読切小説
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堕とし愛
「主よ、どうかこの村を、村の人々を救ってください・・」
反魔物領の片隅の名前も無い集落、
厚く雲が立ち込めどんよりとした空気が漂っていた、
そんな集落の寂れた教会での礼拝堂で一人の神父が祭壇に跪き、ただひたすらに祈りを捧げていた。
神父の着ている服は良く見ると、大小幾つもの穴があいており、見るも無残な姿だった。
神父に限らず周囲を見ると教会自体がかなり傷んでいるのは容易にわかる有様だった、
この建物も教会と言うよりは廃屋と形容したほうが適切かもしれない、
窓はひび割れが目立ち、椅子なども老朽化で座れば壊れてしまいそうなほどだ。

そしてその様子はこの教会に限らず、この集落そのものに言える事だった。
どの民家も廃屋のようにボロボロで隙間風が吹き込まない家は無かった。
道を行き交う人影も無く、もし旅人がこの集落を見たらゴーストタウンと断じるであろう光景だった。

十数年前までは山々に囲まれているこの集落も、ひっそりとしてこそいたが、
自給自足により住人達が生活を出来る程度には栄えていた。
しかし、その後数年に渡り寒波とそれによる不作で生活が苦しくなっていった、
その後も畑は荒れ果て碌な収穫もできなくなってしまった。
この集落独自の特産品もなども無く、
大した税収も期待出来ない小さな集落に、領主は早々に見切りを付けてしまい。
唯一の政策がこの集落から他所への移住をする者への労働先の斡旋だった。
これにより集落の若い者たちはあるものは飛びつくように、
またあるものは残される者に申し訳無さそうにこの集落を後にした。
そしてこの集落には、移住するほどの体力も無い歳を取った者や病弱なものだけが残された。

「主よ・・何故何も答えてくださらないのです・・」
搾り出すような声で祈り続けている神父は嘆いた。
年の頃は20代後半と言ったところ、若い男性だがやや頬は痩せており、
その苦悩に満ちた表情は年齢相応以上の心労を伺わせた。
神父の名はヴァレリーと言い、この集落で生まれ育った男性である、
主神の敬虔な信徒であり、周囲の人々にも常に慈悲深く接する男性だった。
領主がこの集落を見限った際には、残される者のことを訴え救援も嘆願した、
しかし無情にも領主からの返答は無く、
ならばと教団に救援を求めて、山を越え他の都市に向かったことも一度ではなかった。
だが、教団からの返答は拠点としての価値も無く、
失われた所で問題にならない小さな集落に回す人員も予算の余裕も無い。
と言う趣旨の言葉を遠回しに表現した返答が来るばかりだった。
ヴァレリーは己の無力感に苛まれながら、集落に戻ってきたが、そんな彼のことを残されたものたちは誰も責めなかった。
むしろ、此処に居てはまだ若い神父の未来も閉ざしてしまう、と他所への移住を薦めさえしたのだ。
そんな心優しい残された者達を見捨てることは出来ず、されど自身には荒れ果てた大地を蘇らせようにも、
それを実現できる知恵も力も魔術の知識すらも彼には備わっていなかった。
考え抜いた果てに最後にヴァレリーに残されたこと、それはただ一心に神に奇跡を願うことだった。

「私はどうなっても構いません、だからどうかこの集落の方々をお救いください」
「ねぇ、ホントにどうなってもいいの?」
一人嘆願していた彼の背後から突如緊張感の無い、無邪気さすら感じさせる透き通った声が答えた。
背後を振り返ったヴァレリーは次の瞬間表情を強張らせた。
教会のドアの前に居たのは一人の幼い少女だった。
だが神父を驚愕させたのはその容貌だった。
その肌は青く、そして人間ならば白い筈の目の部分は漆黒に染まり、
赤い瞳が薄暗くなった聖堂内で爛々と輝いていた、
頭と背中からは蝙蝠のような羽を生やし、腰からは黒光りした尾が楽しげに揺れていた。
「あんまりに熱心に祈ってたから、黙ってお邪魔しちゃったね」
まるで友人宅に来たかのような気軽さで少女、いや。一体のデビルは神父の元へ歩を進めた。
「去りなさい悪魔!私はお前の誘惑などに耳を貸す気は無い!」
ヴァレリー先程までの弱弱しかった態度と違い、毅然とした様子で歩み寄ろうとする少女に言い放った。
それは普段教会に来るものを全て受けれていた彼を知るものがこの場に居れば驚きそうな明確な拒絶だった。
「ふ〜ん、でも。本当に去ってもいいの?集落の人達を助けたいんでしょ?」
と、少女は聖堂の中ほどで歩みを止め、小首を傾げながら問いかけた。
「お前達悪魔は甘言で惑わし人を破滅に導くだけだろう!主は我々を見捨てはしない!」
「それは本心からそう思ってるの?領主様も教団も此処の救援は断ってるんだよね?」
「!!」
神父の自分に言い聞かせるような必死の言葉に、悪魔の少女は唐突に揺るぎようの無い事実を述べた。
「どうしてそれを?」
「どして知ってるかなんて、そんなことは今はいいじゃない。困ってるって言う事実が確かなら。」
その突きつけられた事実は、ヴァレリーの息を詰まらせるには十分で、その様子に少女の瞳は楽しそうに細められた。
それと同時に外ではポツポツと雨が降り始めていた。

