連載小説
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闇夜の悦楽
すずしろさんがお風呂か等あがった後、オレもまた風呂に入ってあがっていた。寝間着用に持っている黒地の浴衣を羽織り、袖を通し灰色の帯を巻きながら考える。

―おかしい。

流石にオレも違和感を抱かずにはいられない。何が、というとはっきりとはいえないがそれでもやはりおかしいと感じてしてしまう。
どうして今日に限ってこんな目にあっているのか。どうして結界の範囲は徐々に縮んできているのか。どうして閉じこめられているのはオレなのか。
考えればきりがない。そもそも理解すら及ばないこともある。頭を悩ませたところで解決策なんて思いつくはずもなく、これでは手も足も出ない。

…仕方ないか。

考えるのをあきらめて部屋に戻るとすずしろさんが座っていた。蛇の体はそれなりの広さのある部屋に横たわり、灯籠の明かりに白く照らし出されていた。夜の闇の中真っ白に輝くその姿はとても神秘的で思わずため息が漏れる。
だが、一つ不可解なことがある。

なぜ、側には布団が敷かれているのだろうか。
なぜ、布団の上には枕が二つあるのだろうか。
なぜ、すずしろさんは襦袢姿なのだろうか。

普段の真っ白な着物とはまた違う露出の少ない襦袢姿。だがその布地は薄くよく見れば肌の色が透けて見える。襦袢自体下着のようなものなのだからその下は何もつけていない。

「お待ちしておりましたよ、ゆうたさん」
「すずしろさん…?」
「もう夜も遅いでしょう?僭越ながらお布団の準備をさせてもらいました」
「…なら、なぜ枕が二つあるのでしょうか」
「布団が一つしかありませんでしたからね」
「枕もオレ用の一つしかなかったはずでしたが…」
「枕は持参したものです」

きっと街へ行った時に自宅へと寄って持ってきたのだろう。だが、なぜわざわざ枕を自宅から持ってきたのか。そこまでしてくれるのなら助けを呼んできてくれてもよかったというのに。
枕が二つ。布団が一つ。そしてここにいるのはオレとすずしろさんの二人だけ。それが何を意味しているのか分からないほどオレも鈍くはない。
蛇の体で這いずるようにすずしろさんはオレの隣へすり寄ってきた。

「夜は長いものですし、蝋燭代も馬鹿になりません。早いところお休みになりませんか?」

そう言いながら向けてくる視線には熱が込められている。潤んだ瞳、ほんのりと朱に染まった頬、艶やかな唇に甘く紡がれる言葉。手を伸ばせば触れることができ、押し倒すことすら可能な状況で美女にすり寄られてはたまらないものがある。

「だ、男女七歳にて同衾せずといいますからね!オレは居間で寝ますからどうぞすずしろさんはここの布団で寝てください!」

だが結局そんな度胸がないのがオレであり、慌てて部屋を出ていこうと後ろへ下がる。例え相手が人外だろうと一人の女性。親しかろうが弁えるべきところは弁えなければいけないだろう。
だが。

「あぅっ!?」

その足は進まなかった。進まなかったのは足だけではなく体も、頭すらもこの空間から出られない。


なぜならそれは―オレの体の行く先を阻む見えない壁ができていたから。


「…嘘」

振り返り触れてすぐさま理解する。これは神社を覆っていた結界と、先ほど玄関で遮っていた結界と同じものだということを。神社を囲んでいたそれが今はこの部屋の出入り口を塞いでいる。行き来できる空間が縮んできているその理由はただ一つだけ。



「逃げないでくださいよ、ゆうたさん」



オレを捕らえることに他ならない。この結界を張った人物が誰かなんてどれほど鈍くても目の前の女性しか思い浮かばない。
すなわち―白蛇のすずしろさん。彼女は最初からオレを閉じこめるためにここに来てようやくその目的を果たしたという事になる。

「貴方だったんですか…この結界はっ!!」
「ええ、そうですよ」

オレの言葉に悪びれることなく彼女はうなずいた。

「…結界をとくことはできない、なんて言ってたのにですか」
「嘘は言ってませんよ。私は自分の作った結界しか扱えないと言っただけでとくことができないとは一言も言ってませんからね」

