読切小説
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あなたを溶かすその熱は
 あなたは気が付くと、凍えてしまいそうなくらい寒い雪山に一人で立っていました。
 どうしてあなたが雪山に一人でいるのかというのは、友人に山へ連れられて来たものの強い吹雪のせいでいつの間にかはぐれてしまったのかもしれないし、一人で雪山を探索していたら道に迷ってしまったのかもしれない。何か目的があって来ていたのかもしれないし、或いは気が付けばいつの間にかそこにいたのかもしれない。どちらにせよ、あなたが何処へ向かえばいいのか分からないことは、確かでした。

 勢いに衰えを見せない吹雪に、そして導となるものが何もなく、あなたは途方に暮れてしまっていた。先の見えない恐ろしさは、厚く着込んでいた服でも防ぐことはできない。どうしたものか悩んでいると、天啓のように声が聞こえてきました。

 ――前に、歩いてください。

 突然のことに、あなたは驚きました。誰かいるのかと、周囲をぐるりと見回してみましたが、吹雪は未だ強く、周囲が見えません。あまりの心細さに幻聴が聞こえたか、そう頭に浮かびましたが、

 ――前に、歩いてください。

 同じ言葉が、不自然なほどにはっきりと聞こえてきて、あなたはそれが空耳でも何でもないと分かりました。

 言われた通りに、あなたは上に積もった雪を押し退け、前へと踏み出しました。声が誰であるかは分かりません。言われたことが正しいのかも分かりません。けれども、あなたはここにいるのが自分一人ではないということに、安堵していました。

 ――右に、歩いてください。

 ――左に、歩いてください。

 声は何度もあなたに語り掛けてくれます。そのうち、色々なことに気づきました。言葉はあなたの後ろから来ていること。若い女の子であること。
 女の子であると気づいてしまうと、今度はどんな容姿なのかと興味が湧いてきます。たいへん可愛らしい声であったため、姿もそれ相応のものではという期待ももちろんありましたし、あわよくば仲良くなりたいという下心もあるのかもしれません。

 悶々とした気持ちを抱えながら歩いていると、少し雪で隠れていましたが、岩肌にぽっかりと穴が空いた空間を見つけました。中は入ってみると寒さはありますが、吹雪を浴びているよりは十分にマシなものです。リュックに入っていたランタンをつけてみましたが、洞窟の奥はその明かりでは届かないほどに深いようで、見ることはできませんでした。
 先を探索してみようか迷ったものの、あなたのお腹はぐう、と空腹の主張をしてきます。リュックには乾パンが入っていたので、あなたは自分の分と、それから今まで案内してくれた人の分を取り出しました。
 あなたは未だ洞窟の中に入ってくる気配のない彼女に呼びかけます。けれども、一向に入ってくる気配はなく、仕方なしに一人で味気ない食事をしました。
 食事を終えると、十分すぎるほどの疲労もあって、強い眠気が来ます。当然、寝袋も何もなしに寝てしまうのは危険です。ですが襲ってきた眠気に負けてしまったあなたは、遂には洞窟の壁にもたれかかるようにして、目を閉じてしまいました。




 甘い吐息のようなものが吹きかけられたような気がして、あなたは目を開きました。
 目に入ったのは、小柄な姿。全身を白い外套で覆っており、フードで顔を隠しているために目立った特徴は特にありません。唯一、フードを突き破って出た黒い角が印象的でした。
 白い外套はとても薄いもののようで、下にはあまり服を身に着けていないのか、その相手の身体はランタンの光によって、暗い洞窟に浮かび上がるようにして見えました。まるっこい腕や足に、小ぶりながらもふくらんだ胸。その女性的な曲線的なフォルムから、あなたは彼女が呼びかけてくれていた声の主であると判断しました。

 彼女はあなたに覆い被さっています。彼女と密着した部分は、服越しであるのに温かく、ずっと身を任せていたくなるほどに心地がよいものでした。
 寝てしまっても凍えずに済んだのは彼女のお蔭だ。そう心に湧き上がり、感謝の言葉を紡ごうとあなたが口を開くと、それを待っていたかのように、彼女はその中に、舌を潜り込ませてきました。
 面食らってしまったあなたは、されるがままに口全体をくまなく、嬲るように、犯すように、蹂躙されていきます。
 右の奥歯から左の奥歯を舐められ、舌をしゃぶり尽くされ、擦られ。じゅぷじゅぷと口内で水っぽく鳴る音は、あなたの脳内にまで浸食されていく錯覚を与え、酩酊感のようなそれに軽い眩暈を覚えてしまいます。

