連載小説
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彷徨う宇宙恐竜
「ちくしょう、どうしてこうなったんだ…」

 教団からも魔物からも無視されるほどの寒村、エンペラ。唯一の自慢は大仰な名前ぐらいで、そんな村名に反し、人々の生活はまさに赤貧洗うが如しであった。
 この辺り一帯は肥沃とは言えないまでも、農業をすること自体には別段問題無いにもかかわらず、この丘の上にある村とその周りだけが、土地が何故か異様に痩せ細っている。
 作れるものは麦か数種の野菜ぐらいで、獣肉などまず食えない。
 飼っていた豚を潰した時には、近所の住人達がどうにか肉にありつこうと恥も外聞もなくおべっかを使って言い寄ってくる有様。
 そんな村の生活を、村の端に住むゼットン青年はどこか冷ややかに眺めていた。だが、自身もそんな生活からの脱却のあてが無いため、他の村民同様、生活の不如意に耐えるしかなかった。









 そして、そんな赤貧にあえぐ彼をさらなるドン底の人生に追い込みかねない事が起きてしまった。
 事の発端は、彼が村民達から村で収穫した作物を近隣のココ・ノールという名前の街に売りに行かされ、そこで商品を卸し終えた後の事である。
 彼は自分の住む荒んだ村から滅多に出れない。それ故、久しぶりの外出とあって、ついつい遅くまで街に留まってしまった。
 しかし夜の街は危険であり、街の外は言うに及ばない。貧乏過ぎて宿代も無い有様なのでどうしようか途方に暮れていたところで、いきなり酔っぱらいに絡まれた。
 絡んできた男は自分より図体が大きく、身なりの良さそうな輩であったため、面倒事にならないよう平身低頭で謝っていた。だが、男は引くどころか調子に乗り、その上ゼットンの貧しい身なりを馬鹿にした上に彼を殴ったのである。
 ゼットンは今でこそ大人しく農夫に身をやつしてはいるが、一応武術の心得がある。そして困った事に、元々大人しい気性ではない。
 こんな男が殴られた事により、ついに堪忍袋の緒が切れてしまったのである。
 ゼットンはすぐさま男を一本背負いで地面に叩きつけると、そのまま馬乗りになって血達磨になるまで殴りまくった。それから殴られてぐったりしてしまった男を街の外にまで引きずっていき、そのまま街の防壁に登るとその上から放り投げたのである。
 そして、ゼットンは即座にその場から逃げ出し、人気の無い街の外れで身を潜め、朝になって城門が開いたところで空になった荷車を引いて、一目散に村へ逃げ帰った。
 しかし運の悪い事に、その一部始終が街の住人達によって目撃されていた。
 ゼットン青年が半殺しにした男は街の領主の三男坊であり、素行の悪さで知られていた最低の男だったが、誰も逆らえなかった。そんな馬鹿息子に制裁を加えたゼットンに住人達は同情したものの、さすがに領主には逆らえず、かばってやることは出来なかったのだ。
 そして厄介な事に、領主がよくいる親馬鹿な馬鹿親であり、息子に怪我をさせた下手人を捕らえてくるよう部下に厳命しており、このせいでゼットンはココ・ノール周辺にいられなくなってしまった。
 当然ながら村にいることも危険であり、彼は売上金をさっさと渡してから自分の家に戻ると、食糧と父祖伝来の得物を手当たり次第に荷車に積み込み、官憲の手が回る前に村から逃亡した。





 こうして領主の追手を恐れ、逃亡してから四日が経った。
 手配書が出回っているので大っぴらにそこらの街にも寄れず、人の少ない街道をわざわざ選んで逃げるしかなかったため、あまり早く逃げることが出来ず、彼の焦りは増すばかりだった。

「ちくしょう、なんでこうなったんだ…」

 人がまず寄らないであろう林の奥で焚き火にあたりながら、ゼットンはぼやいた。情状酌量の余地はあるが、明らかに過剰防衛なのは本人も自覚するところであるが、最早何を思おうが言おうが後の祭りである。
 赤貧の村から脱出したものの、お尋ね者になり、住んでいたあばら家すら無くなった以上、事態はますます悪化していると言えた。

「これからどうやって食ってけばいいんだ。路銀も全然ねーし、食糧も後一日ぐらいしかもたねー」

 武術の心得が多少あろうとも、それが即座に飯の種になるわけではない。用心棒や賞金稼ぎなど、腕っぷしが強ければできる仕事はあるが、お尋ね者である以上、賞金稼ぎどころか賞金首である。
 このように考えを巡らせても、行き着く先にはろくな結果が浮かばなかった。

