連載小説
[TOP][目次]
スライム30 〜約束〜
ここは、始まりの村と呼ばれる小さな村…
その村の前で、水色に透き通った何かが村の中をうかがっていた…

この物語は、勇者として旅に出ることになった青年と、一人のスライムの女の子の話である…


〜〜神官目線〜


だあぁぁぁっ!!暇だ…暇だっ!!

始まりの神官こと、俺…スプリング=フェイルマンは自分の業務のなさにいい加減、嫌気を感じていた…
こんな乱雑な話し方をしているが…一応、俺はまじめな人間だ…
自分で言うのもなんだけどな?

それで…司祭様であられるデメ=ト=リオン様の指示を受け…ここに配属されたんだが…
この村、本当に何もありやしない!!
普通…神官は忙しい業務なんだぞ…?それなのに…
仕事が祈りに来る人たちを遠くで見ながら、何もせずにいるってのはどういうことだ!?ここの連中は悩みがないのか!!

くぅっ…こ、これじゃあ…俺はいったい何のためにここにいるのか…わかんねぇじゃねぇかよ!!

スプ「くそったれが…暇なんだけどぉっ!?一人でずっと部屋の机にうつぶせになっているだけの毎日…暇なんだけどぉっ!?」

えっ?教会なのに、シスターはいないのかって?
………いるわけないだろう!!そんなお金ないんだっての!!
神官とシスターは別の育成機関で育成されて派遣されていくんだ
両方そろうなんて…本当にまれなんだぞ!?

デメ様の神殿にだって…シスターは二人…しかも、性格に難があるのが二人だったんだから…
ってわけで、俺は今…絶賛ソロプレイ中だ!!
最近は、業務時間に鉛筆の芯でめちゃくちゃ小さい人形を作るのがマイブームだ!!
悪いかこらぁぁっ!!


なんて、俺がそんなことをぼやきながら趣味に精を出していた時だった…

村人「神官殿…今、お時間よろしいです?」
スプ「へっ…?あ、あぁ…どうしたのですか?」
村人「今度…村で久方ぶりの勇者候補となるものの送迎祭を行うことになったのです…それで、神官様にその門出を祝ってもらおうと思いまして…それと、ついでにそのものの結婚式も…」
スプ「結婚式?結婚式ですって!?やったぞ!!これでデメ様の…げふんげふん…わかりました…日付は…いつごろでしょうか?」
村人「明日…お願いできるだろうか?村長の娘のアリステア様と、勇者のファウストとの結婚式と、送迎祭を…」
スプ「任せてくださいよ!!このための神官です!!」


……村人は部屋を出て行ったが、俺の心はもう…それどころではなかった
聞いたか?勇者の送迎祭と結婚式を同時だぜ!?
こんな名誉ある仕事につけた神官って…俺だけじゃないのか!?
よぉっし…はりきっちゃうぜぇっ!!

〜〜勇者目線〜

ファ「いよいよか…いよいよ僕も…」

僕は、明日のことを考えて…今まであったことに思いをはせていた
この村で生まれてから早18年…明日、僕はついに勇者として歩み始める…
昔から追い続けてきた夢がかなう…そう思うと、ついつい心も軽くなってしまうわけで…

ファ「ははっ…これからのことを考えると、期待で胸がいっぱいになりそうだよ、この旅でいろんな世界を旅して…父さんや母さんにおみやげも買ってあげて…そして、幸せな世界を作るんだ!!みんなが笑って過ごせるような…そんな世界をね」


……みんなは、僕のことを夢見ているだけのバカって笑うかい?
それはわかってるよ、旅がいつも楽しいことじゃないってことくらい…
だけど…そんな夢だって見てもいいだろって…僕は思う


父「ファウスト……前にも言ったが、本気…なんだな?勇者になって世界を回るって話も…村長さんの娘さんを嫁にするっていうのも…」
ファ「うん…だって、アリステアさんがあんなに必死にプロポーズしてきたのに、断るなんていけないだろ?」

僕がそういうと、父と母は少しだけ苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべて、こういってきたんだ

父「だが……彼女にはあまりいい噂を聞かない…」
母「私たちは、ファウスト…あなたに本当に幸せになってもらいたいのよ、もし…勇者の旅に出たくないっていうなら、それでもいいのよ?」

ファ「大丈夫だよ、父さん、母さん…アリステアさんもいい人っぽかったし、それにね?僕は勇者となって、困っている人を助けたいんだ」
父「その気持ちがあるなら…俺からは何も言わんよ…だが、たとえ何があったとしてもその気持ちを忘れなければ…お前はその地点で勇者だと俺は思っている…頑張れよ」


父さんの応援と母さんの優しさが身に染みる…
僕はその期待を裏切らないようにしようと強く誓い、明日に向けての旅支度を再開したんだ


〜村長の娘 アリステア目線〜


村長「アリステアよ、いよいよ明日だな」
アリ「そうですねお父様…勇者となるものを夫にするなんて…思いもよりませんでしたわ」


私はそういうと、自分の読んでいた本を閉じて机の上においた
お父様は、明日のことを考えると笑いが止まらないらしく…
口元に笑いを浮かべながら私に話しかけていた

村長「これで、あいつに堂々と復讐してやることができる…くっくっく…」
アリ「まったく…お父様は、愛する娘の結婚を復讐の道具としか見ないのですから…ひどい方ですわ」
村長「いやいや…お前だって、私が思った以上に乗り気ではないか…」


アリ「それはそうですわ…だって、勇者の妻ともなればこの村での地位は今よりも確固たるものとなるでしょう?そうすれば、どんなわがままも通る…それにお父様…知っていらっしゃいますか?」
村長「……何をだ?」
アリ「明日、彼は私を嫁にした後…旅に出るのですわよ?その旅の間に、私が他の男の人と仲良くなろうと、彼はそのことを知る由もない…私はなんでも自由に出来るのです…」


おかしなことをいっていると思いますか?
これから結婚するって相手のことを思って言えるセリフではないと?

ふふふっ…本当に相手のことを思っているなら、そうかもしれませんわね
だって私は彼のことを……愛してはいませんから


わかりやすく言うなら…彼は私の道具ですわ
彼の性格なら、私がちょっと泣いて頼んでみたらすぐにいうことを聞くでしょうし…お父様は彼の親…男親のほうに、私怨があるみたいですし…
政略結婚なのに…愛なんていりませんわよね?

村長「私の娘ながら、恐ろしい女だな…アリステアは」
アリ「当然ですわ、せめて彼には…旅に出るまでは夢を見させてあげます…」
村長「そうだな、精いっぱい夢を見させてやれ…」


〜〜主人公目線〜〜


??「ふわあぁぁぁ〜…ふみゅう…よく寝たぁ…」

私はそういうと、ゆっくりと体を伸ばすようにして起き上がる
森の中は何も変わるところを見せず、気持ちがいいくらいに平和…
こう天気がいいと…もう一回寝たく…寝たく…

??「ぐぅーーー……すーー…はっ!?ダメダメ!!もうそろそろ起きないとね…よいしょっと…」

私は横に広げていた体を一点に集中させた…
すぐに、私の体が人型をとり始める…

??「さぁって!!今日もいつものところにいくぞぉっ!!おーっ!!」

私は一人、森の中で半透明な右手を上にあげると、のんびりといつもの場所に歩いて行った…


私の名前はすらりん!!名前からは想像できないかもだけど…
種族はスライムなの、だから…私の体はすごくプルプルしてるんだよ?
このプルプル加減は、スライム業界の中では4プルぐらいだと評判で…

って、そんなことを言っている間に…私はいつもの村が見える草原地帯まで出てきたんだ
そして、遠目で村の中の一点を見る…
私の目の前には、家で家族と一緒に料理を作っている青年がうつっていた…

彼の名前は…ファウストっていうんだよ!!
もう…本当にやさしくって…私の理想の王子様って感じなんだっ!!
私たちが初めてであったのは…そう、あれは今から10年くらい前…
私がママから分離して、少ししたときだったかな?


