君の描く幸せの絵に、君の姿は見当たらない。











私が彼女を見付けたのは、まったくの偶然だった。
久し振りの日本観光に、すっかり浮かれていた私だったが、突然降り始めた夕立に雨宿りを出来る場所を探して走り回り、やっとのことで辿り着いたのは新装開店したばかりの喫茶店の軒下だった。
「いやぁ助かったわ〜。ニッポン、雨が多いのはわかってたけど……。うぅ、私の大事な宝物たちは無事かしら…、濡れてたら最悪すぎるよぉ…。濡れるのはあそこだけで良いのにぃ。」
と、ぼやきながら私はビニールコーティングを施した紙袋の中に入った、買ってきたばかりの超人気作家のボーイズラブ同人誌の無事を確認していた。
ちなみにボーイズラブとは、男性同士の恋愛を描いたもの。
「それにしてもニッポンって便利な国よね。角も翼も尻尾も丸出しにしてても、みんなコスプレした女の子って認識してくれるし、ホントに良い息抜きが出来……ん？」
気が付くと、私のすぐ横に虚ろな目をした女の子がぼんやりと佇んでいた。
ゆらゆら、ゆらゆらと彼女はまるで煙のように虚ろだった。
雨宿りの先客だろうか。
そう思ってみたのだが、どうも違うらしい。
彼女の足下にはおびただしい花束。
そして彼女には足がなく、また彼女からは無念というか残念というか、強い未練が感じられる。
俗に言う幽霊ってやつだ。
母の魔力が通っているなら、それはゴーストと呼べるのだが……。
幽霊を見るのは初めてだった。
「はぁ………、あなた…、こんなところで何をしているの？」
そう語りかけると彼女はゆっくりと私の方に振り向いた。
『わたしが……みえる…の…？』
言葉を忘れていたようで、ゆっくりと彼女は返事をした。
『だれも……わたしのこえ…きこえないの…。だれも……わたしをみない…の…。こーたも……こーたも…わたしにきが…つかな…いの…。それに……わたし……ここか…ら…うご…けない…の…。』
雨宿りのご同輩は、非常に危うい存在らしい。
自分が死んでいることに気付かず、その上地縛霊のようなものになりかかっている。
このままいけばゴーストではなく、ただの悪霊になりかねない。
『なんで……こーた…。あん…な…に…あいし…てくれ…たのに…。』
こーた、というのは彼女の思い人だろう。
話しかけることは可能だったが、どうやら会話は成り立たないらしい。
このまま無視することも出来たが、こうして出会ってしまったのも何かの縁なのかもしれない。
そう思った私は、彼女に語りかけた。
「こんなところで漂っているだけじゃ、どうしようもないわ。このままだと、あなたは何もかもを恨んで、何を恨んでいるのかもわからない悪霊になってしまう。」
自力で成仏は出来ないだろう。
そして私にもそんなことを出来る能力はない。
「私はリリム…と言ってもあなたは理解出来ないかもしれないわね。もしも心残りがあるなら…。」
私には彼女を成仏させてあげられる能力はない。
だが、もしも霊体にも効くのなら私には彼女の心残りを晴らしてあげられる。
これが母なら、いとも簡単に叶うのだろうな、とほんの少しだけ嫉妬した。
「ニッポンには『袖刷り合うも他生の縁』って言葉があるみたいね。偶然とは言え、同じ軒下で雨宿りしちゃったんだから、あなたの願いを叶えてあげる。」
『ね……がい…。のぞ…み…。』
「そう、たった一つだけ、あなたの願いを叶えてあげる。もっとも私はあなたに命を与えられる訳じゃないの。人間とは別の生物として、転生させてあげるくらいなんだけどね。」
魔物娘に転生させる、なんてことは言わない方が良いかも知れないと思った。
この時代になっても、人間至上主義者はいるところにはいる。
『…………。』
理解しているのだろうか…。
それでも彼女は何かに縋るように口を動かした。
『こーた……こーた…こーた…。』
「そう……、その人があなたの心残りなのね。」
人差し指で彼女の額を貫くように突き出す。
「私が出来るのは、あなたの心残りを晴らす間だけ命を与えること。あなたはその未練を晴らせば、また元の死者に戻るわ。そして命を与えた結果、肉体を持たないあなたがどんな種族になるかは私にもわからない。もしかしたら、酷く醜いものになるかもしれない。それでも良いかしら？」
『………………。』
ゆっくりと、彼女の首は縦に振られた。
正直、羨ましいと思った。
そこまで思える人がいるというのは、本当に羨ましい。
「あなたの名前は？」
『なま……え……い…おり……いおり…。』
「では………契約を……。イオリ、あなたの願いを叶えてあげる。」

