読切小説
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酒池肉林
 バスの中は、陰鬱な空気が漂っていた。当然の事だ。このバスに乗っているのは、失業者が大半だ。
 泰成も、失業者のうちの1人だ。雇用保険が切れ掛かっていたところ、短期の仕事があることを就職サイトで知って応募した。これから向かう施設で雑用をする事になる。日給1万円で7日間働く。宿泊施設はあり、食事つきだそうだ。きちんとした職に就きたいが、面接に8社も落ちていた。とりあえず短期の仕事でもやって、金を稼がなくてはならない。
 どの道、泰成はもう何も期待していなかった。金が無くなったら、自殺するか餓死するかだろう。例え就職できたとしても、ろくな職には就けないだろう。これまでもろくな職には就けなかった。今回の短期の仕事をやる事にしたのは、もうどうでもいいと思ったからだ。
 バスは、森の中を通る道路を走っていた。リゾート地にある施設で働くのだそうだ。貧乏人の泰成にとって、リゾート施設で遊んだ事などなかった。これからも無いだろう。
 くだらねえ、泰成は声に出さずつぶやいた。

 森を抜けるとリゾート地が広がっていた。イギリス風の建築様式の別荘が建ち並んでいた。どうやらイギリスのリゾート地を意識しているらしい。離れた所には、ビクトリア様式で建てられたホテルが見えた。
 1軒の別荘を見たとき、泰成は笑ってしまった。その別荘はコロニアル様式だった。イギリス人が植民地で住む建物に使った様式だ。アジアの人間にとっては屈辱的な様式だ。別荘の前でくつろいでいる男は、まぎれも無く日本人だ。金持ちだと馬鹿でも楽に暮らせるらしい。泰成は、人前であるのにもかかわらず笑った。
 バスの進行方向にある建物が見えて来た時、泰成は笑うどころではなくなった。大きくて目立つ建物だ。目立つのは、大きさのためだけではなかった。その建物の建築様式は、判明しなかった。西洋の建築様式、中国の建築様式、そして日本の建築様式が混ざっていた。ある部分が西洋式、別の部分が日本式などと言った生易しいものではない。3つの様式が、同じ部分で混ざり合っているのだ。きちんと見れば、3つどころではない様式が混ざっているのかもしれない。泰成は唖然とした。
 建物の前につき、泰成はバスから降りた。見れば見るほど奇怪な建物だ。このような物を建てる建築技術などあるのだろうかと、泰成は首を振った。一緒に降りた男達も、呆れたように建物を見ている。泰成は周りの者達を見て、いまさらながら男しかいないことに気づいた。肉体労働をやらせられるのだから、男しかいないのだろう。泰成は、大して気に留めなかった。
 1人の男が、泰成達の所へ歩いて来た。シックなデザインの黒のスーツを着た男だ。映画に出てくる執事のような格好だ。
 「皆様、ようこそお越しくださいました。私は、皆様の監督をする事になる吉備と申します」
 男は優雅に一礼した。泰成達は、吉備と名乗った男に従って建物に入った。建物の中も、複数の建築様式と調度が混ざり合っていた。竜の彫刻をされた赤い柱の間の空間を、ステンドグラスから漏れる光が照らしている。部屋との境界には障子のはまった出入り口がある。ユニコーンの石像の近くには、景徳鎮の壷が置かれている。理解不能な組み合わせだ。
 泰成達は、1つの部屋に誘導された。幾つもの籠が置かれていた。戸の向こうに、別の部屋があるらしい。吉備は、右手で籠を示した。