「追い剥ぎ、いや盗賊か…? でも仲間いねーから盗賊はできねーな。っつーこたぁ追い剥ぎが妥当か……?」

 お尋ね者である以上、最早まともな方法で金を稼ぐことは諦めたらしい。確かに傷害も強盗も罪であることは同じではあるが、人を殺す度胸や覚悟は無い。

「でも、結局捕まって豚箱にブチ込まれて、そのまま獄死すんのかな?……チキショウ…そうなる前に童貞だけは捨てたかったなぁ……」
「ふ〜ん、そうなの?」
「だって、死ぬまで童貞じゃあの世にいる親父とお袋に申し訳がたた…」

 そこまで言うなりゼットンは荷車に駆け寄り、積んでいた朴刀を手に取ってかまえた。

「だっ、誰だテメーは!?」

 口汚く威嚇するゼットン。その威嚇はいつの間にか焚き火を挟んで向かい側に座っていた少女らしき者に向けられていた。

「んもぅ、こんな可愛い女の子に刀向けるなんて、何考えてんの?」

 そう不満そうに呟いた少女だが、その見た目は人のものではなく、さりとて仮装とも思えない。
 腕は同年代の人間の少女と比較しても一回り細く、二の腕から先が全て虫の足によく似た頑丈そうな甲殻に覆われており、手には恐らくそれぞれが人間の親指・人差し指・中指の役割を果たすであろう三本の鋭い太い爪が付いていた。そして、細い腕周りとは逆に掌自体はかなり大きかった。
 足も甲殻がブーツのように覆い、尻からは昆虫の腹部のようなものが生えているように見える。
 背中からは四枚の紫色のかなり薄く大きな羽が生えており、頭からは鋭い触角が二本突き出ていると共に小さな王冠をかぶっている。
 耳はエルフのように尖っており、肩は黒いふわふわとした毛が覆っている。
 何より、一番特徴的なのは羽や首元などに髑髏らしき意匠があることである。そして、それらに目を瞑れば、快闊で気の強そうな美少女と言える。

「うるせぇッ!!」

 ゼットンは魔物娘を見たことが無く、彼女等に対する知識も無いため、この少女がベルゼブブという種族の魔物娘ということも知らない。それ故、今目の前にいる少女がただ自身の生命を脅かしに来たのだと思っていた。一応彼女の正体が気になってはいたが、それどころではない。

「そんなことよりさ。童貞、捨てたいの?」
「あぁ!?」
「君が言ったんだよ?」

 ゼットンがまるで空気が読めてないと言わんばかりに、呆れと落胆の表情を浮かべる少女。そんな油断しきったその姿を見たゼットンは、先手必勝とばかりに手にした朴刀で斬りかかった。

「死ねぇ!!」
「ありゃま」

 ゼットンが振り下ろした朴刀を、少女は体を横に反らしてあっさり避けた。そのまま朴刀の鍔を左手で掴むと、彼の両手から簡単に奪い取り、後ろに放り投げてしまった。

「!」
「武器が無くなっちゃったねぇ。次はどうするのかなぁ?」
「ちっ!」

 嫌な笑みを浮かべる少女。一方、武器を奪われたゼットンは次に右回し蹴りを油断する少女に叩きこんだものの、彼女は両手で右足を受け止めた。

「何!?」
「へっへ〜!」
 
 彼女は右脚を抱えたまま回転し、そのままドラゴンスクリューでゼットンを地面に押し倒そうとしたが、青年も負けてはいない。
 がら空きになった顔面をおもいきり左フックで殴りつけて彼女の動きを止めたところで、そのまま踵落としの要領で背中から地面に叩きつけたのである。

「う!」
「人間様をナメてんじゃねぇぞボケがぁぁ!! とっとと死にやがれ!!」

 初めての魔物相手で極度に興奮したゼットン青年は口汚く叫ぶと、踏んづけた少女目がけて追い討ちをいれるべく左足を上げたが、少女はその一瞬の隙を突いてゼットンの右脛を殴った。

「うぉっ!?」

 ゼットンが右脛を走る激痛に動きを硬直させたところで少女は体を捻って拘束から脱出、転がりながら離れたところで、すかさず彼の両足を払う。
 そのせいでゼットン青年はバランスが保てず、地面に転倒してしまった。