目が覚めた時、彼女が何になったのか…。

ただわかっているのは、願いを叶えれば、彼女も思い人も悲しみに沈む。

たった、それだけ。

君の描く幸せの絵に、君の姿が見当たらない。

彼女は言葉すら忘れかけていたというのに、ぼんやりと理解していたのだろう。

そのことを伝えると、涙を流して静かに頷いた。

彼女が魔力を注がれて、その姿が変わっていく中……。

私は彼女と、彼女の思い人のことが気になって仕方がなかった…。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


『ザ・深夜のドカ買いショー！！』

深夜の通販番組の音量を大きくして垂れ流していた。
「ははっ……、見てよ、伊織さん。あの司会者、テンションが高すぎだよ。」
テレビの中ではハロウィンみたいに悪魔のコスプレした、やけに幼い女性司会者たちが、明らかにヤケクソに近いテンションで、過剰演出気味に通信販売の商品の紹介をしている。
一人はわかりやすい魔女。
もう一人は……ヤギ角？
オカルトに詳しい友人ならわかるだろうか…。
『今夜、最初の商品はこちらなのじゃ！楽々腹筋ベルトォォォ！！！』
『イチゴ様ぁ〜！腹筋が楽しくて止まらないですぅ〜♪』
『おっけー！良い反応じゃ、シタボク魔女！！これでお主もセクシーな腹筋美女に……。』
あまりのテンションの高さに笑いが漏れた。
「あははは、ねぇ伊織さん。こんなテンションで買う人なんかいるのかな？」

パシャ……

「ねぇ……、伊織さん…。返事してくれよ…。」

パシャ………パシャ……

「……お願いだからさ……。何か……言ってくれよ……。」

パシャ……パシャ…パシャ…

無言の水溜り。
それは彼女がいた証。
『ありがとう』、その一言を残して、俺はまた置いてきぼり。
どんなに語りかけても、あの暖かい声は返ってはこない。
「いお……りさん…、………クソッ…！また……また…俺は一人かよ…！！」
残酷な人だ。
諦めかけた俺の前にまた現れと思えば、俺の心を掻き乱すだけ掻き乱して消えてしまった。
やさしい人だ。
俺のせいで死んだんだ、俺があんなことを言わなければ死ななかったのに。
そんな恨み言すら言わないで……、あの頃と変わらぬ笑顔で『ありがとう』。
「…無理だよ、やっぱり。伊織さんじゃないと……、俺は幸せになれないよ。」
俺には伊織さんの望みを叶えてあげられそうにない。
『私以外の誰かを幸せにしてあげて。』
今はあのやさしさが懐かしくて悲しい。
彼女の水溜りのヒヤリとした感触が、もう伊織さんがここにいないことの証明。
五月蝿いくらいテンションの高いテレビを流しておかなければ、俺は心の均衡を保てない。
『さて次の商品はぁ！！』
『イチゴ様〜、腹筋が楽しかったんですけど…、もう筋肉痛がぁ…。』
『げ…ワシだって明後日くらいに来るっちゅーに…！若いとは羨ましいのぉ。おっと、次の商品はぁ！とっても効果が怪しいけど、スポンサーが売れっちゅーならワシは売る！！どんな願いもチンケなくらいに叶う、幸せを呼ぶ幸運のペンダントー！！お値段なんと１万円で御奉仕の品ー！！！』
テレビにワザとらしくデカデカと映るペンダント。
ピンク色で恥ずかしさ溢れるハートのデザインのそれは、購買意欲を一気に失わせる。
『……イチゴ様、売れると思います？』
『売れる訳がないじゃろー！！ワシだってあの腐れ娘の命令じゃなけりゃこんな番組……』

