連載小説
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11.そうじゃなくて。
胸の辺りに違和感を感じ、眠りから覚めたエトナ。
シロが無意識にエトナの胸を揉み始めてから数分後の事である。

(・・・シロ?)

薄く目を開けてみる。気付く様子は無い。
シロの表情がどこかおかしかったが、恐らく寝惚けている為だろう。

両手の指を沈ませ、柔らかさを確かめるように揉む。
たどたどしい手付きで、まるで何かに操られているかのようだった。

(今何時だろ。暗いからまだ夜か? 変な時間に起きたな、シロ。
 さて、どうしようか)

優しく、しかし一心不乱にエトナの胸を揉み続けるシロ。
それを暫く見ている内に、エトナは何となく、シロが何かを求めているように感じた。

シロが求めているものがあるとすれば、それは。

(・・・愛情?)

初めて出会った時の事を思い出す。
金で売られるという仕打ちを受けたにもかかわらず、シロは両親を憎んでいなかった。

タリアナで、シロは乳飲み子のように自分の胸を吸い続けた。
ロコで、自分がどれだけ危険にさらされていたかに気付き、泣きじゃくった。

なんとなく、答えが見えた。

(本能が、求め始めたってとこか?)

自分と出会い、一緒に時を過ごすにつれ、欲しくなったのだろう。
―――今まで全く与えられなかった、『愛情』が。

(・・・そっか。強ち、やり過ぎでもなかったのかもな)

風呂場での出来事。
正しい事だったとは言えないが、全くもって間違いだったという訳でもない。
そう考えたら、気持ちが幾分か楽になった。

(アタシの思い込みだとは思うけど。無理矢理されるのは嫌だったろうし。
 んじゃ決まり。起きたらそこを謝る。理由言えば、分かってくれるだろ。
 その上で、シロを抱っこしていつも通りに。多分、それが一番いい。
 もし、本気で嫌がってたんだとしたら・・・謝り倒すしかねぇや)

考えの整理がついた。やるべき事もはっきりした。
なら、今やる事は。

(シロが気付くまで、見守ってますか。・・・にしても、ホント可愛いな)



それから15分。

「おはようシロ。何してんだー?」

エトナが起きていた事に気付き、シロの手が止まった。

(さて、どうなるかなー?)

寝たふりをするという選択肢もあった。
しかし、シロの反応を見たいという悪戯心が、見守るという大義名分の下、正当化された。

(・・・・・・・・・・・・・・・)

ぱち、ぱちりと、瞬きを二回。
数秒、エトナの目を見つめ。

「・・・ぁ」

声と定義するには細すぎる、吐息が漏れて。

(・・・ん?)
「ぁぁぅっ、ひゃっ、はっ」

目に涙が浮かび。

(・・・アレ?)
「はひっ、あっ、ひひゃっ」

次第に、嗚咽のような声が出て。

(あっ、これまずい)
「はぅっ、うっ、うあ、うああああああああああん!!!!!!!!!!」

顔をぐちゃぐちゃにして、大きく泣き出した。

「えっ、ちょっ、シロ?」
「うあああああああああああああああん!!!!!!!!!!
 うぇっ、うあああああん!!!!!!!!! うああああああああん!!!!!!!!!!!」

シーツに顔を埋め、尋常じゃない様子で泣き叫ぶシロ。
あっと言う間に、シーツが涙と鼻水と唾液でびしょ濡れになった。

「えーっと、とりあえず落ち着け、な? なんか分かんないけど、落ち着こう?」
「ぅぅぅぅぅぁんっ! ぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