確かに彼女はそんなこと一言も言ってなかった。だがこんなの嘘と大して変わらない言葉の綾ではないか。

「何で、こんなことを…!?」

本当は―気づいていた。
相談した時すずしろさんは唯一外との連絡手段である十手を取り上げた。よくよく考えればそれはおかしいことだった。この町には神通力の仕えるカラス天狗の先輩がいる。それに九尾の稲荷であるいづなさんもいる。どちらも人間よりも遙かに格上だ。先輩は物知りだし神通力で結界をどうにかできるかもしれないし、いづなさんに至っては神様と崇められる存在だ。そんな彼女の手を借りればこんな壁たやすく消し去ることもできよう。
だというのに先ほど連絡しようとしたときにタイミング良くすずしろさんんが現れた。それだけではなく落とした十手をそのままに戸を閉めた。
その二人に頼るための手段を奪う理由は。
助けとなる人を呼ぶための手段を取り上げた意味は。



―オレをここに閉じこめるために他ならない。



最初は神社から、そして徐々にその空間を狭めていく。行き来できる空間は限られ最終的に逃げだす気力すら起きなくなる。それはまるで締め上げ獲物を弱らせる蛇のごとく、オレを徐々に追いつめていった。
透き通っているその瞳が濁っているように見えるのは気のせいではないだろう。
染み渡ってくるその声色が粘ついてくるように思えるのは勘違いではないだろう。

「ゆうたさんはここにいるべきですよ。同心なんて危ない仕事ですからね、ここにいればもう安全です」
「別に閉じ込められてまで守られるほど危なくはありませんけど」
「嘘」

すずしろさんはオレの頬に手を添えた。指先がなぞる様に一か所を優しく撫でる。そこには今は何も残ってないがかつて失態で負った太刀傷のある場所だ。

「もう治ってしまいましたがここに怪我をしていたではありませんか」
「たかだか傷の一つ二つでとやかくいえる仕事じゃありませんよ。それにこの程度、治るのなら気にすることでもありませんし」
「だからですよ」

すずしろさんは真っ直ぐオレの瞳をのぞき込んできた。慈愛あふれるような目つきでありながらも剣呑に感じられる光を宿した瞳。害意はなくとも背筋が震える。死ぬ危険がないとわかっているはずなのにどうしてこうも怖いのだろうか。

「同心だからという理由で無理をして欲しくないんです。私は、ゆうたさんに傷ついて欲しくないんです…」

そこだけ聞いていればとてもきれいな事だった。オレの事を大切に思ってくれる、とても優しい女性の言葉だった。頬に添えられた指先は暖かく、愛する者へとするような手つきは心地いい。だが



「―それ以前に、私以外の女性と関わって欲しくないんです」



氷の手で心臓を捕まれるような、生物として根本的な恐怖心を煽るような声色にぞっとした。

「同心ですから町の人と仲良くすることも大切なんですよ」
「それなら町にいないあの稲荷はどうしてですか?」

それはこの神社とは正反対の場所に位置する神社に奉られている九尾の稲荷―いづなさんのことだろう。

「随分と親しげにしていましたねぇ」
「…見て、いたんですか?」
「ええ、もうばっちりと…」

その様子を思い出しているのかすずしろさんは目を細めた。ちろりと覗く舌にこれから喰い殺さんとする蛇の姿を連想する。あの体に締め上げられて体中の骨をへし折られ、あの桜色の唇を開いて飲み込まれる。そんなあり得ない事だとわかっているのに一度感じた恐怖心は簡単には消え去らない。

「私にはゆうたさんを包み込めるふわふわの尻尾はありません。ですがゆうたさんを抱きしめてあげられる尻尾なら私にもありますよ…?」

するりとすずしろさんの尻尾が延びてきた。真っ白な鱗の生え揃ったそれは蝋燭の明かりに反射し暗がりでもその白さを見せつけるように輝く。やや堅く冷たくも美しいそれは頬を撫でて首筋にからみつく。このまま力を込めればたやすく首を折られてしまうことだろう。

「ひんやりとして心地いいでしょう?これから暑くなってきますからね、夏場ならもっといいかもしれません。それに…私はゆうたさんをもっと、気持ちよくしてあげますよ?」

真っ白な肌を朱に染めて興奮を隠せない娼婦のような色香を醸し出す。その姿は神聖な巫女という姿には相応しくない。だが背徳的な姿だからこそ見ているだけでも背筋が粟立ち、欲望が刺激される。

「ですから」
「あっ」

首に掛かった尻尾が引かれオレはすずしろさんの方に倒れ込んだ。健全な男子高校生のそれなりの重さのある体をたやすく受け止める。細い腕は首へと回され彼女のきれいな顔が近づいた。