 「皆様、シャワーを浴びてください。お召し物は籠に置いてください。クリーニングいたします。着替えは用意しております」
 泰成はいぶかしんだ。俺達は、これから荷物運びや掃除をするのではないのか?なぜシャワーを浴びなければならないのだ?首をかしげながらシャワーを浴びた。1つのことに思い当たって苦笑した。この建物の主は、俺達を不潔な物だと思っているのだろう。建物をうろつかれる前に、消毒しようと言うのだろう。
 シャワーから出ると、用意されていたバスタオルで体を拭いた。バスタオルと一緒に用意してある服を見て、泰成は再び首をかしげた。中国の歴史映画に出てくるような服だ。漢服と言ったかなと、泰成は記憶を探った。手にとって見たが、着方が分からなかった。更衣室に、4人の漢服を着た男が入って来た。その男達は、シャワーから出た男達に服の着方を教えていった。泰成は指導の下、何とか漢服を着た。裾が長く、青色の生地で出来た服だ。妙なコスプレをさせられたなと、泰成は内心笑った。
 吉備に誘導されて、更衣室から出て廊下を歩いた。鴬張りの廊下を、執事姿の男に導かれた漢服を着た男達が歩いている。シュールな光景だった。吉備の指示に従って、泰成達は明るい屋外へ出た。

 そこは中庭だった。建物に囲まれているにもかかわらず、広々とした空間だ。建物同様に、異様な方式で作られた庭だ。幾何学的な西洋庭園の中に、満開の桜が咲いている。イタリアの都市に有る様な噴水が設置され、その少し離れた所に鹿脅しのある日本式の池がある。池のそばには、中国式の赤い東屋が建っている。何の意味があって造られたのか分からない、混沌とした庭園だ。
 中庭のあちらこちらにテーブルが設置されていた。テーブルの上には様々な料理と酒が置いていた。中庭には料理の匂いが漂っていた。吉備は笑みを浮かべながら言った。
 「これらの料理は皆さんのために用意したものです。さあ、出来立ての内に召し上がってください」
 男達は顔を見合わせた。自分達の現状を理解できなかった。変な建物に連れて来られ、コスプレをさせられて、酒や料理を振舞われる。これが何の仕事だと言うのか?
 「さあ、遠慮なさらずに召し上がってください。温かい内に召し上がったほうが美味しいですよ」
 吉備に促されて、泰成は目の前の料理に手をつけた。せいぜいよくあるパーティー料理だろう。食えと言うのだから遠慮する必要はない。泰成は、海老を調理した物を口にした。咀嚼して驚いた。並外れて美味しかった。海老を2つ、3つと口にした。上質な素材を入念に調理したらしいことが分かった。カニ料理を口にしたが、こちらも優れた物だった。
 泰成は、クラッカーの上に黒く丸い物を複数載せたものを口にした。しょっぱいわりには美味しかった。泰成には分からなかったが、口にしたのはキャビアだ。テーブルの上にはトリュフやフォアグラもあった。いずれも泰成が一度も口にしたことが無い物だ。
 他の男達も料理を口にしていた。おずおずと口にする者もいれば、がつがつと貪る者もいた。中庭には、男達のたてる咀嚼音が響いた。
 泰成は、ふと北側を見た。2階にバルコニーがあり、そこに2人の者が、椅子に座って泰成達を見下ろしていた。男は漢服、女はチャイナドレスを着ていた。泰成は首をかしげた。漢服は漢民族の服だ。それに対して、チャイナドレスは元々は満州民族の服だ。ちぐはぐな組み合わせだ。建物や庭園同様、おかしな組み合わせだ。この建物の主だろうか?