（ブツッ）

「はぁ……。」
テレビの電源を落として、溜息を吐いた。
こんなもの流していたって……、俺の心が晴れる訳じゃない。
窓の外で降り続ける雨と同じように、俺の心は土砂降りだ…。
「……何が願いが叶う幸運のペンダントだよ。」
今の俺の気分を逆撫でするような商品を思い出し、また苛立っていた。
願いが叶うなら叶えてみろよ。
ここに伊織さんを呼び戻してみろよ…！
クソッ……。

「アレの効き目はすごいんだけどねぇ。あなた、買わないの？」

「…………え！？」
顔を覆って泣いていると、知らない声に話しかけられた。
驚いて顔を上げると、そこにはさも当然という顔をして、伊織さんのマグカップで上品にお茶を飲む、真っ白な髪をした悪魔のコスプレをした美女が正座をしていた。
「うん、良いお茶ね。」
「………どなた？」
目の前の美女はマグカップのお茶を最後の一啜りまで楽しむと、音もなくマグカップを置いた。
「私の名前なんか覚えなくて良いわ。私はリリム。ちょっとお節介焼きで、世話好きでニッポンが好きな魔物よ。」
笑いかける赤い瞳にドキリとした。
息を飲む程、美しい。
「……アフターサービスのつもりでやって来たんだけど、一足遅かったみたいね。彼女は願いを叶え、元の死者に戻り、こうして水溜りになってしまった…か。」
「願いを……叶えた…？」
うん、と短く彼女は頷く。
「彼女はあなたに伝えたい言葉を伝えるために私と契約を交わしたわ。どんな姿になっても、あなたの下へ戻り、あなたの温もりを思い出し、そしてあなたに伝えられなかった言葉を伝えたいと願った。彼女にとってすべてを代償としても厭わない願いだったようね…。」
「俺は……。」
「彼女、あなたを恨んでなんかいなかったわ。それどころか、何年も愛し続けてくれていることに感謝していたくらい。でもあなたは彼女を殺したと思い込み、罪の意識に囚われ続けていた。彼女はね、そんなあなたを救いたかったのよ。」
「俺は…………俺……は……。」
許されるのか、許されて良いのか…。
嗚咽を漏らしながら俺は泣きながら、口走っていた。
「誰も、あなたを責めてなんかいない。あなたは初めから許されていたの。」
それが引き金だった。
押し留めていた感情が堰を切ったように溢れ、声を上げて泣いていた。
テーブルに突っ伏して、声を上げて泣く俺をリリムはただ見守っていた。
……………………………。
…………………………。
………………………。
……………………。
どれくらい泣いていたのだろうか…。
ようやく心が落ち着き始めた頃、彼女は呟くように俺に問いかけた。
「あなた、名前は？」
「川崎……川崎浩太郎…。」
「では……浩太郎。」
その声はやさしく、それでいて俺の身が引き締まるような威厳に満ちていた。
「……あなたは、泡になった人魚姫を拾い集めたい？」
童話・人魚姫……。
確か人間に恋をした人魚姫が、叶わぬ恋に身を焦がし、最後は泡になって消えてしまう、子供心に悲しいと思った童話…。
「その人魚姫の名前は……。」
「さぁ、そもそも名前を覚えているかわからないけど。」
「それでも……、もしも彼女を拾い集めることが出来るなら…。」
俺は、何だってする。
まるでその言葉を待っていたかのように、彼女は口を開いた。
「では、契約を。私はあなたから一つだけ代償をいただき、あなたに代償を基に一つだけ願いを叶えてあげましょう。何をいただくかは私の気分次第だけど、悪いようにはしないから安心して。」
そう言って、彼女は俺の額を、細くて長い指で軽く突付いた。
何の変哲もない仕草なのに、突付かれた額が熱い。
「契約はここに結ばれたわ。後は…………。」



