連載小説
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君が魔物になっても
「アレク、ごはんできたよー!」
「ん、いま行く」

畑を耕す手を止め、窓から掛けられた声に言葉を返す。
気づけば空も赤く染まり始めていて、仕事を切り上げるのにも丁度いい頃合いだ。
服についた汚れをはたきつつ家に入ると、親友であり同居人のハルが迎えてくれた。

「お疲れさま。うわ、すごい汗……お風呂も用意しておいたけど先に入る?」
「あぁ、ありがとう」

俺より頭ひとつ低い背、色素の薄い金髪と白い肌、同い年とは思えないほどに華奢な体躯。
直前まで料理をしていたためか、薄手の長袖シャツとズボンの上にエプロンを着けたままだ。

「洗濯ものは汚れひどいの分けといてね、別に洗うから」
「わかった、いつも世話をかけるな」
「ううん、嫌いじゃないから。こういうの」

できるだけ短時間で汗を流して居室に戻ると、机には料理の盛られた皿が2人分並べられていた。
お互いに向き合って席につく。

「「いただきます」」

芋、野菜、少しの干し肉……いつも通りの質素な食卓。しかしハルが丁寧に作ってくれたことは味でわかった。

「畑の方はどう?」
「相変わらずだな、水はけも悪いしミミズ一匹いやしない」

この辺りは地図の上では教団領に属するとはいえ、かなりの僻地だ。それが理由かは知らないが、とにかく土が痩せていた。
豊かな土地には精霊がいるらしいが、その影すら見たことがない。

「ボクがもう少し手伝えればいいんだけど……」
「いいって。その分家の事は任せてるだろ」

そんな土地に生まれたせいか、2人ともあまり良い境遇とはいえなかった。
ハルとはもともと隣同士の家に住んでいたのだが、数年前に流行り病で互いの親を失った。
誰もが貧しいこの村には、助けてくれる人などいない。
くわえてハルは生まれつき身体が弱く、1人で生活することも難しかった。もちろん俺も、やっていける自信はない。
だから身寄りのない者同士、一緒に暮らすことにしたのだった。
家の中のことはハルに任せ、俺は外に出る仕事を受け持っている。
村からはほとんどいない者扱いだが、それでもなんとか生活は維持できているだけマシだろう。

「「ごちそうさま」」

食事をおえて洗い物をするハル。俺も手伝おうとするのだが、

「アレクはずっと外にいたんだから、ちゃんと休んでて」

と制されてしまう。
代わりにできることは……と探すのものの、家の中は掃除も行き届いててやることがない。
休むのも気が引けるので、水音が止むまで椅子に座りながらハルの姿を眺めていた。

それから就寝までは、短いながらも自由時間だ。
他愛もない会話だったり、遊んだり……一番落ち着く時間。
ちなみにハルは頭がいいので、ゲームをやると9割俺が負ける。残りの1割は運。

「アレクはどこか行ってみたい場所とかある?」
「今は畑の手入れで一杯だから、思いつかないな。ハルは?」
「ボクは図書館に行ってみたいなぁ……。ここだと手に入らない本も沢山あるはずだし」

外にあまり出られないのもあって、ハルは空いた時間でいつも本を読んでいる。家に残っていたものや安く売っていた古本しかないのだが、料理もそうやって覚えたらしい。
ゆったりとした時間を過ごしていると、周囲は完全に夜になる。

「ふわ……そろそろ寝よっか。おやすみ、アレク」
「あぁ、おやすみ」

2つ並んだベッドへ横に成り、いつも通りの一日が終わる。
恵まれてるとは言い難いが、ハルと過ごす時間はとても満ち足りている。
多くは望まない、2人でこのまま過ごしていければ……。
そんなことを思いながら眠りにつくのだった。




願いも空しく、日々はあっけなく壊れた。
きっかけは教団の兵士とおぼしき一群が村にやってきた事だった。どうやら、この先にある魔界へと進軍する計画らしい。
日々を生きるのでやっとな俺たちにとって、魔族と教団の勢力争いはどうでもいいことだったのだが……。
ここから先の土地に詳しい者がいないため、魔界までの案内役をつけろと要求してきたのだ。
数日で済むという話だったが、魔界へと続くそこは「行けば帰ってこれなくなる」と言い伝えられている地域だ。少なくともここ一帯の住民は踏み入りすらしないし、戻ってこれる保障はまったくない。

「教団の庇護下にあるのだから、喜んで協力するのが民の義務である!」

などと高慢な態度で色々のたまう隊長らしき男。無茶苦茶な要求なのは明らかなのだが、一応は教団の支配下にある村に拒否権はなかった。
……そして誰も行きたくなどないからこそ、押し付けるように身寄りのない俺たちがやり玉にあげられた。
どちらかが案内役になれ、と。

(……くそっ!)