「ゆうたさんは私だけを見ていればいいんです。私だけがゆうたさんを見ていてあげますから」



とても素敵な言葉だろう。余りに素敵すぎて寒気がしてくる。
恍惚と紡がれた言葉は紛れもない愛の言葉。だがその愛は純粋というにはあまりにも濁っている。
歪んでいる。
壊れている。
それは正気の沙汰じゃない。
それは異常に他ならない。
彼女の囁く愛の言葉は―彼女自身の欲望の固まりだ。
嬉しいかと聞かれれば嬉しいと答えよう。こんなに真っ直ぐに大切だと言ってくれる女性がいるなんてオレにとってはこれ以上ないほど幸福なことだ。

白蛇のすずしろさん。

気だてが良くて優しくて、料理上手で世話焼きで、そして何より美人。人ではなくとも人以上の美貌をもつ彼女に言い寄られれば誰だって頷きたくなる。
だがこんな状況で言い寄られてうなずけるほどオレの頭は軽くない。

「すずしろさん…っ」
「私が、傍に居てあげますからね…♪」

体に尻尾がからみついてくる。人間の胴ほどの太さをもつ蛇の体だ。肉と鱗でできたそれを引きちぎることなどできないし、徐々にきつくなってくる締め付けから逃げ出すこともできそうにない。浴衣で鱗を滑らせられるかと考えるが抜けたところでこの結界から出ることは叶わない。
まさしく蛇に絡みつかれた獲物と同じ。じわじわと嬲り尽くされ飲み込まれる時を待つだけだ。
絡みついた尻尾がオレの体を抱き上げる。そのまま布団へと押し倒すと覆いかぶさるようにすずしろさんが体を寄せてきた。薄い布地に包まれた大きな膨らみが胸板で柔らかく潰れる。

「ふふ♪ゆうたさん…♪」

愛おしげに名前を呼び覗き込むように顔を寄せてくる。見つめてくる二つの瞳から視線を逸らすように顔を背ける。するとすずしろさんは両手でオレの顔を包み込むと次の瞬間彼女の顔が目前に広がった。

「んっ!」
「ちゅ♪」

口づけをされたと気付くのに時間はかからなかった。押し付けられた柔らかな唇。柔らかくほのかに甘さを感じさせるそれは重なるだけではなく擦り合わせるように何度も何度も押し付けられる。

「ん♪ちゅ♪……む、んんっ♪」

口づけは激しさを増し、ぬるりと湿った唇と違う柔らかさを持った舌が割り込んでくる。ねっとりと絡みつくような唾液が流れ込み、彼女の舌がオレの舌へと延びてきた。触れ合うと嬉々として絡みつき、啜り上げられる。一方的に、蹂躙するかのように。

「ん、ちゅ…♪…んん♪」

流し込まれる唾液を飲み込み味あわされる口づけの快感に頭が蕩けてくる。目の前には靄がかかってきたというのにどうしてだかすずしろさんの姿だけははっきりと映る。
何度も何度も唇を重ねる情熱的な口づけ。普段のすずしろさんからは想像できないような激しい行為に抵抗することすら忘れてしまう。
ようやく唇を離す頃には暗がりでもわかる程真っ赤に染まった彼女の顔があった。

「ふふ…ゆうたさぁん♪」

甘ったるい声で名前を呼ばれ細い指先が頬を撫でる。顔を背けることすらできずにいると彼女は顔をゆっくりと下げていく。首筋に顔を埋めるように寄せ、今度は首筋に吸い付いた。

「んんっ!!」
「ちゅ♪む………れろ♪」

舌で掬い上げた唾液を塗りたくるように肌に擦りつける。それだけでは飽き足らず強い力で吸いついた。

「ん、ちゅ♪…うふふ♪素敵な証です♪」

音を立てて唇を離すとねっとりとした唾液が滴り肌を伝っていくのがわかる。そこを見つめてすずしろさんは満足そうに頷いた。瞳には内出血のように赤く染まった首筋が映っている。
その瞳が今度は体へ向けられた。

「細くて、本当に逞しい体…とても男らしくて好きですよ♪」

愛の言葉を紡ぎながら白魚の様な指先が肌に触れるたびに体が震える。くすぐったいような、むず痒いような、それでいて体の奥の欲望を煽る刺激。やめてくれと言えないのはこの状況下で何をすべきかわからないからか、はたまたこの先の事を望んでいるからか。

「敏感なんですねぇ♪」

オレの反応を見てすずしろさんは笑った。

「こちらはどうでしょうか」
「え、やめっ!!」

すずしろさんの指先がオレの下腹部へと伸ばされて怒張したそこへと重なった。

「はっぁ!」

口づけと女体の感触で張りつめてしまった男の象徴。そこへ走るのは電撃のような感覚。ただ触れられただけだというのに敏感なその部分はすずしろさんの指先の感触を、温かな体温をはっきりと伝えてくる。

