読切小説
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マインドフレイアに愛されて
 海風が容赦なく身体を叩き、磯の香りが鼻を満たす。
 手足にまとわりつくような濃霧を振り払うように足を進めるイージス・ストレイフは苛立ちと焦りを感じていた。
 町を出てから3日、イージスはまともな食事も睡眠もとっていない。疲労が精神と身体を蝕み、視界を遮るような霧は自分が何処を進んでいるのか分からなくさせる。
 まるで出口の見えないトンネルを歩いているようだった。
 冗談ではない。つまづきそうになる足を動かし、額から落ちる汗を拭いながらイージスは舌打ちを漏らす。
 こんな所で野垂れ死んでたまるか。
 死への恐怖と怒りがイージスの身体を動かし、心を奮い立たせる。
 死ぬために生きるのではない。
 死ぬために歩むのではない。
 死ぬために自由になったのではない。
 そんな想いがイージスの胸を満たす。そして、そんな想いが奇跡を呼ぶ事もある。

 「!あ、あれは」

 最初は幻かと思った。
 しかし、それは幻ではなく現実の光だとすぐに分かった。光があると言う事は人がいるという事だ。
 イージスは最後の力を振り絞り、光へと向かっていった。
 彼には知る由も無いがそんな彼を見つめる影があった。
 そして、その陰にはイージスの姿が炎に魅せられ飛び込み、燃えていく羽虫のように映った。





 光の元は小さな漁村であった。
 簡易な木の作りの家は潮風に殴られすっかり痛んでいる。目に映る家々の入り口にはサメの口や魚の骨格が飾られているがこの地方のまじないか何かだろうか?イージスはそんな事を考えつつ、村人の姿が1つも無い事に気が付いた。しかし、こうも天気が悪くては外に出る物好きもいないだろう。漁に出てしまえば戻ってくる事すら困難かもしれない。
 ふとイージスは1つ大きな家を見つけた。近付いてみるとそれは家ではなく、入り口に掠れた文字で“宿屋”と書いてあった。

 (た、助かった…!)

 イージスは身体を安堵が包むのを感じながら“宿屋”に足を踏み入れた。

 「いらっしゃいませ」

 入ると1階は酒場のようであった。中は薄暗く、蝋燭の光がゆらゆらと揺れて何とも頼りない。カウンター奥にたたずむ女性らしい影、乱雑に並んだテーブルの群れに人の影は少なく壁際にいるのが確認できたが彼らは光を避けるかのように小さくなっている。
 違和感を覚えつつも、イージスは気にし過ぎだと自分に言い聞かせた。

 「すまないが…部屋は空いていないか?」

 「えぇ、空いていますよ」

 カウンター奥の女はゆっくりと近付くが決して光に入ってこようとしない。それに女が動くたびにピチャピチャといった水温が響き、ゆっくりと鍵を差し出した。イージスは戸惑いながらも鍵を受け取ったがゾッとした。
 鍵は濡れていた。海水だった。

 「あぁ、ごめんなさいねぇお客さん。魚を捌いていたもので…ねぇ?エフッ、エフッ…」

 誤魔化すように笑う女だが、その声色に全くそんなつもりが無いのは猿でも分かるだろう。イージスは海水で濡れた鍵を軽く拭いて、奥に見える階段へと歩を進めた。

 「あぁ、それとお客さん」

 後ろから呼び止める女の声にイージスは足を止め振り向いた。

 「実は今日お祭りがあるんですよ」

 「祭り?」

 こんな天気でか?イージスは女の言葉に眉をひそめ、首を傾げた。
 怪しんでいるイージスの事など気にもせず、女は言葉を続けた。

 「えぇ、お祭りです。とーっても楽しい、ね」

 「どんな祭りなんだ?」

 「エフッ、エフッ…それはお楽しみという事で…エフフ」

 何が面白いのか女は肩を揺らし、ただ笑うだけだった。その無遠慮で神経を逆撫でするような笑い方にイージスは内心腹が立ったが、今はそれよりもゆっくり休みたかった。
 イージスは何も言わず階段に足をかけた。そして、2階に上がりチラリと1階を見ると壁際に座っていた2人の男の輪郭が一瞬崩れまるで無数の触手になったように見えたがそれもすぐに戻った。
 予想以上に疲れているのだろうか、イージスは無駄な事を考えるのは止めて早目に寝る事にした。
 きっと、ただの幻覚だと自分に言い聞かせて。





