連載小説
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序章
ここは大陸に無数に存在する冒険者ギルドのある支部。この支部がある街は親魔派地域に存在しているため、ギルド内は人や魔物でいつもの様に賑わっていた。
チリンチリン…
ドアに付けられた鈴が来客を告げる。その客は青年と魔物二人。青年は室内に入ると同時にフードを取りさった。その顔は穏やかな顔つきをしていた。それが穏和な性格をイメージさせる。
魔物の二人は水の精霊[ウンディーネ]と炎の精霊[イグニス]であった。
青年からも二人と同じ魔力が感じられるため俗に言う[精霊使い]であろう。後ろの精霊二人からは並々ならぬ魔力が感じられる事から穏やかな風貌に反して実力はかなり物だと、魔物や魔力を感じることが出来る人間は容易に想像出来よう。
「カイトさん、葵さん、紅(くれない)さんお帰りなさ〜い。依頼はどうでした?」
受付カウンターに居た魔女が書いていた書類から目を上げ、入って来た三人に声をかける。内容からして三人とも依頼を受けたの冒険者の様である。
「ただいま、カノンさん。依頼は完了しましたよ」
フード付きの黒いマントを羽織い、その下に双剣を隠している精霊使いとしては珍しい風貌の青年が笑顔で答えた。顔付きからしてジパング出身であろうか?
防御よりも動きやすさを重視した大陸の防具を身に付けてはいるが、腰の左右にはこの地域ではまず見ない「刀」も着けていた。
「おう。追加依頼の品もしっかり持ってきたぞ!!」
ゴトン!!、ガシャ。
青年に続けて入ってきた[紅]ことイグニスが背負っていた袋をひょいとカウンターに置く。
重たそうな袋を軽々と扱う所は流石魔物といった所か。…袋の中から聞こえた何かが壊れる音はあえて気にしないで置くとしよう…
「…袋の中でウネウネと何かが動きだしたんですけど…」
受付嬢のカノンは眉をひそめながらは指摘した。閉じ込めていた容器が置いた際に破損したのてあろう。紅が背負っていた時とは違い、何とか袋から脱出しようと[中身]が動いている…
その事実よりも精霊なのに何故[燃やさず]に袋を[背負っていられた]事実の方が作者は不思議である…
「そっちですか?!」
おもわず作者にツッコミをいれるカノン。
こら話が脱線するから止めなさい。
「これでも魔力は抑えている方だぞ。それにあたいは精霊と言っても、魔精霊になっているから物にも触れられるし、対象を燃やすかどうかも自分で決められるのさ。葵もそうだ」
…だそうです。紅さん作者に替わりに解説ありがとうございました…
抑えている時点であの魔力では実際の実力は天空の覇者の[ドラゴン]も軽く越えるのであろう。
「並みのドラゴンは一捻りさ。葵も同レベルだぜ」
…その化け物並みの精霊を使役するカイトの実力はどのくらいなのだろうか…
「カノンさんと貴女は誰と話しているんですか?」
最後に入ってきたウィンデーネが早速突っ込みを入れる。
「「うん?駄作者と(ですけど〜)だけど」」
「物語が壊れるのでそういうのはあとがきで行って下さい。只でさえ作者文章能力が足りないのに」
鋭利なツッコミを即座に行う葵こと[ウンディーネ]。
「ごめんなさい」
「はいはい」
…葵はツッコミ担当決定である。
「誰がツッコミ担当ですか。」
作者にも即座にツッコミ…流石である。
「…ごほん…所で紅!物を乱暴に扱うなと何度言えば良いのですか!?箱が壊れた音がしましたよ?!」
「別に大丈夫じゃあねーの?この袋に入っているんだし。確かアウラネが魔力強化糸で編んだ布で作った上に強化と封魔魔法かけてあるんだろ。この袋」
「袋の口が開いたらどうするんですか?!」
「炎で燃やすW」
「それでは持ってきた意味無いでしょう…だいたい貴女は〜くどくど」
葵の説教タイムの始まりである。
「…いいんですか〜?ほっといても…」
「いつものことですよ。それに葵の説教は一度始まると止まりません」
「はあ」
「それよりも支部長殿呼んできてくれませんか?山賊討伐のついでに頼まれた依頼の品を直接渡して確認して頂かないと。あれが外に出ると厄介だし…」
カイトはそう言って袋を指差す。心なしか口の結び目が緩んで来たような気がしないでもない。
「一緒にバーベキューにされたくないので、クレア様呼んできますね…」
カノンはカウンター内側に付けられている階段上の足場から、ピョンと飛び降りる。そしてトテトテと小走りで事務所奥へかけていった。
その姿は可愛らしい小動物を思わせる。ロリコンには堪らない光景だろう。事実その場にいた何人かの冒険者は悶えていた…
