連載小説
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後編
 ……今日も寮の屋上で、彼女は僕を待っていた。こういうことをするようになってから一ヶ月間、雨の夜以外ずっとこの場所だ。月を眺めている委員長に歩み寄ると、彼女もこちらを振り返り微笑む。黒いポンチョの裾が夜風に靡いていた。
 彼女は僕を抱き寄せ、頬を寄せてくる。髪の匂いが鼻をくすぐったかと思うと、首筋に熱い吐息がかかった。牙を剥き出しているのが分かる。注射の前の消毒のように、舌で首筋を拭われた。

 直後、一瞬だけ犬歯の冷たい感触を覚える。その後は脳内が快楽一色になった。牙が深く食い込んでいるのに、嫌な感じは全くしない。
 彼女の手が僕の下半身へ伸び、そっと股間を擦ってくる。ペニスを出せというサインだ。それに応えてファスナーを降ろしてパンツをずらすと、すでに勃起した僕のペニスが飛び出し、柔らかな手にキャッチされる。そのまま委員長の手で彼女のふとももへ導かれ、柔らかな脚に挟み込まれた。

「ん……ん……」

 ゆっくりと、血を吸われる。委員長は細い腕からは想像できないような力でしっかりとぼくを抱きしめ、ふとももをすりすりと擦り合わせてきた。柔らかい感触に挟まれ、吸血の快感と相まってペニスがじわじわと気持ちよくなっていく。ふとももだけでなく彼女の無防備な股間にも擦れ、やがてすべすべした脚がぬめりを帯びてくるのをペニスで感じた。委員長は濡れやすい。
 いくらか血を吸われ、吸血口を丹念に舌で舐められる。僕の首筋から口を離したとき、彼女はぎゅっと脚を閉じてきた。

 口からはくぐもった声が出ただけだったが、ペニスは悲鳴を上げた。白く奇麗なヴァンパイアのふとももの間で脈打ちが始まった。高貴な彼女の体を僕の体液が汚していく。委員長の華奢な体にしがみ付きながら、その快感を楽しんだ。
 気持ちいい。恍惚とした気分で委員長の顔を見ると、彼女は少し不思議そうな顔で、唇についた血を拭っていた。

「……血の味が少し、変わったような……」

 呟きつつ、彼女は僕から放れる。下半身に目を向けると、彼女の太ももは僕の出したものと女性器から滴ったものが混ざり、べっとりといやらしく糸を引いていた。それだけ出したにも関わらず、僕のモノはまだ上を向いて小さく震えている。雫の溢れる先端が、まだ快楽を求めていた。
 委員長はポケットに手を入れ、マッチ箱くらいのケースを取り出した。中からリトマス紙のような青い紙を出し、それをふとももに付着した精液に触れさせる。するとその先端がじわりと変色し、ピンク色になった。

「南原くん……!」

 彼女の表情がぱっと笑顔になる。それを見て何が起きたかすぐに分かった。

「小宮山さん、僕……」
「うん。インキュバスになったのよ!」

 興奮した様子の彼女に、僕の感情も高ぶっていった。ようやく来るべき日が来たのだ。
 インキュバスになった。それはつまり、ヴァンパイアである彼女と正式に恋人同士になれるということ。そして今までできなかったことができるということ。

「焦っちゃだめ」

 僕の高揚を察したかのように、委員長は僕の手を取った。

「初めてはベッドで、ね?」










 ……こうして、僕は委員長の部屋へ連れ込まれた。ルームメイトたちは彼氏の所へ行っているようで、丁度二人きりだ。さすが委員長が暮らしている部屋だけあってよく整理整頓されている。
 彼女はゆっくりと服を脱ぎ始め、僕も促されて裸になった。委員長は素っ裸の上に黒のポンチョを羽織る。ヴァンパイアは翼をマント状に変化させることができ、委員長はいつもポンチョ型にしているのだ。服を脱いだときにふっくらした白い胸を見ることができたが、すぐにその翼で隠されてしまった。
 見えている下半身の方は……ふとももまで愛液が垂れていた。さっきの分は拭き取ったのに、もう汁でぬらぬらといやらしく光っている。このふとももで、この脚で、いつも弄ばれてきた。そして今夜はとうとう、この蜜の源泉で搾り取られる。

