読切小説
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交わった妖怪と人間
 「はっ!あっ、ぶわぁ!た、たすけっ、て!」
 川の真ん中、足がとどかないくらい深い所で、小さな男の子が溺れていた。
 彼の手には何か小さな物が握られている。それが川に落ちて、取ろうとしてあんな所まで。
 それを見ていたから知ってる。全部、この上空から、彼のことを見ていたから。
 そのうち、誰か人間が彼を助けに来るだろう。
 「あっ!だ、れか・・!たす、け・・・!」
 ・・早くしないと、誰か助けてあげないと・・・・あの子が死んでしまう・・!
 近くは誰も通りそうにない。
 早くしないと・・・。
 「はがっ、あ、ぁ・・・・・・・・」
 そうこうしているうちに、苦しそうに、腕を上げて、冷たい水の中に沈んでしまった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 現在、蝉がギターのように鳴き喚く、太陽がギラギラと輝く、汗ばむ夏。
 しかしそんな季節でも夜になると少し冷える。それが山林の中ならさらにだ。
 「・・駄目、か・・・」
 その中を一人歩いている。
 彼の名前は黒尾(くろう)宮路(みやじ)。彼はよく夕暮れにこの山林に入り、登って、下る。山林を下る頃には、もう日は沈み、というか真夜中を過ぎている。その間、ずっと何かを探すように、上や下を見回している。下だけなら落し物だろうが、上も見ているということはそうではない。何か生き物でも探しているのだろうか。

 「・・・もう、下るかな・・・」
 彼が下る時間はバラバラで、日が変わる前に下る事もあれば、長いともう朝になる頃に下る事もある。今回は日が変わって少し時間がたったくらい。簡単に言えば二時過ぎ。
 「何か、探しものか?」
 その声はどこから聞こえたかわからない。だが、位置的に後方だろう、という事はわかった。
 「どこにいるの?」
 辺りを見渡すが、彼の目には、夜の闇に染まった木々、その陰に覆われた土、そして彼が持っているライトで照らしている道。やはり、人の影らしきものは見えない。
 「どこを見ている?上だよ」
 そう言われて、宮路は自分の背に位置している木の上に向けて目線を上げる。
 その視線の先には、木の枝に座り、足をぶらぶらとしている少女がいた。もう夜遅く、日も変わっているので、彼女の姿はほとんどシルエットでしか見えないが、声から女の子であろう事が想像できた。
 「こんにちわ」
 「・・こんばんわ、だね。今は夜だよ?」
 「・・・うん、そうだな。こんばんわ」
 そんな奇妙なやり取りをして、彼女に問う。
 「そんなところで、何してるの?」
 「まぁ、何をしているかと言われれば、なにもと答えるしかないな。強いて言うなら、お前を見ていた」
 「へぇ、監視?」
 「そうではないが」
 「ふーん。でも、それより、危ないよ。早く降りなさい」
 「ふん・・・確かに正しい。だが間違っている。」
 その矛盾した答えに、彼は戸惑う。
 彼がその答えの意味を考えていると、突然少女はそこから飛び降りた。
 「え、ちょっ!」
 彼は彼女を受け止めようと、着地するであろう所に駆け寄る。だがそれも無駄に終わり、彼女は羽ばたき、ふわりふわりと、ゆっくり舞い降りた。
 「・・・え・・・?」
 「危険ではあるが、私にはそうではない」
 彼女にライトを当て、照らす。そこでやっと、彼女がどのような生物かがわかった。
 彼女の腕は烏の漆黒に染まった翼のようで、彼女の足は烏の足のよう。身につけているのは山伏に似たもの。その少女はカラステングだった。彼女の瞳はルビーのように紅く、顔立ちは愛らしくて美しい。その彼女に、宮路は見惚れてしまった。
 「私はカラステングの京(みやこ)。お前は?」
 「僕は黒尾宮路。言うまでもなく、人間だよ、京さん」
 「さ、さん!?・・こほん!こんな夜に何をしている?危ないだろ、人間」
 「・・心配してくれるの?ありがとう」
 宮路は微笑み、まるで子供に接するかのような感じで、彼女の頭を撫でる。
 「――っ!!」
 すると彼女は、京は頬を真っ赤に染めて恥ずかしがっている。それでも、知ってか知らずか、気にせずに撫でる。
 「や、やめろぉ・・・」
 何か弱弱しく、恥ずかしそうに、上目遣いで、彼の顔を見て言う。今までそんな風に触れられたことがないのだろう。
 彼は彼女の頭から手を退けると、さっきまでの強気な表情と物言いに戻った。