 イージスが2階へと上がり部屋に入ると同時に、酒場にもう1人の来客が現れた。
 カウンター奥にいた女は来客を見るとニンマリと笑い、親指を舐めた。

 「エフフ、あれが貴女のターゲットで…今回のメインイベントかしら?」

 「えぇ、そうよ。なかなか良い男でしょう?」

 「エフッ、エフフッ…良いんじゃないかしら?さぁ、準備を始めましょう。楽しい楽しいお祭りのねぇ」

 「カカッ、そうね、そうしてくれると助かるわ。だって、私の旦那様だもの」

 「ずいぶん気が早いのね。まぁ、他の娘達も知っているからここまで手を出さずに来たんでしょうけどね」

 女と来客は楽しそうに笑うと、その輪郭を崩し始めた。
 ピチャリピチャリと水音を響かせ、床を大きな触手のような物が撫でる。オレンジ色に光る瞳が蝋燭の炎を怪しく反射していた。





 風が窓を叩く音が耳に響く。磯臭い風が部屋に入らないだけまだマシだが、それでも眠るのには時間がかかりそうだった。汗と塩でベタベタの身体を洗いたかったがあいにく現在風呂は故障しているらしく、明日の朝一番に水浴びできる場所を教えてもらえる事になった。
 色々と気に食わない宿屋だが、贅沢は言えない。だが、悪い事ばかりでもない。飯だけは美味かった。何の魚か分からないがフワッとした切り身によく合うソースが絶品であり、サービスで出されたワインともよく合った。
 どれもイージスが今まで生きてきた中で味わった事の無いほどに美味い飯だったのは確かだ。
 それだけでイージスの身体と心は満たされていた。

 「ふぅ…」

 ベッドに腰をかけ煙草に火をつけると、イージスはふと昔を思い出していた。
 幼い頃に戦で両親が死に、敗戦国となった故郷。そして、奴隷としてこき使われ、金持ちの貴族に買われたがそこは地獄だった。
 女の奴隷は性処理の道具に、男の奴隷は様々な獣と戦わされる。それでもまだ良い方で一度でも逆らえば、四肢をもがれたまま街中を引きずりまわされる。イージスはそんな奴隷を何人も見てきた。幸いにも、イージスは雑用ばかり押し付けられたため獣と戦う事も無かったが、それでも奴隷の悲鳴と貴族達の歓喜の悲鳴は未だに耳にこびりついている。
 そんな悪趣味な貴族だが、つい先日病死した。突然の死に混乱し、その混乱の中でイージスは脱走したのだ。脱走したのはイージス1人ではなく何十人もいたが、あの後彼らがどうなったのか知る由も無い。
 ふと考えれば、不自然すぎた死のタイミングだった。あの貴族は趣味は悪いが几帳面な性格であり、まめだった。だから医者にも診断を常日頃から受けており、健康面では何の問題も無かったはずだ。もしかしたら、何者かに暗殺されたのかもしれない。
 そう考えるのが自然のような気はするが、考えた所で意味は無い。第一、イージスは探偵ではないのだから真相を知った所でどうしようもないし興味も無い。
 今はただ、生きる事に夢中であった。

 (しかし…)