 それを心待ちにしていた僕だが、服を脱いでから委員長の様子が少しおかしくなった。愛液滴る脚をもじもじと擦り合わせ、頬を赤らめている。いつもの意地悪な笑顔はどうしたのか、少し俯いて僕とベッドとを交互に見つめていた。

「小宮山さん……?」

 お尻の穴でするときのように、僕を寝かせて見下ろしながら犯してくれるのかと思っていた。だがそれにしては随分ともどかしい態度だ。

「あ、あのね、さ……悟くん……」

 ふいに、僕のことを名前で呼んだ。委員長はゆっくりとベッドに腰掛け、僕を見上げてくる。潤んだ瞳に一瞬ドキリとした。まさか委員長がこんな顔をするなんて。

「私、小学生の頃から……先頭に立って皆を引っ張ることが多かったから」

 彼女は頬を掻きながら照れくさそうに微笑む。股間から垂れる物がシーツに染みを作っていた。

「初めてを捧げる人には、リードしてもらいたいな、って」

 その言葉を聞いた瞬間、胸が激しく高鳴った。また一つ、彼女の別の一面が見えたのだ。凛とした学級委員長でも、淫らな吸血鬼でもなく、しおらしい乙女の顔が。
 ポンチョの下で胸が小さく揺れているのが分かった。甘い香りを漂わせ、気恥ずかしそうに見上げてくる小宮山さんの姿を見ては、理性なんて放り出したくなってしまう。彼女もそれを望んでいるのかもしれない。もしかしたら以前の、昼間の内に自分を押し倒してみるかという誘惑も、心のどこかでそれを望んでいたのだろうか。

 彼女の肩を掴んで、ぐっと力を込める。夜のヴァンパイアがその気になれば、この華奢に見える体で僕を簡単に押しのけてしまえる。だが小宮山さんは僕に逆らわず、ころんとベッドに寝転がった。半開きになった口から漏れる吐息は血の臭いがして、とても熱い。吸血用の犬歯が物欲しそうに唇から見え隠れしていた。
 もう、期待に応えるしか道はない。どの道もう僕は彼女のもので、彼女は僕のものなのだから。

「小宮山さん、どうして欲しい……?」
「私を……私のこと、メチャクチャにして欲しいな」

 瞳を潤ませながら、そっと僕に抱きついてくる。ポンチョのすべすべとした不思議な感触と、その下の肌の柔らかさが気持ちよかった。

「あとね、名前で呼んで。瑞香、って」
「……瑞香さん」

 その名を口にすると、尚更情欲が燃え上がってきた。思わずポンチョの裾から手を入れ、彼女の素肌をまさぐる。吸い付くような感触の滑らかな肌を撫でると、瑞香はぴくんと体を震わせた。それが可愛くて、手探りで胸の膨らみを掴んでそっと揉む。

「あっ……」

 瑞香さんはもぞもぞとしながら喘いだ。今までこの胸に触れたことはある。彼女に触れと命じられたときだ。今は好きなように、好きなだけ触ることができる。少し指先に力を入れれば指が乳房に沈み込んでいき、弾力が優しく押し返してくる柔らかな胸。谷間に顔を無理矢理埋めさせられたときは温かみと香りで恍惚に浸ってしまった。
 この胸も好きにしていいのだ。ポンチョで隠されたふくらみをいくら揉みしだいても、瑞香さんは気持ち良さそうに喘ぐばかりで抵抗しない。僕はもうインキュバスで、ヴァンパイアからすれば貴族階級、つまり対等の相手なのだ。それでも裸体を翼のポンチョで隠すのは、『変態』を自称していた彼女でもプライドからくる恥ずかしさがあるからだろうか。

