読切小説
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荒波に飲まれて
 目を覚ますと、見慣れた天井が目の前にあった。体を起こすと、頭がズキリと痛む。
冷蔵庫を開けると、水のボトルを取り出して、一口飲む。ぼんやりとした頭が覚醒していく感触。
――……ごめん
 それと同時に、昨日の晩の、彼女の言葉が蘇る。
――ごめん、怖いの
 頭の中に響く彼女の声が、胸をざわめかせる。
――ごめんなさい……
「何をやってるんだ、俺は……」
 彼女の、七海の気持ちをどうしてもっと考えられなかったのだろう。どうしてあんなに焦って、彼女と寝ようとなんて思ってしまったのだろう。別れ際に七海が見せた、悲しい瞳が俺を責め立てる。
 彼女とは、もっとじっくりと関係を作って行かなきゃいけなかったのに。彼女自身、そう思っていただろうに。自分でぶちこわしておいてこんな簡単なことにやっと気がつく。「本当に、馬鹿野郎だよ。俺は」
 誰もいない部屋の中。俺の呟きだけが、虚空に響く。

 携帯電話が着信音を鳴らす。のろのろと手を伸ばし、携帯を開くと「七海」とディスプレイに書かれていた。きっと、別れ話だろう……。これは、俺がやってしまったことへの報い。これが結末。俺は、この電話に出て、彼女からの別れを受け入れなければならない。「もしもし……」
『蓮太郎? ああ、よかった……。やっと出てくれた』
 電話の向こうから聞こえる七海の声は、思っていたよりずっと穏やかだった。
「やっと?」
『うん。何度か電話したんだけど、出てくれなかったから寂しかったの。ね、今から会いたいの』
「これから?」
『うん。二人で何回か行った浜辺に来てほしいの』
「……わかった。すぐ行くよ」
 そう言った俺に、七海は『ありがとう』と声を弾ませた。
『蓮太郎、あなたに会いたくてたまらないの。ね、すぐよ、すぐ来てね!』
 楽しそうな彼女の声。
――あんなことをしてしまった次の日にどうして……?
 俺は違和感を持ちながら、電話を切るとすぐに彼女の言った場所へ向かった。

 七海に言われた海岸に着くと、車を降りて嗅ぎ慣れた臭いの潮風を深呼吸する。心を落ち着かせると、砂浜に向かう階段を下り、七海の姿を探す。
「蓮太郎!」
 不意にした声に驚いて後ろを向くと、七海が立っていた。
「七海……」
 二の句が継げずにいる俺に彼女は抱きつくと、唇を重ねた。七海の舌が俺の口内に侵入し、くちゅくちゅと音を立ててあちこちをなめ回す。そしてたっぷり一分もした後、やっと口を離した。
「ん……、蓮太郎のつば、おいし♪」
 恍惚とした表情で、一つ息を吐き出す。艶めかしい、見たことのない彼女の表情に、鼓動が速くなる。
「ねぇ、蓮太郎。昨日はごめんね、あなたを拒んじゃって。私、怖かったの。あなたは私を求めてくれたのに、私は自分のことを知られるのを怖がって、逃げちゃったの」
「……七海」
 七海はさらに強く俺を抱きしめる。そして俺の足に足を絡め、体のバランスを崩させて俺を押し倒して、上着を脱ぐ。シャツを脱ぐと、彼女の胸がまろび出た。
「七海、何を……?」
「ふふ、蓮太郎。気持ちよくしてあげるね……」
 俺のズボンのベルトに手をかけ、外すとズボンを下着ごと脱がせてしまう。すでに勃起している俺の逸物をくわえると、舌を這わせながら、吸い付いてくる。
「ん、じゅる……。くちゅ、ちゅ、れる、ふぅ……」
「く……!」
 あちこちを這い回る熱い舌の刺激に、俺の腰が跳ね上がる。七海は目を細めると、俺の睾丸をきゅ、きゅと優しく握ってさらに刺激をくわえる。甘い刺激は否応なく俺の性感を高めていく。
「ぐぅ……、七海、もう……!」
 七海はさらに強く吸い付く。程なくして、俺は彼女にくわえられたまま精液を彼女の口の中へと放った。
「んん、うぅん?」
 こくんと音を立てて一部を飲み込み、残りを彼女の胸にたらす。そのまま、つばと精液の混じったそれを胸を揉んで全体に塗り広げると、胸の谷間に俺のペニスを挟んだ。そして、くにくにと揉んで上へ下へ、右に左にと刺激を与えてくる。生温かく、柔らかい胸は俺のそれをむっちりとくわえこみ、耐えきれないほどの刺激を俺に流し込む。限界が近いことを彼女も読み取ったのか、ぶるぶると激しく胸を振動させ、俺にとどめを刺した。
 どぷどぷと音を立ててはじけ飛んだ精液が、彼女の肌をけがしていく。うっとりとした彼女の顔は、今にも溶けそうだった。見る間に彼女の肌が青く染まり、鱗のような物が手と足を包んで、ぬるぬるとしだす。頭に角が、腰から尻尾が生え、両足はひれに変わる。そして体のあちこちに不思議な文様が表れる。
 その姿は、まるで……。
「悪魔……」
「あら、悪魔なんかじゃないわ」
 七海は心外そうに口を尖らせると、俺の頬にキスをする。
「昨日ね、お母様に私は会ったの。お母様は言ったわ。もう人の心に捕らわれる必要はないって……」
「お母様……?」
「そう。海の神様……、ポセイドン様にね。さあ、私に身をゆだねて……。この身体で、あなたも人の心から解き放ってあげる」
「七海、何をする気だ?」
 変わってしまった彼女の姿が、俺の心を恐怖で波立たせる。七海は俺を優しく、抱きしめて俺の服を脱がせていく。尻尾で頭をなでられると、彼女のぬるぬるとした身体で全身をなで回されているような感触に捕らわれる。
「おびえないで、大丈夫。さあ、儀式を始めましょう……」
「儀式?」
「そう、あなたと私の婚礼のね。それから、あなたを海で暮らせるようにする大事な儀式」
 彼女はそう言うと、いつの間にか俺たちの傍らにいた人魚にほほえみかける。石版のような物を持った人魚もほほえむと、呪文のような物を唱えだした。
「それじゃ、蓮太郎。覚悟しちゃってね?」
 そして七海はくちゅ、と音を立てて陰唇を開き、俺のペニスにあてがうと一気に腰を落とした。その瞬間彼女の膣の肉が俺を優しく、しかし執拗に揉みしだく。
「あぁぁ、蓮太郎、おっきい……! 気持ちいいよぉ!」
「うぁ、な、ななみぃ……!」
 むにむに、くちくちと言う刺激は止まることなく俺を責め立て、射精をしても休むことを許さずに、激しく腰を振って次の射精を促す。
「がぁ……! 七海、頼む、これ以上は……」
「だぁめ? まだまだ、これからだよ」
 にぃ……と淫らで、残忍な笑みを浮かべると、彼女の膣は俺のペニスをぎゅぅうと絞った。
「うあぁぁぁ……!」
 とどめを刺され、俺はどくどくと精液を吐き出す。七海は膣からペニスを吐き出すと、今度は彼女の菊門をあてがい、そこで俺の逸物を噛みしめた。膣の優しい刺激などとは比べ物にならない、まさに噛み砕くようにぎゅうぎゅうと締めあげられ、ごりゅごりゅとすられる。それは、地獄のような、まさに悪魔の快楽。
「ふふふ、蓮太郎。もっと、もっと……! ぜぇんぶ、私にちょうだい?」
「あ、ああぁ、頼む、もうだめだ。もう……!」
 彼女の搾精に容赦はない。俺の全てを、体の中から引きずり出される。
「な、ななみ……。どうしちゃったんだよ。こんなことをするような奴じゃ」
 そう言った俺を、七海は優しく抱きしめる。
「蓮太郎、言ったでしょ? 私は、もう自分を偽ることをやめたの。人の心に捕らわれて愛し合うことをためらうなんて、愚かしいにもほどがあるわ。大丈夫、これからはお母様の元で、永久に愛し合いましょう。この海の底で、ずっとずっと愛し合いましょう。私が、あなたを快楽の底に沈めてあげる……!」
 熱に浮かされた金色の瞳で、彼女は狂気に満ちた笑顔で言う。そして、彼女は俺の菊門にも指を押し付けた。
「七海、何をする気だ!?」
「ふふふ、知ってる? 男の人もね、お尻の穴の奥を突かれたら、意識が飛んじゃうくらい気持ちいいんだよ?」
「や、やめてくれ……! そんなことをされたら……!」
 もう、戻れない。きっと、俺の心のどこか、大切なところは確実に壊される……!
「だめよ、だめだめ。やめてあげない♪ 心のタガを……」