〜〜10年前〜〜

すら「ままーっ!!どこーー?」

お母さんを探して数分…私はこの日初めて生まれた森を抜け出したんだ!!
そして、今ファウストさんがいるこの村にやってきたんだけど…

すら「ままー?んーー…ここかなぁ?」

そういいながら、ひょこっと顔を出してみると…そこに、木の棒を振り回している小さな男の子がいたんだ
身長は私より少し…おおきいかなぁってくらいの


ファ「てりゃあっ!!えいやーーっ!!ふぅ…」
男の子「おう…ファウスト!!てめぇ…今日小遣いもらったろ?」
ファ「も、もらってない…」
男の子「嘘つくんじゃねぇ!!おやびんは見てたんだからな!!ねっ!?セコンドおやびん!!」
セコ「あぁ…俺はしっかり見たぜ…?嘘はよくねぇなあ…勇者ちゃんよぉ!」


すら「な、なんだろ…なんだか、いやな雰囲気…」

私はその時、怖くなって近くにあった樽に滑り込み…
ぷるぷる震えながらことの成り行きを見守っていたんだ

セコ「おらっ!!出せよ金!!かわいい勇者ちゃんよぉ?」
ファ「あ、あわわ…だ、黙れよ!!お前らなんかに出すお金なんて…」
セコ「あぁん?なんだとぉ?」
男の子「おやびんを怒らせると、あとが怖いんだぞ!!」
セコ「もう一度、覚えさせておいたほうがよさそうだな…あぁ?お前ら!!」
男の子「へいっ!!」
セコ「俺の名前を言ってみろぉっ!!
男の子「セ・コ・ン・ド・おやびーんっ!!」


すら「…なんなんだろ、あれ…へんなの…」

そう、あの時の私にはそれがなんなのかわからなかったが…
それが変なことをしているってことだけは、なんとなく理解できたんだよね

ファ「………」
セコ「さぁ、痛いめにあいたくねぇだろう?ん?」
ファ「…っ!!僕は勇者になるんだ!!簡単に引き下がってたまるかぁっ!」
セコ「そうかよっ!!おらっ!!」
ファ「うぶっ…うぅっ…」


酷い!あの大柄の仮面をかぶった男の子…
小柄な男の子を本気で殴った!!
ぼ、暴力はいけないんだぞっ!!

私は一方的な暴力が行われている場面を見て、思わず樽から飛び出してしまったんだ
そのまま、小柄な男の子の前にぬるりっと移動する…

すら「ぼうりょくはいけないんだぞぉーー!!」
男の子「うわっ!!な、なんだこいつ!!」
セコ「びびんな!!石を投げちまえ!!」

そういって、男の子たちは私に石を投げてきたんだ…
私の体がいくらプルプルボディだったとしても、痛いものは痛いわけで…

すら「あうぅっ……ふ、ふえぇぇ…痛いよぉ…」
セコ「あんだ?こいつ…偉そうに言ってきた割には弱えぞ?」
男の子「もっと当てちまえ!!おらおらーー!!」


すら「うわあぁぁん!!やめてよーー!!ママーッ!!」
ファ「……うぅっ…お前ら…やめろよ!!」
すら「…えっ?」


私が気が付くと、さっきまでいじめられていた子が、私の前に両手を広げて私をかばってくれていたんだ
顔や服に覆われてないところに石が当たって、その子だって痛かったはずなのに、私を必死になってかばってくれたんだよ

ファ「僕は…僕は勇者になるんだ!!困っている子を助けて見せるんだ!」
すら「えっ…そ、それって…」
ファ「君は…僕が守ってあげるね?」

セコ「さっきまで俺たちにボコボコにされてたやつが…何を」
ファ「僕は…他人を見捨てるようなまねはしたくないんだ!!てぃっ!」

その小柄な男の子は、大柄な仮面の男の子を仮面越しに叩いたんだ
あたりに、こつんってかわいい音が広がった…

セコ「……うぅっ…うっ…お、お前ら!!撤退だ!!」
男の子「へっ?待ってくださいよぉ!!おやびーん!!」


彼らはそういうと、私たちの前から尻尾を巻いて逃げたのだった…
私はすぐ、私をかばってくれた子のところに恐る恐る近づく…

すら「そ、そのぉ…だい…じょうぶ?」
ファ「うんっ!!僕、勇者だもん!!」
すら「えっ…ゆ、勇者?」


私は、彼が勇者っていったときに、ママから教えてもらった話を思い出した

すらママ「すらりん…勇者って名乗る子に出会ったら、すぐに逃げるんだよ?彼らは私たちを低LV時の経験値稼ぎとしか思ってないんだから…」
すら「でもでもーっ…パパは元勇者なんでしょー?それだったら…」
すらママ「パパはべーつ♥とにかく!!気を付けること!!」
すら「ふみゅ〜っ…むずかしいなぁ〜…」




そう、ママ曰く、勇者はとても恐ろしい存在だって…
じゃ、じゃあ…私も魔物だからって……
あ、あわわ…で、でも…助けてくれたのに、逃げるのは失礼だし…


すら「うぅぅ…」
ファ「どうしたんだい?」
すら「ひぅっ!?わ、私…悪いスライムじゃないよ!!本当だよ!!だから、私を退治するなんて…」
ファ「……どうして、僕が君を退治するんだい?」
すら「だって、君は勇者なんでしょ?」
ファ「うん、だけど…それが君を傷つける理由にはならないでしょ?君がスライムだからって、傷つけるのは本当の勇者じゃないと思うんだ」
すら「・・・・・・・///////」


この時、私の心は完璧に彼に奪われた…
私は彼のまっすぐで正義感にあふれているところに惚れてしまったのかな?
その部分は、やっぱりママと似ているって今になると思うな
その時は、わからなかったけどね?


すら「そ、その…君、名前は…なんていうのかな?」
ファ「僕の名前はファウストっていうんだ、君は?」
すら「私すらりん!!ねぇねぇ…私と結婚しようよ!!」
ファ「ぶほっ!!げほっ…げほっ…な、なんだって?」

彼は、私の言ったことが聞こえなかったのか、その時私に聞き返してきたんだ
そんなに変なこと、言ってるかなぁ?


ファ「い、いきなりどうしたの?」
すら「えっ?だって、君のこと…好きになっちゃったもん!!」
ファ「はははっ…でもね?結婚っていうのは、大人にならないとできないってママが言ってたんだ、だから無理だね?」
すら「えぇーー?そ、そんなことないと思うなぁー…」


私はその時、それを言われてものすごく落ち込んだことを覚えている
それで、私が落ち込んでいると、ファウスト君はこう言ってきてくれたんだ

ファ「そんなに落ち込まないで?落ち込んでいる顔は似合わないよ?」
すら「で、でもぉ…」
ファ「大丈夫、大人になったから会えなくなるってことはないだろうし…」
すら「それじゃあ、それじゃあ!!私たちが大人になったら…結婚しよっ!」
ファ「ははっ…大きくなったらね?」
すら「約束だよ!!」


私が彼と約束をかわしていると、私を心配してママが森から出てきてくれたんだ
私はママを見つけると、すぐにママのところに行ったんだけど…
私はその時、何度も後ろを振り返っては約束だよって叫んで手を振っていた…


〜現在〜


あれから、私もいっぱい勉強して…すっごい成長したんだから!!
ファウストはまだ、あの時の約束…覚えているかなぁ〜?
もう、私も子供じゃないし…そろそろファウストに会いに行ってもいいかな?

私がファウスト〜って彼の近くに言ったら、彼が笑って答えてくれる…
そうなったら…えへへ〜っ…

と、一人で妄想していると、彼が家の外に出てきたの!!
これは…チャンス!?で、でも…
そう…彼はいい人だけど…それでも、この村のほかの人たちが私、怖いんだ
人間はいい人だって信じてるよ?でも…
もし、昔みたいにいじめられたら…私、またたぶんプルプルおびえることしかできないと思うし…
それに!!彼とは邪魔の入らないところで会いたいの!!

あぁ…森に来てくれないかなぁ…

私はそう思いつつ、彼のことを遠くでじっと見ていた…
もう、日があんなに傾いている…
そ、そうだよ!!別に彼が遠くに行っちゃうわけじゃないんだから!!
頑張るのよすらりん!!えいえい…おー!!

私は一人、自分を鼓舞すると森の住処に戻って行ったのだった…



〜〜???視点〜〜


この場所にも、悩める者がいらっしゃるみたいですね…
ふふふっ……そんな悩みを解決してあげるのが、神に仕えし我が使命!

