連載小説
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・三女が稲荷な場合

エキドナ、ドラゴンときて、もう何が産まれてもおかしくないと思ってた。
もう驚くことはないだろうって。
でもさ。
まさか種族の違う双子が産まれてくるなんて、思わないよなぁ。
誰だって驚く。産んだ本人だって驚いたよ。
今回は、その双子の姉の方の話だ。

・〜ある日の朝〜


「ホルン。朝だぞー」

「・・・ふみゅぅ」


寝てる寝てる。
よだれ垂らして幸せそうな顔で寝てる。
こんな顔して眠れたらさぞ楽しいだろう。


「ホルン。起きろー」

「えへへ〜・・・兄様〜・・・♥(*´∀`*)」

「・・・・・・」


どうやら夢の中に俺が出てきてるらしい。
恥ずかしいのでさっさと起こそう。


「それは夢だ〜。朝だぞ」

「んぅ〜♥・・・んみゅ?」

「おはようホルン。幸せそうだな」

「あるぇ〜・・・兄様・・・さっきまで・・・」ポケー・・・

「さっきまで・・・俺がどうした?」

「・・・はわわっ!?兄様!?お早う御座います!!(゚∀゚;)」ハッ!

「はーいおはよう。いい夢見てたのにごめんね〜」

「い、いえ!いつも起こして戴き有難う御座います・・・」


ホルンは稲荷。
金色の髪に狐耳が可愛らしい稲荷だ。
5本の尻尾が左右にゆらゆらと揺れている。
誰に対しても丁寧で、とてもいい子。
兄としても鼻が高い。


「ん〜。お礼が言えるホルンは偉いね」ナデナデ

「はわっ!?あぅ♥・・・ハッ!あまり小さい子扱いしないでくださいっ!///」

「あ、ごめんな」パッ

「ぁ・・・・・・いえ、別にいいんですけど・・・」シュン・・・


いかんいかん。
ついつい癖で頭を撫でてしまう。
気をつけないといかんな。
ホルンも耳と尻尾が垂れて、嫌がってたみたいだしな。


「ごめんな。これからは気をつけるよ」

「ぇ・・・そ、それじゃあ・・・撫でて、くれないんですか・・・?」

「えっ?」

「ぅぅ・・・」

「・・・・・・」

あれれ〜、おっかしいぞ〜?
嫌だったんじゃないのか?
尻尾がさらに垂れたぞ。
・・・あ、そうか。

「ああ、いきなり撫でるのは失礼だったなぁ、と」

「・・・?・・・っ!そ、そうですよ!今度からはいきなり撫でずに許可を取ってからですね!」

「うん?ごめんごめん」

「いえ!別に気にしてません!兄様でしたら全然抵抗ありませんからっ!///」パタパタ


何か反応に少し違和感があったが。
どうやら突然撫でるのがいけなかったみたいだ。
今度からは一声かけるようにしよう。
しかし、気持ちの変化で耳や尻尾が動くのは、見てて楽しい。


「それじゃ、顔洗ってきてね。着替えもだよ。心配してないけど」

「はい!行ってまいります♪」ニコッ






(あぁ・・・朝から兄様とあれを致す夢を・・・♥それに頭も撫でられましたし・・・♥♥
今日も良い日になりそうです♪・・・頭はいきなりでも長く撫でて欲しいですが///)パタパタ♪



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



・〜ある日の昼食準備〜


「兄様っ!今日は私も一緒に昼食をお作り致します!」

「おお、それは助かる」


ホルンは家族の中でも一番料理がうまい。
生まれがうちだからということもあり、ジパングの料理以外もうまい。
油揚げを使った料理であれば必ず美味しくなる程だ。


「兄様、油揚げを使っても宜しいですか?」

「程々に頼む。量を抑えてな」


ただし、油揚げを使わせると張り切り過ぎるため、自制しなければならない。
どのくらいかと言えば。
一週間は大量の油揚げを食わされることになるだろう。
何事も程々が良い。


「・・・いっぱい使ったほうが美味しいですのに」

「ホルンの場合、作り過ぎだ。家計を考えてくれ」

「わ、わかってますよっ」

「なら良し。聞き分けがよくて助かる」

「勿論ですっ!兄様を困らせるような事は致しません!///」パタパタ


いつだったか。
大量の油揚げを口に詰められたのは。
いつだったか。
料理がまだままならない時のものを口に押し込まれたのは。
いつだったか。
お腹が異音を出して鳴ったこともあったのは。
あの時は盛大に困ったものだがな。
むしろ困らない妹なんているのかとさえ思う。
それが魔物であれば尚更だ。