「触っただけでも反応してくれるんですね♪そんなに感じてくれると嬉しくなっちゃいます♪」

浴衣を引っ張られ下着を取り払われた。露わにされた男の部分。そこへ愛おしそうに視線を送り、すずしろさんは顔を近づけた。すんすんと鼻が動いているところを見るに匂いを嗅いでいるのだろうか。

「とってもいやらしい匂いがしますよ…♪」

恥ずかしい。そう感じてもオレの手を捕らえる蛇の尻尾からは抜け出せない。抵抗するにもできることと言えば否定するか顔を背けるかだけだ。

「…っ」

結局オレはその光景から目を離した。それでも顔は真っ赤に染まり、興奮は隠せない。本能と理性の入り混じる状態を見下ろしてすずしろさんは何を思っているのだろう。

「…んんっ!」

突然ふわりと筆舌しがたい柔らかさに包み込まれ変な声が出た。何かと思って視線を向けるとそこには母性の象徴である大きな胸に挟み込まれるオレのものがあった。刺激としてはそこまでではないが目に映る光景はあまりにも淫靡なもので目が離せない。

「どうですか、私の胸は。これでも結構自信あるんですよ」

肌蹴た胸は柔らかくオレを包み込みながらその全貌を晒している。真っ白な素肌や薄桃色の乳首までを隠すことなく見せつけている。添えた指先が埋まるほどの柔らかさをもつその胸をもみしだきたいと男だったら誰もが思うことだろう。オレもまたその一人であり、故に目の前で行われることを止める気にはなれなかった。

「ん、しょ…気持ちいいですか?」

滑らかな素肌に擦られる。両側から隙間なく密着するほど柔らかい感触に腰が震える。穏やかでありながらも確実に高みへと押し上げていく快感だ。気持ちよくないはずがなかった。

「ふふ♪たまらない顔をして…とってもいやらしいです♪そんな顔にしてあげられるのは私一人なんですからね?」

言い聞かせるように囁くとすずしろさんは胸を左右に揺らし始めた。柔らかくも重量のある胸が擦りあい、みっともなく体を震わせる快感を叩き込んでくる。右に押し付けられ、今度は左に擦られ、かと思えば両側から押し付けられる温かな圧力に今にも果ててしまいそうだった。
出したい。射精したい。何も考えず本能のまま欲望を吐き出したい。
だけど、それは敗北も同じ。
耐えなければ。我慢しなければ。理性に縋り付いて感情で抑え付けなければ。
だけど、してどうなるのか。
すずしろさんから逃げることなど無理だろう。結界以前にこの拘束すらとくことは叶わない。助けを求めるにも十手は既に失っている。

なら、受け入れるべきなのか。

それでもやはり認めきれない自分がいる。求められることが嬉しいはずなのにこんな求められ方を拒んでいる自分がいる。馬鹿で、へたれな自分でも絶対に曲げられないものはある。

「このまま気持ちよくしてあげましょうか?ゆうたさんが言ってくれれば何度だって胸でしてあげますよ。ですが―」

突然柔らかな感触が離れていき絶頂へと押し上げる快感も止まる。何かと思えばすずしろさんは体を起こし、見せつけるかのように襦袢に手を掛けた。帯をといて脱ぎ捨てると襦袢は柔らかな音を立てて畳の上に落ちた。
目の前に晒されるのはすずしろさんの裸体。露出の多い服に包まれていたその体には無駄な肉はなく、また大きくも整った胸や悩ましい曲線を描く腰は見ているだけで高ぶってくる。そして途中からは真っ白に輝く鱗を生生やした蛇の体となっている。下半身が蛇であっても関係ないほどに美しく、異形だからこそ人にはない魅力があり目が離せなくなる。

「―私は、もっと気持ちよくしてあげられるんですからね…♪」

恥ずかしげに頬を染め視線を逸らすすずしろさん。その仕草に愛おしさが湧き上がってくるのだがそんな感情を抱くべきなのかと戸惑ってしまう。
一糸まとわぬ姿となった彼女は二本の腕を伸ばし、そこを指先で広げた。

「見て、下さい…」

蛇の体との境目、人間ならば股間にあたる部分を見せつけてきた。
女性として、もっとも大切な部分であるべき場所。肌に一筋の線が走っているだけで毛は生えてないそこは淡い部屋の光を反射する粘っこい液体で湿っていた。

「…っ」

思わず唾を飲み込んでしまうほど魅力的。気づけば荒い呼吸をしながらオレはすずしろさんを見つめていた。
男の本能が喚いて止まない。彼女が欲しいと、犯せと。人外であることなんて関係ない。目の前にいるのは一人の雌だと。