 ようやく口を離して解放されたとき、恋人同士がするような濃厚なキスを終えたあなたの心臓は、バクバクと、破裂しそうなほど脈を打っていました。

 それでも、まだあなたは一線を越えてしまうほどではありませんでした。突然のことで気が動転していたというのも、あるのかもしれません。
 しかし、彼女が口を離した時、揺れたフードの中、ほんの僅かだけ出た彼女の紫に輝く瞳を見た瞬間――まるで沸騰しそうなほど、彼女と密着していたとき以上の激しい熱が、全身を焼いていました。

 その熱は股の間に溜まり、膨張し、あなたのズボンをテントのように盛り上げていました。それは圧し掛かっていた彼女にも直ぐにばれてしまいます。まだ幼い彼女に勃起してしまったことを知られ、またフードで顔が見えないのに目の前の彼女に笑われてしまったような気もして、羞恥心があなたの顔を焼きます。
 
 しかし彼女は驚いた様子も、拒絶する様子も見せず、あなたのそのいきり勃ったモノを、服越しに撫でました。柔らかく、強く、早く、遅く。緩急つけたそれに、あなたはイッてしまいそうになるのを、すんでのところで留められてしまいます。
 早くイッてしまいたい。その一心で、あなたは頭がおかしくなりそうでした。

 そんなとき、

「もう服なんて必要ない、そう思いませんか?」

 彼女にそう問われ、あなたはどうしてこんなにも熱いのに服を着ているのかと気づき、あなたは立ち、服を躊躇なく脱ぎ捨てます。

 そう言った彼女も、外套を脱ぎ捨てていました。外套の下には何も着ておらず、銀狼のような毛が股の間と胸を僅かに隠しているだけで、それが却ってほんのり赤くなった白い素肌の生々しさを引き立て、あなたの劣情を誘いました。
 そしてあなたの手は彼女の温かい手に包み込まれ、秘部へと誘導されます。何か粘度の高い液体を触れた感覚。くちゅり、と音を立てて抵抗なしに奥に沈み込む感覚。

「あなたは私と繋がりたい。一つになりたい。違いますか?」

 あなたが思い描いたよりも一層可愛らしいその顔を紅潮させ、甘く蕩けさせて、あなたは彼女に問われます。あなたの返事は、決まっていました。

 既に準備の出来ていたソコに、正面からあなたは自身の一物で貫きます。彼女の膣内は入れた時には歓迎するように愛液をたらし銜え込みました。しかし出るとき、引き留めるように内のヒダが、脈動するように締め付け絡みつく全体が襲い掛かり、暴発寸前のソレは抜いたと同時に精を吐き出してしまいました。
 勢いよく飛んだ液体は彼女の腹や顔の上にも降り注ぎました。それを彼女は嫌がる素振りは微塵も見せず、更にその雪のように白い指で一掬いし、ぺろ、と舐めて口に入れ、ごくり、と喉を鳴らし、嚥下しました。
 そしてゾクゾクッと身を震わせ、自分の身体を抱き締め快感を堪える彼女に、益々あなたは正気を抉り取られてしまいます。彼女の腰を掴んで持ち上げ、足をつかせない状態のまま、萎える事のない一物で串刺しにしました。奥の奥まで貫かれた快楽で足をぴんと伸ばし震える彼女に、あなたは休みを与えることなく先程の仕返しとばかりに執拗に責め続けます。
 一度出した後、次に後座位に体位を移します。コンコンと、ドアをノックするように、降りてきた子宮を繰り返し執拗に責め、孕ませると言わんばかりに、あなたは特濃の精液を膣内に再びぶちまけました。
 一度や二度の射精では足りない。目の前の彼女の犯すことだけことで頭がいっぱいなあなたは、それから十数度の行為を行い、互いに気絶してしまうまでそれは終わりませんでした。




 目が覚めると、洞窟の外の吹雪は止んでいました。隣には、昨日あなたが穴と言う穴を犯しつくした彼女が、すやすやと心地よさげな寝息をたてています。
 今更ながらに、あなたは彼女が人間ではないことに気づきました。

 あなたは彼女を無視して一人で下山してもいいし、彼女が起きるまで待ってもいい。
 とはいっても、選択肢なんてあなたには無いに等しかったのです。互いに裸のまま抱きしめれば、触れた部分は柔らかく、愛おしい温かさで満たされていきます。

 気づけば、彼女はこちらをその紫の蠱惑的な目で、じっとあなたを見つめていました。
 
「あなたは私とずっと一緒にいたい。……違いますか?」

 あなたの返事は、勿論決まっていました。
15/07/01 08:32更新 / 鍛田ウーン

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