絆の傷

 俺は一昨年の夏にこの村はずれに家を建てた。小高い丘の上の坂の上にあって、遠くに海が見えた。夜は月が幻想的に辺りを映し、昼は日がよく当たり洗濯物が早く乾く。

 俺は元々この付近の人間じゃない。故郷はあるが、正直言って帰る気はしないし、身寄りなど両親以外に知らない。その両親もずいぶん前に死んだ。俺がまだ13の時のことだ。

 それを機会に俺は旅に出た。しかし、普通の民家の男が旅に出るというのは危険だった。なぜなら魔物に襲われる危険があるからだ。精を抜き取られ、一生を魔物の餌として過ごすことになる。

 だが俺には強みがあった。力が強いわけでもなく、剣技も優れてなどいないが、唯一、魔力の多さ、そして魔導能力はそこらの魔物以上だと思っている。
 いや、思っているのではない。魔物にそう言われたのだ。学者のケンタウロスにそう言われたことがある。

 自覚は多少あったがそこまでだとは思っていなかった。

 今は何をしているかというと、ぴったりな言葉が見つからない。ミルクを配達しながら、農作業もして、魔物退治もする。あー、そう、何でも屋という便利な言葉があった。それだ。

「ワイト〜、今日も早いわね〜」

 おっとりとした声の主は俺の彼女だ。年は俺より一つ下の19歳。
 振り返れば白黒の肩くらいまでの髪の毛に丸みを帯びた角、優しい印象を与える大きな目に緑色の瞳。
 白と黒のまだら模様の体毛が下半身を覆い、たわわな胸が目を引く。
 
 彼女はホルスタウロスのシーナ。一昨年から一緒に暮らし始めたもののまだ正式に結婚はしていない。が、いずれはしたいと思っている。

「ああ、お前の胸に押しつぶされるところだった」

「ほんと〜?ごめん、ワイト〜」

「気にすんなって。いつものことだ」

 余計気にするか、このセリフ…。
 
「ごめんね〜、寝てるときだけはどうにもならなくて〜」

 そう言いつつシーナはその胸を俺に押し当てた。

「そりゃそうだわな、今はどうなんだ?」

 俺はそう言って押しつけられた胸をそっと揉んだ。彼女は恥ずかしいようでも嬉しいそうでもある笑みを浮かべた。
 
「わざと〜かな〜」

 だと思った。おっと、今日は彼女のミルクを村に届けに行く日だ。彼女のミルクは評判がいい。村の分は十分に搾っておいてある。今日搾るのは途中で会うリザードマンの分だ。

「さて、じゃあそのついでにミルク搾っちゃいたいんだけど良いかな?」

「うん、おねが〜い」

 俺は彼女の服を脱がせ四つんばいにさせると、用意してあった缶を下に置いた。
 彼女の乳房を刺激すると、いい香りのミルクが缶の中にたまっていく。

「んっ…んんっ…」

 シーナは敏感なところを刺激され、甘い声を発した。体が小刻みに震えている。缶にはもう充分にミルクがたまっている。

「もう、充分…だねぇ」

「ああ、じゃあついでに…」

「あんっ…」

 俺は彼女の胸に吸い付いた。ほのかに甘いシーナのミルクが喉を通り抜けていった。

「ど…う?…おいし…い…?」

 シーナはいつの間にか足を擦り合わせていた。顔もさっきより切ない表情を浮かべている。
 昨日、一昨日と仕事で、彼女の相手を十分にしてやる暇がなかった。そのせいでいつもより敏感になっているんだろう。

「―ああ、旨い」

「…うれしい〜。もっと飲んでいいよ…?」

「そうしたいのは山々だけどな。朝ご飯食べなきゃな」

「…は〜い」

 シーナは残念そうに返事をした。彼女は服を着て椅子に座った。俺は朝食を作るためキッチンに立った。彼女は家事全般をこなせるが、食事だけは俺が作るようにしてる。なぜなら、その他の家事を彼女に任せているからだ。

 目玉焼きにベーコン、バターを塗ってこんがりと焼いたトースト、彼女の好きなサラダを皿に盛りつけた。それらをテーブルに持っていくとシーナは机の上に腕を組んで、その上に伏せて寝ていた。
 よくまあ寝るなぁと思う。ホントに気持ちよさそうに寝るもんだ、見ているこっちまで癒される。だが、このまま寝させているわけにも行かない。