うつ伏せになっている為、声はベッドに吸収され、他の部屋からの苦情の心配は無い。
しかし、そんな事等気にならないほど、明らかにシロは常軌を逸している状態だった。

「ほら、あの・・・えっと・・・?」

シーツを掴みながら、シロは泣き続けている。
エトナはどうすればいいか分からず、困惑しながらも、
シロの背中を摩るという行為を選び、落ち着くのを待った。



それから半刻。
シロはまだ泣いているが、声は小さくなった。

「ううぅぅっ、うっ、ううううっ・・・」
「うん、うん。よく分かんないが大丈夫。どうしたんだー?」

エトナが摩っている部分は温かいを通り越して、低温火傷の可能性があるくらいの熱を帯び始めた。
それだけ長い間、シロは泣き続けていた。

「うううっ・・・うぅ・・・」
「お疲れ。大丈夫か、シロ?」

体力の限界に達したのだろう。シロの泣き声が遂に止まった。
そして、暫くすると。

「・・・スー・・・スー・・・」
「おいっ!?」

そのまま眠った。



「・・・んっ・・・? んあああぁっ・・・」

翌朝。
大きなあくびをしながら起きたシロ。
まず、時刻を確認する。

「・・・8時半・・・はちっ!?」

バッと、時計に飛びつく。
何度確認しても、短針は8と9の間にあった。

「えっ、何で?」
「そりゃあんだけ泣き疲れたらぐっすりだろ」
「あっ、エトナさ・・・」

シロが買った髪留めでポニーテールを作りながら、先に起きていたエトナが声をかける。
そして。

「・・・うっ、うぇっ、うぁっ、うわあああああ「ちょっと待ったーーーっ!!!」

また泣き出したシロを、エトナは思い切り抱きしめる事で強引に泣き止ませた。



「・・・ううぅっ」
「落ち着いたか?」
「はい。ごめんなさい・・・」
「うん、いいから。本当に落ち着いたな?」
「はい・・・」

ベッドに腰掛け、シロが落ち着きを取り戻すまで待つこと数分。
漸く、まともに話が出来るまでに回復した。

エトナは何を話すか迷ったが、まずは深夜に決めた事からにした。

「昨日はごめんな。無理矢理しちまって。怖かっただろ?」
「いえ・・・ちょっと戸惑っただけで、僕こそ・・・」
「うん、ありがとな。でも、ああいう勢いでされるのって、あんまり好きじゃないだろ?
 だから、そこはアタシが悪い。シロは何にも悪くない。いいな?」
「・・・でも」
「いいから。これはアタシのけじめだ。本当にごめん、シロ」
「・・・分かりました。でも、大丈夫です。・・・それより」

ここで、会話が途切れる。
切り出すタイミングをシロに任せる事にして、エトナは沈黙を守った。

少しの静寂を経て、シロが口を開ける。

「僕、最低です」
「・・・?」

突然飛び出した、極端な言葉。
何が言いたいのか図りかねていると、シロはまた話し始めた。

「お風呂でエトナさんを拒絶したのに、それからほんの数時間で心変わりして、
 エトナさんの胸に興奮して・・・挙句の果てに、眠ってるエトナさんの胸を、その、
 ・・・襲うような・・・襲って。勝手に触って・・・揉んで・・・」

そこまで話した所で俯き、声が途切れる。
間をおいてから、絞り出すようにして、言葉を続ける。

「自分勝手な真似して・・・エトナさんが落ち込んでるのも気にしないで、欲望に溺れて・・・
 こんな、猿みたいな事をして・・・うっ、うぇっ、うえええええん・・・」

堪え切れなくなった気持ちが溢れ、思わず漏れ出したような声。
自己嫌悪に陥っていることは明白で、とても痛ましい泣き声だった。

(・・・そっか。それで泣いてたんだな)

エトナは黙ってシロを抱き寄せ、頭に顎を乗せた。
少しでも、シロの苦しみが取り除けるように、優しく、優しく、抱きしめた。



どれくらいの時間が経っただろうか。
シロの嗚咽が消え、辺りが静まり返った。

抱きしめる力を緩め、シロの顔を見る。
二人の目が合った瞬間。

「あのっ!」
「なぁ?」

ほぼ同時。
目を合わせたまま、少しの膠着の後、先に切り出したのはシロだった。

「えっと・・・先に、どうぞ」
「いや、アタシは後でもいい」
「・・・レディーファーストです」
「・・・アタシ、レディーってタチじゃねーだろ」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

「・・・ふふっ」
「・・・ははっ」
「「あはははははっ!!」」

唐突に開いた間が可笑しくなって、笑い出す。
この日初めて、空気が軽くなった。

「何やってんだろなアタシら。それじゃ、シロから先に」
「いや、僕のは些細な事なので」
「レディーファースト、だろ? だったらアタシはシロの後がいい」
「・・・それじゃ、言いますね」