あまりにも唐突な理不尽に、唇を噛みしめながら考える。
いっそのこと逃げ出そうか、いや捕まればより酷い目に遭うだけだ。仮に抜け出せたとしてどこで生きていける?
しかし案内役を引き受けるということは――

「ボクが行くよ。力仕事はアレクじゃないとできないでしょ」

逡巡する俺に、落ち着いた口調で語り掛けるハル。何か言い返したくて口を開くが、言葉は出てこなかった。
分かっていたのだ、どちらかを選ぶならハルになることぐらい。
もし俺が行ったとして、帰ってこれなければ……ハル1人で生きていくのは難しい。

「ボクがいない間は畑の管理と、掃除もちゃんとやっておいてね。アレク、すぐ部屋を散らかしちゃうんだから」

諦めにもにた微笑みを前に、止める事はできなくて。
兵団に混じり遠ざかっていくハルの姿を眺めながら、ただ無事を願うことしかできなかった。


翌日、兵団は帰還した。……8割ほど人数を減らして。
後から知ったが進軍の情報が漏れていたらしく、魔界に入る手前で魔物たちに迎撃されたらしい。
潰走というべきありさまだった。
仰々しく腰に提げていた剣を失った者、鎧を脱ぎ捨てたのかインナーのみの奴もいる。
ただ、行きの偉ぶった態度との変わりようを滑稽だと笑う余裕はなかった。
どこをみてもハルの姿がないのだ。全身から血の気が引いていく。

「おい!」

思わず最後尾にいた兵士に駆け寄って肩を掴み、睨みつける。

「この村から連れて行った案内役はどうした!」

こちらの血相にそいつは一瞬たじろいだものの、ヤケになっていたのか逆ギレ気味に怒鳴り返した。

「知るか!俺より後ろはみんな魔物に捕まっちまったよ!」

一瞬で頭が真っ白になった。その言葉の意味を理解したくない。
呆然と立ち尽くす俺の腕を振り払い、舌打ちしつつ去っていく兵士。残された俺の前には、誰もいない道があるだけだ。
ハルはもう帰ってこない。
現実を認識した途端にフッと身体の力が抜け、ガクリと膝をついた。

それから数日は、どう過ごしたかよく覚えていない。
最低限の食事と仕事をしつつ、ほとんどの時間をベッドの上で横になっていた気がする。
フラリと外に出ては誰か戻ってくるんじゃないかと魔界側の道を眺めたりするが、人影ひとつ現れることはなかった。
生きていてほしいという希望を持ちつつも、誰も帰ってこない現実の前に信じきることもできず。
抜け殻のような状態で日が過ぎていった。



「魔物が来るぞ!」

そんな声を聞いたのは、一週間ほど経った日暮れのことだった。
こちらが進軍したことへの意趣返しで宣戦布告があったらしい。対象は、この村。
教団が勝手にやったことだが、そんな事情は魔物側にとっては関係ないだろう。
そして大敗した教団側が太刀打ちできるわけもなく、迎撃する様子もない。もう俺たちのことを見捨て、村ごと明け渡すつもりのようだった。
家に引き籠ろうとする者、猟銃や農具を持って追い払おうと通りへ向かう者、逃げようと荷物をまとめる者。混乱と動揺の声があちこちから聞こえてくる。
……ただ、俺はなにもしなかった。教団の兵士たちが敗走するような相手に、村人が何をしたって無駄だ。あっちが占領する気なら、赤子の手をひねるようにやられて終わりだろう。それに、命を賭けて守りたいものもない。
どこか破滅的な思考と諦めに満たされ、ぼんやりと座っていた。
ダラダラ生きたところで意味なんてない。もう未練なんて――

(…………)

ふと、ハルの顔が脳裏に浮かぶ。
もしかしたら、本当にもしかしたらだが……捕まったハルの行方を知ってる奴がいるかもしれない。そんな考えが頭に浮かんだ。
望みはとても低いだろう、それでも僅かにみえた可能性は俺の身体をつき動かした。ベッドから跳ね起きて一番丈夫そうな服に着替える。
俺自身が捕まってもいい、どうせ占領されるなら同じことだ。
さっきまでの無気力とは打って変わって、自分でも驚くほどの勢いで家を飛び出した。

まずは状況を把握しないといけない。そう考えて近くの丘に向かった。
日が沈み薄暗くなった一帯、まだ魔物の姿は見えない。迎え撃とうと魔界側の通りへと出ていった村人たち以外は家に閉じこもったようで、静まり返った通りは嵐の前の静けさのように思える。
わずかに冷えた風を感じながら、遠くの景色に動きがないか目を凝らす。もう少しで魔物の集団が見えてくるはずだ。
指揮官らしき奴がいれば真っ先に走り寄ろうか、それとも兵士に捕虜でいいから連れて行けと要求した方が成功するのだろうか。そもそも魔物たちは話が通じる存在なのか?
頭を必死に回転させながら軍勢を探し続ける。