「ぬおっ!」
「へへっ、私の勝ちぃ!」

 少女はそのままゼットンの上に馬乗りになり、彼を押さえつけた。

「ど、どきやがれ!!」
「イヤ♪」

 どう見ても少女はゼットンより体重は軽いはずだが、どうにかどかそうと全力で腰を上げようとしても、まるで岩でも載っているかのようにびくともしなかった。

「別に私は君を食いたかったり、殺したいわけじゃないよ。でも、動けない方が好都合だけどね!」
「なんだと!?」

 魔物娘の性質など知らないゼットンにとって、彼女の意図など分からない。

「んふふ…」

 憎たらしいほど満面の笑みを浮かべながら、少女は倒れているゼットンのズボンをずり下ろし、さらには履いていたトランクスも脱がせ、彼の陰茎を露出させた。

「あら御立派!」

 陰茎のサイズは想像以上だったらしく、少女は笑みを浮かべて目を輝かせる。

「な、何を…」
「別に怖がらなくていいよぉ。これは勝者の、敗者に対する権利を行使してるだけだからね〜」
「て、テメェ、やめろ! 俺は黒髪ストレートロングのムチムチボインで優しく神秘的で貞淑な美人に貞操を捧げると決めてんだ! 貧乳のガキなんざおよびじゃ…」
「変な事言うとチンチンちょんぎっちゃおうかな〜?」

 ようは『お前は好みではない』というこの青年の発言に、クレアと名乗るこの少女の自尊心は著しく傷つけられたらしく、かなりの怒りが湧き上がったようである。
 鋭い爪の付いた右手で彼の肉棒を掴むと、握り潰しそうな勢いで締めあげたのだ。
 さらに、彼女は先ほどの明るくも淫靡な笑みから一転、まるで殺し屋のような面構えになっており、ツリ気味の金眼は豚を潰す肉屋のような容赦無いものに変貌している。その恐ろしさに、ゼットン青年は本能的な恐怖を覚えた。

「わ、分かった! 悪かった!」

 逸物を捻じ切られてはたまらないため、ゼットン青年は己の発言を必死で詫びた。魔物に犯されるのは屈辱だが、童貞を捨てる前に男を辞めるのはもっと困るからである。

「んん、よろしい。では、いただきま〜す!」

 少女はその返事に満足したのか、元の快闊な美少女の顔に戻る。そして疲れと空腹で萎んでいるゼットンの肉棒を少女は美味しそうに口に咥え、頭を何度も何度も上下させた。

(な、何だコレ…スゲーキモチ―…!)

 性技に長けた魔物娘のフェラチオである以上、純粋培養の童貞が耐えきれるはずもない。
 あっという間に怒張した彼のモノは縦横無尽に蠢く彼女の舌と口内によって刺激され、あっさりと限界を迎えた。

(やべ、射精る…)
「んんんんっ!」

 普段の日課である手淫では到底ありえない量の精液が彼女の口に吐き出されたが、少女はまるでジュースでも飲むかのように美味しそうに飲み干していく。そして、射精が終わった後も余韻を味わうかの如く、肉棒を口に咥えたまま離さなかった。

「ぷはっ、濃いねぇ! 男の子はこうでなくっちゃねぇ!」

 ようやく離したかと思いきや、あまり嬉しくない賞賛を述べてきたが、最早ゼットン青年には届かない。初めてのフェラチオによる混乱と快感により、童貞特有の長い賢者タイムに入ってしまい、思考力が麻痺してしまっているのだ。

「きひひひひ! まだ終らないよぉ〜! さぁ、たっぷり楽しもうね…」

 彼女の言葉が耳に入らないほど頭の空白は長かったが、それも少女が再び肉棒を咥えるまでだった。
 再び繰り返される快楽に思考は再び巡り、射精する度にありえない快感が体を貫く。こうして、繰り返されるイキ地獄は明け方まで続いたのだった。
14/12/27 23:25更新 / フルメタル・ミサイル
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■作者メッセージ
備考:魔物娘武闘大会

 魔王陛下主催の武闘大会で、教会勢力に対する戦闘技術の向上を目的として行われている。ルールは恒例の“無し”で、武器・魔法・急所攻撃など何でもあり。ロリっ娘部門、異形部門、タッグ部門、昆虫部門などがある。時間無制限一本勝負で、部門の優勝者は“ディーヴァ(魔界の格闘女神)”の称号を得る。
 このベルゼブブは第287回目の武闘大会のロリっ娘部門に出場、圧倒的な強さで他のロリっ娘魔物娘達を瞬く間に血祭りにあげていき、見事ロリっ娘部門で優勝を果たし、ディーヴァの称号を得る。
 その後、魔王陛下の提案により、優勝後に行われた特別試合でアンデッド部門の優勝者、『焦熱地獄』ことデュラハンのナイア・ギャリングスと闘い、僅差で敗北したものの、その凄絶な試合内容から名声は尚高まっている。

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