「興奮してくださっているんですね…とても嬉しいです♪」

ゆっくりと体を近づけてくるすずしろさん。オレの顔を覗き込むように身を寄せるとそれに伴い彼女の腰もまた近づいてきた。女の部分から滴った愛液はオレのものへと降りかかり、異常な熱を伝えてくる。

「すずしろさん…っ」
「私の純潔を差し上げますから…ゆうたさんの初めてを貰いますね♪」

どうぞ、なんて言うはずがなかった。
やめろ、とも言うことはできなかった。
なぜならどちらを口にしたところでこの白蛇は行為を中断するつもりはなかったのだから。

「あ、ぁはぁぁぁ…♪」

腰を押し付け、オレのものは徐々にすずしろさんの中へと埋まっていく。徐々に進むたびに桜色の唇から漏れ出したのは甘く艶のある声だった。彼女はじっくりと体重をかけていきオレ自身を飲み込んでいく。まるで蛇が獲物を丸呑みにするかのような動きは膣内のきつさと熱く滾った粘液の感触を伝えてくる。

「どうですか、ゆうたさん……今、ゆうたさんのおちんちんを食べちゃっているんですよ♪」

恍惚とした表情でオレを見下ろすすずしろさん。それでも腰の動きは止まらず途中で何かに引っかるが構わず彼女は一気に腰を落とした。

「んふっ♪ぁああ……っ♪」
「っ!!」

全てをすずしろさんに飲み込まれてしまった。柔らかな肉が強く締め付け歓迎する様に抱きしめてくる。だが先ほどの感触は、今引きちぎったのは紛れもない彼女の純潔だろう。
女性の初めてとなる名誉あること。本来なら喜ばしいのだがこれはあまりにも一方的な行為だ。素直に喜べるほど単純ではないが、何も思わないほど薄情でもない。

「大丈夫ですか…?」

思わずそう聞いてしまった。するとすずしろさんはゆっくりと顔を上げた。

「大丈夫ですよ…ふふ、本当に優しい人♪」

痛みなんて感じていないのか彼女は恍惚とした表情でオレを見つめている。唇の端から滴る唾液が薄暗い空間内でも艶やかに光り首へと伝って胸元に下りた。それだけではなく聞いているだけで高ぶらせるような艶やかな声を漏らし、赤い舌がいやらしく蠢く。
普段から見せていた優しい素振りと清楚な姿からは想像もつかない淫らな姿。神様に仕える巫女の厳粛さを捨てた女の姿は背徳的で興奮する。
だがそれだけではない。
耳を犯す甘い言葉。
舌に残る蜜の様な唾液。
鼻を刺激するむせ返りそうな雌の匂い。
そして肌に伝わってくるすずしろさんの感触。
それらがまとまって体に流れ込んできては我慢できるわけもなく今にも爆発しそうだった。

「ん、はぁあ♪ゆうたさんのおちんちんびくびくしてますよ♪入れただけなのに、もう私の中に出したいんですね♪」

いやらしい言葉を桜色の唇が紡いでいく。大きな胸を揺らして白い肌には汗をにじませ、むせ返るような甘い匂いを漂わせる目の前の雌。その姿は魅了的で、淫らで、とても美しい。

「このまま私の中でぐちゃぐちゃになるまで擦ってあげましょうか?それともいーっぱいきゅっきゅして欲しいですか?ゆうたさんがしたいこと、なんでもしてあげますよ♪」

とても優しく、それでも淫らにすずしろさんは笑っていた。彼女は言葉通りオレの求めることならなんでもしてくれるのだろう。オレが求めることが、感じることが喜びに通じているみたいだ。
だがこれ以上の快楽を叩き込まれればもう限界だ。
もしも望んだ形でこうなったのなら何も文句なしにオレはすずしろさんを求めていただろう。だが、こんな裏切りにも近い行為を許容できるはずもなくオレは顔を背けただ一言口にした。

「もう、やめましょうよ…」
「…………そうですよね」

息も絶え絶えなオレの言葉を聞いてすずしろさんはゆっくりと顔を近づけてきた。見れば見るほど美しいと思えるのだがその美しさが今は恐ろしい。そして桜色の唇が開き耳元で囁いた。



「もう、やめられませんよね…♪」



甘く蕩けるような声色で囁かれた言葉はオレの感情とは真逆のものだった。オレの意志を自分の言葉で塗り替えていくだけではなくすずしろさんは腰を押し付けてくる。既に全て入っているというのにさらに飲み込もうとすると柔肉が熱烈に歓迎してきた。カリ首に引っかかっては舌のように舐め上げて、奥へ奥へと誘い込んでは甘美な快楽を与えてくる。

