連載小説
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SUB STAGE01
 急がなければ、私は雲の間を縫うように飛んだ。愛しいあの人のことを考えると私の心はこの空よりも高いところへ飛んでいく。

「今行きますよ、旦那様。」

 私は目の前の巨大な雲を突き抜けて私を待つ人の所へ急いだ。



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 一つ仕事を終えた僕とイリーナは山中の村を後にある場所に向かっていた。本部からの連絡ではこの森を抜けた先の泉が待ち合わせ場所のようだ。

「ねーねぇ、やっぱ行くのやめない?別にこんなことしなくても仕事になるでしょ。」

 待ち合わせ場所に近づくとイリーナは露骨に嫌そうな顔で歩みを止めた、しかし僕はそれに構わず歩き続けた。

「こっこら、ちょっと待ちなさい。」

 イリーナが僕の袖に掴まる、しかし彼女の体は軽く僕の移動の邪魔にはならない。僕は彼女を引きずって歩いた。

「あの鳥頭と私とどっちがいいのよ。」
「仕事のパートナーとして組むには彼女の方がいいですよ。」

 イリーナが僕の手に鋭い犬歯を突き立てようとするのを避けた僕は彼女を肩に担ぎ歩く速度を上げた。すると視界が開け、澄んだ泉に辿り着いた。

「バカ犬……」

 少し拗ねた様子のイリーナを地面に降ろし今回の事件の報告書を取り出すとすぐに空から羽が落ちてきた。
 不自然な突風が吹き、ひどい音がすると、隣にいた筈のイリーナがなぜか数メートル先に転がっておりその顔には大きな鳥類の足跡がついていた。

「旦那様〜〜〜っっ!!」

 可愛らしい声が聞こえて僕の胸に空から少女が飛び込んできた。雪のような白い髪と翼を持つハーピーの少女は僕の口に頬に目に鼻に何度もキスをする。ふと地面に転がっていたイリーナを見ると、彼女は既に起き上がり拳を握り
しめ泣きそうな顔で僕を見ていた。

「セインから離れなさいよ鳥頭。」
「あら、イリーナさん居たんですか。」

 真っ白なハーピーは僕に抱き着いたままイリーナを挑発するように僕に体を擦り付けながらキスをしている。

 白いハーピー、彼女の名前は"ミリア・リトルリ"、白い髪と翼は生まれつきのものであり、本来体にあるはずの色が抜け落ちている。魔物としての能力が低く人間に捕まっていた彼女を僕が助けて以来の付き合いでイリーナよりも古い付き合いである。彼女が今日ここに来たのは理由がある。

「これが今回の任務の報告書です。」

 僕が報告書を手渡すと彼女はそれを素早く読んで、持ってきていた大きなカバンに入れた。彼女は僕が今の仕事、紅の猟犬として魔王軍に参加すると同時に魔王軍に参入してきた。そのときから彼女は魔王軍の、僕優先の連絡役としてとてもよく働いてくれている、仕事量で言えばイリーナの2.5倍位だと思う。

「お疲れ様でした。今回の経費です。」
 
 彼女から封筒を受け取り、報告は完了する。だが今日彼女に来てもらったのは任務の報告のためだけではない。

「イリーナ、少しの間どこかで遊んでいてください。」
「ふふ……別にここに居ても構いませんよ。」

 ミリアはイリーナに見せつけるように僕の首に舌を這わせ、僕は彼女の額にそっとキスをして彼女の頭を撫でた。確かに僕はミリアとも肉体関係を持っており、今までも時々彼女と体を重ねていた。今までは極力ミリアに見えない
所でしていたし、イリーナもミリアの命をつなぐためと黙認していた。だが今回はイリーナの目の前だ、イリーナの目の前で見せつけるかのようにミリアの愛を受け止め、その愛に応えている。僕の読みが正しければイリーナは今涙を必死にこらえているはずだ。横目に彼女を見ると彼女は俯いて拳を固く握りしめていた。そして僕の読みが正しければ彼女は涙を流し怒りに燃えた眼で僕を睨みこう叫ぶのだろう。


(オマエなんか大っ嫌いだ!!オマエみたいな浮気者なんか何処へなりとも行ってしまえ!!!)
「オマエなんか大っ嫌いだ!!オマエみたいな浮気者なんか何処へなりとも行ってしまえ!!!」


 彼女は走り去ってしまった。こうなることは予測できていた。彼女を傷付け遠ざけるのは僕の真の目的のためには絶対に必要なことだ。彼女は多分二週間は帰って来ない。友達の家に逃げ込むのに五日、部屋に引きこもって四日、友達に慰められて三日、僕に構ってもらおうと何処かの町で騒ぎを起こして二日といった所だろうか。自分で引き起こした事、覚悟はできていたとはいえ辛かった。張り裂けそうな胸の痛みに耐えているとミリアは僕を抱きしめてくれた。

「辛いなら連れて行ってあげればいいじゃないですか、本当に旦那様はお馬鹿さんだ。」

「連れて行ける訳が無いでしょう、これから僕がしようとすることはあまりにも危険すぎる。それにこれは僕の因縁だ、彼女を巻き込む訳にはいかない。ところで何をしてるんですか。」

 彼女は潤んだ瞳で僕を見つめ僕の股間をまさぐっている。

「いやそんなに危険なら最後になるかも知れないじゃないですか。ね、いいでしょ旦那様。私にも久しぶりにくださいよ、旦那様のお・ち・ん・ち・ん。」

「しょうがないですね。」

 僕はそう言って目の前の愛すべき少女に優しくキスをした。
12/07/18 00:12更新 / クンシュウ
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■作者メッセージ
とりあえずすいません。詳しくは後のほうで。
少し調整いれました。

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