 西側の建物から、女達が現れた。赤、青、黄、白、黒などの色鮮やかなチャイナドレスをまとっていた。いずれも金色の髪をしていた。女達は、男達のそばによってきた。獣のようなとがった耳と、柔らかそうな毛並みの尻尾が付いていた。
 魔物娘か、と泰成はつぶやいた。外見からして妖孤と呼ばれる者達か、稲荷と呼ばれる者達らしいと分かった。泰成は、バルコニーの男女を見た。あいつら何を考えているんだ?泰成は不審の念を押さえ切れなかった。
 泰成のそばに、赤いチャイナドレスを着た女が来た。微笑を浮かべながらワインを勧めてきた。泰成は素直に従い、ワインを飲んだ。上等なものらしいが、きつい味の安ウイスキーばかり飲んでいる泰成には、ワインの味は分からなかった。
 女は、流れるような豊かな金髪をしていた。金髪で覆われた細面の顔は、吊り上った目が似合う整ったものだ。黄金色の狐の耳は、人には無い魅力を出していた。赤いチャイナドレスは、光沢のある生地で出来ていた。豊かな胸と締まった腰を強調するデザインだ。胸の谷間はハートカットの形に露出しており、クリーム色の胸を見せ付けていた。スリットは大胆に切り込んでおり、黒いガーターストッキングに包まれた長い足を露出していた。3本の黄金色の尻尾が尻から揺れており、コケティッシュな魅力を女に与えていた。見た目は20代前半なのに、妖艶な雰囲気を全身から出していた。
 女は笑みを浮かべながら、泰成に話しかけていた。話し方も、動作も洗練されていた。きちんと訓練を受けている事が推察できた。ビジネスマナーの講師によくあるわざとらしさは無かった。好感の持てる話し方、動作だ。泰成の話と動作を注意深く汲み取り、巧みに応えた。
 泰成は恐怖を感じていた。洗練された美女が、自分を注意深く観察しながら話しかけている。まともな状況ではない。裏があると見て当然だ。泰成は、緊張を隠そうとしながら女に応えていた。
 鈴の音が庭園に鳴り響いた。目の前の女は微笑み、チャイナドレスをはだけた。女はブラをつけていなかった。クリーム色の胸と桃色の乳首があらわになった。女は泰成に擦り寄った。甘い香水の香りが、泰成の鼻をくすぐった。泰成は辺りを見回した。女達は、男達に服を脱ぎながら擦り寄っている。目の前の女は、泰成の頬を手で包みながら口付けた。
 泰成は、自分が置かれている立場を理解しようと必死になった。女は泰成の口をむさぼり、舌を口の中に入れて来ている。左手で泰成の背をさすりながら、右手で股間を愛撫している。女は口を離した。女と泰成の口の間に、透明なアーチが出来る。女は泰成の着ている漢服を脱がしていった。泰成が着るのに手間取った漢服を、難なく脱がしていった。露出した泰成の胸に、女はゆっくりと舌を這わせた。
 ここで泰成は、1つの事を考え当たった。この館の主は、俺達を見世物にしようとしているのだ。貧乏人たちをかき集め、酒を飲ませ飯を食わせる。その上で女とやらせる。酒池肉林の宴を上から眺めて楽しもうというのだろう。
 泰成は、あるパーティーについて書かれた本を読んだ事があった。パーティーは、選別と淘汰によって成り立っていた。資産の無い者を淘汰する。容姿の劣る者を淘汰する。教養の無い者を淘汰する。コミニケーション能力の劣る者を淘汰する。こうして「選ばれた者」達は、洗練された技術を凝らした部屋でパーティーを行う。最高級の酒と料理を楽しみ、優雅な会話を交わす。その後で、参加者同士で性の歓楽を味わう。「選ばれた者」のみが許される快楽のパーティーだ。