「ぅぁあっ…!!」
「あぁあっ♪ゆうたさんのおちんちん膨らんできてますよ…♪私の中に射精したいんですよね…遠慮せずに一杯出してくださいっ♪」

甘やかすような声色でも一方的に搾り取る様な腰の動き。蠢き律動する柔肉は早く出せと言わんばかりに締め上げて絶頂へと押し上げてくる。
身動きすら取れないこの状態。極上の美女に求められるという状況。オレの意志を無視した行為であっても叩き込まれる快感には抗えなかった。

「んんっ♪」
「っ!!」

一際強く腰を打ち付けたその瞬間、オレの意識は真っ白に染まった。
下腹部で滾っていた欲望が一気に駆け上がり体を震わせる。与えられた快楽に応じて吐き出される、今までにない射精は恐怖すら感じた。搾り取られるように締め上げられ、自分の全てを飲み込まれていくような恐怖だ。激しく、強烈なそれは相応の快楽を伴っての意識を染め上げていく。

「やぁあああああああああああああああああ♪」

真っ白な髪の毛を振り乱しすずしろさんは弓なりに体を逸らした。びくびくと大きく体を震わせるとそれに伴い膣内もまた締め付けてくる。まるでもっと欲しいとねだるように蠢いては先端に重なった子宮口が吸い付き、啜り上げていく。

「出て、るっ♪ゆうたさんの精液が出てるのが、わかりますっ♪」

すずしろさんの子宮を汚し尽くしていく。何度も脈打ち吐き出す度に嬉しそうに膣内で締め上げ、オレの意識を絶頂から下ろすまいとしている。まるで、徹底的に悦ばせ、二度と離れることなどできない体へ作り変えるかのように。
ようやく絶頂の波が引き始めると全身から力が抜けていた。初めて経験する様な射精に体がついていかないらしい。人外との交わりなのだからそれは仕方ないことかもしれない。

「はっ、ぁ…」

絶頂が引く中で、体の力が抜け意識もはっきりとしてくると胸の奥から湧き上がる感情に気付く。
本能が求めていた快感。望んでいない充足感。極上の美女へと種付けした征服感。なす術もなく搾り取られる屈辱。
あまりにもみじめ、それで、みっともなくて。
とても恥ずかしく、なのに、気持ちいい。
悦ぶべきなのか嘆くべきなのか、怒るべきなのかもわからない。それでも、すずしろさんは嬉しそうにオレに笑いかけてきた。

「たぁくさん出しちゃいましたね♪私のお腹の中、ゆうたさんの精液で一杯ですよ♪とっても温かくて…幸せです♪」

頬に手を当て恍惚とした表情を浮かべるすずしろさんは本当に幸せそうだった。思わずこちらもつられて笑みを浮かべてしまいそうなほど温かな笑みだった。
だけど、それはあまりにも一方的で、あまりにも勝手な幸せ。オレの意志を踏みにじり、自身の欲望を満たして得たものである。

「それだけ気持ちよかったってことですね♪」
「…」

すずしろさんの甘い言葉にオレは顔を背けた。それでも彼女はくすくす笑う。

「ねぇ、見て下さいよゆうたさん」

指先に青い炎が灯っている。それは以前九尾の稲荷であるいづなさんが明かり代わりに見せてくれた炎と似ているが、違ったものだった。青く光るその炎はなぜだか本能を刺激する。あれは危険だと、触れてはだめだと警鐘を鳴らす。

「これが何だかわかりますか?」

ここの世界の妖怪の知識なんてまったくないオレにそんなことわかるはずがない。それでも彼女は関係なく指先を揺らし、青い炎を見せつける。体に近づけられても熱くはない。ただ、熱はないが何か嫌な何かがある。普通の炎にはない、禍々しい何かが。

「ふふ、すぐにわかりますよ」

あろうことかすずしろさんはその指先をオレの胸に押し付けてきた。指先についた炎をオレの肌で拭うかのように。

「…ぁああっ!!」

刹那、体の奥から何かが湧き上がってくるのがわかった。先ほど射精したというのに落ち着いた意識がざわめいた。頭の中はただ一色に染め上げられる。
燃え盛るように湧き上がる欲望を、快楽という潤いを欲した乾いた本能を満たしたい…そのために



―すずしろさんを、犯したい。



「わかりますか?それが私の気持ちです。私が、ゆうたさんに向けるものですよ」

そしてすずしろさんは再び手に青い炎をともした。だが今度は先ほどのように指先ではなく手の平に、大きさも野球ボールほどのものを。
指先だけの炎であれだけ心を掻き乱して…続いてあれに身をやかれたらどうなってしまうのか。考えるだけでもぞっとする。逃げ出したいのにいまだに彼女の尻尾はオレの体を捕らえたまま離さない。

