連載小説
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快感の処女地
月は高く上り、フクロウの鳴き声が響く夜の森……
そこを私は一人で歩いていた。
エルフである私にとって森を歩くことなど大したことではない。
それなのに私の息は上がっており、脚はおぼつかなくふらふらとしていた。
とある樹にたどり着き、私は一息つく。
だが歩くのを止めても私の呼吸の乱れは止まらない。
当然である。
私は別に疲労などで息切れをしている訳ではないのだから……
「はぁ、はぁ……んぅ、くっ……」
私の口から、走った直後のものとはまた違う吐息が漏れる。
頬は紅潮していた。
そう、私は獣などのように、発情しているのだ……




ことは数時間ほど前に遡る。
それまでは私はごく普通の、エルフらしい純粋なエルフであった。
私は仲間のエルフと数人で狩りをしていたのだが、集落に帰る際、ワーウルフに襲われた。
ワーウルフはなんとか弓で追い払ったが、私はそのワーウルフに噛まれた。
「あいつ、噛まれたわ!」
仲間の態度がガラリと変わった。
みんなの弓が私に向けられる。
「来るな! もはやお前は私たちの仲間ではない!」
「汚れた魔物め……」
「……命だけは助けてやる、さぁ、去れ!」
どうもこうもなかった。
快感に疼く傷と身体を抱えながら森の中へ、仲間の構える弓矢とその矢尻以上に鋭く冷たい視線から、私は逃げた。