??「よしっ!!頑張っていきますわっ!!おーっ!!」
??「そんなに張り切って…どうしたんです?」
??「あっ…なんでもないのよあなた♥ふふっ…」


〜〜〜〜〜〜〜


それぞれの人たちがいろいろなことを考えた、結婚式の前夜が終わる…
始まりの村は、勇者の結婚式と門出を祝って、すでにお祭りムード真っただ中だ


スプ「(いやぁっ…頑張ったかいがあったなぁ…こんなに賑やかな祭りの中心に立てるなんて…神官しててよかった〜〜!!)」
村人「スプライトさん、こっちの椅子、ここでいいです?」
スプ「あっ…それはもう少し右にお願いします!!」


村の中心では、明らかに手作りなステージの上で神官の服を着た青年が、ところ狭しと動き回っていた
その場所から見える、ものすごく豪華な席には村長の娘が座っている
そこに、勇者候補の彼女の夫が近づいていた

ファ「やぁ、その…こんにちわ」
アリ「あらっ…ごきげんよう…うふふっ…」
ファ「そ、その…これからよろしく!!」
アリ「えぇ…よろしくね?」


そう、村の中ではものすごいお祭りムード満載だ…
そんな時だった…



〜〜〜〜〜


ふわぁぁぁっ…今日もいい天気だなぁ…
こんな日は、いいことがある気がするよね!!

ってことで…今日もファウストのところに行くぞーっ!!

ママ「あら?すらりん…今日も行くの?」
すら「うんっ!!」
ママ「もうすっかり、あなたの言っているファウスト君にぞっこんだね」
すら「うん!!」
ママ「パパもママも応援しているんだから!!頑張ってハートを落としなさいよ!」
すら「大丈夫だよ〜〜♥えへへ…」


ママったら、もう…
っと、そうそう…そろそろいかなくちゃ…


そしていつもと同じ…村の外のファウストの家が見える場所を…って、あれ?
どうしたんだろ?なんだか、村が騒がしいなぁ…
ちょっと盗み聞き〜♪


村人「しかし、ファウストのヤロウ…もう結婚か…」
村人「あぁ、うらやましいぜ…あの子、かなりの美人だろ?」


えっ!?えっ!?
も、もしかして…ファウスト君が私と結婚するって話かな!?
もう、どうして知ってるのかなぁ〜

村人「しかし…こうなると俺達ももう…出遅れたって感じだよな」
村人「しゃーねぇよ、俺達はそれといって惹かれるような点ねぇし…」
村人「正直、結婚諦めてるしな」
村人「だな」


ふふふっ…えへへっ…
そんなにみんなうらやましいんだ〜♪
そうだよね!!だって、私たちは子供の時に結婚の約束をしているもんね!

村人「本当…村長の娘さんを射止めたんだからなぁ…」
村人「今晩は飲んだくれてやる…ぐすっ…」



すら「………えっ?」


待って、待ってよ…
そ、それってどういうことかな?

私は、頭が理解するよりも早く、村の樽の中にこっそりと侵入して村の中に侵入したんだ
この村には、いたるところに樽があるから…私も何度も侵入したことがある…って、そんなことはもういいよ!!
それより、あの人たちが言っていたことを確かめないと!!


嘘だ…嘘だよね…ファウスト?
子供の時、約束…したもんね?そんな…馬鹿な…
でも、はっきりと嘘だと言えないってところに…私は焦りを感じていたんだ


そして、私はひときわ目立った場所に座っているファウストさんをついに見つけ、樽の中から彼の様子を確認する…

すら「えっ?えぇっ!?ど、どうしてあんなに照れ照れしてるの!?」

私がそう思いながら、樽から身を少し見せて様子を見ていると…
ファウストの両親がすぐ近くで話をしているのが聞こえたの!!
なにか…詳しいことがわかるかも…


パパさん「ファウスト…あんなに楽しそうに…俺たちの気にしすぎだったのかもしれないな」
ママさん「そうね…あなた、私はあの子に旅に出てほしくないわ…正直なところ、この結婚式もなにもかも、めちゃくちゃになればいいのにってさえ思ってる」
パパさん「……滅多なことを言うんじゃない、あいつが選んだ道だろ?」
ママさん「そうね…今日はめでたい日のはず…よね?」


どうしたんだろう?二人とも、なんとなくさびしそうに話してる…
うーん…難しくてわからないけど…ファウストに何かあったってことかな?
そして、さっきから出てくる結婚って単語…
もしかして、もしかしてだけどっ!!
ファウスト結婚するの!?


すら「・・・・・・えぇーーーーっ!?」

や、約束はどうなるの?私、楽しみにしてたのに…
まさか…嘘をついたの…?ひ、ひどいよ!!

私は、ファウストに嘘をつかれていたってことがわかり…
心の底からじわりって涙がこみ上げてきたんだ

すら「うそつき…うそつきぃぃっ!!うわーーーんっ!!」

私は、泣きながら村を出て…自分の住処でもある森に戻っていく…
ファウストは私と…私と…結婚するって…
あの日…や、約束…ふえぇ…


それから、私はどれだけ泣いていただろうか…
私が流した涙は、そのままぷにゅっと飛び散って体に戻ってきているけど…
そんなことはどうでもいいの!!ファウストが嘘をついていたことが問題なの!

うぅっ…も、もう…立ち直れないよぉ…
と、ものすごく落ち込んでいた時だった…

??「お嬢ちゃん、そんなに泣いてどうしたのかしら?」
すら「ふぇっ?ひっぐ…に、人間?に、逃げないと…」
??「大丈夫よ、心配しないで?私はあなたをいじめたりしないから…ね?」


どうしてかはわからない…だけど…
私は目の前の女性に対して、恐怖心をあまり抱かなかった
彼女の来ている服は、なんとなく…修道服にも見える…
もしかして、シスターさんか何かなのかなぁ?

??「泣き止んで、お姉さんに話してみなさい?ね?」
すら「ひっぐ…あ、あのね?実は…」


私は、彼女に自分がどうして泣いているかを精いっぱい説明した
そして…その間、彼女は私の話を精いっぱいきいてくれたの!!
優しい人だなぁ…まるで、聖女みたい!!
あっ!!だからシスターなんだね!?なるほど〜…

??「なるほど……ねぇ、君はファウストって子が結婚するのが嫌なの?」
すら「えっ…?い、いや…だけど…でも、彼が幸せならって思ったりも…うみゅう…」
??「幸せ…かぁ…残念だけど、彼には幸せはないかも…」
すら「えっ!?そ、それは…どういう…」


し、幸せはない…?えっ…それってどういう意味なの!?
結婚するんだよ?幸せな家庭をきずいて、子供もたっくさん作るんだよ?
どうして彼が幸せじゃないって思うんだろう…?

??「うーん…どうしてかわからないって顔ねぇ…仕方ないですわ、ちょっと…これを見てくださいますか?」

彼女はそういうと、両手を合わせて真っ黒な球を作り出したの!!
す、すごいきれいな光……って、あ、あれ…?
なんだろう?光の中に何か見える…

そこに映っていたのは、ファウストと一緒にいた女性だった
そして…あれは…彼女のパパかな?

アリ「ふふっ…お父様、彼…まったく気が付いておりませんわよ」
村長「そうだな…まったく、馬鹿な奴だ、あいつの息子は」
アリ「そんなことを言わないでくださいませ…一応、今日だけは私の夫なのですから…明日からはちがいますけど…うふふっ…」
村長「まったく…あの子がしったらショックで倒れてしまうぞ?」
アリ「いいですわ、むしろ…旅先で死んでくだされば楽ですのに…」


………な、なんなのあれ!?
ちょっと…あの子…ひどい!!ファウストとの結婚を…一応って…
それに!!旅先で死んでくれたらって……ひどいよ!!
なんで…?愛なんてないじゃないの!!
それなのに…どうしてファウストは彼女のことを…


??「この映像を見ても…彼が幸せになると思いますか?」
すら「ひどいよ!!こんなの!!」
??「でしょう…?そんな彼を救ってみたくないですか?」
すら「えっ!?で、出来るの?」
??「えぇっ…簡単です…ですが、時間はもうないかも…」


時間がない…?い、いやでも…止まっている場合はないよ!!
たとえ、時間がどれほどだったとしても…私は行くんだから!!