「……ク」
「?」

ふと、どこか遠くから声が聞こえたような気がした。きょろきょろと見回すが、人影はどこにもない。

「……レ……ク」

今度はわずかに大きくなった声。
微妙に上の方から聞こえるようで首を上げると、夕焼けから夜に変わろうとする紫がかった空の中に、黒い影がひとつ浮かんでいた。
鳥のようなシルエットのそれは、見つめている間にも徐々に大きく……いや、一直線にこっちに向かってきている。

「アーレークー!」
「え……うわっ!?」

目の前で急ブレーキを掛けた影は、余った勢いで俺に抱きついてくる。受け止めきれず、そのまま一緒に草の上に倒れこんだ。

「よかった、まだ無事だった……!」

何が起きたのか掴みきれてない俺の耳もとで、聞き慣れた声がする。
仰向けになった俺の上に、抱きつくようにして乗った誰か。
上体を起こすと声の主と目が合い、その顔をみて心臓が止まりそうになる。

「ハ……ル……?」
「うん!」

ニコニコと笑顔で答える、行方不明になったはずの親友。
夢じゃないかと思いたくなるが、抱きつかれた身体に感じる暖かく柔らかな感触は紛れもなく現実のもので。
思考も肉体もフリーズして訳がわからない。
パニック寸前の頭で、まっさきに浮かんだ疑問を口に出す。

ムニュ
「何で……女になってんだよ」

俺の胸元には、抱きついたために押しつけられた膨らみがあった。


動揺は治まらないが、村の誰かに見つかって騒ぎになってはたまらない。とにかく家に戻ることにした。

「久しぶりの家だ〜♪」

まだ困惑してる俺とは対照的に、とても上機嫌そうなハル。
そのままキョロキョロと部屋を見渡して、

「ちゃんと掃除してくれてたんだね」

ニコリと俺に向かって微笑んだ。いつもと変わらない柔和な表情。
容姿が変わっても、目の前に立っているのがハルであることは疑いようもなかった。
向かい合って座り、用意した水を一口飲んで精神を落ち着かせてから本題に入る。

「それで、何があったんだよ」

とにかく、そこを確認しないと始まらない。分からないことが多すぎる。

「教団の兵士と魔界に向かって……一緒に襲われたんだよな?」
「うん、ボクも捕まって連れて行かれたんだ」
「どこに?」
「レスカティエのサルバリシオン」
「ぶっ!?」

飲もうとした水を噴き出してしまった。人間と魔物の歴史の上でトップクラスに有名な、とくに教団からすれば忘れたくても忘れられない名前。

「おま、あそこは魔界に飲まれた大都市じゃないか!」
「だからボクこうなったんだよ?」

ハルは胸を見せつけるように両腕を軽く開く。プルンと揺れる双丘はどうみても作り物じゃなく、血の通った身体そのものだ。声も元から中性的だったが、今は甘い艶のような響きもある。
そして、変わったのは性別だけではなかった。

「ボクは珍しいケースで、アルプっていう魔物なんだって」

ハルの言う通り、女性である以上の変化が身体の各部位に起きていた。
髪を押しのけるように左右に伸びつつエルフのように尖った耳と、人外であることを象徴するように側頭部の後方から生えた一対のツノ。背中からは夜空のような色の羽が顔を覗かせ、その下でハート型の尻尾がゆらゆらと揺れている。
女が魔に染まる言い伝えはいくつか知っているが、魔物に誑かされた男は捕まってしまうのがオチで、魔物になるなど聞いた事もない。

「心まで変わるわけじゃないんだな」
「全然ないよ、むしろ身体の方は人間のときよりも元気だし」

羽や角を除けば、その姿は普通の人間と大差ない。それにハルの言う通り、肌の色は以前より血色がいいようにみえる。
華奢な体躯であることに変わりはないのだが、その輪郭はどこか柔らかくピッチリとした服がそれを強調している。
もとから細かった腰まわりはさらに細く、男のものではない括れができていた。
尻から太ももにかけても柔らかそうな肉がついて、どこからみても女性の身体つきだ。
中でも薄い胸板についているとは思えないサイズの胸。そのボリュームを強調するように上乳が丸出しになっている。
何でこんな見せつけるような服になってるんだ……?

「そんなに見つめられると、ちょっと恥ずかしいかな」
「す、すまん」

顔を赤らめるハルから視線を逸らしつつ話を進める。

「魔物から人間に……元に戻れたりはしないのか?」
「無理みたい。慣れると人間の姿に擬態はできるらしいんだけどね」
「そうか……」

教団の連中のように魔物への嫌悪感は抱いていないが、親友が存在に変わったと言われると複雑な心境になる。
ただ感傷に浸る余裕は俺にはない、これから魔界からの進軍が始まるのだ。

「魔物が襲って来る直前に戻ってこれたのは何でだ?」
「……」

俺の問いかけにハルはすっと真顔に戻り、窓からまだ静かな外を眺めつつ、ゆっくりと口を開く。

「侵略って、魔物の婿探しも兼ねてるんだよね。男の人を見つけて、無理やりにでも犯して、お婿さんにしちゃうの」
「婿……取って食うわけじゃないのか?」
「うん、性的には食べられちゃうけどね」