そして今、私は身体の疼きを持て余して樹にすがりつくようにして寄りかかっていた。
掻きたくても掻けないような感覚が下腹部にある。
「あっ……?」
下腹部の事が気になったら、もう一つある事に気がついた。
下着が、おもらしでもしたかのように冷たく濡れている。
本当に尿を漏らしたのかと思ったが、どうもそのようではない。
『これが、濡れるということ?』
性に関して閉鎖的な純エルフの集落だが、それでも有性生殖を行う。
女が男の生殖器を受け入れる際、怪我をしないように濡れるという話は私も聞いたことがあった。
「……っ!」
意識した途端、下腹部の疼きがより強くなった。
どうするべきか、純粋なエルフではなく魔物のエルフとなった心と身体が話しかけてくる。
お前の性器で男のモノを銜えこみ、欲望の赴くまま腰を動かすのだと魔物の本能は語っていた。
「くそっ……! これではまるで……ケダモノと大して変わらない!」
口に出して私は自分を叱咤する。
だが下腹部の疼きはいよいよ耐え難いものになってきた。
「ちょ、ちょっと……ちょっと、だけ……」
言い訳めいたことを言いながら私は下腹部に手を伸ばす。
くいくいと爪の先で下着の上から自分の秘裂をなぞった。
「ん、んくぅ……」
最初こそ自分の指が秘裂を掻いているのを感じられたが、今では特になんともない。
疼きはほんのわずかに消えたが、かえって強い刺激を身体が求めることになってしまう。
指で下着の股に当てられている布をずらした。
そして中指の先で自分の性器に触れる。
「くっ、あ、ああっ……!」
吐息とは違う声が思わず漏れる。先程は下着の上から触っただけだったが、直接触るのは格段に違った。
ぞくぞくとした快感がじわじわと腰から腹へと響く。
指を動かすとその快感が胸や脚へと、全身に広がっていった。
身体の変化はそれだけではない。
指になにかぬるぬるとした液体が絡みついてくる。
私が指を秘裂に沿って動かすとにちゃにちゃと音が立った。
口を開けて咀嚼しているかのような下品な音だが、なぜかその音は私を高ぶらせる。
「んっ、ぅ……あ、あはぁ……」
自分でも聞いたことのない熱っぽい声が自分の口から漏れる。
これが自分の声かと疑いたくなるくらいだ。
そしてその声も股間からの音と同様、私をおかしな気分にさせた。
「って、ダメだ! 私は何をしているのっ!?」
急に私は我に返った。
こんな外で、自分の秘部をいじっているというはしたない行動をしていたことを自覚させられる。
私は手を股間から離し、下着を元に戻した。
だが、触れるのを止めると下腹部の疼きが先程よりも強くぶり返してくる。
少し触れたことは逆効果だったようだ。
加えて、濡れた下着がとても不快だ。
脱いでしまいたい……そんな要求が私の頭の中に発生する。
しかしここは屋外……このようなところで下着を脱ぐなど破廉恥なことは出来ないと理性が咎めた。
とは言えやはり不快なものは不快。
さらに、どうせだれも見ていない夜の森だし、脱げばさらに触ることができると魔物の本能が囁いてくる。
『だけど……!』
脱ぐべきか脱がないべきか、私は頭を抱えた。
しばらくの葛藤のすえ、理性が生理的感覚と魔物の気持ちによって押し切られた。
「〜〜〜っ!」
私は下着に手をかけ、下ろしていった。
股間が、そろそろ冷たくなってきた夜風に晒される。
濡れていたので夜気がさらに冷たく感じられた。
だが、それは空気に触れている表面の話……中、膣内は熱を持っている。
何かに導かれるように私は指を割れ目に突き立て、押し進めていった。
「あっ、あっ、ふわあああ……」
妙な圧迫感が、異物感が下腹部に起こる。
その違和感は不快ではなく、むしろ心地良くて、温かい風呂に入ったときと同じように声が出た。
だがその声は風呂とはまた少し違い、どこか色気がある。
『いやだ、恥ずかしい……!』
自分がこんな声を出すなんて知らなかった。
他にも知らなかったけど今知ったことがある。
それは膣内の感触。
口に似ていなくもないが、まったく異なる感触だ。
熱くて、にゅるにゅるとぬめっていて、それでいながら襞があって、締め付けながら吸い付くような感触がして……自分の身体にこのようなものがあるなんて知らなかった。
襞の感触を確かめるように私は指先に力を入れて指を動かす。
「んっ! ふううううっ!」
少しヒリついた感触がしたが、それ以上に快感が体中に響いた。
しびれるような、力が抜けるような快感だ。
かくかくと膝が笑いだし、立っていることを拒否しようとする。
その欲求に従い、私は膝を着こうとしたが、頭を振って左腕で樹にしがみついた。
『ダメ……! こんなところで恥部を丸出しにして膝をついて四つん這いになるだなんて……獣と変わらない!』
膝をつく、という行為が、自分が誇り高きエルフだったというプライドを潰されてしまうような気がしたのもあるのだろう。
私は自分をまた叱咤する。
だが、樹にしがみついていない右手は性器から離れていない。
くちゅくちゅと卑猥な音を立てて秘裂を弄り続けていた。
指を抜き差ししながらぐりぐりと回転させるように動かして中の粘膜を擦る。
「んっ、くうう、ダメぇ……」
否定の言葉を口にして自分で自分を止めさせようとする。
だがそのダメという言葉すら、何か劣情を掻き立てるような物になっていた。
声を出してはダメだ……自分で自分を掻き立てることになってしまう。
そう悟った私は口を真一文字に結んで声を漏らすまいと努力した。
「ん、ん、んんんっ……」
くぐもった声が私の口から漏れる。
なんとか今までのような嬌声を上げるのは防げているが、下肢からの快感はそんな努力をあざ笑うかのように、私の喉を突いた。
ぐいぐいと突いてくるこの快感を、口を開けて嬌声を上げて解き放ってしまいたい……!
身体がそう要求してくる。
その要求に従えば身体はもっと気持ちよくなるし、自分の声でもっと気持ちが掻き立てられるはずだ。
ぐらぐらと、我慢を続ける私の心が揺れる。
そんな私に不幸が、追い討ちがかけられた。
秘裂を掻き回し、出し入れされていた中指の腹が、何か硬くしこった物に触れる。
その瞬間、火花でも弾けたのかと思わせるような快感が下腹部から脳へと突き抜けた。
「あ、あああああっ!」
口を閉じている余裕なんてなかった。
激しい快感に私はのけぞりながら声を上げる。
「くぅっ、何これぇ……! すごい、すごいぃい!」
今触れたしこりを指先でくりくりと弄り、快感を貪る。
誇り高きエルフでありたいのなら、淫魔のエルフになりたくないのなら避けるべき行為だ。
だが我慢していたことが一度破られてしまうと、一気に余裕がなくなってしまった。
膣とさきほど探り当てた敏感な肉芽を弄りまわし、身体をくねらせながら声を上げ、そしてついに私は、地に膝をつく。
私が快楽に、淫魔の本能に屈した瞬間だった。
もう止まらない。
さっきから切なく締め付けられるように感じていた胸を晒す。
ワーウルフに噛まれる前より大きくなっている気がするが、これも魔物化の影響だろうか。
手を這わせてみると、掌に乳首が固くなっているのを感じ、ぴくんと快感が走った。
「ひああっ! や、あっ! き、気持ちいい……あんっ!」
乳首をこするように胸を揉みしだく。
そうする度にびりびりとしびれるような感覚が体中に走った。
もう立ち上がる気力も、何か他のことを考えたりする余力も残っていない。
だがそれでも胸を揉みしだき、肉芽をこね繰り回す手の動きは止まらなかった。
股間に回されている手が、性器から垂れる粘液に濡れていく。
そのことが、自分が肉欲に翻弄されていることを示す。
『こ、こんなに濡れるなんて……私は、そんなに男を欲しがっているの……!?』
だがその羞恥心はあっという間に快感で流されてしまう。
「くううっ……あっ、あっ……ふあっ、ああんっ! いやっ、こんないやらし……ひあん、気持ち、いい……!」
自分の口からいやらしい吐息と、快感を素直に従っている言葉が漏れる。
それらを抑えるなどという選択肢は頭にない。
その頭がだんだん白く染まっていった。
白い世界のその奥に、さらに輝いている世界のようなものが見える。
「あ、あっ、あああ……」
私の口から嬌声とともに、惚けたような声が漏れる。
その先に行ってみたい……その先に行けば自分が今まで知らなかった素晴らしい何かを知ることができる……そんな気がした。
進みたいのであれば、このまま身体をいじる淫らな手の動きを続ければいい……それも分かる。
だがその先に行ってしまうと、自分という存在が完全に変わってしまい、元の自分に戻れない……そんな恐怖もあった。
「ん、あっ、んんっ……うぅ……っ」
その恐怖が私の手の動きを少し緩めた。
踏みとどまりたいのであればこのまま動きを止めればいい……それも分かる。
先に進むか踏みとどまるか……淫魔として快楽に身を委ねるかエルフとしての意地を見せるかの瀬戸際だ。
私が出した結論は……
『もう、私は以前の私ではない……もう魔物なのだ。このまま堕ちてしまおう……そう、このまま……』
淫魔の選択肢だった。
一度、緩やかになった手の動きが再開される。
しかも、先程と比べてより激しく、より淫らな動きだった。
自分の指使いによってもたらされる快感は着実に私を、その輝いている得体の知れない、だがきっと気持ちよさそうな世界へと押しやっていく。
そして今、その輝きに全身が灼かれた気がした。
「うあっ……うおおああああああっ!」
自分の口から自分の物とは思えない、獣めいた嬌声が上がる。
それと同時に身体のあちこちで快感が爆発し、細かな痙攣を起こした。
股間でぷしゃっと破裂音がし、生温かい液体が私の手に浴びせられた感じがする。
尿を漏らしたかと思ったが、どうもそれとは違う感じだが……そんなことを考えられないくらい、私の頭と身体は輝きに包まれていた。
獣の体勢で獣のような声を上げ、手で胸と股間をイヤらしく触りながら、私はそれまで感じたことのない快楽に身体を硬くし、やがて崩れ落ちた。