すら「時間って…あと何時間くらいなの?その…結婚式まで…」
??「ちょっと待ってくださいね…?」


〜〜〜村〜〜〜


スプ「さぁって!!いよいよお待たせしました!!我らが勇者の待ちにまっためでたい日だよ!!さぁ、まずは勇者としての旅立ちの儀式からしてしまいましょう!!」


そういうと、その神官は広場の真ん中に立って…たいそうな杖を持って本を片手に青年を見下ろした…
あの本は…勇者に魅了に対する抵抗魔術をかける本…
なるほど、あの子がたびにでるって言っていたのは…本当みたい
それにしてもあの神官……どこの神殿の者かしら?
服に描かれているシンボルマーク…見たことありませんけど…


スプ「さて…それでは…(ま、まずい…呪文なんて覚えてねえよ…とりあえず適当に言ってこの場はごまかそう…そうだ、それがいい…)」
ファ「……ごくっ…」
スプ「汝、旅立ちの時なりて、これから先の祝福があらんことを…え、えっと…これから先、汝には様々な試練が訪れるだろう…だが、大いなる神は汝の善行をすべて見ておられる…勇者として、ふさわしい行動をとっていただきたい…以上です」


そういって、あたりに歓声が沸きたった…
……あら?呪文は…?もしかして…呪文知らないのかしら…?
………ふふっ、なんか、かわいいわねぇ…

〜〜〜

っと、いけないいけない!!
今はどれくらいで結婚式が始まるのかを見てあげるのよね…
えっと…こ、これは…時間なさそうね


??「30分くらい…かしらね」
すら「えぇっ!?こ、ここからだと間に合わないよぉっ!!」
??「ふっふっふ…焦ってるようね…そこで、親切な私があなたを助けてあげてもいいですよぉ?」
すら「えっ!?助けてくれるの!?わーい!!」
??「たーだーし!!条件があるの…いいかな?」
すら「いいよー♪」
??「そ、そう…(なんでしょう、調子が狂いますね…)」


このシスターさんの条件ってなんだろう…?
でも!!それがなんだったとしても、別にいいんだ
私は今…彼を助けるためなら何でもするんだから!!


??「それでは…条件として…なにか、私が喜びそうな物を…」
すら「えっ?そ、それじゃあ…この私の宝物の丸いキラキラした玉を…」
??「いりません」
すら「あうぅ…じゃあ、何がいいのかな…?私、別にたいしたもの…」
??「そ、そうだ!!ちょーっとだけ、体の一部を分けてもらえないかな?ほら、スライムゼリーっていうのかしら?一度だけ試してみたかったんです!」
すら「えっ!?」


す、スライムゼリー…?それって、私の体のほんの一部を分けてほしいってこと…だよね?
うぅっ……嫌なんだけどなぁ…
で、でも…ファウストを助けるため…仕方ない!!


すら「い、いいよ!!じゃあ…その…これ…」
??「ありがとう!!これで、私のコレクションが増えたわ〜♪っと、いけませんわね、浮かれていては…ではでは、さっそく手助けを…まず、耳を拝借…ごにょごにょ…」
すら「えっ!?神官を驚かせて、式を中断させる!?」
??「ちょっ!!言っちゃったら読者のみんなに隠している意味がないじゃないですか!!」


えっ?読者?ちょっと何を言っているのかわからないなぁ…
まっ、別にいいよね!!


そして、私はあのシスターの魔法?ってやつのおかげで、今…
村の中の樽の中に侵入しているの…
い、いつも以上に緊張するなぁ…

すら「こちらすらりん!!潜入成功だよ!!」
??「では…時間もあまりありません、早速神官の部屋に忍び込むのです!」
すら「えっ…?ど、どうして?」
??「結婚式には必要なあるものを彼は持っていません…これは、間違いなく部屋に一度戻るはず…そこを襲ってしまいましょう!!」
すら「わかった!!」


私は、シスターの言うとおり教会の中の大きな部屋の中の机の下に隠れた…
ほ、本当に来るのかなぁ…?いや、疑っていても仕方がないよね…


そう思いながら、数分の時が経過した…
あ、あぁ…30分しかなかったのに…もう、結構時間がたってるよぉ…
し、失敗したのかなぁ…
そう思いながら、机の下でプルプル…って、そんなことをしようとしていた時だった…


ガチャ…


スプ「ふいぃ…勇者の送迎の儀式は終わったな…あとは、結婚式だけ…よしっ!頑張れよ俺!!」


来たっ!!あ、あの人の考えは見事に当たった!!
や、やったよ!!これで…私にもチャンスが!!
よぉっし…あの人を驚かせて、結婚式をめちゃめちゃにしてやるんだから!


スプ「えっと…確か、結婚式に必要な本は机の上に…っと…」
すら「あわわっ…えいっ!!」


私は、あわてて自分の体のほんの一部を本に滑り込ませる…
その間に…体もちょっととろかしてみたり…
プルプル…プルプル…っと…


スプ「ありっ?なんだ?このページ…何か挟まってんのか?」

そして、神官が本を開いた瞬間!!
私は本に忍ばせていた分身を彼の顔のほうに飛ばしたの!!
分身は、きれいに彼の顔に命中…こ、これで驚いてくれたかなぁ…


スプ「うひゃわあぁぁぁっ!?な、なんだよこれっ!?目がっ!!目がっ!見えな…ええいっ!!こんなところで、初の神官業を邪魔されてたまるかよ!」
すら「きゃっ!!あ、足をちょっと…失礼します!!」
スプ「へっ!?な、なんか足元に水気のある何かが!?ひぃっ!?あ、上がってきてる!?あわわわわ…あばばばばばば…た、助け…ひやぁぁぁぁぁっ!」
すら「ちょっと!!あ、暴れないでよぉっ!」
スプ「ひぃあぁぁぁぁっ!!……っ!?」


あっ…

私が必死に振りほどかれまいと体に神経を集中させていると、神官さんが振りほどこうとしてバランスを崩し、机の角に頭をぶつけ、上向きに倒れこんだの
み、見る限り…気絶しちゃったみたい…

か、かわいそうだし…そのぉ…2ミリくらい、私の体の一部を口にねじ込んでおいてあげるね?
スライムゼリー…本当はこんなに安売りしたくないんだから!!
感謝してね?せめてものお詫びだよ♪


スプ「っ!?ごぼっ…ごぼぼっ…あ、あぁぁっ…がくっ…」
すら「さてと…こ、これで結婚式は中止になるのかなぁ…し、しばらくはここで様子を見ないといけないって言われたけど……そ、そうだ…隠れておこうっと…」

私は、そういうとすぐに、机の下に隠れて部屋の扉の様子をうかがう…
すると、それから数分とせずに、部屋の中に村の人が入ってきたの!
あ、危なかったぁ…

村人「そろそろ、お時間で…なっ!?し、神官殿!!どうしたのですか!?」
スプ「………ぁ……」
村人「こりゃあいかん…し、仕方がない…け、結婚式は中止にするしかないなこれは…困った神官様だな…本当に…」


私は、その村人の人がそういうと、部屋を出ていくのをじっと見守っていた…
すぐに、教会の外を大きなざわめきが支配したのがわかる…
せ、成功したっ!?やったぁっ!!
でもでも…すぐにのこのこと出ていくのはまずいよね…
ここは、慎重に動くんだから!!


それから、数分が経過し…外の騒ぎも収まってきた
も、もう…さすがにいいよね…

私は、心の中で確認すると…そっと机の下から出てくる…
そして、倒れている神官さんの目の前で人型を形成したの!!
神官さんには、ちょーっとだけ悪いこと…しちゃったからなぁ…


すら「ぷにぷに…ぷにぷに…大丈夫そうだね…よかったぁ…」


さてさて、結婚式の延期は成功したけど…これからどうしよう?
うぅ…これから後の予定は聞いてないよぉ…

そう思って、プルプルしていると…頭の中に突然またシスターの声が響いたんだ
シスター…どこかで見ているのかなぁ…


??「これから先は…もうわかりますね?すらりんさん…」
すら「へっ…?」
??「あなたの愛をぶつけるのです!!そう!!今すぐに!!」
すら「……うん!!」


私は、その言葉を聞いたとき…確信した
そう…これは神様が私にくれたチャンスだって!!
あの時の約束…ファウストが覚えていてくれたなら…私にもチャンスはある!
スライムだから、人間と結婚するなんておかしいって誰が決めたの?
私は……退かないから!!