「領主も、そして主神の元に活動する教団もこの集落を見捨てた、
もうアタシ達魔物くらいしかこの集落を救えないと思うけどな?」
そう言って次の瞬間目の前に居た筈の少女は青年の背後から抱きつきながら続けた、
「それにしても酷い話だよね?「隣人を愛せ」なんて教義で言ってるのに、何の罪も無いこの集落の人を見限るなんて」
耳元で囁かれてもヴァレリーは動かない、いや。動けなかった。
そんな神父の頬に舌を這わせながら少女は続けた。
「でも、アタシたちなら絶対に見捨てないよ?だって貴方達を愛してるんだもの」
「それに貴方だって本当はこういうことに興味があるんでしょ・・?」
そう囁きながら左手を神父の胸に這わせ、
右手を股間に手を伸ばした時、彼は突如振りほどき背後の少女に向き直り距離を取った。
「違う!私はそのようなことを望んだつもりは無い!」
「その言葉は嘘でしょ、教団の高潔こそ美徳って考え方からの建前でしょ」
叫ぶヴァレリーに気の毒な相手を憐れむように少女は幼子に言い聞かせるように言葉を続けた、
「もうやめようよ、嘘つくの」
その言葉に反応するように外の雨脚は強くなり、ヴァレリーはとっさに返す言葉も無く、
再度立ち尽くしてしまった。
「やりたいことをやって何が悪いの?禁欲的に生きてきて本当は苦しいんでしょ?」
少女はまっすぐと神父を見つめ、対する神父は言葉も無く俯き、もはや少女を正視できていなかった。
「もっと自分に正直になってくれさえすれば、貴方の望みを何でも叶えてあげるよ?」
再度、少女は今度はゆっくりと説得するように語りかけながら神父に歩み寄っていった。
「・・それならこの集落に残された人達を幸せにすることも出来るのか?」
揺らぎ始めたヴァレリーは自分の間近に迫りつつある少女に問いかけた、
「それじゃあ、貴方の望む皆の幸せって何?」
「・・え?」
突然の問いにヴァレリーは間の抜けたような声しか出なかった。
「それは、皆がまた笑顔で苦しむことの無い日々を送れる」
「具体的にどうすれば皆は笑顔で幸せに過ごせるの?」
「それは・・」
神父の言葉に重ねるように問いかける少女の言葉に徐々に神父は徐々に言葉を詰まらせていった。
「やっぱり・・。貴方は幸せがどういうものか具体的に分らないんだね、
自分の幸せを考えたことも無いから、曖昧な形でしか答えられないんでしょ?」
嘲るでもなく、むしろ哀しそうに少女は呟いた。
「じゃあ、アタシが幸せを教えてあげるね」
抵抗も無くなったヴァレリーの服を少女は静かに脱がしていく。
ほどなく全裸になった彼の口に自らの口を重ね、同時に既に大きくなりつつある男性器へと手を伸ばした、
「んう、んちゅっ、れろ・・はぁ」
舌を絡めたキスをしつつ、同時に男性器全体を緩やかに撫でただけで、肉棒は先走りに塗れ限界を物語っている。
「どぅ?コレをこのままアタシの此処に入れたらもっと凄いよ?」
そう言いながら熱っぽい瞳を神父に向けつつその片手を、申し訳程度の役割しか果たして居ない服の隙間から既に潤いきった自らの秘所へ導いた。
「貴方がアタシと一緒になって、そして願ってさえくれれば他の皆にもこの幸せを与えられるよ?」
その言葉に先程まで翻弄されていた彼に迷いが生まれた、
「それは集落の人達を魔物に変えると言う事か?」
「ダメなの?お互い気持ちよく幸せそして笑顔にになれる道だと思うけど?」
彼の手で自らを慰めつつ荒い息と共に答えた。
「確かに皆には幸せになって貰いたい、しかし。そのために人の身を捨てろだなんて・・」
生まれてからずっと教団の教えに生きてきたヴァレリーには悩ましかった。
「・・わかった、アタシが提案を出すだけじゃなくて。それなら魔物か主神の教えか貴方の自身の手で選んで見せて?」
そういうと少女は彼の手を自身の秘所から離し、服を脱ぎ去った。
そして名残惜しげに糸を引く愛液の絡むその手に一本の短剣を握らせていた、
そしてそのままヴァレリーに背を向けて祭壇に手を掛け、神父へ向けて自らの秘所を見せつけながら言った。
「貴方がアタシ達魔物を受け入れてくれるなら貴方のその肉棒でアタシを思いっきり貫いて、
でも、どうしても主神の教えが忘れられなくて魔物を、アタシを受け入れられないなら、
一思いにその短剣でアタシを殺して?」
そう言ってくぱぁと幻聴が聞こえそうなその秘所を向けたまま彼女は押し黙ってしまった、
今まで信じたものか、それとも目の前の悪魔の少女の提案か、
ヴァレリーは己が信じるべきはどちらか葛藤しつつ無言で歩を進めた、
そして少女の間近に立った時に初めて気付いた、
気丈に問いかけた少女の背が小刻みに震えていることに、その姿を見た時、彼は決断した。
雨の降りしきる音だけが響く中、
静かに短剣が神父の手から滑り落ち、床に落ちる音を立てた時、ヴァレリーは神父としての自分を捨てた。