 しかし、心残りが全くないというわけではない。
 昔、まだ貴族の下で奴隷だった頃、ある女性が訪れた。それは美しいなんて言葉ではとても表現しきれないような女性だった。後になって聞いたのだがその女性は何処かの国の姫だったらしい。
姫だったら納得だが、それでもあの姿は未だに忘れる事が出来ない。
 まるで大理石のように白く美しい肌、人形のように整った顔立ち、宝石のように白く輝く切れ長の瞳、それら全てが脳裏に焼き付いている。美しくはあったが、姫は常に無表情であった。貴族がおべっかを使い下世話な笑みを浮かべていても意に介さないように堂々としていた。
 だが、庭で仕事をさせられていたイージスとふと眼が合うとその姫はイージスにゆっくりと頭を軽く下げ笑みを浮かべた。
 その衝撃はイージスの時間を止め、脳を大きく揺さぶった。イージスは我に返ると思わず目を反らしてしまった。次に顔を上げたときには姫の姿は何処にもいなくなっていた。
 それから、イージスはしばらく眠れぬ夜を過ごすと同時に、どうして姫から目を反らしたのか自問自答するばかりであった。
 もしも、あの貴族が生きていたら姫に会えたかもしれない。そして、出来る事ならばあの時目を反らした無礼を詫びたかった。
 しかし、貴族が死んだ今それは叶わぬ夢となっていた。
 考えてみれば、イージスはあの姫の名前も何処から来たのかも何も知らない。例え、知っていたとしてもそう易々と会えるような存在でもない。
 いつしか、憧れは諦めへと変わっていった。

 「……」

 気が付けば風は止んでいた。
 イージスはそれに気が付くと、タバコの火を消しベッドに横になった。
 何の音も無く、人の気配も無い。磯臭いベッドに寝ているとまるで世界に1人だけになったような気分になる。
 静寂が世界を彩る中、イージスはゆっくりと目を閉じた。

 ズルッ…ピチャッ、ズルッ……ズルッ…パシャッ…

 しかし、何かを引きずるような音、そして水の滴る音が耳を打ちイージスは思わず上体を起こした。正体の分からない不気味な音、それだけで言いようのない恐怖がじわりと滲み出てくる。
 息を殺し、音が自分のいる部屋に近づいている事に気が付くとイージスの身体から冷や汗が溢れ出た。何かしようにもすでに音は近くまで来ている。窓から出ようにもここは2階であり、無事に済むとは思えない。
 そして、音は扉の前まで来ると扉が開いた。

 「こ・ん・ば・ん・は・♪カカッ」

 そして、現れた者はイージスの考えを遥かに超える存在だった。
 薄い紫色の肌に、青紫の髪。上半身は人間であるが、下半身は異形のまさに魔物と言うべきものだった。髪の間や腰からはまるでタコやイカのような触手が乳房や下半身を覆っていた。触手には所々光る個所があり、まるでホタルを思わせるようだ。全身がぬるりとしており、均整の取れた身体をより卑猥に協調してくる。
 イージスは一瞬恐怖したが、女のアンバランスに逆に興奮していた。
 目の前の非現実が受け入れ難くも美しく、芸術を冒涜するレベルで輝かしいものに思えたのだ。その証拠にイージスの雄は痛いほど反り返り、欲情していた。
 それはマインドフレイアと呼ばれる魔物娘だった。異形の妖女とも呼ばれる精神を操る危険な魔物娘でもあり、魔王の影響は受けているもののデビルやデーモンといった過激派とは違い独自の行動を起こしている。一説には深海に眠る強大な魔物に仕える種族だと言われている。彼女達は人間の男性のみならず女性までマインドフレイアに変えてしまう恐ろしい力を持っているとされている。

 「………」

 「ん、反応が鈍いわね?」

 反応が思ったようなものではなかったのだろう。マインドフレイアはムッと眉をひそめたがすぐに淫歪な笑みを浮かべた。娼婦でさえ浮かべないような淫らな微笑み。
 気が付けばイージスはマインドフレイアの触手に両腕を縛られていた。
 あまりにも自然で、かつまるで時間を飛ばしたかのような不自然な動きにイージスはさすがに動揺した。