「カイト〜見てないでいい加減止めてくれよ…」
いい加減、葵の説教に飽きたのだろう。少しは反省しなさい。
「今回は紅が悪い。それにお前の教育係は葵だしな」
「あたいは子供じゃあないぞ!?」
「誰が教育係ですか。そもそも、契約者である主が甘やかすから紅の性格が矯正されないんです」
「僕も最初は治そうとしたけど…無理。こういった事は葵の得意分野だろ?それに僕の信条は適材適所だから」
「主が楽したいだけでしょう…」
ハァ〜と深いため息をついて葵は肩を落とした。
「連れてきましたよ〜」
トテトテトテ
子供特有の軽い足音が二人分、奥から聞こえてきた。一人は支部長を呼びに行ったカノンだから…
「相変わらず仕事が早いの。同行した警備隊の物から連絡は来ておったが…」
頭部に山羊の角、そして禍々しい装飾を施し自分の身の丈程もある大鎌を軽々と扱う幼女。魔物の中でも屈指の実力者「バフォメット」がカノンに続いて現れた。
もうお分かりの人も居ると思うが、この冒険者ギルドはサバトが主体となって運営している「魔術・冒険者合同ギルド」なのだ。合同ギルドと言っても、魔術ギルドと冒険者ギルドを同じサバトが運営しているというだけなのだが。
なお、依頼の受付口は共同である。基本的にどんな依頼でも受諾し、サバト側が依頼内容を精査しどちらのギルドに任せるかを判断する体制を取っている。依頼者からは「悩み相談から討伐依頼まで何でも受け付けてくれるから助かる」と評判も上々であったりする。
街が貿易路の中継地であることから、ギルドのネットワークを通じて[世界各地の最新情報]も逐一収集、各業種が必要としている情報毎に精査してに各商人に有料で発信している。
 [諜報機関]としても機能しており、裏ではこちら側のCIAやKEBIも真っ青の諜報活動も行って対立する主神派勢力の力を削ぐ事にも尽力している。
クレア曰く「商売人にとって最新の情報は1番欲しい物じゃ。何処で何が過不足しているかが分かればより効率的に利益をだせる。より多くの正しい情報を得れば、それらを元に売れるであろう商品を買入ておく事も容易くなるしの。主神派は好かん。魔物は悪であり人類を滅ぼすとかぬかしている一方で、同じ種族間でも親魔派であると言うだけで静かに暮らしているだけの人々を悪魔の手先として殺戮を繰り返しておるしの。前魔王時代の魔物的な行いをしているのはもはや主神派じゃ」
元々は新商品を開発する際に市場調査をする為のシステムをここまで応用するとは、さすがはサバトを指揮している人物と言えようか。
…もはや、ギルドの枠を超えたものと化している事実はこの際おいて置くとして…なお、根っからの商売人気質で金関係にはとても五月蝿いがそれを指摘すると上級魔法が豪雨の如く頭上に降り注ぐので注意されたし。
…説明文が長々と続いてしまった。葵さんによって作者が溺死させられる前に物語の方に戻るとしよう。
「支部長殿、カイト・葵・紅の三名、只今帰還しました」
「依頼は無事完了致しました」
「敵部隊の詳細は此方にまとめておきました」
葵は持っていた羊皮紙の束をクレアに渡した。
「ふむ、後でじっくり読むとしようかの」
「欲しがっていた植物も取ってきたから追加報酬の方もよろしくな、クレア」
「タメ口はクレア支部長殿に失礼だろ、紅。仲間の無礼、誠に申し訳ありません。後程きつく指導しておきますのでどうかお許し下さい」
すかさず紅の言動を注意し、クレアに謝るカイト。ジパング出身だからだろうか?かなり礼儀だけは厳しい様だ。
「そんなに畏まらなくても良いと何度も言っておるじゃろうが」
「いえ、これも礼儀ですから。それにクレア殿には大恩もありますし」
「相変わらず頑固で生真面目じゃの〜。そこがお主の良いところじゃが…それにあれは此方も大いに助けられたし、お互い様と何度も言っておるじゃろうが」
「しかし…」
「それよりも私的に頼んだ物はアレかの?」
いまだに脱出しようと中身がウネウネ動き続けている袋を指さすクレア。
「そうです。探すのに苦労しましたが…」
苦笑いしながら葵が答える。
「山賊退治よりアレを探す方に時間がかかったもんな…」
紅が疲れた顔でそれに続いて口を開く。
今回カイト達が受けた[依頼]は次の街との間にそびえ立つ山脈を越える貿易路で最近頻発している[大規模山賊団]への偵察任務である。
この大陸を縦断する貿易路の安全確保は、それらを利用する商人達によって支えられている街にとっての最重要任務であるため、それらの街には貿易路上と街を保安する組織が存在する。このギルドが存在する街にも警備隊はもちろん存在している。