そして同時に聖堂内に歓喜の嬌声が響き渡った
「ふ、ああああぁ!!」
祭壇に両手をついたままの少女の胸に片手を伸ばしその僅かな膨らみの頂を刺激しつつ、
もう片方の手で腰を掴み、そのまま激しく叩きつけるような挿入を繰り返した。
「あ、すごぃ、激しすぎ!!」
悲鳴のような嬌声を上げつつも少女は神父の、いや。神父であることを捨てた彼の動きに合わせて、
少女は自らの腰を動かしていた。
しかし、先程の前戯で最早限界を迎えつつあった彼の肉棒は次の瞬間に少女の膣の中に溢れんばかりの精液を吐き出していた。
「んぅ・・凄く熱くて、それに濃い・・」
うわ言のようにそう呟きながら少女は自身の中に放たれたその欲望に酔いしれた、
恍惚とした様子の少女の秘所から未だにいきり立つ怒張を引き抜いた時、
今度は少女が振り返りそのままヴァレリーを静かに礼拝堂の床へ押し倒した。
「ふふっ、まだこんなに元気なんだもの、今度はアタシが主導で、ね?」
ヴァレリーの上に跨った少女は先程の彼の攻めを受けていた時とは別人のように彼の上で激しく腰を振り快楽を貪った。
「防音の魔術で、ん、声を隠そうかと思ったけど、こんなに雨が降ってて助かっちゃった、」
彼を責めたてながらも、なお周囲を気にする余裕を感じさせる様子で、少女は一層腰の速度を速めていった。
自身と交わりながらも余裕を感じさせるその姿に、
彼は僅かな嫉妬心のようなものと意地を見せたくなり
少女の淫核へと手を伸ばしに荒々しく攻め立てた。
しかし、彼の努力もむなしく間も無く二度目の射精が訪れ。彼女の中を再度熱い欲望が満たした。
「んぁ!ふっ、ん!アタシも、もう!」
それだけ言うと彼の上で跳ねていた少女は一際全身を震わせて激しい絶頂を迎えた。
そして繋がったまま少女は彼に体を重ねるようゆっくりと前に自身の体を倒した。
度重なる射精と初めてだった交わりの快楽に青年の表情は緩みきっていた、
そして今だ激しい快楽の余韻を味わいながら、荒い息をついている彼の頬に少女はそっと口付けた。
「やっぱり、思った以上に貴方の快楽に蕩けた顔ってとっても素敵・・」
そういう少女自身も快楽に塗れだらしなく緩みきった表情のまま呟いた。
「そういえば、まだ。お互いの自己紹介をしてなかったわね、アタシはメーリス。貴方の名前は?」
息も絶え絶えにヴァレリーが自らの名を告げるとメーリスは脱力し切った、それでいて嬉しそうな声色で言った。
「ヴァレリーって言うのね、次に交わる時はお互いの名を叫びながら、もっともっと深く求め合いましょ・・?」
その言葉を最後に二人は意識を手放した。
外であれほど降りしきっていた雨もいつの間にか止んでおり、心地よい静寂だけが教会を包んでいた。