 二人は歩き出し、宮路は帰宅、京は彼に付き合って、山林を下り始めた。
 「お、お前は、こんな時間まで、ここで何をしていたんだ?」
 「・・・そうだね・・探し物、かな」
 「さがしもの・・?それはいつのだ?」
 「手伝ってくれるの?」
 彼はまた微笑んで彼女の頭を撫でようとするが、彼女は後ずさりをしてそれを避ける。
 頬を染めて、やめろと言わんばかりの目つきで彼を睨み見る。
 何もないところに手を置き、そのまま下げる。
 「・・それは、失くしたわけじゃなくて、探したいだけ、と言うか・・・」
 「ものじゃないのか・・・では、生き物か?」
 「うん、そう。それはさ、命の恩人なんだ」
 「命の・・?」
 「そう、命の。彼女のおかげで、僕はこうして生きてる」
 彼は遠い記憶を探るような、視線を遠くに移し、自らの過去を語る。

 小さい頃に、川に落ちて、溺れたんだ。
 その原因は自分なんだけど。
 僕の母さんは、その少し前に死んでしまって、その形見を僕はいつも握り締めていた。それが突風で飛ばされて川に・・・。
 その形見を取ろうとして、溺れたんだ。
 僕は泳げたんだけど、靴とか服とか身につけていたから、泳げなくて。
 最初は頑張って岸まで泳ごうとしたんだけど、服が水を吸ってどんどん重くなっていって・・・。
 呼吸はしようともがいても、やっぱり水で重くなっていく。
 それからそうしてるのも疲れて、動けなくなって・・・。
 もう駄目だ、って思ったときに、空から飛んできて、助けてくれたんだ。
 ほとんど意識がなくて、朧気にしか思い出せないけど、気がついて目を開けたとき、彼女の顔が目の前にあって、すごく驚いた。その人は歳が僕とあまり変わらないくらいに見えたのに、すごく強くて、かっこよくて、綺麗だった。
 その人にお礼を言いたくてまた同じ場所に行っても、彼女は現れなくて・・・。
 朧気に見て、覚えてた姿を思い出して、本で調べたりして。
 それで初めてわかった。彼女は君と同じ、カラステングだって。

 「それから毎日、僕はここに来て、彼女を探してるんだ。お礼を言うために」
 それを聞き終える前に、彼女は歩みを止め、腕翼を口元の当てていた。
 「(覚えてた――――っ!!)」
 彼女は嬉しくて涙が零れ落ちそうになった。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「―――っもう」
 私はもう見てられなくて、溺れてしまった彼の体を腕翼で包み込み、片腕翼でバランスを取りながら飛び上がり、橋の下に運ぶ。
 彼の心臓に耳を当てる。よかった、まだ動いてる。でも気を失ってて、息をしてない。手首に指を当ててみると、脈拍があまりない。早く呼吸をさせないと!
 確かお母さんに習った、人工呼吸ってやつ。それで回復させられる。
 えっと、まず顎を上げて、口を開く。それから、鼻をつまんで、空気が漏れないように息を・・・。
 「ふー・・・・ふー・・・・」
 数回すると口元に耳を近づけて呼吸しているかを確かめる。
 ・・・まだ出来てない・・・。
 もう一度。
 「ふー・・・・ふー・・・・」
 ・・・まだ・・・。
 もう一度それをしようとすると、彼は突然意識を取り戻した。
 「・・・・・・・あ、れ・・?」
 「はぁ・・よかった。これからは気をつけてな」
 それを言うと、私は立ち上がり、飛び去った。