 しかし、最近被害を出している[山賊団]は主神派が親魔派の動脈の1つである貿易路封鎖を目的として傭兵崩れで組織した[大規模部隊]であった。
そのため兵士としての練度は高く、装備も[警備隊]よりも充実していた。せいぜい中規模程度の[盗賊]退治を主任務としている[警備隊]では人数、装備、練度の全てに対して劣っていたため、討伐しようとしても無駄に隊の損耗率が上がるだけであった。そのため今回ギルドと警備隊合同の大規模討伐隊を組織しての一斉摘発を予定している。今回の任務は敵部隊の根城の確認と表向きは関与を否定している教会との因果関係の調査。いわゆる完全根絶のための[内偵調査]であった。
「調査ついでに会敵した部隊主力の殲滅と主メンバーの捕獲、教会と敵別働隊へは当初の計画通り囮情報を流しておきました」
つまりは偵察隊だけで当初計画されていた事の半分以上をやってのけたと言うのか…
「主力兵士は無力化した後、転送魔法にて男を要望していた魔物の皆さんの所へもれなく送っておきました」
送られた兵士達は嬉々とした魔物達に搾り取られ、今頃は親魔派に鞍替えしていることであろう。ご愁傷様である。
「…」
「奴がこっち側でよかったぜ…」
「主力は総勢50人は居るって話だったろ…」
「…彼らなら50は軽いだろ…援軍としてギルドから派遣された時、教会精鋭騎士100を3人で無力化したって話だぜ…」
「…あの話マジだったのか…」
ギルド内が騒然としている中、クレアだけは透視魔法で袋の中身を確認しながら
「やはりやりおったか。ボーナス用意しておいて良かったわい。これで敵は雑魚だけになったの〜特別追加料金を街に請求するとするか。」
とにやけ顔で言った。袋の中身を見てその顔になったのか、上乗せする料金を計算してなったのかは不明である。
「あの人泣きそうだな」
これから来る現実を想像しているのであろう。紅が苦笑いしていた。
街の財務関係をを担当している[この町を治める魔物の夫]の泣き顔が目に浮かぶ。
「何を言う。想定される人的被害が相当数減ったんじゃ、補填予算の2割くらいは貰っても良いじゃろ」
「一体いくら街からふんだくる気ですか…」
「ところで例の捜し物について何か収穫はあったのか?」
クレアがこれまでにゆるんでいた顔をしき締めて聞いてきた。
「いえ、今回も外れだった様です…」
「そうか…」
「一刻も早く見つけないと…」
「あせっても仕方あるまい。シーフギルドの情報網でも未だ何も掴めていないんじゃ…こちらも全力を上げて調査しておる。すまんがもう少し待っていてくれ」
「すいません。本来ならこちらが調査するはずのことをお願いすることになってしまって…」
そういって深々と頭をさげるカイト達。
「頭を上げてくれ。これはワシのギルドに所属する代わりに提示した物。そのせいでお主らをここに縛り付ける結果となってしまっておる…本来ならこちらが頭を下げるべき事じゃ…」
「しかし」
「それにその[宝玉]とやらが奴らに悪用されれば恐ろしい事となる。これはもはやお主達だけの問題ではないのじゃ」
「申し訳ありません。私の[宝玉]のせいでこんな事になってしまって…」
葵が言う。その背中は心なしか小さく見えた。
[宝玉]と葵との間に何か深い関係があるのだろうか…
「ここにきてもう半年か…先は長そうだな…」
紅の言葉にカイトの脳裏に、ここに来るきっかけとなった出来事がよみがえる。それが全ての始まりであった…
いったい過去に何が起こったのか?そして宝玉とはいったい何なのか。
次回「回想」に続く…





13/06/22 01:03更新 / 流れの双剣士
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■作者メッセージ
ここまで読んでいただきありがとうございました。m(_ _)m
果たして居るかどうか分からないけど…
やっと第1話完成した…。
全然物語が進んでねーよ><
遅筆及び自分の文才の無さを痛感しました…orz
回想の内容は固まっているのですが、それを文章にするのにどのくらいかかるのか…><
誤字脱字及び改善点などがあれば感想にて指摘してくださると幸いです。
ちなみに…読んだ感想を書いていただけると作者は泣いて喜びます。
次回もお楽しみに!!(してる人居ないよなー絶対…)

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