2、3回呼吸をして、息を整え、ゆっくりと話し出した。

「確かに、いきなりは困ります。でも、僕が落ち着いてる時は大丈夫です。
 むしろ、その・・・僕、スケベなんで・・・」

目を逸らし、顔を赤らめながら、シロは続ける。

「本当に、情けなくて身勝手な話ですけど・・・凄く、気持ち良くて。
 ・・・うぅ、すいません本当にごめんなさぃ・・・」

後半は殆ど、独り言のような小さい声だった。
思い切って言ったはいいが、羞恥心が時間差で働いたのだろう。

真っ赤になった顔を隠して俯くシロ。
それを見てエトナは。

「なぁシロ」
「・・・はい?」



「朝風呂、一緒に来い」



風呂場にて。
湯沸かし器の質がいいのか、お湯が溜まってから適温になるまで、さほど時間はかからなかった。

「・・・エトナさん?」
「ん?」
「あの、これは一体・・・?」

浴槽で待つようにと言われ、お湯に浸かっていたシロ。
エトナはと言うと、脱衣所から何かを持ってきた。

「これでよし、と」
「マットと、洗面器に・・・?」

滑り止めや保温の用途で風呂場に用いられる、一般的な敷物と、ごく普通の洗面器。
そして、半透明の液体のような何かが入っている容器が3つ。
その内1つを洗面器に出し、エトナはシロを呼び寄せた。

「シロ、これ分かるか?」
「いえ。ボディソープの一種ですか? それとも何かの薬剤か・・・」
「そっか。んじゃ実際に使う方が早いな」

そう言ってエトナは、洗面器に入っている何かを肩から浴びた。

この液状の物体とは、所謂ローションの事である。
粘性を帯びた液体がエトナの肩から胸、腹、太腿へと流れ落ち、
たちどころに体中を覆った。

「んじゃ、そこに寝っ転がって」
「えっ、はい。・・・もしかして」

うつ伏せになりながら、シロは察した。
そして、それが正解だという事はすぐに分かった。

うなじからつま先まで、全身に感じるぬめりと、柔らかだったりむにりとしたりする感触。
それが何かは、明白。

「シロ、どうだ?」

全身ぬるぬるまみれの、エトナである。



「今なら、色々やっても大丈夫か?」
「はい。というか、もう何か色々気持ち良くて」
「素直でよろしい。んじゃ、洗うぞー」

シロに体重をかけすぎないように注意しながら、全身を擦り合わせるエトナ。
ローションによって摩擦係数は0に近づき、シロの身体の上をするすると滑る。

「まずは背中から・・・」

自身の大きな胸の柔らかさを味わわせる為、シロの腰の辺りからゆっくりと、肌を擦り合わせる。
身長差をカバーする為、シロに対してやや斜めに乗っかる形をとった。
肩甲骨から肩口の辺りが谷間に埋もれ、さらに少し滑らせればシロの顔の横に乳房が当たる。
それだけでも生唾物だが、この時丁度シロの背中から脇腹にかけて、エトナの腹筋が接していた。

「なんか・・・背中がくすぐったいです」
「だろうな。けど、ちょっと待ってろよ」

動きをさらに遅くして、背中を這う。
それが暫く続くと、シロの感覚に変化が現れた。

「・・・!?」

ピクリと、身体が震える。その反応をエトナは見逃さない。
身体を動かしながら、シロの脇腹を指でなぞると。

「ひゃいっ!?」

素っ頓狂な声を上げ、全身が大きく跳ねた。

「エトナさん、あの・・・」
「んー?」
「笑わないで下さいね。僕、なんかおかしくなっちゃったみたいで。
 ・・・くすぐったいのが、気持ちいいんです」

細胞の一つ一つを擦り合わせるようなエトナの泡踊りは、シロの性感を高め、
本来違うものすら、快感へと繋げた。
脇腹と背中の辺りを、適度な筋肉がついた滑らかなエトナのお腹で擦られ、
『くすぐったい』を感じたシロだったが、それが徐々に『気持ちいい』へと変化。
簡単に言うと、性感帯が増えたのである。

「うう、僕どうなっちゃうんですか?」
「そうだな。多分もっと気持ちよくなる」

身体の側面に移動し、シロの脚を自身の脚で挟みながら、上下に動く。
腕は柔らかな胸に挟まれ、脚にむっちりとした太腿を感じ、腰の辺りに秘所が当たる。

「あのっエトナさん!? 何か色々当たってますって!?」
「当ててんだよ。というか今更過ぎる」
「そうですけど・・・その・・・うにゃぁ・・・」

優しく包み込むような感触に力が抜け、指先一つも動かせなくなったシロ。
それにより余計にはっきりと、エトナの全身を感じる。

「ふぁぁ・・・」
「ミノタウロスとかオーガって、やたら筋肉ついてるイメージあるけどさ」
「あぅぅ・・・」
「無駄な筋肉は寧ろ邪魔になるから、必要な分だけしかつけないんだ」
「うにぃ・・・」
「だから、腹や脚にも少しずつむにっとした感じが残ってて」
「ふみゅう・・・」
「筋肉だらけで固かったりしない・・・シロー?」

