連載小説
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一話
「どいつもこいつも余を舐めくさりおって!!」


叫び声で花瓶が割れる。無自覚の魔力の放出による余波だ。


侍従が怯えた表情で花瓶の破片を片づけ始める。


彼の名はレオナルド1世。腰まで届く黒髪の長髪に紅い眼を持った美青年。魔術王と謳われたこの国の王である。


「まったくもって忌々しい!余が直々に誅を下してくれようか・・・・・・」


爪を噛む。それだけの力を持っているだけにその欲求は余計に抗いがたくなる。


彼は魔術師としては天才であった。誰よりも強大な魔力を持ち、この国で学べる魔術を10歳のころにはにすべて修め、15歳にもなると失われた魔法の数々を復活させ、新たな魔法の体系を築き上げた。


この国の若い魔術師で、彼の手の入っていない魔術を学んでいる者など皆無だ。



だが、しかしそれが為政者として優れている条件となるかといえばそうではない。



例えば、彼は妾腹の出である。故に後ろ盾となる大貴族などいよう筈もない。



例えば、彼には後継者はいない。これもまた当然のことだ。彼は王位継承者争いの折、降りかかる火の粉を払い続けた結果、王になった。近しい親族などすでに亡き者になっている。



子供もいない。骨肉の争いの時に何度も女性の暗殺者を送り込まれた結果、彼は女性を信用するのをやめた。



心を打ち砕いて完璧な肉人形を仕立てあげることなど簡単にできたが、億劫だった。



例えば、彼は世渡りが下手だった。



彼は強大な力を持つがゆえに人の顔色を窺うことなどしたことがない。当然だ。レオナルドは幼子の時点で少し癇癪を起すだけで簡単に人を殺すことができた。


生まれながらにして生物として人間の上位に君臨しているのだ。そんな小さな暴君を諌めることなど誰ができよう?



その他色々な要因で彼は為政者としては不適格だった。



貴族たちも表向きはレオナルドの力に畏れてはいても、裏では違う。



レオナルドのやること為すことを邪魔してくるのだ。しかも犯人が誰かばれないよう、巧妙に。



そんな事が続けばレオナルドのストレスは貯まる一方だ。



(滅ぼしてくれる・・・・・!この国も街も、人も・・・・・!!)



それはもはやレオナルドの中では半ば決定事項だった。元々成りたくて王になったわけではない。自らが作り上げた魔術に対して思い入れがあっても国に対して等、皆無だ。



レオナルドは知っている。人々を襲い、食らう邪悪な魔物を滅ぼすべしとの教団の教えをいまだ掲げているこの国だが実のところ魔物はもはやその在り方を根本的に変えてしまったのだ。


魔物は人間の男性と交わることさえ可能な淫魔の女体を手にした。子を為すことも出来る。



未だ不完全なのか魔物しか生まれないとの欠点を抱えているもののそれすらも魔物の勢力圏の拡大とともに解決していくだろう。



この勢いはもはや止めることなど不可能だ。人間の三大欲求の一つである肉欲を消し去らない限りは。



(思いしるがいい……今まで貴様らは余の気まぐれでで安穏とした生活を送られていたのだということを!!)



この国は代々の魔術師達が敷いた巨大で強大な魔を退ける結界で守られている。そうでなければ一月と掛からず魔物の軍勢に攻め滅ぼされるであろう。



故に、結界の詳しい構成などはこの国の魔術師ギルドの秘儀中の秘儀だ。それは例え国王であっても洩らされることはない。



だが彼は魔術王である。



結界を解く方法は少々手こずったが自らの力ですでに見つけ出した。



その結界を解けばどうなるか。



空は魔界に染まり、地は芳醇な魔力に富み、そしてこの国は滅びるであろう。


貴族たちの利権は崩壊し、男共は魔物たちと淫らに交わり、女達は魔物へと変容する。聖書で語られるような冒涜的な光景が

レオナルドの眼前に広がるのだ。


それはきっと腹がよじれてしまいそうなくらい面白いことに違いない。



「陛下。シオン卿が御着きになられました」



侍従長のその言葉に空想が遮られた。


時計を見上げる。これもレオナルドの作品の一つだ。地上に流れる魔力に反応し規則正しい時を刻み、また永遠に止まることはない。夜の10時を超えようとしていた。


「もう、そんな時間か……ふん、通せ」



「はっ」



侍従長が引き下がり、しばらくたつと趣味のいい服を来た12歳くらいの少年がやってきた。


その髪は柔らかい金糸で出来ており目は蒼く、やや鋭かったが十分に愛らしい。唇は薄く色づいており艶めかしかった。


抱けば折れてしまいそうな体をしている。


美少年というよりは美少女のようだ。


「陛下、ご機嫌麗しゅう・・・」


少年は膝をつき主に平伏する。


彼の名はシオン・マークドリア。


王位継承権第4位の立派な大貴族であり、栄えある近衛騎士団の一員であり、そして教団に洗礼を受けた勇者であった。


しかし、それらの何よりも。


先ほどとは打って変わりレオナルドの目に険はない。


「我らの間にそのような格式ばった挨拶などいらぬ。……おいで、シオン」


シオンは花のような笑顔を浮かべた


「はい、レオナルド」


レオナルド1世の恋人であった。
12/05/01 00:47更新 / ハロルド
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■作者メッセージ
はじめましてハロルドと申します。

処女作でショタってどーよ?というそこのあなた。


あなたは正しい。私もやってしまった感があります(笑)

魔物娘とかはまだ出てきませんがいずれ出ます。多分。

何ぶんこういうところにこういうのを投稿するのは初めてなので、何か間違っているのならツンデレ気味に教えてくれると助かるし、喜びます。


ではではノシ

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