 「なッ!い、いつの間に」

 「さぁ?いつかしらね?クカカカッ」

 奇妙な笑い声を洩らしながらマインドフレイアはゆっくりとイージスの身体に馬乗りになる。普通なら恐怖すべきなのだろう。しかし、イージスは欲情していた。女を抱いた事は無く、あの貴族に犯されているのを見た事はあったが自分がいつか抱く事は想像した事は無かった。それも人外の女を。

 「カカカッ、そんなに緊張しないで…ね?酷い事なんてしないから」

 マインドフレイアの顔が近付く。男を前にして顔はほんのりと朱く染まっている。やがて、マインドフレイアはイージスに自らの唇を重ねた。それは唇と唇を重ねただけの甘く優しいキス。そのキスだけでイージスは脳が痺れるような感覚に飲み込まれつつあった。
 しばらくして、マインドフレイアはゆっくりと唇を離した。

 「どう?少しはほぐれたかしら?」

 淫歪な笑みを浮かべつつ悪戯っぽく囁くマインドフレイア、イージスはそんな彼女に心を奪われつつあった。
 いや、それどころか最初から奪われていたのかもしれない。
 彼女を見た時から何故か、懐かしい感覚を覚えていたのだ。昔、何処かで会ったような。深い霧の中で彷徨うようなモヤモヤとした記憶が離れない。

 「な、なぁ…もしかして、前に会った事は…無いか?」

 イージスは思わず口にした。
 すると、マインドフレイアは目を輝かせイージスに抱きついてきた。

 「覚えててくれたの?嬉しい!」

 身体全体で感じる彼女の弾力と温もり、怪しくもどこか心休まる香りがイージスの心を掴んでいた。
 イージスは戸惑いながらも、何とか言葉を吐き出した。

 「い、いや…その、ごめん。会ったかもしれないが…キミが誰なのか覚えていないんだ」

 「ううん、良いの♪貴方が私を微かにでも覚えててくれた事が嬉しいの」

 「ご、ごめん…意味がよく分からないんだが…」

 「カカッ、だって私と会ったのは1回だけだし。こうやって話すのは初めてよ」

 潤んだオレンジ色の切れ長の瞳、嬉しそうに微笑むその笑顔、全然違うが俺は知っている。何処だ、何処でオレは彼女と…
 どういう意味だ、言いかけてイージスはハッとなった。
 そうだ、知っている。彼女の顔を。そう、あれは……

 「もしかして…あの時の姫様、か?」

 「えぇ、そうよ。あの貴族の屋敷よ?私が人間に化けてあの屋敷に行った時ね」

 イージスは口をあんぐりと開け、マインドフレイアは再びにんまりと笑い唇を重ねた。
 今度は唇を重ねるだけでなく、イージスの唇を舌で割って捻じ込んできた。さっきの優しいキスとは違い、舌を絡ませ頬の内側を舐め回しイージスの全てを味わおうと貪欲に舌を動かす。口の中が彼女の匂いでいっぱいになり、支配されていくのが分かる。
 唇が重なり、舌が絡まる。そして、唇が離れると2人の間を糸が引いていた。

 「ど、どうしてそんな事を…?」

 「だって、人間が人間を支配するなんて馬鹿げているもの。実際に化けて行ってみて、それを確信したわ。貴方達の上に立つのは私達。私達が貴女達の手を引っ張って愛してあげるのよ。それをあの偉そうな貴族にも教えてあげようとしたんだけど……死んじゃったら、ねぇ。でも、言っておくけど私達は殺してなんかいないわよ?殺しちゃったら意味無いもの」

 ハァ、と大げさにため息をついて見せるマインドフレイアにイージスはどこかホッとしたような気持ちになった。たとえ、あの貴族がどんなに悪人だろうが彼女に殺して欲しくなんか無かった。そんな気持ちがあった。
 それよりも、あの時の姫がまさか魔物娘であり今、こうして裸に近い姿で自分に跨っているという方が衝撃的であった。

