛まされて発声を禁じられ、アイマスクによって視界を封じられてさえいる。
その姿は、まるで磔刑に処された聖人のようだ。彼に許されたのは弱々しい呻き声をあげること、そしてほんの僅かに身じろぎをする事だけだった。

「ふふ……いかがですか? 私達の蜜に膝まで浸かったご気分は」
「とっても甘くて、濃厚で……いやらしい香りでしょう?」

身動きの取れない男の両脇で、双子の魔物……リリラウネが囁き合う。
薄緑の肌に桃色の髪を持つ彼女らの外見は、何から何までが瓜二つだ。
笹穂のようにとがった耳も、大振りながらも形の良い乳房も、それでいてスレンダーな腰回りも。
果ては声さえもが、まるで鏡合わせの如くそっくりで見分けがつかない。

「さぁ……足だけでなく、体中に蜜を擦り込みましょう」
「全身が火照って、何も考えられなくなりますよ」

双子は男にぴたりと寄り添ったまま掌で蜜を掬い上げ、それを丹念に男の体へ塗りつけ始めた。
首筋を、鎖骨を、でっぷりと太った腹のうえを、二対の指先が撫で回す。粘液質の蜜が体に触れるそのたびに、液体に含まれる媚薬成分によって男は何度となく痙攣し、そして言葉にならない声を漏らした。

「……ねぇ、ペル姉さま。何か聞こえませんでしたか?」
「ええ、メル姉さま。でもなんでしょう、まるで喘ぎ声のようでしたけれど」
「喘ぎ声? もしかして、蜜が気持ち良かったのでしょうか?」
「ただ体に塗りつけただけで? まさか、そんな筈はないでしょう」

互いに互いを『姉さま』と呼びながら、双子は顔を見合わせる。
くすくすと微笑みながらも、彼女たちは男の裸体をまさぐる手を休めない。脇や背中、果ては男の尻にまで潜り込もうとするその動きは、まるで獲物に絡み付く蛇のようだ。

「そうですよね、ペル姉さま。私達は、ただ『スキンシップ』をしているだけですものね」
「その通りですわ、メル姉さま。これは世間で言う『裸の付き合い』。何も疾しい事はありません」

さも当然のような口調だが、少女らの行為はどこまでも官能的だ。
男の体を滑るたびに、彼の肌は淫蜜でコーティングされていく。
二対の手は好き放題に男の裸身を蹂躙していたが、次第にその動きは指向性を持ち始めた。

太ももから、ヘソの周りに。

ヘソから、胸板に。

そして、ゆっくりと首筋に。

粘つく指先がゆっくりと、男の顔へとせり上がっていく。
やがてそれが頬へ到達すると、双子は濡れた唇を彼の耳元へと傍寄せた。



「「ねぇ、そうでしょう? ……お父様」」



耳にそっと息を吹き掛けられ、男……双子と血の繋がった実の父親は、びくりと大きく身悶えする。
それを楽しげに眺めながら、娘たちは男に頬擦りをする。その間にも彼女らの手は喉首をくすぐり、乳首をなぞり、なにひとつ抵抗できない彼の痴態を愉しんだ。

ひととおり男の体を蜜まみれにすると、双子は自らの胸元へ琥珀色の蜜をたっぷりと垂らし、父親の首に腕を回すと、肥満体にしがみ付いた。すらりと長い脚も蜜の沼にくぐらせてから、男の腰へと絡ませる。

「幼い頃、お父様はお風呂で私達の体を洗ってくださいましたよね」
「懐かしいですね。今度は私達が、お父様の体を洗って差し上げましょう」

そう言いながら、ペルとメルは自らの肢体をスポンジに見立てて、父親の体を『洗い』始めた。
娘たちの体が父親の肌を縦に横にと動き回り、互いの全身を蜜塗れにしていく。
弾力のある胸は圧迫されて柔らかに形を変え、硬く強張った乳首を刺激する。その快感に気を良くした少女たちは瞳を潤ませながら更に父親へと媚肉を押し付け、ぐちゅり、にちゃりと浴室の石壁に淫らな水音を響かせた。