「・・・・・・」

「・・・?どうかなされましたか?」

「別に何にも。それより早く作ろうか」

「はいっ!」


少し顔に出ていたようだ。
気をつけなければなぁ。






(兄様・・・真剣なお顔で料理をされている///・・・とても凛々しいですっ///♥)



・・・・・



「ねえホルン?」

「・・・はい」

「俺がさっき言ったこと、覚えてる?」

「・・・はい。勿論で御座います・・・!」

「それじゃぁこれは、これらは何なのかなぁ・・・?」


俺の眼前に並べられているのは。
揚げ。
あげ。
アゲ。
A☆GE。
大量の料理された油揚げ
どこからどう見ても油揚げ
誰が言ったかA☆BU☆RA☆A☆GE
何と言っても・・・もういい止めよう。クドい。


「い、一体何なのでしょうね・・・」

「俺言ったよね・・・程々にしなさいって、俺言ったよね・・・」

「申し訳御座いません・・・」

「俺を困らせる事は・・・何だったっけ?」

「・・・返す言葉もございません」


ホルンは現在、非常に美しい姿勢で。
完璧とも言えるフォームで。
・・・土下座をしている。
ジパング流の謝罪方法らしいが、一体いつ知ったのだろう。
まあ、おそらく母さんの入れ知恵に違いない。


「・・・今日のお昼はこれでいいけど、明日以降はなぁ・・・」

「・・・・・・ですよねー」


うちの家族は個性豊か。
よって味の好みもバラエティに富んでいる。
好き嫌いは俺による指導教育のおかげで最小限に留まってはいる。
だが流石に同じものを毎日食べることはできない。
すぐに飽きる。
俺だって厳しいよ。
毎日油揚げは。


「・・・最近はこういう失敗もないと思ってたんだけどねぇ」

「・・・・・・ぁぅ」


むしろ今は滅多にない。
昔は料理に関して暴走することが多かったが、年齢とともに落ち着いてきた。
はずである。


「何だか、昔を思い出したよ・・・」

「あ、あの時は兄様に美味しい料理をいっぱい食べて頂こうとっ!///」

「張り切って、作り過ぎちゃったんだっけねぇ?」

「・・・はぃ・・・///」


そう、今回が初めてではない。
今までにも何回かこの『作り過ぎ事件』を起こしている。
被害者は大体、というより毎回俺だ。
あの時はきちんと一日で完食した。
だってあの眩しい瞳で
「た、食べてくれないんですか・・・?」
って言うんだぞ。
残せるわけがないじゃないか。


「兄様・・・本当に御免なさい・・・」グス・・・

「大丈夫だよ。そこまで気にしてないから」

「・・・本当ですか?」ウルウル

「ああ。この料理は俺が責任を持ってどうにかするから」

「っ!それって・・・」

「少しずつなら、食べきれるだろ」

「っ!!/// あ、有難う御座います・・・♥」


うむ。
しばらくは俺の食卓が油揚げだらけになるだけだ。
大丈夫だ、問題ない。
俺の胃的にも大した問題ではない。もたれるだけだ。
・・・後で、一番いい胃薬を用意しておこう。


「でも何でまた作り過ぎちゃったのかな?」

「そ、それは・・・」

「・・・何か考え事でもしてたのか?」

「・・・( ̄▽ ̄;)」ギクゥッ!


図星か。
表情に出ていて、とても分かりやすい。


「それにしても一体何を考えてたのやらねぇ」

「えと、あのっ、それは・・・///♥」

「言えないのか、そうか。俺には言えないようなことなのか」

「えっ!?違っ・・・わないですけどっ!でも!兄様だから・・・と言いますかっ!///」

「そうかー、俺なんかには絶対言えないこと考えてたのかー。そうなのかー」

「はわっ!?違いますっ!別に兄様のことを避けているわけではなくてっ!
でも言うわけには・・・ええと!つまり・・・!///・・・・・・はう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!///」