 「それよりも、幻滅したかしら?私が魔物娘だったなんて」

 「いや…何て言えばいいのかな。それよりも嬉しいんだ」

 「え?」

 「また、キミと会えた。うん、それが…俺は嬉しいんだ」

 イージスの素直な言葉にマインドフレイアは見て分かるほどに顔を真っ赤に染めて唇を噛んでいた。

 「〜〜ッ!」

 「ど、どうした?」

 「カ、カカッ…ま、まいったわねぇ。そ、そん、そんなにストレートに言われると…その……あぅ」

 ゴニョゴニョと言葉を濁し、もじもじと指を動かすマインドフレイアに異形の妖女といった面影は見えない。むしろ、初々しい乙女のようだ。視線を反らしたかと思えば、真正面から見据え、それでもすぐに顔を伏せるを何度も繰り返しながらマインドフレイアはギュッとイージスに抱きついた。

 「ズ、ズルいわよ?そんな真っ直ぐな事言われたら…」

 「言われたら?」

 「……もっと好きになっちゃうでしょ?」

 イージスの胸に顔を伏せ、耳まで真っ赤にしながらマインドフレイアは呟いた。

 「さ、最初に見た時から…ちょっと良いなって思っていたのよ?それで、その……貴方があの貴族の家から逃げたって知って慌てて追いかけてここまで来たんだからね?」

 「そ、そうか…じ、実は俺も、キミを初めて見た時から…キミの事」

 「ッ!…〜〜ッ!!」

 マインドフレイアはイージスの言葉を止めるように唇を重ねた。勢いがあったせいで歯と歯がぶつかったが不思議と痛みは無かった。それよりも、貪るようなキスに2人は夢中になりマインドフレイアはイージスの頭を両手で押さえ下半身の触手をイージスに絡ませる。
 お互いが息をするのも忘れるような長い時間、まるで時が止まったような感覚だった。

 「ップハァ!」

 唇を離すとマインドフレイアは大きく息を吸った。
 イージスも大きく深呼吸するとマインドフレイアを真正面から見上げた。すると、マインドフレイアは慌てて顔を両手で隠したが指の隙間からチラチラとイージスを見ていた。

 「そ、そんなに見つめないでよ…て、照れるでしょ?」

 「いや、もっと見ていたいんだけど」

 「だッ…!そ、そんな事ばっかり言うならわた、わ、私だってこうしてやるんだから!」

 ヤケになったように叫ぶとマインドフレイアは下半身に絡めていた触手を器用に動かしイージスのペニスへと絡ませた。

 「お、ぐッ…!」

 「あは♪良い声…でももっと気持ち良くしてあげるわね?」

 マインドフレイアはニンマリと笑うと絡ませた触手でゆっくりと扱き始めた。ぬるぬるとした触手が丁寧に、執拗に責め立ててくる。さらに粘液がまるでローションのように濡らしイージスを射精へと導いてくる。
 その快楽にイージスは思わず腰が引けたがマインドフレイアは決して逃がそうとしなかった。
 そして、ゆっくりと抱きつき両腕をイージスの首に回すと髪の隙間から触手を伸ばし、それをイージスの耳へと潜り込ませた。

 「っあ!な、何を!」

 「ん、落ち着いて。貴方の全てを私に染めるだけ…身体も心も、ね」

 マインドフレイアはそう言うとイージスの首を舌で舐め回した。

 「ん…ちゅる、はぁ……おいし♪」

 満足そうに笑いながら、マインドフレイアは舌を使いながらイージスを味わい、やがて唇を当てると力を込めて吸い始めた。
 それはキスマークを付けるための行為。この雄は自分のモノだ。自分だけのオスだ。他のメスには何があっても絶対に渡さない。マーキングと愛情を込めたキスマークをイージスに刻んでいるのだ。
 そうしながらもマインドフレイアは器用にペニスへの奉仕とイージスの精神を自分への愛と性欲に染めようと耳に侵入させた触手を動かす。
 イージスにはまるで3人に責められているかのような快楽に成す術が無い。女性経験の無いイージスにとってそれは耐えられるものではなかった。