とろとろに蕩け、緩み切った表情で気の抜けた声を漏らし続けるシロ。
エトナの声は右から左に流れるだけで、傍から見たら完全に廃人の類である。

「はにゃぁ・・・」
「原型どこいった。可愛いからいいけど。
 ・・・でも、そろそろか。シロ、今度は仰向けになってくれ」

なんだかぐにゃぐにゃしたシロを補助しながら、仰向けにする。
依然として、シロは力と気が抜けたままである。
流石にこのままにするのはどうかと思ったので、エトナはシロのほっぺたをつまみ、

「むにー」
「・・・いあいえうえおああん(痛いですエトナさん)」

ぐいっと引っ張り、正気に戻した。

「・・・ふぅ。いきなり何をするんですか」
「さっきまで、どんなんだったか覚えてるか?」
「あれ、そういえばここ数分の記憶が・・・何となくですけど
 すごくむにゅむにゅした何かに包まれてたような・・・」
「OK十分。よっぽど気に入ってもらったようで何より」



「なぁシロ」
「はい、何ですか?」

仰向けになったシロの身体の上を行ったり来たりするエトナ。
ローションを継ぎ足し、二人共全身くまなくぬるぬるである。

「アタシさ、嬉しいんだ」
「え?」

丁度、シロと顔を合わせる位置で動きを止める。
そして、エトナは語り始めた。

「昨日の夜、シロがアタシの胸を揉んだ事。シロは泣いてたけど、
 アタシはめちゃくちゃ嬉しかったんだよ」
「・・・え?」
「一生懸命にぎにぎして、アタシに気付くまでずっと揉み倒してた。
 あれってさ、要するにアタシに欲情したって事だろ?」

シロは、自分の心音がエトナに聞こえていないかと思う程、鼓動が高鳴るのを感じた。

「だよな?」
「・・・何で、そんな事聞くんですか」
「怒んなって。嬉しいって言ったろ。アタシに欲情したって事は、
 それだけシロにとって、アタシは魅力的だったって事だろ?
 好きな男に欲情されて、嫌いになる女なんていねーよ。
 少なくとも、アタシはシロが欲情してくれた事が最ッ高に嬉しい」
「・・・・・・うぅ」
 
バツが悪そうに、シロは顔を横に向けた。
エトナは、無理に自分と正対させようとせず、続ける。

「言ったろ、アタシはシロが大好きだって。だからシロは何にも悪くない。
 というか、逆。アタシらオーガにとって最高の反応なんだよ」
「エトナさん・・・」
「・・・こうしてみると、謝らないといけないのはアタシだな。
 シロが苦しんでるのに、嬉しいなんて」
「それは違います!」

見開いた眼でしっかりとエトナを見つめ、はっきりと否定の言葉を口にする。
思いの外近い距離でエトナと顔を合わせる事になり、恥ずかしさから少しまごついたが、
勢いのままにシロは、頭を浮かせて。

「―――っ!」
「―――!?」

エトナに、力強く口づけた。

お互いの唇が押し潰されるほどに強くて荒っぽい、力任せの接吻が数秒。
二人は反射的に息を止めた為、離れると同時に吐息の音が響く。

「僕は・・・僕は・・・!」

エトナが戸惑っている中、シロは。



「おっぱいが大好きなんです!!!」



盛大に、自分の嗜好を告白した。



「シロー。戻ってこーい」
「ごめんなさいごめんなさい僕は何を言ってごめんなさいごめんなさい
 僕バカだごめんなさいごめんなさい本当にごめんなさいごめなんさい
 失礼な事言ってごめんなさいごめんなさい許して下さいごめんなさい
 ごめんなさいほんの出来心だったんですごめんなさいごめんなさい・・・」

うつ伏せのまま丸くなり、壊れた蓄音機のように謝罪を繰り返す。
本来言いたかったのは、エトナが大好きだという事。
しかし、じっくりと時間をかけて刷り込まれたエトナの柔肉の感触が言語中枢を支配し、
強い欲望が出すべき言葉を塗りかえてしまった。