んー。そろそろ止めておこう。
リアクションが面白くてついつい捻くれてしまう。
顔も真っ赤だ。
やり過ぎた。


「分かった分かった・・・言い過ぎt」

「だだだだって!!しょうがないではありませんか!!仕方がないではありませんか!!
兄様が凛々しいお顔で!真剣な眼差しで隣にいるんですもの!!///♥
見惚れてしまうに決まってるではありませんか!!///
ぼんやりもしてしまいますよ!!そのようなお顔がすぐ近くにあるのですから!!
しかも兄様!兄様ですよ!!他ならぬ兄様ですよ!!?///
愛おしい兄様のお顔が!御温顔が!ふぇいすが!真横にあるのですよ!?
見ない道理があるでしょうか!?いやありません!!!
兄様が!兄様のお顔が愛しすぎるのがいけないのです!!///
惚れます!!惚れてまうやろです!!///♥
それに料理の時でないとじっくり見れませんし!!
いつもいつも忙しそうになされているのですから!独占したくてもできません!!///
それがどれだけ苦しいことか!!できることならずっと近くにいたいというのに!!
ですが兄様にはこれ以上ご苦労をかけられません!私が我が儘を言ってはいけません!!
ただでさえ頑張っておられるというのに!!私達の為に身を削っておられるというのに!!
私の我が儘で困らせてはいけないのです!!
ですから仕方ないのです!!こういうことが起こってしまうのも仕方なしなのです!!」
プシュー///

「・・・お、おう」

「はーっ・・・はーっ・・・お解り頂けましたでしょうか・・・あれ?
私今何か言ってはいけないことも言ってしまったような・・・
兄様、私何か変なこと言いましたでしょうか」

「正直勢いに気圧されて、内容が耳まで入ってこなかった」キッパリ

「・・・そうですか」ホッ

「・・・でもね、ホルン」

「何でしょうか?」

「我が儘とか、別に言ってもいいんだよ?」

「えっ・・・」

「我慢とかはよろしくない。兄妹で家族なんだから。変に気を使う必要はない」

「兄様・・・♥」

「だから、何かあったら遠慮なく言いなさい?ホルンはいつも頑張ってくれてるんだから。
ちょっとくらい我が儘言ってもバチは当たらないさ」

「・・・はいっ!わかりました!///」


うん。
何かとんでもない告白をされたような気もするけど。
よく聞こえなかったし、聞かなかったことにしよう。
普段ホルンが我慢してるってことは伝わったから、とりあえずそこだけ指摘したけど。
あまり気を遣わせないようにしないとな。
・・・それよりも。
この料理をどの順番で食べてくか、よく考えないとなぁ。
どれも美味しいからいいけどね。






(ふぅ・・・何やら胸の内を伝えたような気がしてスッキリしました♪
それに・・・私の料理を一人で食べてくださるのは、本当に嬉しいです///♥)



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・〜ある日のお願い〜


「兄様、今お時間宜しいでしょうか?」

「ん?大丈夫だよ」


そろそろ皆就寝する時間になる頃に、ホルンがやってきた。
一体何なのだろう?


「それで、どうしたんだ?」

「あのぅ・・・ええと、お願いが・・・ありまして・・・///」

「お願い?内容によるけど」

「それなんですが・・・///」



・・・・・



「・・・それじゃいくぞ」

「はい・・・♥」

「よし・・・」スッ・・・

「んっ・・・はぅ・・・///♥」

「おいおい、あまり手入れされてないじゃないか・・・」

「だ、だって・・・んっ♥こうして、頂く事がっ!はぅんっ♥楽しみだったんですもの・・・///♥」

「全く、仕方がないな・・・ここもこんなにしてしまって」

「きゃぅっ///♥そ、そこはぁ!♥あんっ♥だ、駄目・・・ですぅ・・・♥」ビクビクッ

「じゃあ止めるか」

「いぇ・・・♥止めないれぇ・・・くださひぃ・・・♥♥」プルプル・・・

「そうか。加減はどうだ?」

「気持ひよぃで、すぅっ!♥あひんっ!♥」ビクッ

「おっと、少し強すぎたか」

「もっと・・・もっとお願ひしまふぅう・・・!♥」

「それにしても、何て声出してるんだ」

「だ、だってぇ・・・♥兄様がぁ、シてくれていると思うと・・・♥」

「そいつは光栄」

「はわぁ・・・♥はふぅ・・・♥」ピク・・・ピク・・・

「しかし・・・感じすぎじゃないか?」
















「これブラッシングだぞ」


聞いているだけでは何をしているのかが分からないだろうが。
これはただのブラッシングだ。
以前もしてあげたことがあったのだが、また今日もお願いされたので快く引き受けた、というわけだ。
尻尾用の櫛を使って、丁寧に金色に輝く毛をとかしているだけ。
決して変なことはしていない。
あえてもう一度言おう。
決して変なことはしていない