 「っくぁ!で、出るッ!」

 「んぢゅ、だひて♪いっぱいいっぱい出してぇ♪」

 マインドフレイアも射精の気配を感じ取ると動きを速める。
 イージスは大きく息を吸い、それと同時に射精した。まるで噴水のように精液が溢れ、イージスの腰が痙攣するたびに精液が溢れだす。そして、精液がかかるたびにマインドフレイアの身体も快感に震えた。

 「ひぅんッ!あむ、ちゅむ…ッ!ぢゅうううぅッッ!」

 イージスの精液を浴び、マインドフレイアはその身体に吸いつきながら震えた。
 そして、射精が終わると抱きつく力が強くなった。そのまま2人は汗と精液に塗れながらしばらく抱き合っていた。
 イージスはいつの間にか両腕の束縛が無くなっている事に気が付き、マインドフレイアの身体を優しく抱きしめた。

 「ねぇ」

 ふと、マインドフレイアが口を開いた。

 「名前、教えてよ。すっかり忘れてたけど、貴方の名前聞いていないもの」

 「そう言えばそうだった…イージス、イージス・ストレイフ」

 「変わった名前ね。でも、良い名前だわ。私はヴァルチェ・ドイノクーャジ」

 発音できそうにない名前だが、特に気にはならなかった。ヴァルチェはイージスの身体を撫で回し、触手で舐めるように粘液を刷り込んでくる。イージスはくすぐったくなり、身をよじったがヴァルチェはクスクス笑いながらその動きに合わせ触手を動かしてくる。
 しばらくはお互いにくすぐり合っていたが、やがて我慢できなくなったのかヴァルチェはイージスのペニスを直接手で握ると体位を直し、自分の秘所にあてがった。

 「はふぅ…ん♪見えるぅ?これから1つになるんだからぁ♪」

 「あぁ、ヴァルチェ…」

 亀頭で秘所を擦りながら切なそうに腰を動かし、甘い吐息を漏らすヴァルチェの乳房をイージスは下から愛撫した。手のひらに収まらない綺麗なお椀形の乳房は揉んでいるだけでも楽しかった。確かな弾力に、指を沈めるたびに身体を震わせるヴァルチェの反応が可愛く、イージスは夢中になって揉みしだく。
 乳首を軽く摘まみ、引っ張ってやるとヴァルチェは一際大きな反応を示し、ペニスが擦られている秘所からは愛液が溢れだした。

 「んくぅ、あぁ…もう我慢できないんだからね?」

 ヴァルチェは甘えた声でそう言うと、先端を中心に合わせゆっくりと腰を沈めた。

 「ッああぁぁぁーッ!」

 とたんに触手がピンと伸び、手をイージスの胸に当てる。そしていきなり激しく腰を動かすと、部屋中に蜜壺を掻きまわす卑猥な水温が響いた。

 「くぅ、ヴァルチェ!は、はげしッ!」

 「あぁんッ!だ、だって気持ち良い!イージスのぉ、気持ち良いんだもん!」

 ヴァルチェは髪を振り乱してそう叫ぶ。両手でイージスの胸を愛撫し、イージスの耳を犯す触手を猛然と動かしながらも腰の動きを止めない。単純な上下運動や、腰を前後に動かし、時には円を描くような動きでペニスを締めつける。

 「や、イージス、ね?おっぱい、おっぱい苛めてぇ♪」

 すっかりとろけた声でおねだりするヴァルチェが愛おしく、イージスはそのおねだりに応える。両掌で支えるように包むと、人差し指と中指で乳首を挟み引っ張ったり擦るような愛撫をするとヴァルチェは舌を突き出し、悶える。