「こ・わ・し・て・あ・げ・る」

 一言一言区切るように、残酷な蕩けた笑顔で宣告すると、ずぷりと指を俺の中に突きこんだ。
「うわああああぁぁぁ……!!」
 目の前で火花が散るような、めくるめく快楽。意識が飛びそうになるたび、新しい刺激でまた現実に引き戻される。地獄のような快楽を心が求めるようになっていく。
「ふふふふふ、あはははははは……! きゃははははははははは……!!」
 俺の意識を彼女の哄笑が埋め、そして途切れた。


「蓮太郎、蓮太郎♪ お・き・て♪」
 優しいささやきが、鼓膜を刺激する。目を開けると、天使のようなほほえみを浮かべた七海が、俺に膝枕をしてくれていた。
「蓮太郎、あなたもすてきな姿になったね……」
 彼女の言葉に身体を見回すと、俺の身体は彼女と同じ美しい青い鱗に包まれ、手の指と両足はひれのように変わっている。そしてなにより。
「いい気分だよ、七海……」
 彼女は嬉しそうにほほえんだ。
「さあ、行きましょう。ようこそ、この海へ。歓迎するわ」
 七海はそう言うと、俺を促して立ち上がらせる。
「ねぇ、神官様。これから、彼を歓迎してあげましょう。私たちの身体で……」
「あら、私もおじゃましてしまっていいんですの?」
 婚礼の儀式を執り行っていてくれた人魚の神官は、意外そうな、しかし嬉しそうな表情で言う。
「ええ、人数は多い方が楽しいもの。ね、蓮太郎」
「ああ、そうだな」
「まぁ、エッチな旦那様ですこと♪」
 そう言った俺に、神官はにやりと、悦びに満ちた笑顔で笑う。

 こうして、俺は彼女とともに、この海の底で永久に愛し合うことになった。
 後悔はない。実にいい気分だ。
 願わくば、この時がずっとずっと続くことを。
 そして今日も、この海の底。快楽の底で俺は彼女とつながっている。
 
11/06/09 23:24更新 / ハルアタマ

■作者メッセージ
これにて、海自編は一応終わり。
何がしたかったといえば、彼女の必殺技ナナミ・スペシャルで彼を堕とすことだったんだ。

エロって妄想するのと表現するのじゃやっぱり違いますね。

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