 それからも、私は彼を観察していた。
 だからいつもあの岸に彼が行っている事は知っていた。
 一時、そこに来ない時期があって、私が彼を探す事になった。
 その時に調べていたのか。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 「(覚えてた・・・私の事・・・)」
 その時彼の命を救ったそのカラステングこそが、彼女だった。しかし彼はカラステング、と言うところまでしかわかっていない。彼女がそうである、とはわかっていない。彼女もそれをわかっているが、それでも嬉しい。
 「・・・・・?」
 彼はいきなり彼女の顔を両手で優しく包み込み、彼女の顔をまじまじと見つめる。
 「え、あの、え・・?」
 彼女の目には涙が溜まったまま、頬はさっきよりもさらに赤くなり、戸惑い、混乱している。
 そんな事はお構いなしに、彼はまじまじと見つめ続ける。
 それから左手だけ、彼女の頬から動かし、滑るように彼女の首に移動した。
 「あ、あの・・・あの・・・・・・・」
 彼女の首を、指先でなぞるように、滑らせる。
 「んっ・・」
 それがくすぐったいのか、首を竦めて、小さく声を上げる。
 やがて彼が手を放すと、彼女は安心したような、寂しいような、そんな表情をした。
 「・・・あの時、君だったんだね。本当にありがとう」
 「・・・・・・・え・・?」
 なぜわかったのだろう。彼が彼女の顔に触れ、見て、首に触れただけで、それがわかった。
 「君の顔はあの時すごく近くで見たから、温度とか息遣いとか声とか、近くで感じたほうがよくわかる。それにその首の傷。覚えてるよ」
 「・・・・・・・・・・・・・・」
 京は自分の首筋にある、小さな刺され傷に触れ、なぞる。
 宮路が微笑むと、彼女は今まで想っていた相手に再び巡り合えたような、好意を寄せている相手を見つめるように、彼を見る。
 「よかった。やっと言えた」
 安心した宮路は、友人を抱きしめるが如く、彼女をギュッと抱き締めた。
 彼女はこれに、さらに耳まで赤くなり、湯気が出そうになる。そのうえ、パニックを起こし、しどろもどろしている。
 それに気づき、謝りながら、彼女を放す。
 放されると、また寂しそうな表情をしたが、すぐに凛々しい顔になり、強気な物言いに戻った。
 少し彼から離れ、距離を取る。
 「な、何をする!」
 「ごめんね。だって久しぶりに会えたから。ずっと、会いたかった」
 表情は微笑んでいるが、声は真剣で、告白のシーンのようにも見える。
 「ず、ずっと、って・・・えと、あの・・・え・・・・」
 その言葉を、そのまま、告白として受け取り、彼女は頬だけでなく、顔全体が赤くなった。
 彼がそのような思いを込めて言ったかどうかはわからない。だが彼の頬も、ほんのり赤みを帯びている。
 しかし、それから何を言うわけでも、何をするわけでもなく、彼は山林を下り、帰宅した。


 翌日、彼は珍しく、朝から山林に入っていた。
 「あ、お、お前・・・」
 京は彼を見るなり、顔を赤くして、恥ずかしいような、照れているような、表情をした。
 彼女は昨晩と同じように、木上にいた。が、昨日と違い、立っていた。
 「い、いつも、夕暮れからなのに、なぜこんな朝から・・・」
 「うん。今日は、京と一緒にいようかなって」
 「え・・・・!!!??」
 宮路は少しも恥じることなく、普通に言ってのけた。彼は意識してではなく、自然とその言葉を言ったのだ。
 それを聞いた彼女は彼とは逆に、恥ずかしさから、熱された鉄のように真っ赤になっている。
 「あはは・・・嫌、か。なら僕は・・・」
 彼は残念そうに笑い、引き返そうとしたが、彼女に止められた。
 「ううん。問題ない!あ・・こほん。べ、別にいたいなら、いてくれて、いぃ・・・」
 彼女の声は少しずつ小さくなっていって、最後のほうは聞き取りづらかった。
 でも確かに彼女からは許可を得た。彼はそれに喜び、彼女の側に、彼女が立っている木の幹に、もたれかかって、地面に座り込んでいた。