 胸を愛撫している間、ペニスははち切れんばかりに怒張し、先端から先走りの液が垂れていた。瑞香さんの蜜壷と同じように、汁を垂れ流している。
 その肉棒を、瑞香さんはそっと握ってきた。そして僕の目をじっと見て微笑む。

「……挿れて♥」

 息を荒げてねだる彼女に応え、僕は愛液滴る股間に自分のモノを向ける。
 だがそこで、少しだけ意地悪をしてみたくなった。今まで彼女に散々されてきたお返しだ。

「それじゃ、挿れるよ……」

 そう言って、僕はペニスの先端を割れ目からずらし……

「こっちにね」

 挿入し慣れている、柔らかなお尻の谷間へあてがった。

「えっ!? ち、違う、そこじゃないよ!」

 瑞香さんは予想以上に慌てていた。今まで何度もお尻の穴で搾り取ってくれたのに、今日は嫌がっている。彼女も女性器に挿入されたくてたまらないのだ。ここでもう一押し意地悪してやろう。

「じゃあ、何処に?」
「こ、ココだってば……」

 口を尖らせ、瑞香さんは指で股間の割れ目を押し広げた。中のピンク色が見える。こんなに卑猥で美しいものが他にあるだろうか。垂れ流される液でぬらぬらと光ながら、僕を誘っている。
 
「おまんこに挿れて欲しいの……処女、もらって欲しいの……ッ!」

 頬を真っ赤に染めながらねだってくる瑞香さん。委員長のこんな姿を見ることができるのは僕だけだろう。たまらない優越感だ。
 火照った頬を撫でて柔らかさを楽しみ、同時にペニスを再び彼女の股間に近づける。

 そのままゆっくりと腰を進め、そっと押当てた。

「う……」
「ん……っ♥」

 僕らは同時に声を出した。割れ目の入り口に亀頭を少し当てただけなのに、そこは鈴口にぴったりと吸い付いてきたのだ。愛液がねっとりとした感触を生み出し、敏感な先端を刺激してくる。このままあてがっているだけで射精してしまいそうだった。
 だがその女性器は僕のペニスに、もっと奥へ来るように呼びかけていた。

「いくよ、瑞香さん」

 乳首を摘むのを止め、彼女の髪から頬までをそっと撫でる。瑞香さんは僕に抱きつく腕に力を込め、頷いた。

 僕は腰を進めていく。柔らかな肉洞はスムーズにペニスを受け入れてくれた。だがとても温かいその膣内は、襞の多い肉がしっかりとペニスを締め付けてきた。多量の愛液のお陰で挿入はスムーズだったが、一度咥え込んだら逃がさないと言うかのような締まりだった。奥へ行くほどきゅーっと肉洞が狭まり、ペニスを圧迫してくる。しかもその襞が艶かしく蠢いて、ペニスを奥へ運んでいくのだ。
 これが瑞香さんの中。ずっと入りたかった、彼女の内側なのだ。

「ああ、あ、あ……悟くんの……んんっ♥」
「うぅ……す、凄い……」

 やがて根元までずっぽりと膣内に収まり、僕はペニスを包み込むその感触に酔いしれた。瑞香さんも僕にしがみ付いて快感に震えている。蠢く膣内がたまらなくいやらしかった。このまま抱き合って蕩け合いたいくらいに。
 だが彼女の要望を思い出し、僕はその誘惑を振り切った。腰に力を込め奥まで入ったペニスをぐっと引き抜く。

「きゃぅ♥」

 瑞香さんらしからぬ可愛い声が聞こえた。本人も恥ずかしかったようで、僕の視線に唇を尖らせる。
 ペニスはカリ首のみが女性器にめり込んでいる位置まで後退した。今度は逆に、一気に突き入れる。

「ああああっ♥」

 彼女が嬌声を上げた瞬間、膣内がきゅっと強く締まった。柔らかな襞が優しく抱きしめてくる感触に、ともすればうっかり漏らしそうになる。蜜壷という表現がぴったりに思えるほど、瑞香さんの中は愛液でトロトロだった。
 ぐっと我慢しながら、さらに腰を前後させる。最初はゆっくりと、そして段々と早く。蜜の滴る膣内は締め付けがきつくても滑りが良く、滑らかに抜き差しできた。その度に膣が蠢き、襞でペニスがくすぐられるのだ。