すら「待ってて…ファウスト!!」
??「……魔物…?なるほど…なるほどね…」
すら「だ、誰!?」


私は、この部屋の入口の扉のほうから聞こえてくる声に思わずびっくりしてしまったの…
み、見つかっちゃった…母さんから、人間に見つかるのはいけないって言われてるのに…


…そして、わたしが見たこの部屋の扉のまえには…
ファウストと結婚するはずだった女性が腕を組んで立っていたの


アリ「あなたが、この私の結婚を邪魔していたのね…どういうつもりかしら?」
すら「ぷるぷる…わ、わたしは…ファウストを救うんだもん!!本当の愛がない結婚なんて…信じないんだもん!!だから…」
アリ「………何の、ことかしら?魔物さん…あまり面白くない冗談をおっしゃいますと……許しませんことよ?」


う、うぅぅ…こ、怖いよぉ…目が、まるで相手を射殺すように鋭いんだもん
で、でも…わ、私は負けないよ!!ここで怖気づいてなんていられないんだもん!!


すら「わ、わたし知ってるんだから!!あなたが…ファウストのことを本当に愛して結婚するわけじゃないってこと!!」
アリ「……本当に、どこでその情報を仕入れてくるのかしら?まぁいいわ…その通りよ、それで…それがどうかしたの?」
すら「……だ、だったら!!そんな互いに愛してもいないのに結婚なんておかしいですよ!!あなたが彼を愛してないなら…その…」
アリ「…へぇ…なるほど、なるほどね…」


彼女は、私が一瞬だけ照れたようになったのを見逃さなかったのだろうか?
不意に目を細め、薄ら笑いを口元に浮かべ始めたんだ
こ、怖い…何か、いやな予感がする…

アリ「ファウストのこと、好きなんです?残念でしたねえ…彼はこのわたくしと結婚するのです…あなたは遠くで指でもくわえてみていてください」
すら「そんなの!!結婚式は中断したんだから、まだ結婚してないでしょ!」
アリ「すぐにもう一度行えばいいのですわ、それに…はたして彼はあなたを受け入れてくれるかしらね?」
すら「……えっ?」
アリ「わかりませんこと?あなた…魔物じゃないの、彼がいくら馬鹿だからといってもそう簡単に物事を受け入れるなんてできないわ、人間だもの」
すら「あ、愛さえあればそんなの関係ないよ!!わ、私知ってるもん!」


そ、そうだよ!!ファウストは私と結婚してもいいって約束してくれたもん!
それって…私に愛情を注いでくれているってことだもん!!

だけど…まるでそれを否定するかのように、変なドキドキが体の奥底から湧き上がってくる…
な、なんでだろう…?私…結果を知るのを今更怖がっている…?


アリ「愛…?はっ…そんなの、所詮は建前上の物…そんなのなくても、男を騙すくらい、簡単にできますのよ?」
すら「そんなの、ダメだよ!!」
アリ「じゃあ、愛があればどうにでも出来るって思っているわけよね?種族間の壁も関係なく……本当にそうなのかしら?聞いてみる?」


私は、彼女にそう聞かれたとき…すぐに聞いてみればいいって言えなかった…
そう…私はちょっとだけ…答えを聞くのが怖かったの…
で、でも…ふぁ、ファウストは私のことを好きだって思うし…
だ、大丈夫だよね!?ねっ!?

私が一人…彼女を前にいろいろな考えを巡らせているときだった…

ファ「アリステアさん…ここにいるんですか?って…えっ!?」
アリ「あぁっ!!ふぁ、ファウスト!!助けてください!!魔物が…」
ファ「くっ…下がって!!」

えっ…?
ど、どういうこと…なの…かな?


私は、ファウストが私に向けて剣を向けているこの状況を素直に理解できなかった
すぐに、私の近くにいた女性がファウストのところに駆け寄り後ろに隠れる


すら「えっ…?ふぁ、ファウスト…?どうして…」
ファ「……僕、名乗ったっけ?とにかく、君に言いたいことがある…この村から、今すぐに出て行ってほしい…誰も傷つけないで…ね?」
アリ「わ、わたくし…とても怖いめにあいましたの…ふぁ、ファウスト…あなた、勇者なのでしょう?だったら…わたくしを守ってください」
ファ「………頼む、君に恨みはないんだ…退いてくれ」


そ、そんな…完璧に私悪者…!?
ふぁ、ファウスト…お、覚えてないの…?昔の…ことも…

じわりと目元に涙が浮かんでくる…
そ、そんなのひどい…こんなの…あんまりだよぉっ…

すら「ほ、本当に…私のこと…忘れちゃってるの?」
アリ「惑わされないで、ファウスト…彼女は魔物なのよ?」
ファ「……頼む、住処に帰ってくれ…僕は、魔物でも出来るなら傷つけたくないんだ、君のことは知らないから…たぶん人違いなんだろうし…ね」
すら「ひ、人違いなんかじゃないもん!!子供の時…」


だけど…それ以上私は何かを言うことができなかった…
ファウストが、私に剣を突きつけてきたから、何も言うことができなくなった
それは、ものすごくゆっくりとした攻撃で、私に当てるつもりなんて全くない…で、でも…それでも…


すら「うぅっ…うそつき…ファウストのうそつき!!子供の時、この村で守ってくれたのに…将来、大きくなったら結婚してくれるって言ったのに!!うわあぁぁぁあぁぁぁんっ!!」


私は、それから後ろも振り向かず…森の中に帰って行ってしまった…
もう…私…どうしたらいいんだろう…?心が…痛いよぉ…


〜〜〜


ファ「……なんだ?この…へんなモヤモヤした感情は…?」
アリ「ふふっ、ご苦労ですわファウスト…でも、どうしてとどめを刺さなかったのです?相手は魔物だったっていうのに…甘いですわね」
ファ「それは関係ないと思うな、人間でも魔物でも…生きてる以上…簡単に奪ってはいけないって僕、思うし…」


それに……なんだろう?本当に胸の奥がモヤモヤする…
彼女が、必死に何かを訴えようとしているときからだ
もしかして…僕が覚えていないだけで、彼女のことを本当は知っている…とか
そんなこと、あったりしないよな?


アリ「………ちょっと!!聞いていますの!?」
ファ「えっ!?あ、あぁ…いや…ごめん…」
アリ「……もう、やっぱり…ファウストもちょっとおかしいですわ、とりあえず…さっき言った通りにしますので…あと一日だけ待っていただけます?」
ファ「えっ?な、なんの話かな?ごめん、もう一回頼むよ」
アリ「さっきの魔物を村人の手で討伐するって話ですわ、魔物を野放しにしておいては危険ですもの」



魔物を討伐…だって!?それはいけない!!許されるはずがないだろう!!
人間じゃないからってすぐに暴力に訴えて…そんなの、おかしいじゃないか!
アリステアさん…どうにか、考え方を改めてもらわないと…


ファ「それはダメだ!!さっきの魔物はもう、この村には来ないと思う…だから、それでいいでしょう?無理に討伐とか…しなくてもいいと思う」
アリ「そんな甘いことを…もう、いいですわ…私たちで勝手にいたしますから、ファウストは村で待っているといいですわ」


アリステアさんはそういうと、部屋から出て行った
僕もあわてて後を追いかけようとする…が…


ガチャン…ガチャ…ガチャ…


ファ「……あ…れ?鍵が…かかっている?ど、どうして!?」


そう、部屋と外を結ぶ唯一の扉がカギを閉められ、出られなくなったんだ
そして、それからすぐあとに外がざわざわと騒がしくなる…
ど、どうやら…アリステアさんは本気のようだな…
こうしてはいられない……早く、この部屋を脱出してみんなを止めないと…
取り返しのつかないことになってしまう、それだけは…

だけど、その時…僕はちょっとだけ考えてしまった
僕は今日…勇者として旅にでるはずだった…もう、勇者としての儀式は終わっているわけだし…
世間一般的な理論では…勇者は魔物を倒し…人間を守るべきもの…
人々の希望の象徴のはずなんだ
魔物を倒すべきはずの者が、魔物を守るために行動する…おかしくないかな?


……しかし、いくら考えても自分の中で答えは出てきてくれず…
仕方がない、あとはこの部屋を出てから…考えよう
出る方法は…ちょっと荒っぽいけど…壊すしかないよね


ファ「おりゃあぁぁぁぁっ!!」


ドーンッ

くっ……お、思いのほか…頑丈だなぁ…
タックルすれば、何回かで開いてくれると思っていたんだけど…
……剣で、斬るしかない…かぁ…
ごめんっ!!神官さん…許して!!