「シロー。だから大丈夫だって。嬉しいって言ったろー?
 確かに、ちょっと吹き出したけどさー」

空気が凍った後、エトナがこらえきれず笑い声を漏らす。
それを見て、シロは自分が何を言ったかを認識し、真っ赤になった後、口をパクパクさせ、
声にならない声を出しながら、ぐるりと背を向け顔を隠した。
ちなみに今は、耳まで完熟トマトである。

「ほらー。お前の好きなおっぱいだぞー?」
「ごめんなさいごめんなさいバカな事言ってごめんなさいごめんなさい
 何言ってんだ本当にごめんなさいごめんなさいやわらかごめんなさい
 おっぱいごめんなさいおっぱいやわらかいごめんなさいごめんなさい
 柔らかいおっぱい気持ちいいですおっぱいおっぱい・・・」

昨日と同じように、背中に胸を押し付ける。
徐々に、シロの謝罪が変化し、最終的に『おっぱい』以外の単語を忘れたかのように
呟き続けた。
これを機と見たエトナは、シロを仰向けにして、

「そりゃあーっ!!!」
「はひぃぃぃっ!!!???」

心境とは裏腹に屹立していた一物を、一気にシロが連呼する部位の谷間に潜り込ませた。



脚を広げ、仰向けに寝転ぶシロ。
脚の間に腹ばいになり、シロを見つめるエトナ。

「シロ、確認二つ。落ち着いたか?」
「ふぁ、はい」
「うん、まぁ良し。シロ、おっぱい好きだよな?」
「・・・はい」

強烈な刺激に少しずつ慣れ、心身の強張りが取れたシロ。
無論、エトナの胸に包まれている陰茎はそれに反比例して固さを増している。

「なら、今日はおっぱいでシてやる」
「えっと・・・その・・・」
「シロは気持ちいい。それをアタシが見て嬉しい。何か問題あるか?」
「・・・ない、です」
「よろしい」

横に転がっていた、ローションの入った容器を開け、谷間に垂らす。
美しいスロープを描くエトナの乳房に粘性のある液体が流れ、滑り落ちる。
ただひたすらに、淫靡な光景。

「冷たくないか?」
「おっぱい・・・あったかいです・・・」
「ん。それじゃそろそろ・・・」

そう言って、エトナは軽く胸を寄せた。

―――その瞬間。



「あひゃぃぃっ!?」



僅かに、にゅるりと一擦りされただけ。
シロの腰が大きく浮き上がった。

「・・・えっ、シロ?」
「ふぁぁぁぁ・・・」

甘い溜息のような声が出る。
全身がぐったりと弛緩し、焦点の定まらなくなった目がとろんとしているその様子は。

「イった、のか・・・?」
「ふぁい・・・♥」

紛れも無く、絶頂を迎えた後のそれだった。

「エトナひゃん・・・」

朦朧とする意識の中、呂律もまともに回らなくなったシロは。



「もっと・・・ひてくらはい・・・♥」



普段の大人びた思考を投げ捨て、快楽のみを貪る幼児と化していた。



「シロっ! シロっ!」
「ふぁっ、ふぁっ、ふぁぁぁぁぁーっ♥」

にゅるん、にゅるん。ぱちゅん、ぱちゅんと、濡れた音が響く。
ぬめりを帯びたエトナの胸が、全く萎える気配のないシロの肉棒を擦る。
単純な上下の摩擦刺激だけで、シロは幾度となく達した。

「もっと・・・もっとくらはい・・・♥」
「あぁ! いくらでもシてやるよ!」

両側から強く押し付け、乳圧を高める。
むっちりと吸い付く柔らかさと、しっかりと刺激を与える弾力。
その両方を兼ね揃えたエトナの乳房による、極上のパイズリ。
混濁した意識の中、シロの持つ感情は『気持ちいい』と『もっと欲しい』の
二つだけ。

「もっと・・・もっとぉ・・・おちんちん、おっぱいでもっとぉ・・・♥」
「あぁもう可愛い! 可愛すぎる!!」

これまでとは明らかに異なる、過剰なまでのシロの反応。
シロはたとえ自分から行為を求めたとしても、どこか遠慮がちな所があったが、
今は全くもって逆の様相を呈している。