それから数日後
住人は皆女性は魔物へ、男性はインキュバスとなっていた。
村の住人達はヴァレリーがメーリスに付き添う形でついて周り、
説明の仲介や説得をするつもりで居たが、住人は自分達を魔物へと変えることを予想以上にすんなりと受け入れてくれた。
と、言うのも、もはや自身達は静かに息を引き取るまで飢餓と寒さに怯えながら過ごすだけの状態だったため、
既に主神や魔物迫害を謳う領主への愛想を尽かしていたからだ。
結果、現在は男性は交わりに支障の無い姿へ若返り。
女性は魔物となりそんな夫との交わりを繰り返している。
魔物とインキュバスになった彼らは最早互いに交わりあうだけで飢えることも無く、
穏やかにそして快楽を与え合いながら過ごせている事に深い幸せと悦びを感じていた。
そんな様子をかつての教会だった建物の窓から、今では修繕された椅子に腰掛けたまま、ヴァレリーは町並みを眺めていた。
「どうしたの?今更他所様の嬌声が聞こえても気にならないでしょ?」
傍に居たメーリスはそんな彼をよその嬌声を気になっていると勘違いしたようだ。
「いや、皆が今日も幸せそうで良かったな、と思ってさ」
自身もインキュバスとなった今のヴァレリーには、
嬌声が聞こえたとしても、それもまたよろこばしいことに感じていた。
「ところで、あの時に私が短剣で君を刺していたらどうするつもりだったんだ?」
あの後確かめたが、刃は魔界銀でもなく刺されれば致命傷を負う可能性は十分にあるものだった。
そんな問いにメーリスは馬鹿ね、と笑いながら答えた
「残された人たちの為に自分自身も共に死ぬことを覚悟してたほどの
優しい人が無抵抗の相手を殺せるわけ無いじゃない」
例え、それが忌み嫌う魔物でもね、と。最後に付け足した少女の返答にヴァレリーは心底驚いた、
つまり、彼女の見立てではもうあの選択を迫った時点で自分は彼女に敵意などないと判断されていたのだ、
そして恐らく、教会での僅かな会話の間に性格を殆ど把握されて、結果として彼女の意のままに墜ちたのだから。
もしかしたらあの時小刻みに震えていた背中も恐怖ではなくこれから訪れる快楽を待ちわびていたのかもしれない。
そう結論付けたヴァレリーは、彼女にはこれからも適ないそうにないなと思いながら、同時にあの苦境から救ってくれた彼女への感謝をどう告げえるか悩んでいた。
「また貴方はそうやってすぐ難しい顔をする!貴方はもっと幸せに、そして快楽を享受すればいいの!」
どうやらその思案を落ち込んでいると勘違いしたメーリスは不満そうな声をあげながら詰め寄った、
そして座ったままの彼に跨り、あっという間に服を肌蹴させていく。
そして彼の肉棒を取り出し、自身の秘所に宛がいながら続けた。
「だからもっと、もっと、何処までも快楽に、そしてアタシに沈んだ顔を見せて!
アタシもずっと一緒に貴方に溺れながら貴方を幸せにし続けるから!」
熱烈ともいえる愛の告白の返答をしようとした彼の唇を彼女は自身の唇で塞ぎながら彼女は静かに腰を動かし始めた。
言葉の返しようも無いのでヴァレリーはせめてもの意思表示にと一層肌が触れ合うようにメーリスの身体を抱き寄せた。
その様子に何処か満足気な吐息を漏らした少女との交わりに没頭することにした、
お互いが際限なく快楽にそしてお互いに溺れていくために。
14/06/16 17:49更新 / 鍔広帽

■作者メッセージ
最終的に彼が彼女に堕とされたのか、彼女が彼に墜ちたのか。
そんな形で二人も、そして集落も快楽に沈んだ話でした。
自分なりに堕落モノに挑戦してみましたが、皆様に納得いただける形になって居れば幸いです。

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