 「ひはッ、お、おあああああッ!」

 ヴァルチェがみっともないほどの声を上げる。触手でイージスの下半身を包みながらも口からは喘ぎ声と唾液が零れる。その様子から快感の深さが分かった。
 イージスも温かく包み込むようなヴァルチェの膣にすっかり夢中になり、自らも腰を動かし始める。愛液とカウパーで濡れたペニスが秘所に埋まる様子はあまりに淫美であり、見つめていて飽きないほどだ。
 ふと、イージスの右手が激しく動くヴァルチェの股間へと伸び、すっかり発情し勃起しきった肉豆を弄った。

 「あひッ!?そッれぇダメぇぇぇぇッ♪」

 甲高い喘ぎ声を洩らしながら嫌々と首を振るもののヴァルチェは一切抵抗しなかった。
 それはあまりにも淫らなメスの姿だった。淡い紫色をした美乳には指が食い込み、濡れた蜜壺はまるで鉄の柱のように硬く、溶岩のように熱くなった肉棒が出入りしている。
 
 「やぁぁ♪イージシュゥ…♪もっとぉ、もっとぉぉ♪」

 呂律の回りきらなくなった口で快楽を求めるヴァルチェは何よりも美しく、そして淫らであった。
 イージスは思わず、上半身を起こしヴァルチェの身体をゆっくりと押し倒す。騎乗位からのしかかるような正常位の体位に変わるとイージスはヴァルチェの子宮を突くような激しさで腰を振り続ける。

 「お、あへぇああああぁッ!そ、それだめッ!らめぇぇぇッ!」

 すでに悲鳴にも近い声で喘ぐヴァルチェはまるで淫らな楽器のようだった。扱う者の手によって甘えた声も恥じる声も出し、淫らな音を奏でる美しい楽器。イージスはそんな事を考えながら奥まで捻じ込む。

 「や、いいッ!これ、ダメだけどいいのぉぉッ!!」

 触手がイージスの腰をギュッと挟み込み、両手でイージスの首をかき抱き自ら腰を浮かせて少しでもペニスを締めつけようとする。
 イージスが唇を近付けるとヴェルチェは夢中になってその唇に吸いつき、流し込まれる唾液を飲み込む。

 「くひぃぃッ♪イージシュのぉチンポォしゅきッ、だいしゅきぃぃ♪」

 ヴァルチェの喘ぎ声が大きくなる。イージスはヴァルチェの腰を抱くように浮かせ、力強いピストン運動を繰り返す。柔らかな肉と肉がぶつかり合う乾いた音とグチュグチュとした卑猥な水音が部屋と聴覚を支配する。
 イージスとヴァルチェは互いに見つめ合いながら互いに絶頂へと昇りつめようと動きを合わせていく。ヴァルチェは何度も軽い絶頂を迎えているのだろう。何度も何度も背筋を反りかえらせていた。

 「ヴァルチェッ!ヴァ、ヴァルチェッ!」

 「ひゃひぃぃッ!イってッ、イカせてッ、孕ませてぇぇぇぇッ!」

 イージスは力強く腰を動かし、最後にペニスが抜ける寸前まで抜くと一気に奥深くまでまるで貫くように突いた。
 
 「んへあぁッ!あああぁぁぁぁぁーッ!!」

 ヴァルチェが絶頂の悲鳴を上げると同時にイージスもヴァルチェの最奥で精を放った。
 ドクンドクンとまるで音が鳴るような射精にヴァルチェの子宮は喜びに震え、放たれる精を貪欲に飲み込む。
 イージスは神経が焼き切れるような快楽と疲労で力が抜け、ヴァルチェの身体に倒れ込んだ。ヴァルチェはそれを優しく受け止め、まだ続く射精に身体を震わせた。





 「んッ、これが、あ♪パパとんんん♪マ、ママのぉ出会いよォォッ♪」

 「わぁぁ…」

 自分達の出会いに目をキラキラさせながら必死に聞く娘に嬉しくなりながら、ヴァルチェは胸が温かくなる気持ちだった。
 あれから数年後、イージスとの間に愛娘を授かり漁村、マインドフレイアの拠点となっている地で暮らしていた。

