連載小説
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無敵の大勇者
無敵の大勇者と呼ばれる者がいた。

彼は世界中の国を巡り、教団国家、親魔国家の区別無しに旅をしており、
そして様々な魔物娘と対峙するもそのことごとくを無傷のまま帰ってきたという伝説を持ち、
今、その噂を確かめるべく一人のリザードマンが彼の目の前に立ちはだかっていた。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

リザードマン「そこの旅人よ、聞きたい事がある。」
勇者「何だ?」
リザードマン「私は無敵の大勇者と呼ばれる者を探しているのだか、
もしや貴方がその大勇者か?」
勇者「自分から名乗った事は無いのだか、恐らくそうだろう。」
リザードマン「やはりそうでしたか、私は諸国を巡り剣術修行として人魔問わず様々な強者と剣を交えて来ました、が、私を打ち負かすほどの者とは巡り会えませんでした。しかし、行く先々の国で貴方の噂を聞き、ぜひ手合わせしたいと思い探し回っていました。もしよろしければ手合わせ願えますでしょうか?」
勇者「剣術は素人なんだが、それでいいと言うのなら」
リザードマン「いえ、剣以外でも体術や武術で構いませんよ。」
勇者「いや、少し護身術が使える程度だ」
リザードマン「では魔術を?」
勇者「初歩の基本的な魔法ならなんとか、」
リザードマン「ならば神々からの加護は、」
勇者「そんな大層なモノは無い」
リザードマン「( ゚д゚)ポカーン………」

リザードマン「ちょっ、ちょっと待って欲しい、という事は噂は嘘っぱちという事か?」
勇者「どんな噂だ?」
リザードマン「村々を飛び回り人々を怖がらせていたドラゴンを追っ払ったという噂は?」
勇者「ただ単に住み処が狭くなったから引っ越し先を探していただけだ、ちょうど良さそうな洞窟を教えたらお礼をしてすぐに飛びだっていったぞ。」
リザードマン「不死者の国で多くのアンデットが居るなか、バンパイアの王女を倒したという噂は?」
勇者「ちょうど舞踏会があったので参加したのだが、慣れないダンスをしたせいでよろけてしまい、隣にいたバンパイアを押し倒してしまった事か?」
リザードマン「では、一人でバフォメットと魔女とファミリア、合わせて20人以上いたサバトの支部を落としたというのは?」
勇者「これでも料理は得意でな、彼女達に招待された時に手作りのクッキーを持っていって皆で食べたのだが、とても好評でみんな頬っぺたが落ちそうだと誉めてくれた事か?」
リザードマン「ジパングに居る九尾の稲荷をほふった噂は?」
勇者「とても素晴らしい毛並みだったのでな、つい、さわらせて欲しいと頼んだらモフらせてくれた事か?」
リザードマン「乙姫が作り出す激流に流されても涼しい顔をしていたというのは」
勇者「竜宮城にある『うぉーたーすらいだー』のことか?とても楽しかったぞ」
リザードマン「( ゚д゚)ポカーン……」


リザードマン ○| ̄|_


勇者「大丈夫か?」
リザードマン「いえ……ご心配なく、ただ、想像していたのとかなり違っていたので…」
勇者「なんと言うか、すまない。」
リザードマン「こちらこそ、私の思い違いでご迷惑をおかけしました。」
勇者「それで、手合わせの件は」
リザードマン「誠に勝手なのですが、取り止めという事で…、申し訳ありません。」
勇者「いや、誤解が解けたようで何よりだ。では私は旅の途中なのでこれにて、」
リザードマン「はい。それでは私も。」

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とある教団国家
「なぁ、聞いたか?あの無敵の大勇者様がまた凄い事を仕出かしたそうだぞ。」
「聞いたさ、何でも百戦錬磨で怖いもの知らずのリザードマンが戦うのを躊躇った。て、話だろ?しかもまた無傷で」
「やっぱ大勇者様は格がちげぇな」
「全くだ」



とある親魔国家
サラマンダー「なぁ、無敵の大勇者と会ったんだろ?何で戦わなかったんだよ。」
リザードマン「いや、なんと言うか、その、違っていたんだ。」
サラマンダー「何がだ?別人だったのか?」
リザードマン「いや、本人だったさ正真正銘の」
サラマンダー「そんじゃぁ、噂が間違ってたのか?」
リザードマン「そっちも本当だったんだ、無敵というのも間違っていなかった」
サラマンダー「なら、何で……」
リザードマン「まぁ、本人に聞けば分かるさ…」
サラマンダー「?」

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その後も無敵の大勇者の噂は膨れ上がる一方であったと言う。

17/06/24 09:29更新 / I to so
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■作者メッセージ
「敵」が「無」いと書いて無敵

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