 この感触を知ってしまったら、二度と自慰はできないかもしれない。そう思うほど甘く、蕩けるような快感だった。そして、彼女も。

「あんっ、うっ♥ そ、それぇ……♥ もっと、もっとぉ……♥」

 普段の清楚な姿からは想像できないほど、瑞香さんは淫らによがっていた。脚を大きく開いて結合部を見せつけるようにしながら、とめどなく甘い声と熱い吐息を漏らしている。さらに艶かしく腰をくねらせ、僕の動きに合わせてくれていた。激しい動きでポンチョの裾がヒラヒラと捲れ、そこから見え隠れするおへそがますます可愛い。

 たまらず、強引に彼女の唇を奪った。ぷるぷるのこの唇でペニスを吸い立てられ、何度も彼女の喉に精液を流し込んできた。今やこの唇も本当に僕のものだ。

「んんっ♥ んーっ! んぅぅぅ♥」

 瑞香さんの快感の叫びは僕の口へと吸い込まれていく。まるで口移しで媚薬を飲まされているかのように、それによって僕の情欲は増した。
 一心不乱に腰を振り、キスをして、舌を絡め合う。嬌声を上げて快感を紛らわせることができなくなり、瑞香さんはより一層強く僕に抱きついてきた。脚まで使って体を固定され、腰を動かせなくなる。

 彼女の一番奥深くで、蠢く魔性の膣を味わいながら、僕は我慢するのを止めた。

「……はぁっ、だ、出すよ、瑞香さん……!」

 唇を離して告げるも、潤んだ目で僕を見つめる彼女は何も答えなかった。ただ気持ち良さそうな喘ぎ声と、蕩けた笑顔だけが返事だった。

 温かな蜜壷に抱きしめられながら、どくどくと脈打ちを始めるペニス。迸った精液が、彼女の汁と混ざり合っていくのが分かった。体から力が抜け、頭が真っ白になっていく。ただひたすら気持ちいい。

「あ、ふああぁ♥ 出てるぅ……悟くんの、熱いのぉぉ……♥」

 歓喜の叫びに混ざり、ぷしゃっと水音が微かに聞こえた。膣壁がより強く、狭く締まり、ペニスを離さないようしっかり固定してくる。抱きついてくるしなやかな手足にも力が込められ、まるで彼女と融合してしまったかのような気分だった。
 今僕と瑞香さんは一つに融け合い、二人だけの世界にいるのだ。

 射精はしばらく続いた。少なくとも僕にはそう思えた。迸りを彼女の胎内に、子供のできる所へ注ぎ込んだ。種付けの強烈な快感が治まっていくにつれ、瑞香さんの手足からも力が抜けてきた。僕も次第に、現実へ還っていく。

「はぁ……はぁ……ふふっ♥」

 帰還した僕を出迎えてくれたのは、呼吸を整えながら快楽の余韻に浸る、瑞香さんの笑顔だった。僕が体を起こすと、汗ばんだ肌がペリペリと音を立てて離れる。下腹部は混ざり合った淫液がねっとりと糸を引き、とても卑猥だ。
 ぬるりとペニスを引き抜くと、割れ目から白濁が少し垂れた。瑞香さんは満足げに微笑み、眼鏡のずれを直す。ずっと見つめていたいような、幸せな笑顔だった。

 ふいに、彼女は立ち上がる。軽い足取りで部屋の窓へと向かい、そこを開けた。夜風が部屋へ吹き込み、黒のポンチョが靡く。だが次の瞬間、そのポンチョは元の形……蝙蝠型の翼へと変じていた。体を覆い隠すものがなくなり、白い乳房と奇麗な肩を晒して、瑞香さんは僕を手招きする。