「私の事が欲しくなってくるでしょう?でも、私はその何倍もゆうたさんのことが欲しかったんですから…」

恥ずかしげに笑いかけて囁いた。



「受け取ってくださいね♪」



すずしろさんはオレの心臓部に青い炎を押し込んだ。

「あぁああああああああああああっ!!?」

次の瞬間、部屋に絶叫が響き渡る。傍で聞けばうるさくてしょうがないほどのものなのにすずしろさんはうっとりとこちらを眺めながらその声を聞いていた。
熱い。まるで炎が燃えてるように体の内側が熱い。ただその熱は体を焦がすようなものではなく下腹部に、男の本能を刺激する。先ほど以上の熱量で、先ほどとは比べ物にならないくらいの渇きをもたらす。

「押し倒したいでしょう?私を、汚したいでしょう?」

耳元で囁かれる甘い誘惑。体の内側で燃え上る熱い欲望。快感という潤いを与えてくれるのは目の前にいるすずしろさんのみ。

「いいんですよ」

ひんやりとしたその鱗は火照った体を心地よく冷やしてくれる。だけど足りない。この異常な熱をもっと冷やしてほしくて、この体の底から燃え上る欲望を消し去りたい。

「ゆうたさんになら何をされてもかまいませんから…♪」

咎める人は誰もいない。
邪魔する人は誰も来ない。
誰も入れないこの空間内ですずしろさんはオレに何をされても構わないと言っている。この身が焦げそうな欲望のはけ口になろうとそれを恍惚とした表情で受け入れてくれるに違いない。抑えきれない本能をぶつけようと極上の体で受け止めてくれることだろう。
なら。
それ、なら…っ。

「すず、し、ろ…さん……」
「はい♪」

淫らに笑って答えを待つすずしろさんを前にオレは―

「―…ぁっ…」

伸ばした手を下へと落とし布団を強く握りしめた。こんな今更意味もない行為が精一杯の抵抗になると知って。
怖かった。このまま燃え盛る欲望に身をゆだねてしまえばオレではなくなってしまいそうだったから。踏み込めばオレはすずしろさんなしには生きていけなくなってしまう。片時も、一瞬すらも離れられなくなってやがて神社どころかこの空間からも抜け出せなくなってしまいそうに。
オレの行動にすずしろさんは―楽しそうに笑っていた。

「本当に、素敵な人…♪」

指先が胸板を撫でた。先ほど青い炎を押し込んだ心臓部をなぞるように。

「真っ直ぐな心とその姿…とても魅力的ですよ」

なぞっていた指先が徐々に上へと進んでくると唇に添えられた。感触を楽しむように撫で行くと今度は頬に添えられる。優しい力だが顔を背けさせまいと固定する様に。

「だからこそ、私だけを見て下さい」

真っ直ぐ向けられる美女の視線。突き付けれたのは好意一色に染まった気持ち。

「欲しいんです、ゆうたさんの心が。私だけに向けてくれるその優しい心が」

あまりにも純粋すぎる求めは傍から見たら歪み切ってしまっている。

「他の誰にも向けないでください。私だけに……私だけを、愛してくださいっ♪」

言い切るのと同時にすずしろさんは腰を強く打ちつけてきた。途端、柔らかな肉壁の中へと埋まっていく。先端だけではなくカリも根元も全てがすずしろさんの感触に包み込まれる。奥へ奥へと蠢く膣内が締め付け、舐め上げ、精液を求めるように快感を叩き込んできた。

「あぁあああっ!!」

絶頂を迎えて敏感になった神経に叩き込まれる快楽。それは耐えがたいものであり頭の中までを真っ白に染められる。強烈で、甘美な感覚は容赦なくオレを二度目の射精へと押し上げていく。

「ゆうたさんっ♪好きですっ♪大好きですっ♪愛してますっ♪」

一心不乱に腰を打ち付け白い髪の毛を振り乱す美女。桜色の唇から愛の言葉を紡ぎながら本能の赴くままに体を躍らせる。すずしろさんは動きを止めることなく腰を振る。欲望の滾ったオレの体を蹂躙する様に。

「なんでもしてあげますからっ♪もっとずっと気持ちよくっ♪してあげますからっ♪いっぱい、出させてあげますからっ♪」

腰の動きは止むことなく、むしろ激しさを増していく。それに応じて快感も強烈なものが叩き込まれてくる。止めようにもあまりの強さに身悶えし、指の一本すら動かせない。
彼女は徹底的に犯しつくすつもりなのだろう。オレがすずしろさんなしには生きていけない体にするために。