貪欲に求め続けるシロに、エトナの興奮も加速する。
二人を止めるものは、もう何も無い。

エトナが胸を上に動かせば、少し遅れてシロの腰も同じ方向に浮き、
下に動かせば、反動で上半身が跳ねる。
胸をぎゅっと寄せれば、高い嬌声が上がり、
左右の胸を互い違いにして擦れば、よだれを垂らしながら息が漏れる。

「おっぱい・・・おっぱいぃ・・・・・・♥♥」
「シロ、大好き! 大好きだ!! もっと、もっと気持ちよくしてやる!!!」

ぬるぬるの胸にもみくちゃにされたペニスは、暴力的な快楽を享受するのみ。
リミッターの外れたシロの頭の中には、常軌を逸した量の脳内麻薬が分泌され、
既に壊れかけている理性の箍をさらに破壊し尽くす。

それでも、エトナの奉仕は終わらない。
今度は体勢を変え、勃ちっ放しのシロの一物を正面から挿乳させる。
そして、上下左右に揺するように動かす・・・所謂、縦パイズリの形だ。
陰茎が完全に入ってもなお、更なる深さを持つ為、亀頭まで乳肉に埋め尽くされる。
最早、それは乳まんことの性交、パイズリセックスに他ならなかった。

「おちんぽ・・・おっぱい・・・おっぱい・・・おちんちん・・・♥♥♥」
「シロぉ・・・嬉しい、アタシ本当に嬉しい・・・!」

ローションのぬめりと、エトナの体温、そして波打つ乳房。
これだけの要素が揃えば、肉棒と脳が性交を錯覚しない方がおかしい。
射精すら出来ない未発達な身体であるにも関わらず、雄の本能に基づき、
シロは本気で自身の一物を包むものの奥底に種付けする気でいた。

絶頂と絶頂の間隔はほぼ皆無に等しい。
ずっと骨盤が砕けるような、破滅的な悦楽が一続き。
他の全てをかなぐり捨て、二人は性器と乳で、繋がり続けた。



「んぐっ、んぐっ、んぐっ・・・ぷはぁっ。
 やっぱり風呂上りは牛乳だな」
「おいしいですね」

ほぼ気絶するようにして風呂場で眠りについたシロとエトナ。
一度風呂で温まりなおした後、二人でホルスタウロスの牛乳を飲む。

実に、5時間に及ぶ行為だった。
未だ精通の訪れが無い為、シロの肉棒が萎える事が無かった為である。
その間シロが達した回数は、軽く三桁に届いていた。
太陽は既に頭上を大きく通過し、街は昼下がりの賑わいを見せている。

「なぁシロ。風呂でも言ったけどさ」
「はい」
「欲望に忠実になれ。我儘な位で丁度いい。必要のない遠慮なんてごめんだ」
「・・・あはは。でも、あれは流石にやり過ぎました」
「いつもあれ位でいいっての。シロはとにかく、甘える事と我慢しない事を覚えろ。
 腹減ったらメシ食って、眠くなったら寝て、ヤりたくなったらヤりまくる。
 シロにとって自堕落に思える位が普通なんだから、思う存分甘えろ」
「出来たら、そうしたいんですけどね・・・もう、染みついちゃったんで」

中身を飲み干した牛乳瓶を股の間に置き、その中身を見つめるように項垂れる。
幼い頃、甘えさせてくれる相手はおろか、信用できる人間すらいなかった。

(・・・まずい事、言っちまったか)

不用意な発言だったかとエトナが感じた時、シロは顔を上げた。

「だから、少しずつどうにかします。今は、エトナさんもいますし」

隣に座るエトナの腕に頭を置くように、身体を預ける。
確かに感じる温かさが、心を満たしていき―――

「・・・ん〜?」
「・・・あはは」

可愛らしい音が、シロの腹部から鳴った。

「よし、んじゃ早速食欲に忠実になろう! 何か食いに行くか!」
「ですね。市場で食べ歩きなんてどうでしょう?」
「ナイス発想! んじゃ行こうか! 朝食兼昼食兼おやつ探しに!
 いつもの3倍は食うぞーーー!!!」
「お腹壊さない程度にして下さいね」

幾らかの金銭と身の回りの道具を鞄に入れ、二人は部屋を後にした。
13/11/07 01:15更新 / 星空木陰
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■作者メッセージ
肝心なとこで決まらなかったけど、怪我の功名というかなんというか。
何はともあれ、仲よさそうで何より。

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