尻を高く持ち上げ、顔を地面に擦りつけた状態で私は荒い息をついていた。
快感が過ぎ去っても、身体の火照りはおさまらない。
むしろ、もっともっとと身体が快楽を……もっといえば、人間の男を求めていた。
今日の朝の私と今の私はもはや別人だ。
純エルフとしての私は消え、魔のエルフとしての私が性欲に翻弄されてここに一人、うち転がっていた。
身体と心ははっきりとそれを理解しているが、だがどこか私は納得しきれていない。
その気持ちが一瞬、性欲を抑えて表にあふれた。
「私……こんな身体になって……これから先、どうなるの……?」
言葉と共に出た涙は、地面に吸われ、言葉と共に消えた。
12/09/26 19:09更新 / 三鯖アキラ(旧:沈黙の天使)
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■作者メッセージ
この自慰も残り1章!
トリの準備をしつつもしっかりと頑張ってくれているのはエルフさんでした!
ある意味アルプと似て、今まで女性の快楽を知らなかったエルフさん……でもその快楽は幼い頃から禁忌とされていたこと……
だけど魔に堕ちてしまい、近くに男がいないエルフはやっぱりオナマスだと思うんだ!(殴)

というわけで、いかがだったでしょうか?
魔物娘の身体的特徴は少ないですが、その分性格的特徴で皆さんにアピールできたら幸いです。l


さて、この自慰も次がいよいよラストです!
大将にはどの種族が来るのか!?
狙いとしては、魔物娘の自慰なので、身体的特徴・性格的特徴の両方を生かした種族&シチュにしたいと思います。
頑張ります。

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