「おーい、シーナ。起きろって」

 身体を揺すってみたが起きる気配はない。

「シーナ、おい、シーナっ。おーい」

 全く起きない。ホントに。こうなったら最終奥義を発動せざるおえない。俺は彼女の隙だらけの脇腹に立てた右人差し指、左の指を耳が挟めるようにセットした。

「お〜き〜ろっ!」

「ひゃふっ!」

 脇腹は彼女の弱点であり、耳もまた性感帯と呼べる部位であった。その二箇所を同時に攻撃されれば彼女といえど飛び起きる。


「ん〜、脇腹も耳もダメ〜」

「起きないのが悪いんじゃないのか?」

「…だって〜」

 シーナは少しふくれた。まあ、敏感になってるところに弱点じゃあ、火に油だろうけど。

「はい、ご飯だぞ」

「ありがと〜」

 ホルスタウロスはみんな食べるのが遅いんだそうだ。彼女が一品食べ終わるまでに俺は殆ど食べ終えた。だが彼女はそれでもおいしそうに食べるから見てて飽きない。



「よっ、と!」

「ご苦労様〜」

「じゃ、行こうか」

「あ、今日は〜私が一人で押すから〜」

 俺たちはいつも荷車を二人で押している。普通はホルスタウロスが一人で押すのだろうが、俺は魔力をコントロールして筋力を魔物並みに高めることが出来る。つまり、彼女を荷車に乗せて行くことも出来るし、彼女と一緒に押すことも出来る。

 シーナは多分今日くらいは役に立ちたいと思っているのだろうか?
 そんなことしなくても家事はしてもらってるし、ミルクはいい収入源だからすごくありがたいんだけどな。

「…頼めるか?」

「うん」

 荷台に座って空を見上げた。景色が通り過ぎていくのが少し新鮮だった。そう言えば荷台に乗ったのは初めてだ。心地がいい。

「疲れてないか?」

「平気〜」

 荷車が止まった。リザードマンが現れたのだ。

「おはよう、二人とも。早速で済まないがミルクをもらえないか?」

「は〜い、どうぞ」

 シーナがミルクの入った缶を渡し、代金を受け取った。これがいつものやり取りだ。週に一度彼女がミルクを仲間の分まで買いに来るのだ。

「今日は君一人で押しているのか?」

「そうなの〜いつも手伝ってもらったり〜楽さしてもらってるから〜」

「そうか。いつも悪いな」

「礼を言うのは俺たちの方だ、君はウチの常連の一人だからな」

「それじゃ」

「ああ、それじゃ」

 彼女はそう言うとミルクのたっぷり入った、重いはずの缶を軽々と担いで森の奥へ消えた。

 俺たちは村に到着した。いつもの得意先に次々と周り、ミルクはあっと言う間になくなった。
 その後は町で買い物をする。調味料や日用品はもちろん、今日はシーナの服も買う予定だ。

「どう〜?似合うかな〜」

「ああ、似合ってるよ」

 彼女が選んだのは丸みのある帽子と、七分袖の胴丈の短いかわいらしい服だ。たわわな胸のせいで服が今にも破れそうにみえるが、そこがまたいい。
 俺が似合うと褒めると、シーナはさらさらとした毛のある尾を嬉しそうに左右に振った。そしてその胸を俺の身体に押し当てた。

 流石に町中ではまずい。それに彼女は欲求が溜まっているはずだ。



 家に帰るとシーナは胸を押しつけてきた。この弾力は何度味わってもいいものだ。ねだる目は俺の心を欲情させる。

「ねぇ〜」

「………。分かったよ」

 シーナを連れて寝室に入った。俺はシーナの服をたくし上げると、彼女の乳房が露わになった。乳首は既に固く立っている。
 彼女をベッドに押し倒し、乳首に吸い付いた。朝味わった美味なミルクが口の中に広がる。もう片方の胸は指で表面をツゥーと渦を書くように這わせた。

「ひあぁ…ああん…ふぁぅ」

 甘い喘ぎ声が寝室の中に広がる。俺は今彼女の上に四つん這いで覆い被さっている、そして右足が彼女の足と足の間にある。俺はその右足の腿を彼女の秘部に衣服の上から押し当てた。

「いやっ…はぁっ…んふぁ…」

 シーナは俺の服を握りしめた。

「…どうだ?気持ちいいか?」

 俺は彼女の乳首から口を離した。

「…うん、気持ちいぃ…んっ」

 シーナの唇に自分の唇を重ね、舌をねじ込んだ。彼女の舌が進入した俺の舌に絡み付いた。彼女の声が俺の口の中に響いて、両腕か俺の身体を抱きしめる。大きな胸が俺の胸板に強く押しつけられている。

「ワイトも…気持ちよくしてあげる…全部脱いで…」

 シーナは唇を離すとそう言って、俺の股間に手を伸ばした。俺の一物は既に固くなっていた。
 俺は着ていた服もズボンも脱ぎ捨て、ベッドに座った。そして反り立つ俺のモノを彼女の胸が挟み込んだ。シーナは自分の胸を抱くようにした腕を組み、上下させ始めた。