 それからほとんど何もせず、ただ、時々会話をしたくらい。
 それで夕暮れまでほとんどそのまま。
 「・・・お前、それで面白いのか?」
 「うん。面白い、とは違うけど。楽しいよ。木の葉が風で揺れる音、小鳥の囀り、蒸し暑くてもすごく涼しく感じる。京の声を聞いて、一緒にいるから」
 また告白紛いの言葉を発する。しかし今度は赤面することなく受け止める。
 「私も、楽しいぞ。あ、べ、別にお前といるからってわけじゃなくてだな・・・」
 「わかってるよ。気にしなくていい。僕が好きでやってるだけだから」
 「あ・・・う・・・・んん・・・・・」
 彼女は何か言おうとしたが、言えなかった。
 翼を羽ばたかせ、またゆっくりと舞い降りてきた。
 彼女は彼を見下ろす形で、彼は彼女を見上げる形で、それぞれが各々を見ている。
 「・・・お前、は・・私の事・・ど、どう、思ってるん、だ?」
 つっかえながらも彼女は彼の想いを確かめようとした。
 「どうして?」
 彼は普段通りに尋ねる。
 彼女は赤面の上に赤面を重ねている。
 それでも、彼女は問いに答えようとする。
 「そ、それ、は・・わ、たし、が・・・その・・・・・」
 しかし答えられない。恥ずかしくて無理、と言いたそうだ。
 とうとう顔を腕翼で覆い隠してしまう。
 「・・好きだよ」
 そんな時に彼からの突然の告白。
 それに驚き、すぐに動きが取れない。
 ゆっくり腕翼をずらし、彼の顔を見る。
 その顔は耳まで赤くし、怯えるような表情をしている。
 それに対し、彼はやっぱり平常心。装っているのではなくて、本心から、本当に平然としている。
 「ぇ、ぁの・・いま、なんて・・・・・・」
 「好きだよ。僕の率直な気持ち。京さんが大好きだ」
 真正面からの直接攻撃。それは彼女の心にクリティカルヒットの大ダメージを負わせた。
 「そ、そんな・・正面から・・・・・」 
 「・・君は僕の事、あんまり好意的に想ってないみたいだし」
 「そ、そんなこと・・・・」
 「いいよ。僕は一緒にいれるだけで満足だし・・。それじゃあ、そろそろ帰―――――」
 彼が立ち上がり、帰宅しようとすると、突然京が声を張った。
 「人の話を聞けぇ!」
 彼は驚き、目を見張った。動きを止め、彼女を見る。
 「お前は人の話を聞いていない!そういう態度はとってたかもしれないが、お前が嫌いだなんて一言も言ってない!」
 その怒りの勢いに、恥ずかしさと伝えたい事を乗せて、言う。
 「私もお前が好きなんだぁ!初めて会った時から、ずっと好きだ!大好きだぁ!!」
 やや怒鳴りつけるように、自分の想いを彼に伝える。
 それと一緒に、彼女は腕翼で器用に彼を抱きしめて、キスする。
 突然の行動に、彼は何も出来ず、されるがまま。
 京の舌が、宮路の唇を割って、彼の口に入り、舌を絡める。
 「ん、んふぅ・・・」
 彼女の勢いに負け、彼女に押し倒された形になり、彼は後ろに倒れる。
 彼女の腕翼が緩められ、その隙に彼は自身の腕を出し、彼女の肩を押す。
 「京、さん・・・何を・・・」
 「はぁ、はぁ、こうでもしないと、伝わらないだろう?」