「駄目だぞー。ホルンは尻尾多いんだから。手入れを怠っちゃぁさ」

「はうぅ!♥す、すみまひぇん・・・♥」


ホルンの尻尾は5本。
これは実は生まれつきだ。
稲荷は魔力によって尻尾の数が変わるという。
魔力が多いほど、尻尾の数が増えるとか。
最終的には9本になるそうだが、最初から5本って結構凄くないか?
流石はあの母さんの子供と褒めてやりたいところだァ!
母さんの子ってだけで納得できてしまうのが怖いくらいである。


「結構ボサボサになっちゃってるなー。折角綺麗なんだから大事にしないと」スィー

「えっ!?綺麗ってぇ・・・そんな・・・///♥♥」プシュゥゥ・・・///


尻尾がただでさえ多いのだ。
手入れを怠っては勿体無い。
折角こんなに綺麗な毛並みなのに。
だから今しっかりとかないとね。


「なので、強め入りまぁす」シャッ、シャッ

「えっ♥あっ♥くぅん♥ちょ、ちょっろ、待っへぇ!♥♥♥」ビクッビクッ!

「待ちません」スゥー、スゥー・・・

「ひぎぃ♥えぅ・・・!♥あひぁ・・・♥♥ふあぁ・・・!♥♥♥」

「そいやっそいやっそいやっそいやっ!」

「あふぅん♥いひぃ♥きもひっ♥いひぃ♥」

「ちょっとふわっとしますよー」フー

「あぅぁ♥かりゃだぁ・・・♥ふわってぇ・・・!♥♥ひゃぁあ♥♥」

「それじゃ・・・そろそろフィニッシュ!」シュイン!シュィン・・・!シュイン!

「あ♥ちょっ♥らめ・・・!♥・・・らめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!♥♥♥♥」ビクビクビクッ・・・!



・・・・・



ふぅ。
こんなもんかな。
5本の尻尾は俺の手によりすっかりもふもふになった。
やっぱり大変だな。5本もあると。
しかし顔に埋めたいくらいの仕上がりになった。もふもふ。
やったぜ。と心の中でガッツポーズ。
・・・でもこういうの、懐かしいなぁ。
昔は皆の髪とかもとかしてたっけ。
今では機会がめっきり減ったけどね。


「おーい。終わったぞ」

「・・・はぅ・・・♥・・・はふぅ・・・♥」スゥ・・スゥ・・・


あらら。
寝ちゃったかのか。
仕方がない妹だ。
部屋まで運んでやるか。
よっと・・・。
随分でかくなったもんだ。
でも尻尾の手入れを頼むなんて。
まだまだホルンも子供なのかな。






(兄様の御手許・・・♥やはり最高でひゅぅ・・・♥♥病みつきになっちゃいまふぅ・・・♥♥
力が入れば、このまま・・・押し倒してしまえるのに・・・♥♥)








何か、少し寒気がしたが。
体冷やしたかな。
今日は暖かくして寝るか。

13/03/05 23:41更新 / 群青さん
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■作者メッセージ

はい。今回もお読み頂き有難う御座います。
三女の『ホルン・オーケスティア』
稲荷です。
次の四女と双子で御座います。
年は17歳。
大体察しが付いていると思いますが、妹たちはほぼ一年刻みです。
両親が頑張りましたからw

兄に対して敬意を示しており、皆にいつも気を配っている子です。
ただ偶に暴走するようですが。
もっと稲荷の良さを前面に押し出したかったのですが、私にはこれが限界です。
誠に申し訳ございません。

名前の由来は金管楽器の『ホルン』から。
語感がいいのでそのままです。
ギネスによると世界で一番難しい金管楽器だそうですよ。

次は四女のお話です。

次回もお楽しみに。

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