連載小説
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叩きつけるような日の中


暑い日の中を歩く。鼻先を汗が垂れてゆく。フードに隠された顔すらも焼けてしまいそうな炎天下。
一歩一歩が億劫だ。しかしあるかねば街は見えず、ただただ歩く。

暑い日の中を歩く。ブーツの中身は鼻を覆いたくなるほど、蒸れて臭うだろう。白いマントとフードが灼熱の日光を弾き返すが、それでもなお、焼き石のような大地がしたから俺を焼く。

暑い中を歩く、暑い中を歩く。

やがて視界に映る陰

「見えた」

足が心なしか軽くなる。気力を出して、地を蹴る。蹴る。蹴る。
大股の早足気味で、遠方に見える巨大な巨大な城壁を目指した。

その足跡を、なぞるモノがひとつ



城壁を超えた途端に吹き付けてくる、街の熱気。商人が、戦士が、魔物か、ヒトすべての放つ熱気が、私の肌を焼き目を乾かせ、鼻の粘膜をピリピリとさせる。
たまらず私はすぐそばの酒場に飛び込んだ。

「はいいらっしゃい」

「とりあえず、冷えた水とメニューを」

恰幅の良い店主の目の前のカウンターにつく。店の魔道時計をみると、針は午後二時を指している。どうりで、人が少ない。この時間帯酒場にいるのは、休日を得た飲んだくれか、腕の悪い傭兵、そして私のような旅人だけだ。

「ほい水。旅人さん、この地方は始めてきたかい?暑いだろう」

「あぁ、んぐっ」

差し出された小さなコップの水を一気に流し込んだ。喉のどろどろが流されてゆく。

「ふぅ、生き返ったような心地だ……店主、ビールと、適当に腹にたまるモノを頼むよ」

「はいよ、ちょいと待っててな」

私の注文を聞いた店主はカウンターの奥に姿を隠した。
手持ち無沙汰な私は背負った『相棒』を担ぎおろし、傍にかけた。
店の中で刃を出すのは非常識だろうが、ずっと背負っているのも肩が凝る。それに、盗もうと思っても盗めまい。これでいい。

「あいよ、とりあえずビール一つ……うぉっ、旅人さん、背中に背負ってたのはそれかい?」

「ああ、旅のおともだ」

「あいや〜、立派な三日月斧だ」

カウンターから身を乗り出すようにして下向きの刃を見て店主は声を漏らした。それを尻目にビールを喉に流し込む。

「っーーー!うまい!」

およそ四日ぶりのアルコールだ。これがなきゃ世の中やっていけない。

「ははっ、その調子だとずいぶん暑さにやられたようだね」

「あぁ、この地方は暑すぎる。一年通してこの気候とは、ここの住人はずいぶんと通気性が良いのだな」

一気に半分ほど流し込んで少なくなった小金色の液をジョッキの中で弄ぶ。残りは料理と一緒にいただこう

「この時期は特に暑いからね。旅人さんも少ないのさ。あんた相当な変わり者だね」

「旅人なんて、大抵変わり者さ」

「ハハ、違いない」

そういった店主が踵を返し厨房へと向かう。誰かの注文ができたのだろう、わたしのならばありがたい。

ふと、店の戸が開く音がする。

「……」

振り返ってみれば、入り口には若草色の大きなマントに身を包んだ人物が立っていた。フードの隙間から見える柔らかな栗毛の長い髪から、女性であることが伺える。

「そこのもの」

顔をこちらに向けた、やはり女性が声を発する。対象は、おそらく私。

「わたしかな?」

「あぁ。その隣のバルディッシュ、あなたのものかな?」

隠れた視線から、真意は伺えない。

「あぁ、確かに私のものだ」

「黒塗りの柄、ワイバーンの紋章のついた鞘。間違いはないようだな」

女性の呟いた言葉に、気が逆立つ。

「ハイお待ちどうさん旅人さ……」

厨房から顔を出した店主が固まる

「店主、料金はここにおく、釣りはいらぬ。ここでは騒げぬだろう、外にでよう」

「いいだろう」

マントを深く被り、あっけに取られた店主を背に女を伴い外に出る。



日の照りつける中、人通りのない広い道路へたどり着いた。

「ここなら騒ぎにもならないだろう」

「そのようだな」

振り向けば、女はその若草色のマントに手をかけ、一気に脱ぎ捨てた

「我が名はシャーロット。シャーロット・クレイジア!教団の手先にして狂気の化身ヒノ・スティーヴン!我が同胞の仇取らせてもらうぞ!」

脱ぎ去ったマントの中から現れれたのは、長いサイドポニーのリザードマン。
腰に下げた二本の鞘、右手の盾、要所にプレートを装着した革鎧から、軽装の素早さを生かした戦いをするのだろう。

「ふむ、スジは通っている。確かに私はリザードマンの戦士を殺した,首を切り落とした。その報復というところだろう」

「そうだ!私の最高の友の生首掲げて城へ堂々入ってきた貴様には我が国の王より討伐指令がでた!」

「討伐……まるで獣のような扱いだな」

「黙れケダモノめ!」

シャーロットはこちらを強く睨み、片方の剣を引き抜いた。

「これ以上お前とと交える言葉は持たぬ、さあ構えろ!」

「……」

彼女の叫びの通り、私は背負っていた斧の柄を掴み、引き抜いた。その表紙に鞘にマントが引っかかり、脱ぎ去る形になる。

「っ……それが、処刑人スティーヴンの素顔か」

「噂になっているとは光栄だな」

果たして眼前のシャーロットに私はどう写っているだろうか

無精髭を生やした不潔な男か、焼け爛れた左目を見て醜いと思うか

はたまた、バルディッシュを片手で構える私をうつけものとみるか化け物とみるか


「いくぞ!!」

その尾を揺らし、飛びかかってきた
13/04/17 15:10更新 / バルディッシュ
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■作者メッセージ
まぁ、真面目な話バルディッシュと片手剣じゃ絶対バルディッシュ不利だけどね

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