 「だからって・・・・」
 「私たちは、基本的にこうだ。決して変ではない」
 彼は力負けし、また彼女にディープキスをされる。
 それを嫌がっているわけではない、むしろ歓迎しているが、でもなにか否定している。
 彼は力では勝てない。下にいる者よりも、上にいる者のほうが、重力の力が加わって、有利になる。だからその上下の力は使わないことにした。
 彼は転がるように力を横に使い、彼女を下にして、体勢を逆転させる。
 「な、なんだ?」
 「何でこんな事をする?」
 「いっただろう?これが本来の私だ。さぁ、私にお前をくれ・・・。私はお前に私をやる・・・」
 京は腕翼をうまく使って、徐に服を脱ぎ始めた。
 それを宮路は止めることが出来ず、ただ見ているしかない。その姿があまりにも妖艶で、美しく、色っぽくて、気品があって。思わず見惚れてしまった。
 彼女の上半身がすべて見えた。その姿もまた、美しくて、気品がある。
 上半身だけが裸になった彼女は、彼を誘うような表情を彼に見せる。頬をほんのりと染め、艶めかしい視線を送り、彼の首に腕翼をまわし、彼の顔を近寄せる。
 「んふふっ」
 彼女は口を開け、舌を出し、またディープキス。
 口を離すと、舌と舌が糸を引く。
 もう二人は、自らの欲を止められなくなっていた。
 「京・・・」
 今度は彼の方から、唇の唇で噛むように、キスをする。
 それから片手で体を支えながら、片方の手で彼女の胸を揉む。
 「んぁ・・あ、ふぁ・・・」
 彼女の喘ぎ声を聞いていて、彼もすっかりその気になり、もう何でもありだ。
 唇から口を離し、今度はそれを彼女の胸に。赤ん坊のように吸い、舐める。
 もう自分の体を支えず、完全に彼女に乗っかっている。
 片手で乳首をつまみ、くりくりと動かす。それと一緒に、乳首を軽く噛む。
 「あぁん!」
 それがとても気持ちよくて、大きな声を出してしまう。
 そのせいで気が付かなかったが、彼の空いている手は、彼女の秘所にたどり着いていた。
 指でそこをなぞり、上下に擦る。
 「あぁ、はぁん・・んんぅ・・み、やじぃ・・・」
 「みやこ・・・・気持ちいい・・?」
 「あぁ、ああ!気持ち、いぃ!よぉ・・!」
 彼女の秘所が下着越しにでもわかるくらいに、びしょびしょに濡れてきた。
 もう、我慢できない・・・。
 「京・・僕、そろそろ・・・」
 「・・うん・・私も、ほしい・・・」
 彼女の下着を、片足だけ脱がし、今度は自分の、ズボンも下着も脱ぐ。
 彼の股間には立派に大きくそそり立っている亀頭が。
 「すごい・・大きぃ・・・」
 それを見た京はつい言葉を漏らす。
 彼女の秘所に、彼の亀頭を宛がい、少し擦る。
 「んん!やぁ・・焦らさ、ないでぇ・・・」
 もう最初の強気もなく、ただ彼氏との性交を待ち望む少女だ。
 「・・入れるよ・・・・」
 腰を使って、秘所に亀頭を入れた。頭しか入っていないが、とても気持ちよさそう。
 どんどん入れていく。すると、何かに当たり、進行が止まった。
 「・・まさか・・・初めて・・?」
 「う、うるさぃ・・・」