「ほら、行こう!」

 その言葉と同時に、僕の体は目に見えない力に引っ張られた。ベッドから浮かび上がり、その浮遊感に戸惑っているうちに窓へと吸い込まれて行く。
 ここは寮の二階。瑞香さんがベランダへ出て、翼を広げ飛翔した。僕もそれに引き寄せられるかのように、翼もないまま宙へ浮かび上がる。

 あっという間のことだった。月夜の下で、僕らは学校の真上へ飛び上がっていた。夜風が不思議と冷たくは感じず、むしろ心地よい。夜空の中なのに瑞香さんの姿ははっきり見えた。まるで月明かりを反射しているかのように美しく、柔らかい輝きを纏っていたのだ。

 瑞香さんはそっと僕の手を取り、自分の胸に導いた。あの柔らかな乳房に再び指がめり込み、ふくらみがひしゃげる光景に胸が高鳴った。同時に彼女の鼓動も掌に感じる。ヴァンパイアの魔力、おそらくテレキネシスのような魔法で空中を漂いながら、再び股間のものが隆起するのを感じた。

「今度は私が、リードしてあげるね」

 瑞香さんは僕の手の甲にキスをする。そしてゆったりとした動きで、僕の腰の辺りを優しく抱きしめてくれた。丁度、彼女の胸が僕の股間に当たる位置。張りつめたペニスが甘い柔らかさに挟み込まれる。汗ばんだ谷間でゆっくりと摩擦され、えも言われぬ快感に体が震えた。
 空中に掴み上げられた僕にはどうすることもできず、このまま瑞香さんの奉仕を受け入れるしかない。例え翼があったとしても、この甘い胸の感触からは逃げられないだろう。最愛の人の胸なのだから。

 しばらく乳房の谷間で愛撫されると、彼女の胸に白い花が開いた。瑞香さんは楽しそうに笑う。僕も楽しい。
 向かい合ってキスをし、性器が再び融合する。社交ダンスを踊るかのように手を繋ぎ、くるくると回り、夜空を漂いながら交わり続けた。

 ヴァンパイアは夜の貴族。そして僕も今やその眷属だった。これはそのお祝いに瑞香さんが用意してくれた、二人だけのダンスパーティ。
 夜の町の上空で、僕らは踊り明かした……














………










……




















 ……朝が来た。いつも通り登校し、教室へ向かう。だが今日はすれ違う連中がみんな僕の方を見る。当たり前だろう、人と魔物のカップルが四六時中いちゃついているこの学校でも、高嶺の花たるヴァンパイアの学級委員長を『お姫様抱っこ』して登校すれば目立つに決まっている。
 さすがに恥ずかしい僕に対して、瑞香さんは楽しそうだった。今日はこうやって登校したいと彼女がねだってきたのだ。好奇の視線が周囲から集中する。

「うっわ、見せつけてくれるじゃねーの」
「南原くんと委員長かー。こうなってるんじゃないかって、薄々分かってたけどね。女の勘で」
「いいな〜、小宮山さん。お姫様抱っこって憧れるよね」
「ワタシはいつも抱っこしてもらってますヨ」
「リビングドールだからだろ」
「ねぇねぇ。あたしらも明日、ああやって登校しようよ〜」
「勘弁しろよ。二人だけのときならいいけどさ……」
「コントローラーを床の上に置いてみろ。いいか、できるだけ平らな床の……」
「お前は帰れ」

 周囲の声に顔から火が出る思いだ。だが瑞香さんの幸せそうな顔を見て、教室まで何とか脚を運ぼうと決心する。

「……悟くんのこと、好きじゃないの」

 俺の腕の中で、彼女はぽつりと言った。

「僕も瑞香さんのこと、好きじゃないよ」

 僕は即座に返答する。瑞香さんは満足げに頷いて、僕の胸元に頬を寄せてきた。その先は聞くまでもないということだろう。

 やっぱり彼女は大好きだ。






――fin

15/04/21 23:41更新 / 空き缶号
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■作者メッセージ

というわけで、風邪で臥せっている最中に妄想したネタ第二弾でした。
お読み頂きありがとうございます。
農繁期に差し掛かりあまり時間が取れないのですが、サイクロプスの方も頑張って書いていきます。

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