 このパーティーの参加者達には、1つの悩みがある。退屈と言う悩みだ。最高の楽しみを味わい続けた者達は、並みの事では楽しめなくなる。退屈に蝕まれた「選ばれた者」達は、常軌を逸した事を始める者もいるらしい。
 この館の主人達もその類だろう。こんな館を持っているのだから、金持ちに決まっている。金を稼ぎ維持できるのだから、能力もあるのだろう。遠目から見ても、バルコニーにいた2人は美男美女だった。退屈した「選ばれた者」だろう。
 人間がこんな酒池肉林の宴をやったら、問題になる。だが、やるのは魔物だ。人間の常識が通用しない者だ。バルコニーにいた女は、狐の耳と尻尾が生えていた。大方やつらは、紂王と妲己を気取っているのだろう。
 泰成は嗤った。いいだろう、こちらもせいぜい楽しんでやる。

 妖孤は、泰成の腹を舐めていた。脇腹を撫で回しながらへその下を舐めていた。泰成のむき出しになった股間からは、ペニスが立ち上がっていた。妖孤の顔が動くたびに、顔がペニスをこすった。
 泰成は、ペニスで妖孤の頬を突っついた。妖孤は康成を見て微笑み、ペニスに口付けをした。亀頭に繰り返し口付けた。口付けをやめると、愛おしげに右頬でペニスに頬ずりをした。頬ずりの後に、裏筋に口付けを繰り返した。口付けをやめると、左頬で頬ずりをした。妖孤は、ペニスに口付けと頬ずりを繰り返した。その間ゆっくりと丁寧に、右手で袋と玉を揉み解した。左手で太ももを愛撫した。妖孤の豊かな金髪は、泰成の腰と太ももを生き物のようにうごめきながら撫でさすった。
 泰成はうめいた。泰成は女に縁が無かった。女を買う金も無かった。目の前の妖孤の繰り出す性技は、童貞に耐えられるものではなかった。
 泰成のペニスはわななき、透明な先走り汁を漏らしていた。妖孤は、ペニスの先端に口付けた。赤黒いペニスとルージュを塗られた赤い唇の間に、透明な液体のアーチが出来た。妖孤の両頬は先走り汁で濡れて、日の光を反射していた。妖孤はアーチを舐め取ると、顔を泰成の股間にうずめた。袋に舌を這わせた。袋の皺を1本1本広げるように、ねっとりと這わせた。舌で玉を持ち上げ、転がした。妖孤は顔を動かしながら、形の良い鼻をペニスにこすりつけた。ペニスの先端から垂れ落ちて来た透明な液が、鼻を濡らしてぬめり光らせた。その淫猥な光景を見て、泰成の腹の底からマグマのようなものが上がって来た。鼻をこすりつけることによってペニスに与えられる快楽も、マグマを刺激した。
 うめき声を抑えられない泰成を見て、妖孤は亀頭を口に含んだ。裏筋に舌を這わせながら、ルージュを塗った唇でペニスをしごいた。右手で玉をもてあそびながら。左手でアヌスをくすぐった。強い刺激が、亀頭と棹の境目を襲った。妖孤は、境目を甘がみしていた。それが噴射の引き金となった。
 出すぞと泰成は口走った。同時に、マグマのような精液が妖孤の口にぶちまけられた。泰成自身が驚くほどの激しい射精だ。腹の底からエネルギーが噴出しているようだ。とても飲みきれないものだと思った。妖孤は少し顔をしかめながらも、口から漏らすことなく精液を飲み込んだ。喉を鳴らしながら飲み込んでいった。亀頭を強く吸引しながら、棹をしごいて射精を促した。泰成のペニスは、痙攣しながら長い間にわたって精を噴出し続けた。射精が終わっても、妖孤はペニスから口を離さなかった。音を立てて鈴口を吸い、棹をしごいた。棹の中の精液が吸い出された。棹の中だけではなく前立腺の中の、そして精巣の中の精が吸い取られているようだ。鈴口と精巣の間に1本の糸が通っており、その糸が吸い出されているようだ。