魔物が人を襲う理由を初めて知ったが、そんな目的があったのか。
取って食うわけではないという安堵と、見たこともない魔物と一生を共にさせられる、という恐ろしさが同時にやってくる。

「アレクが知らない人……魔物に捕まって、婿にされちゃうのがイヤだったから飛んできちゃった」

実際、文字通り飛んできてくれたわけだ。背中から生えた黒い羽が呼吸に合わせてゆっくりと動いている。

「相手のいる男の人を奪う魔物は少ないからね。ボクが来たから、もう大丈夫だよ」

えへんと胸を張り、ハルの双丘がフルフルと揺れる。
さっきから、ハルの身体に自然と視線が吸い寄せられてしまう。

「……と、とにかく、その侵略を乗り切ろう、頼む」
「うん、まかせて!」

今まで見たことのない、自信に満ちた笑顔だった。


ほどなくして、真夜中に魔物たちの侵略が始まった。
家にこもっていても聞こえる男たちの叫び声、余裕のある女性のような声。戦っているような音はほとんど聞こえず、一方的に村へ侵入されたことは見なくともわかった。
戦場に立つ魔物の多くは未婚者らしい。ある程度は目的をもって動くのけれども、欲望のまま男を求めて家々を探し始めるはず……なんだとか。
しばらくは2人で静かに座っていたのだが、ハルの尻尾がピクリと動く。

「来たよ」

ハルが俺を抱き寄せる。魔物から顔が見えないようにしているのだ。
顔をみて一目惚れ……というパターンさえ潰せば、相手がいることを知った魔物たちはほぼ諦めるらしい。

ムニュリ
「っ!?」

ただ魔物になったとはいえ華奢なハルの身体で俺を隠そうとした結果、思いっきり胸に顔を埋めることになった。
反応する余裕もないまま、カラカラと窓の開く音がする。

「美味しそうな精の匂いが……あら?」

異質な気配と共に艶めいた女の声が部屋に響く。俺のことを嗅ぎつけてやってきた魔物なのは明白だった。
姿はハルの胸に視界を遮られて姿をみることはできない。その方が都合がいいので仕方ないのだが、こういう状況でなければ顔を見てみたいと思うくらいには綺麗な声をしている。
一拍おいて声の主の気配が止まる。俺と抱きついてるハルを見つけたらしい。

「いいところなんだけど帰ってくれるかな?」

頭の上から魔物へと向けられたハルの声がする。
今まで聞いた事がない、氷のように冷たい声音。

「なーんだ、もうデキてるのね」

魔物は興味をなくしたらしく、気配はそのまま遠ざかっていった。
完全に去るまで2人ともじっと動かず、体勢を保ち続ける。

「もう大丈夫だよ」
「……ぷはっ」

数十秒して、ハルの細い腕が解かれる。
解放され、大きく空気を吸う俺。途中から酸欠気味だったのは黙っておこう。

「……ありがとな、ハル」
「どういたしまして」

もし1人だったら、あの魔物に襲われていたかもしれないのだ。
乗り切れた安堵と、ハルの笑顔を前にして。
そんな怖い声を出せたんだな、とは言えなかった。


その後も何度か魔物はやって来たが、みんなハルが追い払ってくれた。
気づけば辺りは静かになり、ときおり甘い嬌声や男のくぐもった声が漏れるのみになっていた。
村の制圧とともに、男探しも一通りの探索が終わったらしい。

「相手を見つけられなかった魔物たちは、魔界に帰るんじゃないかな」

もう安心だよ、と窓から外の様子を確認して微笑むハル。
その姿をみているうち、急場をしのげた安堵とは別の感情が湧き上がってくる。

「ハル、ちょっといいか」
「なぁに?……うわっ!?」

衝動のまま、その細い身体を思いっきり抱きしめた。
落ち着いたからなのか、さっきまでは抑えられていた気持ちが溢れだし、本音がこぼれる。

「帰ってきてくれて、本当によかった……!」
「……うん。ただいま」

2人だけの時間が戻ってきて、静かにゆったりと流れていく。
泣きそうになっている俺を、ハルは優しく抱き返してくれた。


ずっとそのままでいたいくらいだったが、緊張の糸が切れたのか全身が鉛のように重い。
色んなことがありすぎて、心身が限界を迎えつつあった。

「今日は寝よう、流石に疲れた」
「あっ……そっか、そうだね」

そっと腕を離すと、どこか浮かない表情を浮かべるハル。やっぱり疲れたんだろうか?