 「ね!ね!それから?それからどうなったの?」

 娘のウェステルは興味津々と言った様子で見つめてくる。

 「それッからぁ、あんッ!あ、朝まで愛し合ってぇんんん♪村の他のマインドフレイアに祝福してもらったのぁんッ!」

 「それがお祭りなの?」

 「そッ、そうよぉひうぅぅんッ!そ、その動きダメぇぇ♪」

 思い出話を語りつつもヴァルチェは与えられる快楽に抗えず、甘い声を漏らす。

 「だめぇ、だめぇぇぇッ♪そ、そのかき回す動きぃぃ弱いのォォォッ!」

 机に上半身を倒し、後ろから犯されながらヴァルチェは自ら腰を振り快楽を貪ろうと貪欲になる。後ろから攻めてくる夫に触手を絡ませもっと腰を動かすように促す。イージスもそれに応えるように円を描くような動きでヴァルチェの膣とは違うもう1つの穴…アヌスを犯していた。
 娘が出来る前から性に関して貪欲だったヴァルチェだったが、ウェステルが生まれてからは更に性欲が増したようだった。
 最近ではすっかり、尻でするのがお気に入りのようでありこうやって後ろから獣のように犯されるのがヴァルチェの中で最も興奮していた。

 「う、ぐぅ、全く…娘の前でお尻ハメまれて…恥ずかしくないのか?」

 「ひゃひぃぃッ!は、恥ずかしいけどぉ気持ち良いのぉ!お尻ッダメなのにぃぃぃッ♪」

 「わー!ママすごーい!」

 無邪気に喜ぶウェステルに苦笑しながら、イージスはヴァルチェをイカせるために腰を動かす。ヴァルチェもそれに合わせるように尻を振る。

 「あ、おおぉぉぉ♪またッイクッ!お尻でぇイクゥゥゥッ!」

 イージスはヴァルチェの尻を持ちながら力強いピストン運動を繰り返す。尻肉と腰がぶつかり合う音にお互い夢中になり、ヴァルチェの絶頂に合わせようとイージスは激しさを増す。

 「おしりッで!出してぇ!お尻ッ、赤ちゃん出来ちゃうくらい出してぇぇッ!」

 甲高い嬌声を上げるヴァルチェも限界が近いのか腰が痙攣しているように感じた。
 そして、ペニスが大きく膨らんだかと思うと

 「ッつゥゥゥ!」

 「ぁいいいいぃぃッ!くああああぁぁぁぁッ!」

 2人が同時に絶頂の声を漏らし、ヴァルチェの腸内に大量の精がほとばしった。ペニスが何度も痙攣し、ヴァルチェの括約筋が収縮を繰り返す。やがて、射精が終わるとイージスはアヌスに挿入したままヴァルチェの背中に倒れ込んだ。
 下半身に絡みつく触手がプルプルと蠢く。
 ふと顔を上げると、感嘆の声を漏らす愛娘の姿が目に入った。
 いつか、ウェステルにも相手が現れるだろう。
 いったいどんな相手なのか、楽しみに思いつつもイージスは肩越しに振り返り、キスをねだるヴァルチェを愛しく感じ唇を重ねた。

おわり
16/08/21 23:33更新 / ろーすとびーふ泥棒

■作者メッセージ
どうも皆さん、こんばんは。
ろーすとびーふ泥棒です。

マインドフレイアは前々から書いてみたかったってのはあるんですが、難しいですね。
個人的にダークでホラーなイメージが強いだけにそんな感じが出せればいいなぁと思っていたんですが、気が付いたらいつも通りの頭悪い感じになってました。
どうしてこうなった。
でも、ラブラブなマインドフレイアだって良いと思うんです、ハイ。

現在、連載してるクノイチSSの続きは近日中に上げたいと思っております。
ではでは

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