 妖孤は、ペニスから口を離した。唇が濡れていた。桃色の舌を伸ばし唇を舐め、泰成に微笑みかけた。泰成に見せ付けるように自分の胸に手を添えると、泰成の股間に覆いかぶさった。クリーム色の胸で、濡れ光っている赤黒いペニスをはさんだ。初めはゆっくりと、次第に早く動かした。両胸を同時に上下に動かしたり、左右を交互に上下に動かしたりした。硬い乳首を亀頭やくびれ、裏筋にこすりつけた。泰成のペニスは、大量に射精したにもかかわらず力強く屹立した。白い胸の中で赤黒いペニスが挟まれていた。胸とペニスは、汗と唾液と先走り汁で濡れ光っていた。その光景に興奮した泰成は、妖孤の胸の中でペニスを突き上げた。妖孤は、なだめるように胸でさすりながら包んだ。
 泰成は、再びうめき声を漏らし始めた。胸は、想像以上に柔らかい。ふわふわとした感触だ。そこへ硬い乳首が、鋭くペニスを刺激してくる。妖孤は上目遣いに微笑むと、胸の谷間から突き出たペニスに口付けた。軽く口付けたかと思うと、吸い付くように口付けた。鈴口に唇をつけると、あふれ出て来る先走り汁をすすり上げた。すすりながら舌で裏筋をなめまわした。胸は休む事なく棹を愛撫し、乳首は亀頭、くびれ、棹の横を刺激した。
 泰成のペニスがすっかり回復したのを見ると、妖孤は泰成から離れた。泰成の前に犬のように四つんばいとなり、白い尻を向けた。尻をゆすり動かし、黄金色の尻尾を振って泰成を誘った。泰成は妖孤の尻をつかみ、ペニスを尻に這わせた。泰成のペニスの動きに合わせて、妖孤は尻をゆすり動かした。柔らかさと弾力のある尻が、ペニスを刺激した。ペニスを尻の隅々まで這わせ、先走り汁を塗りつけた。ぬめり光る尻が、陽光を反射した。
 泰成は尻尾にペニスを絡ませた。柔らかい毛並みがペニスを刺激した。危うく精をぶちまけそうになった。腰に力を入れると、ゆっくりとペニスで尻尾を嬲った。金色の毛並みを先走り汁で汚した。妖孤は、3本の尻尾を順番にペニスに絡ませた。尻尾は、嬲られながらペニスをからかうようにくすぐり、叩き、愛撫した。
 長くは持たないと感じた泰成は、尻尾からペニスを離してヴァギナにペニスを当てた。ヴァギナは既に濡れそぼり、金色の茂みを濡れ光らせていた。泰成は、ペニスをヴァギナの中へ押し入れようとした。ペニスが滑って入らなかった。もう一度入れようとしたが、滑りがひどくて入らない。妖孤は、ペニスに手を添えてヴァギナへ誘い込んだ。熱い肉が亀頭を包んだ。泰成は、そのままペニスを押し入れた。熱く柔らかい肉をペニスで押し分けていった。濡れた肉がペニスを包み、締め付けてきた。
 胸の場合は、柔らかくペニスを包んできた。それに対してヴァギナは、搾り取るようにきつく締め付けてきた。濡れた肉が渦を巻いたかと思うと、引き絞るようにペニスを締め付けた。強い力でペニスを揉み解した。泰成は、肉の渦を突き上げるようにペニスを押し入れた。泰成に突かれて、妖孤は腰をゆすり動かしながら喘いだ。四つんばいになり、尻と尻尾を振る姿は雌犬のようだ。興奮した泰成は、力を入れて四つんばいの雌狐を責め立てた。
 泰成の体を、くすぐるような感触が襲った。雌狐の尾が、泰成の体を愛撫していた。頬と首筋をくすぐり、肩と胸板を撫でさすった。腕と腋をくすぐり、腰と腹を撫で回した。泰成はくすぐったさに身をよじったが、柔らかい毛並みの感触に酔いしれた。尾からは、香水の香りと混じって甘い匂いが漂ってきた。匂いは、泰成の欲情を掻き立てた。