「んっ……ふぅぅ……あら、お父様?」

ふと、メルが動きを止めて父親に問い掛けた。
ペルもまたそれに倣い、メルの視線を追いかける。

そこには父親の、今にも爆発せんばかりに雄々しく怒張したいちもつがあった。

「こんなに硬くしているなんてもしかしてお父様……興奮していらっしゃるのですか?」
「まさか、娘を相手にして? そんな……それではまるでケダモノではありませんか」
「たとえ生まれたままの姿とはいえ、肉親に対して劣情を抱くなど、理性のかけらもありませんね」
「ええ、本当に。実の父親が、心の底では娘を孕ませたいなどと考えていたなんて……」

さも辛そうに、姉妹は憐憫の視線を父親へと向ける。
しかし当の男はと言えば、猿轡によって抗議ひとつもままならない。
むしろ娘から言葉を投げかけられるごとに、肉棒はびくんびくんと反り返る始末だ。ペルとメルは、瞳に喜色を滲ませながらも、ことさら大仰に嘆息してみせる。

「どうしましょうか、ペル姉さま」
「このままではいつ襲われるか解りませんわ、メル姉さま」
「娘の寝室に忍び込んでくるかも」
「お風呂に押し入ってきてもおかしくありません」

言葉こそ恐れを帯びてはいるが、声色から滲み出るのはどうしようもない『期待感』だ。
双子は、あらかじめ示し合わせでもしていたかのように、父親の股間へと手を伸ばした。
そして、歌劇の一節でも諳んじるかのように、重ねて言葉を紡ぎ出す。

「ああ、可哀そうなお父様」
「娘の肉体に欲情するなんて」

「神をも畏れぬ愚かしさ」
「主神の怒りを買いましょう」

「せめて娘にできることは」
「父の猛りを鎮めることだけ」

「家族を罪人にせぬ為ならば」
「これはきっと仕方のないこと」

蜜を纏った掌が、父親の肉竿を包み込んだ。
そのまま双子は指と指とを絡め合わせ、仲の良い恋人のように手を繋ぐ。

たったそれだけのことで、父親はとうとう辛抱溜まらずに、白百合の蜜壺へと獣欲を吐き出した。
白百合の磔架を満たす甘い香りに、オスの臭いが混ざり合う。
リリラウネ達はその臭気に表情を崩し、ぺろりと唇を舐めながら陶酔した。

「まあ、お父様ったら……ふふふ」
「まさか、触れただけで絶頂してしまわれたのですか?」
「そんなにまで、私達を求めていらっしゃったなんて……」
「でも、いけません。近親の間で情を交わすなど、あってはならない悪徳ですわ」

なおも白濁を噴き出し続ける肉の根を、2人はそっと扱き始める。

「さあ、ペル姉さま。お父様の心に巣食う淫らな悪魔を、2人で退治して差し上げましょう?」
「ええ、メル姉さま。このままでは心を惑わされたお父様に、押し倒されてしまいますもの」
「一滴も残さず搾り取れば、お父様も改心してくださるかしら」
「きっと昔の、お優しかったお父様に戻ってくださる筈ですわ」

射精が収まってなお屹立した淫根が、娘の手によって執拗なまでに責め立てられる。
茎を扱き、皮を撫で、亀頭を爪で玩弄し……10本の指が蠢くたびに、父親の表情が苦悶に歪む。

「ふふふふ」
「ふふふ」

やがて壊れたように精液を垂れ流し始めた男性器を愛おしそうに握り締めながら、双子は互いに顔を寄せ、唇と舌とを絡ませ合う。

「んっ……ちゅっ……ふふ、ペル姉さまぁ……」
「メル姉さま……ちゅっ、ちゅっ……んふぅっ」

これは無慈悲な拷問なのか、それとも至上の快楽なのか。
血の繋がった娘たちとの狂える家族団欒は、ついに父親が文字通り精根尽き果て、白目を剥いて失神するまで終わらなかった。
14/07/12 19:55更新 / 見習い職人
戻る 次へ

■作者メッセージ
諸君……私は娘に淫語で責められるのが好きだ。

諸君……私は娘に淫語で責められるのが好きだ。

諸君! 私は娘に淫語で責められるのが大好きだ!



初投稿です。
全3〜4話を予定しています。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33