「…んっ…」

 思わず吐息を漏らした。ベッドが軋む音と、彼女の荒い吐息が部屋に響いて、俺の快感は徐々に激しくなっていった。

「あむっ…」

 彼女が一物の先端をくわえた。舌が絡み付いてとても気持ちいい。上下運動もだんだん早くなってるみたいだ。

「シーナ…もう…出そうだ…」

「ひひよ…はひへ…(いいよ…出して…)」

 彼女の口の中に俺の精が飛び出た。彼女はゴクンと飲み込むと俺をゆっくりと押し倒し、履いていたショートパンツを脱いだ。まだら模様の体毛に包まれた下半身が全て露わになった。

 彼女は俺の身体にゆっくりとその綺麗な身体を降ろすと、俺の右肩から右胸をお通った腹部にまで達している大きな傷跡をその細い指でなぞり、少し悲しそうな顔をした。

 この傷は二年前、彼女と出会った次の日に付いた傷。



 前日に足を挫いていたのを手当てして、村まで負ぶっていった。次の日に

「お礼に珍しい花を摘んできます」

と言って、彼女は村を出た。遅いので心配して様子を見に行くと盗賊に襲われていた。その時彼女を庇った時に斧で切り裂かれた傷。

 盗賊は俺が半殺し状態にしてしまったが、実のところ意識は朦朧としていて、はっきりとは覚えていない。

 ただ覚えているのは彼女が血を見ないように服を掛けて「いいと言うまで取るな」と言ったことだけはしっかりと覚えている。

 彼女が摘んでくると言った花は貴重な花で、かなりの高値で取り引きされる物だった。それを盗賊に奪われまいと必死に逃げて、追いつめられてしまったらしい。



 シーナはそれをずっと気にかけているのだろう。二年もの間、悩み続けているのだ。

(せめて、今だけは…)

「シーナ…気持ちよくしてやるからな」

「うん…」

 俺はベッドから降り、シーナの両手をベッドに着かせて立たせた。そしてまだ固い一物を彼女の秘部へゆっくりと後ろから挿入した。

「んっ…はぁ…」

 シーナが甘い声を漏らす。ゆっくりと腰を動かすと、彼女は更に声を漏らした。





「気持ちよかった?」

「はい…と〜っても…」

 俺たちはベッドに抱き合って横たわっていた。彼女の目はまだとろけたままだ。
 だが彼女はすぐに俺の傷を見つめ、悲しそうな顔をする。俺は彼女の顔を胸に優しく抱きしめた。

「シーナ…お前この傷のこと、気にしてんのか?」

「えっ?…そ〜んなことないよ〜…」

 シーナは本当に嘘が下手だ。声が震えてる。

「二年間もずっと悩んでたんだな…言わなくたって分かる」

「………」

 彼女は黙ってしまった。

「シーナ、この傷見るとき悲しい顔をするからな。気にするなって方が本当は無理かもしれない、でもな、俺はこの傷を嫌だなんて…苦痛に何て思ったことは一回もない」

「え?」

 彼女が俺の顔を見上げた。目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

「そんなの…、ほんとに…?」

「ああ。本当だ」

「でも、だって、私のせいなんだよ…?あの場所は…盗賊が出てもおかしくなかったの…怪我したのを助けてもらって……お礼がしたくて…この足でも何とかなるって…ちゃんと考えなかったの…」

 シーナは泣き声でそう言うと、胸に顔をうずめた。そして俺を強く抱きしめた。

「ホルスタウロスってさ…深く考えるのが苦手なんだろ?いいじゃねぇかよ…それで」

「でも…でもぉ…」

 シーナが顔を胸にうずめたまま、体を起こした。

「俺は…この傷が好きなんだぜ?…お前を守って付いた傷だから」

 彼女は何も言わないで聞いていた。

「…お前は俺がお前のせいで怪我をしたと思って…負い目を感じて、今こうして一緒にいるのか?」

 俺がそう言うと彼女は勢いよく顔を上げて、

「そんなんじゃないっ!」

といつもとは違う強い口調でいった。

「…私は、ワイトが優しくしてくれて…だから嬉しくて…だから好きになって…」

 彼女はまた顔をうずめながら言った。

「だからこうして一緒にいてくれるんだろ?」

 俺の胸元で小さく頷いた。

「俺もな、お前が好きだからこうしているんだ。逢った日からずっと好きだから。お前を探しに行ったのは、『助けた相手』だからじゃない…『好きな人』だったからだ。だから、好きな奴を守って付いた傷は嬉しいんだ。もう悩むなよ…もう悔やむな…」

「ワイト…」

「ずっと…俺が守るから…」

 俺たちはこの先も一緒にいると、二人でこの傷に誓った。
 人の寿命は短い。でも、俺はシーナと同じくらい生きることが出来る。魔力が俺の寿命を延ばす。元々の俺の体質が後押しをして。
 彼女もそのことは知っている。だからこの先一緒にいる為に一つでも障害は取りたかった。
 その障害は今、絆に変わった。

10/01/15 00:27 アバロン


いかがでしたでしょうか? 楽しんで頂けたら光栄です。。。
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