 ふと、泰成は周りを見回した。他の者も淫楽にふけっていた。ある者達は、体を重ね合わせてお互いのヴァギナとペニスを舐め回していた。ある者達は、男が女を正面から抱き上げながら突き上げていた。ある者達は、男が寝そべり女が腰の上に乗りながらお互い激しく腰を動かしていた。バルコニーの男と女は、乱交を見下ろしながらグラスを傾けていた。泰成は嗤った。せいぜい俺達を見下ろしながら楽しめばいい。こちらも楽しんでやろう。
 泰成は、奥へとペニスを押し入れた。硬い輪の様な物が有った。そこを突くと、雌狐はつばを飛ばしながら喘いだ。繰り返し突き上げると、雌狐は髪と尾を振り乱しながら声を上げた。金色の髪と尾が乱舞した。雌狐の体から汗の雫が飛び散った。
 泰成は限界を迎えようとしていた。出してもいいかとうめくように言うと、中に出してと雌狐は喘ぎながら言った。泰成は腰を激しく動かした。雌狐は、泰成に合わせて腰を動かした。奥に有る輪の中に押し入れるように突き入れ、泰成は精液をぶちまけた。
 2度目とは思えないほど激しく射精した。あたかも砲撃のような精液の噴射だ。子宮を押し流そうとしているようだ。女は声を上げた。獣じみた声だ。体を痙攣させながら喘ぎ、叫んだ。叫びと同時に、雌狐の奥から熱い液が吹き出した。泰成のペニスを熱いシャワーが襲った。精液と潮の混合物が、2人の結合部から噴出した。間欠泉のように噴出し続けた。
 雌狐は地に伏していた。涙と鼻水とよだれを垂らして、顔を地に付けていた。顔を地に付けながら尻を突き出していた。泰成はひざを突き、汗で濡れ光る雌狐の背に顔を乗せていた。よだれを背に垂らしていた。雌狐の尾は、ゆっくりと泰成の体を愛撫していた。

 泰成は、この宴の主催者を感謝していた。酒池肉林の宴は、泰成の立場を再確認させた。泰成に生きる目的を与えた。
 俺は奴隷なんだ。生きる為に、はした金で意のままにされる奴隷なんだ。自由なんて無い。金を手にするために、屈辱的なことをしなくてはならない。利用された挙句、他人の都合で投げ捨てられる道具なんだ。俺にあるのは餓死する自由だ。
 俺の暮らしは、悪くなる事はあっても良くなる事は無い。この国の格差はどんどん広がるだろう。格差が広がると言う事は、富の再分配がまともに行われていないと言う事だ。強者はどんどん栄え、弱者は押し潰されていく。弱者を犠牲にして強者は栄えるのだ。自己責任という錦の御旗を振りかざすことによって、弱肉強食は正当化される。俺は、押し潰される弱者だ。
 俺は、金持ちや権力者を殺す事に自分の人生をささげる。弱者を笑いながら見下ろす強者を、血みどろの肉塊に変える。俺には太公望のような力は無い。権力者に取り入り、同志を集め、紂王を倒すような能力は無い。だが、歴史の狭間に浮き沈みする刺客になる事は出来るかもしれない。誰に雇われたわけではない、自分の意思だけで人を殺す刺客になれるかも知れない。
 俺は、これから地を這いながら生きる。何の目的も無く、地を這いながら生きる事はできない。だが、一人一殺を実行するという目的があるのならば耐えられる。俺は死刑になるだろう。警官に撃ち殺されるかもしれない。それでいい。野垂れ死ぬよりは上等な死に方だ。
 泰成は笑った。バルコニーから見下ろしている男女に笑いかけた。お前達のおかげで、俺は生きる目的を見つけた。生きる意味すら見つけられたかもしれない。お前達には、心から感謝する。