……………………………。
…………………………。
………………………。
……………………。
目を覚ますと、誰もいない。
伊織さんの水溜りも、真っ白な髪の美女もいない。
「夢だったのか…。」
そうだよな、願いが叶うなんて馬鹿げたことある訳が……。
「………あれ？」
テーブルの上に伊織さんのマグカップ。
赤い口紅が飲み口に付いている。
「……まさか。」
夢じゃないのか。
だとしたら……俺は…！

『後は、あなたが彼女を探しなさい。二人の心が繋がっているなら、あなたが思う場所で彼女は待っているはずよ。ただし、切り良く３時までに見付けなさいね。』

頭の中で彼女の言葉が響く。
時計を見れば、午前２時半を回っている。
もしも…もしも彼女が…、伊織さんが俺の思う場所で、あの場所で待っていてくれるなら…。
ギリギリで間に合うだろう。

携帯電話と財布、そして傘を二つ持って俺は部屋を飛び出した。

雨の音は……、もう気にならない。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


雨が強く降る。
深夜、誰一人通らぬ街の片隅。
まるで雨宿りをするように女は待ち続けていた。
ぼんやりとした意識で、虚ろな瞳で、空をずっと眺めていた。
木陰の鳥たちは晴れ渡る空を夢見て眠りに就いている。
濡れて萎んだ猫もどこかの軒下で夢を見ているのだろう。
彼女はぼんやりと考えていた。
自分は雨が好きだった。
雨の日、大好きな人が肩の触れ合う距離で傘を差してくれて、その音を聞くのが好きだった。
彼女はぼんやりとしたまま、軒下から雨の降る空の下へと歩み始めた。
手の平で雨粒を掴むように、手の平を天に向けて…。
すると突然、空が赤いもので覆われた。
雨が身体に当たらず、彼女の好きだった雨を弾く音に変わった。
「伊織さん……、ごめん。遅くなった。」
伊織に傘を差す浩太郎はずぶ濡れだった。
どうやらここに来る途中で転んでしまったらしい。
片手には、転んでしまった拍子に折れてしまったもう一本の傘。
「３年も……こんなところで待たせてごめん。」
「………こーた…？」
虚ろだった彼女の顔に、驚きの表情が浮かぶ。
「そうだよ、こーただよ。」
「何で…？何で私……ここにいるの？…私は……あなたにさよならって…。」
言ったはずなのに、と口にする前に、浩太郎は伊織の唇を塞いでしまった。
その感触は間違いなく彼女の唇であり、人間ではないことを知らしめる。
だが、最早彼にとってそんなことはどうでも良く、ただ伊織が自分の腕の中にいて、もう一度触れ合えていることに喜びを感じずにはいられなかった。
自分より少しだけ背の低い伊織を抱き締めて、浩太郎は耳元で囁いた。
「俺……、何度だって伊織さんを見付けるよ。例え伊織さんが人間じゃなくなったって、伊織さんが伊織さんであり続けるなら、俺は何度だって伊織さんを探すよ。だって………俺が愛せるのは伊織さんしかいないんだから…。」
「……………良いの？」
当たり前だと、浩太郎は強く抱き締める。
浩太郎の言葉に、やっと自分が存在している実感を得た伊織は泣き始めた。
まるで夢現、都合の良い夢を見ていたかのような心地は消え失せ、そこに現実の暖かさと心からのやさしさや愛しさが溢れ、伊織は浩太郎の背中に手を回した。
それは二度と離れないようにと祈るように、強く抱き締めていた。
「怖かった……怖かった…！一人で消えていくの……怖かった…！！」
「俺もだよ……。伊織さんにまた置き去りにされて……俺も怖かった…。」
「怖くて寂しくて、こーたに二度と会えなくなるのが嫌だった…！だから…こーたの思い出だけは…覚えておきたくて……、何度も何度も思い出しながら消えていこうって……。」
伊織の髪を撫でて、浩太郎が黙って彼女の心の叫びを聞く。
街灯に照らされた二人の姿は、暗闇の中にぼんやりと浮かぶ。
人肌の恋しくなるような湿気。
恋人たちはただお互いの存在だけを欲して抱き合っていた。
「……こーた、帰ろう。」
「どこへ？」
「こーたの……部屋…。こーたの部屋でゆっくりしたら……二人でこれからどうするのかゆっくり考えようか…。」
「そうすれば良いよ。これからは……ずっと一緒だから。」