「ハルも飛んできて大変だったろ? ゆっくり休めよ」

万が一にも失礼なことにならないよう、背中を向けて横になる。
目をつむった途端、どっと睡魔が押し寄せてきた。

「アレクは優しいよね、本当に」

わずかに寂しさの混じったハルの呟きを、眠りかけていた俺は聞き逃していた。




村は一晩で占領された。
翌朝、村の皆が広場に集められ、侵略部隊のリーダーらしきサキュバスからこの一帯を親魔物領とすること、徐々に魔界へと変わっていくことが告げられた。
そして最後に

「自由にヤってね♪」

と言って締めた。

「これで終わりか? 税とかルールの説明は?」
「とくにないよ、魔物たちはみんなエッチなことに夢中だし」

ハルに聞いてみたところ当たり前のように即答され、唖然としてしまう。
魔物の姿になったとはいえハルが戻ってきて、村での生活もこれまで通り行える……これではむしろ国や教団から解放された得の方が大きいのでは?そんな考えすら浮かんでくる。
あまりにもあっけなく、現実感のない占領だった。


「歩きにくくないか?」
「全然、とっても楽しいよ♪」

広場から離れた俺たちは村の様子を見て回ることにした。カップルにみえるよう、腕を組みながら。
周りを見回すとサキュバスだけじゃなく、下半身がヘビのラミアや触手を身に纏わせたローパーなど、様々な種類の魔物がいた。黒い甲冑を身にまとった騎士のような出で立ちの女性もいて人間か判断に迷うこともあったが、頭を下げた途端に首が落ちたのでデュラハンだとわかった。
みな総じて女性で、胸と股間だけを隠したかのような露出の多い服ばかりだ。
複数の魔物が1人の男を取り囲んでいるグループも見かけた。ベッタリとくっつく魔物たちと困惑している男。その内の1人には男の妻の面影があった。
すでに押し倒され、外だというのにヤっている奴らもいる。閉めきられた家の窓からは、くぐもった嬌声が漏れ聞こえてくる。
ある程度は今まで通りらしいが、性に関しては常識が通用しそうになかった。
見ているこちらまで変な気分になってくる。

「ねぇ、ボクたちもさ……」
「っ!?」

唐突に、ハルが腕に寄りかかった。柔らかな胸がたわみながら二の腕に押し付けられ、イヤでも意識してしまう。
一瞬、このまま流れに任せてしまおうという甘い思考が頭をもたげる。

「っ!」

理性を総動員して歯を食いしばり、そっと腕を抜く。

「畑行ってくる」
「あ……うん、気をつけてね」

ハルと距離を取るように、自分の畑へと歩き出す。
助けてくれた相手に、何をするつもりだった?落ち着け、いつも通りにしろ。
一瞬でも親友に発情しかけた自分を叱りつけ、その後も邪な気持ちを振り払うように鍬を振り続けた。
認めたくなかったのだ。親友に発情して、股間を固くしていた……だなんて。




「……ふぅ」

いつものように日が暮れるまで畑仕事を続け、家に戻る。
何時間も身体を動かし続けたお陰か、湧き上がりそうだった性欲は治まっていた。
冷静さを取り戻し、落ち着いた精神で家の戸を開ける。

「おかえりー♪」
「なっ!?」

出迎えてくれたハルをみて、言葉を失った。
いつものエプロン、それは変わらない。しかし問題はその内側で……服を着ていなかったのだ。
つまりは裸エプロン。必死に培ってきた冷静さは、一瞬にして吹き飛んだ。
外から見えないように慌てて戸を閉め、両肩を掴みながら部屋まで連れていく。