僕は心の中で神官さんに謝ると、思いっきり木製の扉をたたき切った…
木製の扉を潜り抜け、僕は……僕は…

と、そこで僕は足が止まってしまったんだ
あの部屋の中で考えていたこと…
僕の…勇者としての在り方のこと…それを考えないといけなくなってしまった

勇者として…僕は人間を守るために魔物を倒さなくてはいけない…
それが、世間の意見だ…だけど、僕は……
僕には、世間の意見通りに勇者になることが……できない…
魔物だろうと……見た目はちょっと人間と違うだけの女の子じゃないか!
それを……倒すなんて…僕には…


と、一人立ち止まって悩んでいると、父さんと母さんが近づいてきたんだ
……二人は、彼女を倒すって村人の暴動に参加しなかったみたいだな…


父さん「ファウスト……お前は、いかないのか?魔物の討伐…」
ファ「父さん……僕は……」
母さん「……ファウスト、無理に行かなくてもいいのよ…あなたも人間なんだから…怖いんでしょう?」
ファ「違うっ!!僕は…僕は…魔物だからって…傷つけることをしていいのかって…人間と違うからって…すべてが悪ってことじゃないよね?ねぇっ?」


父さん「ファウスト…よく聞け、いいか?」
ファ「な、なんだい?父さん…」
父さん「父さんな…普通の農民出だから大したことは言えないが…そもそも、世間様の意見に従う必要がどこにあるんだ?ファウスト…そうは思わないか?」
ファ「で、でも…僕は勇者だから…」
父さん「だからどうしたんだ!!勇者である以前に一人の男だろう!!それなら…自分の正義を貫き通してみろ!!お前は…どうしたいんだ?」
ファ「僕は…あのスライムの女性を…守りたいんだ!!」
父さん「なら……その叫びに従え!!たとえ世界が敵になったとしても、自分の気持ちを曲げるんじゃない!!」


父さん……ありがとう…
僕が父さんに感謝しながら、先に進んでいこうとすると…
母さんがふと、何かを思い出したかのようにこんな話をしてくれたんだ


母さん「ふふっ…今だから言えるけど…母さんはなんだか、こんな気がしていたわ」
ファ「えっ…ど、どうして…?」
母さん「私ね…あなたが7歳くらいの頃かしら…あなたと魔物が仲がよさそうに話していたのを遠くで見ていたことがあったの、その時のあなたを見ていたら、なんだか私、魔物の見方が変わってね?魔物の中にもいい魔物もいるんじゃないかって思ったの」
ファ「僕が……魔物と?」
母さん「えぇ…互いに小さかったけど、結婚の約束とかしちゃったりして…微笑ましかったわよ」



僕は、母さんにそういわれ、一つのことを思い出したんだ…
確かに昔…僕は魔物を一度助けたことがあった!!
確かに…その魔物と結婚してもいいかもって話もした!!
そうか……そうだったのか…

言われるまで、僕はそのことを不覚にも覚えてすらいなかった…
だけど、今はっきりと思い出したんだ
きっと彼女は…あの時の…スライムの女の子だ…


………決めた

もしかしたら、村の人を敵に回してしまうかもしれない…
だけど、僕はあの子を助けに行く!!
父さんの言うとおり…僕は…一人の男として!!


ファ「父さん、母さん…僕…行ってくるよ」
母さん「えぇ…」
父さん「行って、助けて帰ってこい」
ファ「うん!!」


僕は、二人にうなずくと…すぐに村を後にしたんだ
だが、僕はあまりにも時間をかけすぎたらしく…村のみんなは大勢森の中に行ってしまっている…
僕の足では…間に合ってくれるのかどうか…
ええい、心配していても仕方が…


??「そこの人…時間のことに困っているのかしら?」
ファ「……っ!?」

僕は、いきなりシスター風の女性に呼び止められ振り向いた…
どうして…そんなことを聞いたりするんだろうか…?
だが…なんとなく、僕は彼女に話を聞かないといけない気がしたんだ

ファ「……そういう、あなたはいったい誰なんですか?」
??「私は、愛に仕える僧侶…シスターとでも言っておきましょうか…」
ファ「は、はぁ…」


このシスター…こんな恥ずかしいセリフを何のためらいもなく言い放つなんて…
只者ではないな……いろんな意味で
まぁ、シスターにしてはやけに露出の多い服を着ている点から考えても…
ちょっと特殊な人物に違いないよね


ファ「そ、それで…愛に仕えるシスター様が僕にいったい何の用ですか?時間がないので、早く終わらせてくれると…」
シスター「そうですね、と言っても…残念なお知らせがあります…彼女の住処のすぐ近くまで村の者がとうちゃくしてしまっている…これでは、いくら急いでも間に合わないでしょう…普通は」
ファ「……本題を話してくれませんか?」
シスター「えぇ…私が、時間を30秒だけ巻き戻してあげましょう!!そうすれば、あなたは間に合います…ただ…条件もあるのですが…」
ファ「条件…?いや、そもそも時間を戻すなんてそんな馬鹿な…」


信じられない…だが、なぜだろうか?
僕は、なぜか彼女なら時間を戻せるってそんな気がしたんだ
………頼んでみよう、条件というのがちょっと気にはなるけど…


ファ「もし、本当にそんなことができるならお願いしたいですが…」
シスター「やって見せましょう…それで、条件ですが…あなたが初めてセックスを行う時…時間を戻しただけ愛を注いであげてもらいます…強制的に」
ファ「せ、せっ…ちょ、何を言ってるんですか!?」
シスター「ふふっ…私は愛の使いと言ったでしょう?さぁ、どうするのです!?話をのむのなら、時間を一度巻き戻しましょう」
ファ「わ、わかった…けど、じかんは3分ごとにしてくれないかな…?じゃないと、僕初めての夜に射精しすぎて死んでしまうから…それでも、僕は死ぬかもしれないけど…」
シスター「大丈夫ですよ…そのころには…っとげふんげふん、では時間を戻しますね?」


シスターがそういうと、いきなり彼女の持っていた石が紫色の光を放ち始め…
次の瞬間、僕は村人が村を出たばかりだというのを目で確認できたんだ
どうやら…本当みたいだ…


シスター「では…これ以降は、この石に願ってください…そうすれば、3分時間が戻りますので…3分立つたびに石が紫色に光りだしますので、参考にしてくださいね」


シスターはそう言い残すと、僕に青色の石を渡して村の中に消えて行った…
もう…ここまで来たらやるしかない…な…


村人「ファウストじゃないか!!お前も魔物を倒しに来たのか?」
ファ「違う!!みんなを止めに来たんだ!!」
村人「止める?おかしなこと言わないでくれよ…村長の娘に頼まれたとあっちゃあ、やるしかないんだから」
ファ「頼むよ!!話を聞いて……っくそ!!」


僕が走りながら村人に注意を促してみても、みんなは止まる気配をまったく見せない…
くそっ…やっぱり…アリステアさんを説得するしかないか…?
となると…先頭までいかないといけなくなりそうだなぁ…


そう思いながら、しばらく走ってようやく森に入ったかという時だった…
僕の持っていた青い石が紫色に光り始めたんだよ!!
なるほど…これがシスターが言っていた…


全体的に見ても…まだ半分くらい…か…
仕方がない!!

僕は頭の中で少し考えると、石の力を使ったんだ
頼む…間に合ってくれよ…



〜〜〜〜〜



私は、何も考えることもできずにただ一人…湖の上に浮かんでいた
もう…今の私はすべてを失ったかのような心の痛みにさらされている…
あぁ……このまま、すべてを忘れてしまえたら……


だけど、現実はそんなに甘くない…
私の頭の中では、ファウストさんの姿が浮かんでは消え…それを繰り返していた
うそつき……ファウストさんの……ぐすっ…



と、その時だ…
いきなり森が騒がしくなってきたかと思うと、大勢の人間が目の前に現れたの
なぜか……ものすごく嫌な予感がした…ううん…わかってるんだ
あの人たちは私をいじめに来たんだって…
本当は、人間と魔物との共存なんて夢物語なんだって…


アリ「そこの魔物!!聞こえるかしら?」
すら「……なにかなー?私いま…すごく心が痛いんだけど…」
アリ「本来…魔物という生き物は生きているだけで人間に忌み嫌われる存在…そんな存在が、私の将来の財布…げふんっ…旦那様をとるなんてありえませんわ、魔物は魔物らしく…人間に倒されればよいのですわ…」
すら「………」


いつもの私なら、そんなことないよーって言い返すんだけど…今日の私は、あいにくと言い返すことができなかった…
そうかもしれない……所詮、私はスライム…人間と仲良くなるなんて…


すら「そうだね……いうとおりだと思う…」
アリ「潔いわね…その勇気に免じて…痛みは感じさせないであげましょう…みなさん、お願いしますね?」
村人「…………お、おぉ……(悪いな嬢ちゃん…彼女には逆らえないんだ…俺達、生活が懸かってるから…恨まないでくれ…)」


村人たちは私に向かって確実に歩みを進めてきている…
あーあ…私の人生って…なんだったんだろう…
せめて…スライムじゃなかったら…ファウストと…
ふ…ふふっ…それも…夢かぁ…


私はついに覚悟を決め、眼をつぶる…
そして…村人の人の持っていた鉄製の鍬が私の体に……


ガキィンッ!!