 消えかかっている声で強がるが、どちらにしろ同じ。彼女は処女で、彼に奪われた。が、彼からも自分の童貞をささげている。
 少し力を入れ、思い切り突く。彼女の処女膜が破れ、血が流れ出る。
 「っ!」
 痛そうに声を上げ、それを聞き、進行を止める。
 「い、痛かった?きょ、今日はもう・・・」
 といい、それを秘所から抜き出そうとする。
 しかし彼女がそれを止める。
 「――いぃ・・・・抜か、ないでぇ・・・」
 「・・・京・・・」
 「もっと・・あなたを、感じたい・・・」
 その一言に、彼はさらに興奮し、亀頭が限界ギリギリまでさらに大きくなった。
 彼は完全に自分を止めることが出来なくなってしまった。
 そのまま勢いで、亀頭をすべて彼女の秘所に押し込む。
 声を上げようが、痛がろうが、関係ない、と。
 「んんん!ああぁぁ!」
 すべて入り、股間周辺がほぼ完全に密着する。
 「全部、入った・・・♡」
 「・・・・動くよ?」
 「・・うん・・・感じさせて・・・・」
 ゆっくり引き抜くと、彼女は声を上げてしまう。
 「あ、んあぁぁああ!」
 そして引き抜いた分、またゆっくり押し込む。
 「ふあぁぁああ・・ああん!」
 それから徐々にそのスピードが上がっていき、接触している部分がパンパンと音を出す。
 「ん!あ、んん!ふあ!あぁ!しゅ、ごいぃ!」
 「京、中、すごい、気持ちいい」
 「わ、たし、も!しゅご、い!気持ち、いいのぉ!」
 パンパンと股間周辺が鳴り、ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てている。 
 彼の亀頭が、彼女の子宮の口を突き、さらなる快感に、彼女は声が出て、止まらない。
 「激しいよぉ!しゅごいのぉ!」
 「ん!京、締めすぎ・・・」
 「らめぇ!もう、イきそうぅ!」
 「僕、も、イくぅ・・・外に、出すよ!」
 「ぁ、らめ!なか!なかにぃ!」
 彼女の足が彼の腰の部分を抑え、引き抜けないようにしてしまった。
 しかしこのままでは彼女の子宮内に出てしまう。
 それを悟ったように、彼女は答える。
 「わ、たし!あな、たの子を!孕、むからぁ!ちょう、だい!あなたの!せーし、ちょうだいぃ!」
 今度は首に腕翼をまわし、間近で互いの顔を見て、声を聞く。
 そのままキスをせがみ、触れる。
 「ん!んん!・・・っぱぁ!・・もう、イく、イくぅぅぅ!!」
 「僕も、イくよ!もう、出るぅ!」
 ビュル、ビュルビュル、と白濁とした液を京の子宮に注ぎ込む。
 あったかくて、出されているのが心地いい。
 それは彼女の中を暖めていく。
 「はぁ・・あったかい・・・宮路の、せーし・・すごい・・・ん!」
 「・・抜くよ?」
 彼は彼女の秘所から亀頭を抜き出そうとする。
 しかし、また彼女に止められた。
 「だめぇ・・もう少し、このまま・・・」
 抱き締めあい、触れるだけのキスをする。
 この二人はほぼ半裸以上真っ裸未満の状態で、いくら夏の夜だからといっても、少し肌寒い。こうして抱き合って、互いの体を温めあいたい。とそれだけではなく、もう少し触れていたい、というのもある。