「なっ、どうしてお前こんな……」
「アレクが喜んでくれるかなーって」

言葉に詰まっていると、不安そうな顔でこちらを見上げきた。

「迷惑……だった?ボク、女の子として魅力的じゃないかな?」
「違う、違うんだ……」

呻くように額に手をやる。
抑えつけていた言葉が、喉からこぼれ出る。

「俺はっ、もうお前に無理をさせたくない!」
「アレク……?」

魔界に向かうハルを見送ったあの日から、澱のように溜まっていた感情が噴き出していく。

「教団に連れて行かれて、魔物にまでなって……!」

俺は何もできないまま、ハルにばかり負担を掛けることになってしまった。

「それでもハルは俺といてくれるし、それは嬉しいんだけど……」

帰ってきてから、どこかこれまでとは違う気がするのだ。同居人以上の関係というか、一線を超えそうになる。

「そういう格好はやっぱり、好きな人を相手にすることで――」

あまりにも刺激的な姿を直視できず、目を逸らしながら話す。
いっときの欲望で、ハルとの関係を壊したくない。

「俺のことはいいから、ハルの好きなように生きてほしい」

たどたどしく感情を吐き出して、うつむく。
しばらく場を満たした沈黙を破ったのはハルだった。

「……バカ」

間近にいて聞き取れないくらいの小さな呟き。
顔を上げると、涙をためたハルの瞳があった。

「バカ」

今度はハッキリと、涙目のまま俺を睨みつけながら。

「アレクのバカァ!」

ハルの手が軽い音を立てて俺の胸にぶつけられる。

「ボクは、アレクが好きなの!だからサキュバスになったの!」

涙まじりの告白。
固まりかける俺に、さらに言葉を畳みかけていく。

「アレクにだったら何されてもいい!メチャクチャにしていいの!だから誘ってるの!いい加減わかってよ鈍感アレク!」

ボロボロと大粒の涙をこぼしながら、駄々をこねる子供のように胸を叩く。
叩かれる衝撃とは別に、ドクドクと心臓が脈打つ。

「他の人に、こんなことしないよ……」

崩れるように俺の胸に顔をうずめ、嗚咽を漏らすハル。
自分はとんでもない勘違いをしていたことを、今さら理解した。

「……ごめん」

俺は、ハルの本心からのアプローチを無碍にしていたのだ。

「気づけなくて、苦しい思いさせてごめんな」

自分を殴ってしまいたくなるが、反省は後からでもできる。
まだ動揺してる、上手い言葉も浮かんでこない。でも今は黙っているのが一番ダメだ。
ここで何もできないのは、それこそ男失格だと思った。

「一回だけ、チャンスをくれないか。ちゃんと伝えるから」
「……ん」

下から響く、まだ少し涙まじりの声。
華奢な身体をそっと抱きしめ、言葉を探しながら口を開く。

「ハルがいなくなって、心に穴が空いたみたいで……」

うまく表現できない、もう少し本でも読んでおくべきだった。
それでも自分の心に正直に言葉を紡いでいく。

「戻ってきてくれたとき、ものすごく嬉しくて。でもそれだけじゃなく――」

一拍おいて、自分の性欲を肯定する。

「他の魔物を見ても平気なのに……自分でも不思議なくらい、ハルに興奮してた」

最後の言葉にピクリとハルの身体が反応する。

「すごく魅力的で、綺麗で……でも親友に手を出したら傷つくんじゃないかって、勝手にダメなことだと思い込んでて」

でも、ハルはそれを望んでいたわけで。じゃあ俺は何を我慢していたんだろう?
……あぁ、簡単なことだったんだ。

「恋とかよく分からないまま生きてきたけど――」

言葉にするたび、自分がずっと抱えていた感情が形になっていく。
両肩を優しく掴みながら腕ひとつ分の距離をとり、じっと瞳をみつめる。
これからもずっと一緒にいたい。
男だろうと女だろうと、魔物になっても関係ない。

「ハル、お前が好きだ」

ハルを驚いたように目を見開き、それからふっと微笑んだ。
俺の視界に映ったのはそこまで。

「……むぐっ!?」

次の瞬間、ハルの顔が一気にに近づき、口元が柔らかな感触に包まれる。
唇を奪われた。

「んっ……ちゅ、」

柔らかい。
一瞬固くなった身体だが、緊張がほどけて唇も緩んでいく。
隙を伺うようにゆっくりと侵入してくるハルの舌を迎えるように絡ませる。

「あむっ、ちゅぷっ……んくっ」

ハルのだ液は糖蜜のように甘くて、ねっとりと舌に、口腔に、喉に絡みつきながら流れ落ちていく。
涙の塩気を塗り潰すような甘い時間。

「……ぷはっ」

数十秒ごしに見たハルの顔は、うっとりと蕩けていた。

「えへへ……アレクの初めてのキス、もらっちゃった♪」

恥ずかしそうに、でもとても嬉しそうに笑うハル。
可愛い、純粋にそう思った。
くわえて単純な欲望が湧き上がってくる。

「この胸も、お尻も、身体ぜーんぶ、アレクのために変わったんだよ」

見せつけるように指先でなぞりながら、自分の肢体を強調してくる。
さっきまでは必死に抑えつけてきたけれど、あらためてハルの身体をみて……興奮できない場所がない。
俺の理想の女性を形にしたら、たぶんハルになるんだと思う。

「だから……好きにして?」

誘いつつ、これから起きることに期待している瞳。
理性の糸がプツリと切れ、衝動のままにハルを押し倒した。

「きゃん♪」

まんざらでもなさそうな小さな悲鳴を聞きながら、細い腰に手を回してエプロンの結び目をほどく。
身体を隠していた布をそっとめくって気づいた。

「下着つけてたんだな」
「だ、だって……」

ハルは顔を赤くしながらもじもじと内股になる。
いちばん細くなっている左右に指をかけ、腰から太ももを滑らせるように引き下ろしていく。

ニチュッ

粘つく水音を立てながら、黒いレースの布地が離されていく。

「着けてないと、垂れちゃいそうだったから……」

割れ目から流れた透明な液は、すでに布が吸いきれないほどに溢れだし、太ももの内側まで濡れぼそっていた。
昔から汗や男くささとは無縁だったが、今は艶めかしく甘い香りをまき散らしている。
恥ずかしそうに話すその姿に、興奮はさらに高まり全身が熱く滾っていく。

「ずっとガマンしてたんだよ?だから……早くきて」

目の前にいる彼女に、発情してたまらない。
荒々しい手つきで下着ごとズボンを脱ぎ、窮屈に押し込められていた俺の股間が解放される。外気に晒されたそこは、すでに血流が行き渡ってパンパンに張り詰めていた。

「初めてだから、上手くはできないだろうけど……」
「ふふ、ボクだって初めてだよ」

慣れない動きでハルの上で四つん這いになりつつ、先端を割れ目にあてる。
ハルの体温と、そのときを今か今かと待ちわびてヌルリとした愛液の感触。
体重をのせつつ、慎重に腰を落としていく。

ぐぶぶっ……!