………あれ?なんとも…ない?
私がそう思い、うっすらと眼を開けてみると…


ファ「大丈夫かい?すらりん」
すら「へっ……!?ふぁ、ファウスト……どうして…」
ファ「………君を守るために来たんだ」


アリ「ちょっと…これは何の冗談かしら?ファウスト、あなたは本来こちら側のはずでしょう?私の旦那になるんだから…そうでしょ?」
ファ「……ごめん、アリステアさん…僕はやっぱり、魔物も人間も一緒に過ごしてほしいんだ、こんな争いなんか間違ってるよ!」


ふぁ、ファウスト……ひ、卑怯だよ…
私にショックを与えておいて…こんな王子様みたいな登場されたら…
かなわない恋なのに、また期待してしまうじゃん…


私はそう思いながらも、ぴとっとファウストに体を寄せ付ける…
ファウストは一瞬ぴくっとしたけど、それだけだった
私の恋がかなわない物だとしても…せめて、この間だけは…
ファウストに体を寄せても…許してくれるよね?


アリ「……あーあ、くだらない…本当に…」
ファ「アリステアさん?どうしたんだ…?」
アリ「人間と魔物との共存?そんなの、夢物語じゃないですか…だいたい、どうして私にたてついているんです?ファウスト……」
ファ「僕は間違いを正したいんだ!!」
アリ「うるせぇんだよっ!!さっきから邪魔ばっかりしやがってこの財布勇者がぁっ!!あなたごときが私の邪魔をするんじゃないっ!!………ですわ」


彼女の変貌ぶりに、一瞬だけ周りが静かになった…
さ、さっきのは…いったい…
彼女…二重人格なのかな…?それとも、素があれなのか…どっちなんだろう?


ファ「……さ、財布…?それって…いったい…」
アリ「もういいですわ…バラしましょう…私、あなたを愛してなどおりませんの、すべては勇者と結婚したという地位…ステータスがほしかっただけですわ。あわよくば、旅先であなたが死んでくれればうれしかったのですけれど…」
ファ「そんな……そ、それが…事実…なのか?」
アリ「そこのスライムに聞いてみたらどうかしら?すべて知っているわよ?」


………そう、私はそのことを知っている…
知っているからこそ、そんなものは結婚じゃないって思っていたんだ
…彼女が、自分からそのことをばらすなんて思っていなかったけど…


ファ「すらりん…さっきの話は…」
すら「うん…本当だよ…」
ファ「…………そ、そうか……」


ファウストは一瞬だけ落ち込むと、すぐに剣を構えた…
彼の性格上…争いたくはないんだと思うけど…

ファ「……アリステアさん、僕…自分のことを本当に愛してくれている人と一緒になりたいんです…村に戻ったら、結婚の話はなしに…」
アリ「気にしなくてもいいですわよ…勇者さまは、ここで、無残に、朽ち果てるのですから…」
ファ「……ど、どういう意味だ…?」
アリ「あなたはここで死ぬ…魔物に襲われて亡くなったってことにすれば、両親もほかの村人たちも納得するでしょう?さぁ、あなたたち…わかってるわね?」


村人「ふぁ、ファウスト…すまない、俺達…家のためなんだ…」
ファ「……いいよ、でも…僕もむざむざやられるわけにはいかない…向かってきたら、気絶させるからね?」
村人「はい…本当に…すみません…」



村人はそういうと、一斉にファウストむけて攻撃を始めたの
む、無茶だよ!!いくらファウストでも、5人相手に戦うなんて…

だけど、ファウストは昔の気弱な男の子ではなかった…
そう、彼は私が思っていた以上に、最高にかっこよく成長していたの!
もう、私興奮でプルプルが抑えられないよぉっ!!


村人「っ…うぐぅっ…」
ファ「みんな、もうやめよう…こんなことで人間同士が争うなんておかしい…ね?」


ファウスト…すごい…かっこいい…
あぁ…あまりのかっこよさに顔がほてってきちゃうよぉ…

そう浮かれながら、ファウストの戦いを見守っていた時だった…
不意に、首筋の部分のスライム部分に、金属のようなものが当てられたんだ
な、なんなのかな?これ…!?


アリ「ちょっと待ちなさい!!ファウスト!!これが見えないのかしら?」
すら「えっ?えっ?何っ!?」
ファ「なっ…ナイフ…だって?アリステア!!どうして…そんなことをしているんだ!?」
アリ「ふふっ……どうしたのかしら?魔物に武器を突きつけているだけで…動けなくなっちゃうの?無様ねえ…ふふっ…」



な、ナイフっ!?……って、別にそんなに驚くことじゃないなぁ…
私、スライムだもんねー…普通のナイフなんか、別に怖くない…
……そうだ!!いいこと閃いちゃった♪

アリステアっていったっけ…今までの嫌がらせの仕返しなんだから!!
覚悟してよね!!


私はそう決意すると、そぉっと自分の体の一部分を彼女の足元に忍ばせた


ファ「くっ…やめてくれ…アリステアさん、そんな卑怯な…最低な行為をするのはダメだ!!正気に戻ってくれ!」
アリ「私はこれが普通なので…ねぇ…?ふふっ…今まで、少しの間でしたが、私と仲良くなれたんですから、あの世の土産には十分でしょう?」
ファ「くっ…こ、これまで…なのか…ごめん、すらりん…」

すら「あきらめたらだめだよ!!だって…私、ナイフきかないんだもん!!」
アリ「えっ!?ひゃんっ!?な、なにか液体のようなものが足を上って…な、なんですの!?これは!?や、やめなさい!!さもないと…」
すら「にっひっひ〜♪やめないとどーするのぉ?」
アリ「くっ…こ、このっ…馬鹿スライムの分際で…」
すら「むっ…あっ…にふふふ…そうだよね〜私、馬鹿だもんねぇ〜…」
アリ「なっ!?服の中は……や、やめっ…」
すら「何言っているのか、全然わかんなーい♪それそれ…ぬりゅぬりゅ…」


アリステアさんの体にスライムを這わせてあげると、彼女はとても身もだえをし始めた
さっきまでの威勢はどこに行ったのかなぁ〜?
にひひ…たとえば…この人間の女性が股につけている布越しにさすさすしてあげてみたり…胸をもにゅんとしてみたり……


アリ「ふわぁっ!?ら、らめなひゃい!!こんな…こ…とぉっ…」
すら「やーめない!!ほらほらほらっ!!さすっ…」
アリ「ひゃあぁんっ!!だ、ダメぇっ!!ほ、本当にやめてぇ!!」
すら「えぇー…?どーしてえー?」
アリ「そ、そこばっかりさすられたら…その…が出ちゃう…」
すら「……?聞こえないなぁ…」
アリ「ひっくぅぅっ…お、お、おしっこ出ちゃうからぁっ!!お願い!!もうやめてよぉ!!」


うーん…どうしようかなぁ…
そうだなぁ…私もそんなに悪いスライムじゃないし、あと一回布越しにスライムを押し付けたら勘弁してあげよっと!!