雨は止み、真っ白なノートに再びペンが走る。

今度紡ぎ出すのは、幸せな詩。

「私、我が侭だからきっと迷惑かけるよ。例え死んでも……、私はあなたを愛し続けるくらい我が侭だからね。」
「知ってるよ。だから俺だって伊織さんから離れられない。」

男は言った。

例え、自分と同じ罪人が行き交う街であろうと

迷わずに愛する人を見付けられる。

葉桜を濡らした初夏の雨は通り過ぎ、

傘の花で埋め尽くされた街は、燃え盛る真夏の季節を迎え入れようとしている。

いない恋人を待ち続けた季節は、

もう遠い過去になろうとしていた…。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


「へぇ、そんな素敵な話があったのですね。」
狐色の髪をした女性バーテンダーがグラスを拭きながら微笑みかけていた。
ここは『Bar RedButterfly』。
カウンターに座るのは、白髪の美女。
「ええ、女の子が不幸になるのなんて見てられないじゃない？」
上品な仕草でカクテルを飲み干すと、空になったグラスを指で弄ぶ。
その指使いは妖しく、艶かしいくらいに滑らかだった。
「おかわりは？」
「そうね………シェリーでも貰おうかしらね、宗近。」
畏まりました、と宗近と呼ばれたバーテンダーはシェリーの準備を始める。
「尾崎豊の曲を聞いてたらね、何だか飲みたくなっちゃったのよ♪」
「あら、そんな理由で？ところで、ミザリ。日本観光は如何でした？」
手際良くグラスに注がれたシェリーを、宗近はそっと差し出した。
ミザリと呼ばれた彼女は、満面の笑みでそれを受け取った。
「まあまあね♪」
「そう、まあまあでしたか…。で、その彼からあなたは何を代償にいただいたのですか？」
ミザリはカウンターの上にグラスを置くと、少し物憂げな表情を浮かべた。
グラスに残ったシェリーには彼女の顔が映っている。
「大したものじゃないわ…。」
それは、まるでないものねだりをする子供のような表情。
「代償なんかもらってないようなものよ…。私はただ彼から未来をいただいたわ。辛く悲しい未来を私は奪って、幸せな未来を約束してあげた。言葉にすると野暮で、とっても恥ずかしいものよ…。」
それだけ聞くと宗近はスイッチを押し、外の看板の明かりを消した。
今夜はお客は彼女一人。
「では、私もご一緒してもよろしいでしょうか？」
「拒む理由はないわ。」
そう言って、互いグラスをぶつけると、チンッという小気味の良い音が店内に響く。
「乾杯……。」
「何に乾杯をなさいますか？」
宗近にそう言われて、ミザリは考え込む。
だが、出て来た言葉は考え込んだ割りに簡単なものだった。
「何となく。」
「ふふ、では何となく。」

再びグラスが鳴る。

そんな小気味の良い音を残して、

雨の奏でた交響曲は幕を閉じるのであった。

それなりの

気紛れのようなハッピーエンドを残して……。

■作者メッセージ
こんばんわ、やっと最終話を書き終えました宿利です。
今回、ＮＧ集でも載せようかと思ったのですが
ギャグを思いつきませんでした、ごめんなさい。
私なりのハッピーエンド、如何だったでしょうか？
………え？
またいないはずの人たちが出てた？
気のせいじゃないですか？
そう、気のせい気のせい。

では次回……って最終話でしたねｗ
次回作、もしくはLost in BLUEや他の連載をどうぞお楽しみに。
ここまでのお相手は、
変態お笑い芸人量産化計画推進委員会下っ端
宿利京祐がお送り致しました。

最後になりましたが
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
また近い内にお会いしましょう！