暖かい。それが最初の感覚だった。
全体がギュウギュウに締め付けられて、自分で弄るよりもずっと圧迫感が凄まじい。普通なら入れそうもない圧力だが、大量の愛液によって動くことができた。
さらに膣内が別の生き物のようにうねり、奥へと誘いながら刺激を与えてくる。
入っていく中で、プツッと、何かを押し潰したような感覚が走る。

「くぅっ……!」
「い、痛いか?大丈夫か?」

ハルの表情が歪むが、ギュっと手を握って大丈夫だと笑みで返す。

「繋がってる……ボク、好きな人と繋がれたんだ……♡」

嬉しそうに細められた瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。
それがとてもいじらしくて、愛おしくて。また唇を重ねた。

ズリュ、ヌチュ、ニヂュ……

ゆっくりと腰を動かしながら、ピストンを繰り返す。

「あっ、ふぁ、んぅっ!」

ハルの喘ぎ声が徐々に甘い声音へと変わっていく。
声だけじゃなく最初はきついと感じていたハルの膣内も、肉棒の形を覚えたかのように柔らかく包み込んでいた。
快楽に変わりつつあるのが手に取るようにわかる。そして感じているのは俺も同じことで。
もう少しで射精る、そんな予兆が下半身を満たしつつあった。

(……あれ?)

ふと、何も着けずに挿れていたことに気付く。
このまま中に出していいのか……?
わずかに残っていた理性と常識が躊躇いを生み、腰の動きが鈍くなる。

ガシッ
「っ、ハル!?」

逃がさないとばかりに俺の腰に両太ももを回し、密着するように抱え込んでいた。
こちらの考えていることを見透かしたような表情、その上でなお俺を誘う。

「アレクの精、ぜーんぶボクにちょうだい♡」

その一言に、すべてが蕩け落ちた。

ズリュッ!

身体を密着させながら、最奥に突きこんでいく。
先端が子宮の入口に触れた瞬間、限界を迎えた。

ドプッ ドプッ ゴプッ ドププッ

「あっ、ふぁ、あぁ……♡」

今までにないほどに怒張したペニスが、さらに大きく脈打ちながら熱い迸りを子宮へと流し込んでいく。それに反応してキュンキュンと強く締め付けながら脈打ち最後の一滴まで絞り取ろうとする肉壁。
背中をそらしながら身体を震わせるハル。どこか焦点の合ってない瞳と甘い嬌声を漏らしながら絶頂している。
抱き合ったまま、永遠に続いて欲しいと思うような快楽に浸り続けた。


「はぁっ、はっ、ふぅ……」

荒い息を整えつつ、脈打たなくなったペニスをゆっくりと引き抜く。
かなりの量を注ぎ込んだはずだが、せっかく注ぎ込まれた精を逃がすものかとばかりに、秘裂からはほとんど溢れなかった。
初めての体験に、どこか夢見心地なまま座り込む。
射精した直後というのは少しは醒めるはずなのに、愚息も性欲もまったく治まらない。
ハルに、その身体にもっと精を注ぎ込みたいと主張してやまない。
気持ちよさそうに床の上で脱力している。

「ハル、大丈夫か?」

声に反応して、ゆっくり目を開けるハル。
安心したのもつかの間、その瞳がギラリと光ったような気がした。

グイッ
「なっ!?」

細い身体がバネ仕掛けのようにはね起き、気づいたら床に押し倒されていた。
先ほどまでとは逆の体勢、油断していたのもあるが、今も押し返せないほどの力で抑えつけられている。

「ボクね、もう身体が熱くてたまらないんだ……」

熱に浮かされたように蕩けた瞳、しかし獣のような鋭さと興奮が渦巻いている。

「もう、絶対に逃がさない。絶対に離れない」

愛する人を、そして獲物でありごちそうである相手を、がっちりと抑え込む。

「夜は長いんだし……思いっきりヤろっか♪」

その笑顔は、可愛くて、艶やかで、最高に美しくて。
精を糧にする魔物、サキュバスがそこにいた。




一言でいえば底なしだった。
ひたすらヤり合い、絞り取られた後、

「なっ、ハル!?」
「いっしょに洗いっこしようよ♪」

身体を流そうとした風呂でまたヤり、

「これじゃ休まらないな」
「ボクにとっては食事と一緒だけどね」

ベッドの上でもヤり続け。
ひたすらに、これまでの日々をすべて塗り替えてしまいそうなくらいに交わり続けた。
お互いの興奮が落ちついたのは……おそらく丸一日くらい経ってからだと思う。
流石に疲れで同じベッドで熟睡した。