私はそう思うと、今までで一番強くスライムをその場所に押し付けたんだ
すると…

アリ「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁっ…!!」


ちょろ…ちょろ…


アリ「あ…あぁうぅ…そ…んな…私…こんな…」
すら「あっ!?そ、その…ご、ごめんね?」
アリ「……ぐすっ…絶対に…許しま…せんわ…ひっくっ…ぐすっ…」


うぅぅっ……な、なんだろう…この罪悪感…
と、とにかく!!これで満足したし、私の仕返しはこれくらいにしてあげる!
私はそう思うと、彼女から離れてファウストのところにするりと移動した


アリ「ひっくっ…お、覚えてなさい!!お前たち!!今日のこと…他言したら…殺しますわ!!この手で!!」
村人「……ひ、ひぃぃっ!?わ、わかりました!!」
アリ「………う、うわぁぁぁぁんっ!!お母様ーーっ!!」


アリステアさんはそう一言泣き叫ぶと、そのまま村人を引き連れてきた道を戻っていったの
そして、この場所に今いるのは…私とファウストの二人だけ…
……でも、なんでだろう?今日の朝の気持ちとは打って変わって…すごく気まずいよぉ…


ファ「あの…」
すら「あの…」

うっ…さ、さらに気まずくなっちゃったよぉ…
自分から先にいってもいいけど…あぁぁ、ファウストもなんか不安そうな顔してるし…


ファ「先にどうぞ」
すら「その……あ、あの…助けてくれてありがとう…どうして、助けに来てくれたの…?私…魔物なのに…」
ファ「そんなの!!守るべきものを守るのに…人間も魔物もあるものか!!もし…そんな決まりがあるんだったら…僕はその決まりをたたき切ってやる」
すら「……ありがとう、じゃあ…私は…これで…」


私は、ファウストの本音を聞くと、心の中が穏やかな気持ちになったんだ
これなら…今なら…ファウストと気持ちよくわかれることができる…
これ以上時間を延ばしちゃったら…別れたくなくなるから…


ファ「……待ってくれ!!すらりん…その…あの時は、ごめん」
すら「いいんだよファウスト…私、思い出してくれただけでもうれしいから」
ファ「………君は、どうして僕からそんなに逃げようとするんだい…?僕が君の心を傷つけたからなのかい?それだったら…僕は潔く身を引くよ…でも、もし…もしもそうじゃないなら…僕の頼みを聞いてほしいんだ…」


違う…ファウスト、私は逃げようとしているわけじゃないんだ…
……いや、私…逃げようとしていたのかも……
そう…だよね…あと一回だけ……私にチャンスを与えてくれても…いいよね?
神様…お願いしますっ!!


〜〜〜〜


??「堕落神さま、どうか…あの娘の願い…かなえたまえ…」
堕落神「ふっふ〜んっ、オッケー♪えいっ!!」
??「………また、Dプリちゃんが幸せを振りまいているようだね…僕としては、もう少し自重してもいいとも思うけど…なんて…でも、幸せなカップルが増えることはいいことかもね」
Dプリ「あぁんっ♥ダーリンったら♥」


〜〜〜〜


すら「いいよ…でも、その…わ、私の話から先に聞いてほしいな…なんて」
ファ「うん、大丈夫だよ…言ってみてくれ」
すら「わ、私と…その…け、結婚してください!!旦那様になってください!」
ファ「うん……その…お願いします…」


……えっ…?えぇーーーっ!?
そ、そんな…信じられない…まさか…願いがかなうなんて…
こんなスライムでも……勇者様を夫に出来るなんて…


うぅ…ま、また…涙が…
か、神様…ありがとう!!

私が心の中でそう叫ぶと、不意に頭の中にあの優しいシスターの声が響いてくる…


シスター(ふふっ…うまくいったみたいですね…私たちの神から、贈り物がありますので…受け取ってください!!えーい!!)


へっ…お、贈り物…って…?
と、私がそう思った瞬間、私を紫色の雷が強く打ちつける…
ふにゃあぁぁぁぁっ!?か、体の奥底からなぜかほてりが……はうぅっ…


ファ「す、すらりんっ!!大丈夫か!?い、今手当を…」
すら「ふっ…ふわぁぁっ…ふぁ、ファウスト……ファウスト!!」
ファ「へっ…うわぁっ!?な、何を…!?」
すら「ふぁ、ファウストがいけないんだよ…私を今まで散々焦らしたんだから、か、覚悟してよね!!」
ファ「ひぃっ!?そ、そんな無理y……ひゃわぁぁぁぁぁっ!!」


ファウストは少しだけかわいい悲鳴を上げると、私のプニプニなスライムに飲み込まれた…
それからは…ふふっ…みんなは気にならないだろうから、内緒にしておくね♪




そして、時は立ち一週間後…ファウストは私を村に招待してくれたの!!
村の人たちは私を追い出そうとしてきたけど…ファウストと彼の両親が必死になってかばってくれて…そして、一週間お手伝いもまじめに頑張って…
私は村の住人として認めてもらえたんだぁ〜♪

たまに、アリステアさんと会う時、ものすごく敵意を向けた目を向けてくるけど…特に何かしてくるわけでもないし…
ふっふーん♪結婚式まで、今日…あげちゃうしね〜♪
おっと…こうしてはいられない!!ファウストが待っているんだから…!!




そして、場所は結婚式会場…そこで、理解できないと言いたそうなぽかんとした神官さんに頼み込んだんだ…
こんなに、必死に頼み込んでいるんだから、きっと大丈夫だよね♪
もし無理だったら……ちょっといたずらしちゃえばいいってわかったし…

【すらりんは…悪知恵の能力値が10上がった…】

……的な?


すら「っていうわけで、神官さん!!お願い!!」
スプ「………(ど、どうする俺…!?魔物と人間の結婚式なんて…そんなの許してしまったら、ほかの神官仲間になんて言われるか…し、しかし…デメ様はもしもそんな事態があったなら、祝ってあげろと……で、デメ様の意見に従おう、不本意だが……)」
ファ「あっ…すみませんスプリングさん、もし無理なら無理とはっきり…」
スプ「いえいえ…大丈夫ですよ!!さぁて…新婚さんのお祝いをするためにはりきって頑張りますか!!(……お、終わったら、デメ様に速筆せねば…)」


そして、私は今……夢だった教会での結婚式を挙げている…
参加してくれているのは、私とファウストの家族だけだけど…
今、ものすごく幸せなんだ

これも何もかも…あのシスターのおかげ…本当にありがとう!!
そう心でお礼を言いながら、ファウストと向き合う私…


すら「……なんだか、改めると恥ずかしいよね…」
ファ「僕は…こういうのも好きだな…世界が僕たちみたいに、魔物も人間も関係ない世界になったら…なんて、思ってしまうよ」
すら「絶対にかなうよ!!だって……私たちだってむすばれたんだから!!」
ファ「そうだね、そのとおりだ…」


私たちはそういうと、みんなが見ている前で熱い抱擁を交わしたのだった…



HAPPY END・・・




〜〜〜


アリ「くっ…魔物めっ…私は絶対に許しませんわ…この私に恥をかかせたこと…後悔させてあげますよ…ふふふっ…あっはっはっはっはっ!!」



〜〜〜〜


スプ「ふぅ…これで、デメ様への手紙は書き終えたな…ハトにでも括り付けてっと…さぁて、俺のかわいいハトちゃん、よろしく頼むよ!!」


俺はそういうと、ハトを窓から優しく放してあげた
そして、すぐ後のことだ…教会の扉をコンコンと叩く音がしたんだ
今の時間は深夜だ…この時間にハトを放す俺も俺だが…
だれだいったい…?


スプ「はい…私に何か御用で…」
??「あの……この教会はシスターを募集していますでしょうか?」
スプ「……なっ!?し、シスター…だと…?」
??「はい…私の夫と一緒に各地を転々としていたところ、この村に教会の中では立派な部類の教会があると…」
??「というわけで、僕たちをやとっていただきたいのです…」


こ、これは…そんなに褒められたらいやな気なんてしないじゃないか!!
よぉっし!!これは…俺にも神様がほほえんでいる予感がするぜ!!


スプ「わかりました…雇いましょう!!と、ところで…シスターの服装なのですが…あいにくこの教会には服がなく…」
??「大丈夫です…私の今着ているこの服が…私の崇拝している神に対する正装なので…」
スプ「や、やけに露出が多いですね…で、ですが…まぁ、そういう宗派なのでしょう…では、よろしくお願いしますね!!」
??「はい!!(ふふっ…堕落神様の教えをこっそりと広めさせてもらいますね…?)」



各人がそれぞれの思いをはせながらも、勇者候補の青年とスライムの女の子との話はこれで終了だ
しかし……始まりの村での出来事は…まだ、始まりにすぎない…

14/06/12 22:06更新 / デメトリオン mk-D
戻る 次へ

■作者メッセージ
どうも!!

さてさて…チャットでネタの話をしていると、不意に作ることになってしまった作品の一話…楽しんでいただけましたか!?

元ネタは…まぁ、わかる人にはわかるでしょう…
えっ…?元ネタとまったく違う…?そ、それは…まぁ、仕方ないと思ってくれると…


さてさて…次回は、どのような話が飛び出してくるのか…
作者もわからない次回…おたのしみに!!

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33