 秘所から亀頭を抜き出すころには、もう真夜中になっていた。
 亀頭と一緒に中から白濁した液体がドロドロと出てくる。そして地面にボタボタと垂れ落ちてく。
 「あぁ・・・」
 「・・どうしたの?」
 服を直し、下着とズボンを履いていると、彼女が情けないような、残念そうな声を出す。それについて尋ねると、また彼を興奮させそうな答えが返された。
 「・・せっかくもらったあなたの精が私の中から出てしまった・・・」
 少し涙目になり、頬を赤くし、脱いだ服を戻している彼女は、とても儚げに見えた。
 やばい・・・。
 彼の亀頭がまた元気に大きくなりそうになった。
 彼女の頭に手を乗せ、優しく撫でる。
 「また、あげるから・・今日は・・・」
 その顔は彼女とは違う恥ずかしさからの赤面。これはもうまたヤろうと言っているようなものだ。
 「・・・うん・・・ありがとう」
 子供のようなあどけない笑顔。それを見て、彼は居ても立っても居られなくなり、抱きしめて、キスをした。
 「・・・みやじ・・・」
 「あ、ごめん・・・つい・・・」
 「・・ううん。宮路、大好き」
 今度は彼女の方から抱きつき、彼は頭を撫でる。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 その後、彼らは互いの住処を行き来するようになる。
 京は時折彼が住む安アパートに来るようになり、宮路は彼女が住む大木の洞に行くようになった。
 それぞれがそれぞれの住処で半同棲状態にある。さらに。
 「あ、おとうさん!」
 「かえってきた!」
 「いや、ここは僕の家ではないよ・・・。お母さんは?」
 「あっち」
 彼女らが指したのは、空。
 飛んでいる、という事だろうか?
 「みやじぃ!」
 上空に点のような飛行物が見えたと思ったら、いきなり何かが彼の胸目掛けて飛び込んできた。
 「み、京・・・熱烈歓迎、ありがとう・・・・今度からはもう少し何とかならない?」
 「え、あ、ごめん・・その、う、嬉しくて・・・」
 初恋か!とツッコみたい。
 二人は赤面し、頬を掻いていたり、俯いたりしている。
 「おかあさん!おとうさん帰ってきた!」
 洞の中にいた少女たちが飛び出し、彼女にくっつく。
 彼女らは二人の娘たちで、岬(みさき)、夕(ゆう)、楓(かえで)、栞(しおり)、柊(ひいらぎ)。この全員がカラステング。だが五つ子の姉妹なんて珍しい。彼女らは少し前、二年半ほど前に生まれたばかり。それでも、腕翼は生えていて、二、三年経てば飛び舞うことができるようになる、かも。
 彼女らは母である京の住処の洞に住んでいるので、「父が帰ってきた」と言う表現をしている。彼女らからすれば、単身赴任している父、のような感じだ。それでも月に二回以上は会っているが。
 「うん、そうだな。あ、そうだ。宮路、もう昼ごはんは食べたのか?」
 「いいや。まだだよ。ごちそうになろうかな」
 「た、たまには、作りに・・・」
 「・・うん。久しぶりに、頼むよ」
 彼らは子を抱き、歩き出す。
 彼が住むアパートまでの道はあまり人がいない。
 だから普通に彼女らが歩いていても、大丈夫。
 もし人がいたとしても、彼女らの正体が気づかれる事はあまりない。
 「ねぇ、もう家で一緒に暮らさない?」
 「うん、そうしたいよ?・・でも、この子達は自然の中で育てた方がいいの」
 二人は子供が出来ると、ほとんど会えない状況にある。
 彼は家賃を入れるために仕事をして、休みになれば会いに行く。そんな生活をしている。
 「あと、三年くらい。我慢して、ね?」
 「・・・うん。わかった。我慢する」
 そっと口付けをしようとしたが。
 「じぃーーーーーっ」
 視線を感じる。
 その視線の元は手元の子供たちだった。
 「・・・・・ねぇねぇ。ちゅーしないの?」
 「・・・また今度ね」
 「見ちゃいけません!」
 二人は赤面して、顔を会わせようとしない。

 やがて彼が住むアパートにつき、彼女は器用に調理を始める。
 「器用なものだ・・・」
 「すごいだろ?」
 「おかあさんすごい!」
 「いずれ出来るようになる」
 「あたしもてつだう!」
 「こらこら。邪魔しちゃ駄目だよ」
 彼女にまとわりつく子供らを両手で両脇からつかみ、引き剥がす。
 ちゃぶ台がある部屋に連れて行き、そこで遊ばせる。
 「ごめんね」
 「ううん。気にしないで」
 彼女らに気づかれないよう、そっとキスをする。
 「あなたと過ごす」「君と過ごす」『この時間が、ずっと続けばいいのに・・・』

終わり
12/02/18 20:45更新 / 理樹

■作者メッセージ
これが二作目になります、理樹です。
ちょっと強引かもしれないですけど、今回は前回投入に失敗してしまったエロ要素を入れてみました。
まぁ、終わりかたは同じで面白みはないですけど・・・。

呼んで頂き、ありがとうございました。
次は、ハッピーエンドではない物にチャレンジしてみようと思います!

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