そこそこ慣れてきた今も、一日の半分くらいは身体を重ねてる。
普通だったら身体に支障をきたしそうなものだが、一切ない。
魔界や魔力については全然わからない俺だが、ハル曰く「エッチしてればオーケー」らしい。
畑もダメになるかと思ったが、むしろヤればヤるほど畑の作物もすくすくと育ち、見たことのないハート型の果実がたわわに実るようになっていた。
土もふんわりと柔らかな土壌へと変わっていて、すべてが見違えるようだ。
窓際の椅子に座りながら眺めつつ、声をかける。

「ハル」
「なぁに?」
「おもむろにズボンを脱がせようとするのは止めてくれないか?」
「ヤダ」

椅子の下でしゃがみながら、俺の股間を狙っているハル。
以前よりもずっと主張が強くなったと思う。欲望に忠実になったというか……悪い気はしないのだけど。
俺のズボンと下着を剥いだハルは、すでに固くなっている肉棒に顔を近づけながらスンスンと匂いを嗅ぎ、

「いい匂い……♡」

高級料理でも前にしたかのように目を輝かせつつ表情を蕩けさせる。
普段の言動は人間だった頃とどこも変わらないのだけど、こういうときはサキュバスらしい振る舞いが増えてきた。
くわえて、目に見える変化もあった。

「なんか、また胸デカくなってないか?」
「アレクが好きだからでしょ?」

両腕で抱えてもこぼれ落ちような柔乳を持ち上げながら、タプンと揺らす。
ハルの双丘は日ごとに大きく、たわわに実る果実のように成長していた。
アルプは魔物化してからも、時間をかけて相手の望む身体へと変わっていくらしい。
つまりは俺は大きな胸が好きということになるわけだが……実際、今も興奮しているから言い訳すらできない。

「おっきい方が、色んなこともできるし……こうやって♡」
ドプッ

豊満な両乳で挟み込むように肉棒を包みこんだ。
谷間へツゥッとだ液を垂らし、ヌルヌルになったそこを両腕で抱えながらゆっくりと胸ごと揉みはじめた。
膝立ちのため、両胸を動かすたびむっちりとした尻や太ももまで左右に小刻みに揺れている。
魔界から持ち込まれたらしい本を読み漁り、色々な技を俺に使ってくるのだ。
腕で圧力をかけながら、ムニムニと中心にある俺の肉棒を刺激していく。
たわわな両乳を捏ねるように奉仕しているその姿は、視覚的にも煽情的で興奮が相乗効果で高まっていく。

ビュルル……ッ!
「あはっ、いっぱい出たね♡」

あっという間に達し、深い谷間から白い噴水が迸った。大半は重力や乳肉の圧力に負けて谷間に白いプールを作ったが、一部はハルの顔へと掛かり、白くベッタリとへばりついた。
それを嬉しそうに指で掬い取りながら、練乳でも味わうかのように舌でじっくりと舐め取っていく。

「んっ……アレクの精、とっても美味しい♡」

ハルだけじゃなく俺の身体も変わりつつあるらしい。射精の回数も量も明らかに増えてきていた。このままハルとヤり続けると、インキュバスと呼ばれる魔物に近い存在になるんだとか。
ハルの望む身体になっていくのだとすれば、お互いさまなんだろう。

「そういえば、俺たちってもう夫婦……なんだよな」

改めて言葉にすると恥ずかしい。

「ね、折角だしレスカティエにも行こうよ、いい人ばかりだよ」

お世話になった人もいるし、と提案しながら言葉を続ける。

「魔界には色んな場所があるんだって。ドラゴンの国とか、人魚の島とか……行ってみたいなぁ」
「新婚旅行か?」
「そう……なるのかな、ふふっ」

俺の反応に、ハルは少し顔を赤らめる。
この村の外に行く。前だったら想像もしていなかったことだが、今はハルとだったらどこに行っても楽しいだろう。
1つ確かなのは、旅行先でもヤるということ。

「あ、今エッチな想像したでしょ。また固くなってきたよ」

パイズリで抜いたとはいえ、愚息は治まりそうもなかった。
いちど火のついた性欲は消えることなく、むしろムラムラと燃え盛りつつある。

「よっ、と」
「ひゃっ!」

立ち上がり、ハルの身体に腕を回して抱え上げる。いわゆるお姫様抱っこの状態。
そのままベッドへ運んでいく。

「計画をいろいろ考えよう、時間はあるんだし」
「うん♪」

ベッドにハルを降ろし、俺も隣にダイブ。
どちらともなく身体を絡め、抱き合った。

「アレク……大好き♡」
「俺もだよ。ハル、愛してる」

想像していたものとは違ったけれど。
この幸せは、終わりそうにない。
20/07/03 00:02更新 / HNZM
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