「は、ぁああっ?!」

叩き込まれる快感とはまた別で再び体の奥から欲望が滾ってくる。見ればやはりすずしろさんが腰を躍らせながらオレの胸に―心臓部に青く燃える炎を押し付けていた。先ほどオレの体に押し付けたのと同じもの、欲望を滾らせる禍々しい炎を。

「まだ、足りませんから…」

掌に青い炎をともしたすずしろさんはオレを愛おしそうに見つめてくる。瞳の中に炎が揺れ、炎の光で影が生まれて艶が出る。陰影が灯る姿はさらに美しさを際立てた。
見惚れるような美しさ。だが、今はその美しさが恐ろしい。



「私の気持ちこの程度では済みませんから…全部受け取ってもらいますから…ね♪」



青い炎に照らされた顔はとても淫らに笑っていた。









あれからどれほどの時間が経ったことだろう。境内どころかこの部屋から出ることすら許されないオレには確かめるすべはない。
真っ白な鱗の生えそろった蛇の体に抱きしめられ、二本の腕が後頭部へと回される。愛おしそうな手つきで頭を撫でるとどちらともなく唇を重ねあう。もう何度目かはわからないほどの口づけを、何度囁いたかわからないほどの愛の言葉を紡ぎながらオレは今の今までずっとすずしろさんと体を交えていた。

「あ、んっ♪」

腰を突き上げ彼女の奥を突く。その度甘く艶やかな声を漏らして感じてくれる。そのことが堪らなく嬉しくて彼女を喜ばそうと何度も何度も腰を動かす。するとそれを抑えるように蛇の体が締め付けてきた。

「もう、ゆうたさんたら…そんなに激しくするとお腹の子供が驚いちゃいますよ」

そう言うすずしろさんのお腹は大きく膨らんでいた。その中にいるのはオレと彼女の愛の結晶。愛おしいオレ達の子供だ。
どれだけ出してきたのかはわからないが妊娠するには十分すぎるほどの精液を注いできた。一滴たりとも漏らさず彼女は喜んで受け入れていたのだからこうなることは当然だろう。

「ねぇ、ゆうたさん。このまま二人目もできちゃうかもしれませんね♪」

とても嬉しそうにそう言ったすずしろさんの耳元へと顔を寄せると囁いた。

「孕んでくださいよ、すずしろさん。オレと、貴方の子供を」
「んふっ♪そんなことを言われたら嬉しくなっちゃいますよ♪」
「なって下さいよ…んっ」
「んむ♪」

唇を奪い、その先へと舌を差し入れる。甘くむせ返るような味のする口内を嘗め回し、互いの唾液を交わり合わす。にちゃにちゃといやらしい音を頭の奥まで響かせながら二人で舌を擦り合わせ、絡み合わせる。
何度も何度も、互いを貪り求めるように。
数十分は重なっていた唇を離すと唇の端から唾液が滴った。それをすずしろさんは舐めとり、オレもまた彼女の唇を舐め上げる。それだけでは止まず再び腰を動かしながらお互いの感触を心行くまで味わい尽くす。
理性のない動物の様な行為の最中。それでも互いの手を握り合い、そして時には言葉を紡ぐ。

「愛していますよ、ゆうたさん♪」
「すずしろさん。大好きですよ」

愛おしげな笑みを向けられ、オレは微笑み返すと頬から一筋の涙が伝い落ちた。
果たしてそれは嬉しさか、虚しさか、何の感情を込めたものだったのかはわからない。それよりも今はすずしろさんの事だけを考えて、感じていたい。その一心でオレはすずしろさんとの情事に溺れていくのだった。


           ―HAPPY END―
14/08/09 23:16更新 / ノワール・B・シュヴァルツ
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■作者メッセージ
ということでこれにて白蛇編完結です
逃げ場を失い、ずっと二人きり、今の今まで愛され続けた結果とうとう陥落いたしました
陥落というが堕落の方が正しいかもしれません
それが歪んでいても愛ならば、彼もそれで幸せなのかもしれません
それ故に今回もまたHAPPY ENDです

次回は今のところまだ未定ですが堕落ルートを再開させようかと思っております
ちなみに今のところ
現代編(黒崎家実家)
刑部狸
現代編
サラマンダー
図鑑世界編
ドラゴン
ジパング編
アオオニ、リザードマン

堕落ルート
リッチ
アルプ
ネレイス
人虎
アリス
キキーモラ
サラマンダー

を予定しております
完成次第投稿させていただきます

ここまで読んでくださってありがとうございます!!
それでは次回もよろしくお願いします!!

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