 泰成は辺りを見回した。性の饗宴は続いている。俺は、これからくり返しこの宴を思い出す。宴を思い出しながら、刺客として自分を鍛える。屈辱をバネにして、刺客となるのだ。そのためにも、獣以下の交わりをもっとやらなくてはならない。
 泰成は、他の女を犯すために歩き出そうとした。泰成の手がつかまれた。振り返ると、泰成に責め立てられていた雌狐が手をつかんでいた。泰成は手を振りほどこうとした。雌狐と目が合った。紫色の吸い込まれるような目だ。その瞬間、泰成は体を動かす事ができなくなった。自分の意思で、体に力を入れることが出来なくなった。妖孤は、泰成の体を地面に横たえた。柔らかい芝生が、泰成の背を迎え入れた。
 「私はまだ満足してないの」
 妖孤は、微笑みながら泰成の体を愛撫した。情けなく喘いでいた雌狐の表情は無かった。妖孤の名にふさわしい、妖艶な表情だ。
 「浮気をするつもりだったの?逃がさないわよ」
 妖孤は、泰成の股間に顔を寄せた。精液と愛液で濡れたペニスがあった。微笑みながら鼻を近づけた。
 「すごい臭いね。私は狐だから、人間以上に鼻が利くのよ。頭がふらつきそうな、いやらしい臭いね」
 妖孤は、濡れたペニスに舌を這わせた。ねっとりとした舌使いだ。丁寧に汚れをこそぎ落とした。
 「味も刺激的ね。口の中が犯されるわ。子宮が疼くわね」
 汚れを全て舐め取ると、唾液で光るペニスに口付けた。楽しそうにペニスに頬を擦り付けた。
 「このおちんちんは私のもの。他の娘には渡さないから」
 泰成のペニスは既に回復していた。怒張したペニスが、妖孤の頬を強く突いていた。妖孤は身を起こすと、泰成の腰にまたがった。わななくペニスを濡れたヴァギナに飲み込んだ。熱い肉壷はペニスを締め付けた。渦を巻いたかと思うと、強く引き絞った。ペニスを奥へと引きずりこんだ。
 妖孤は、泰成の上で激しく腰を動かした。金色の髪を振り乱し、乳房をゆすり動かしながら腰を振った。日の光に照らされた金色の髪は、光の渦を作りながら踊った。腰の動きと共に、金色の尾も激しく動いた。金の舞踏が展開されていた。金の中に、汗で濡れた白い胸が光を浴びて輝いていた。
 泰成は、バルコニーを見た。バルコニーから見下ろしていた男女は、まぐわいをはじめていた。バルコニーの手すりに手をつく女を、男は後から責め立てていた。金色の髪と尾が踊った。突かれるごとに激しく踊らせた。
 泰成は、妖孤に犯されていた。反撃しようにも、泰成の体は自分の意のままに動かなかった。主導権は妖孤に握られていた。妖孤は快楽をむさぼっていた。同時に、泰成に激しい快楽を与えた。激しく動く腰が、締め付け引き絞る蜜壷が、泰成に悦楽を与えた。強引に限界へと引きずられた。
 泰成は、妖孤のどろどろの蜜壷の中ではじけた。ペニスが裂けたかと思うような射精だ。苦痛と快楽が同時に襲った。耐えられず泰成は声を上げた。妖孤も声を上げた。激しく体を震わせ、汗の雫を飛ばしながら声を上げた。射精は長く続いた。2人は痙攣しながら、声を上げ続けた。
 射精が終わると、妖孤は泰成の体に突っ伏した。汗で濡れた体が、震えながら重なり合った。妖孤からは、汗と香水、精液と愛液が混ざった臭いが漂ってきた。淫猥な臭いが、泰成を包んだ。妖孤は、泰成の胸に舌を這わせた。手で肩を撫で回した。尾で足を愛撫した。蜜壷が泰成を締め付けた。
 「まだ終わりじゃないから。これからたっぷりと楽しむのだからね」
 妖孤は笑った。獲物を味わう肉食獣の笑いだ。

 泰成は目覚めた。泰成はベットで寝ていた。顔を動かして辺りを見回した。朧な明かりに照らされた部屋だ。泰成は、体をゆっくりと動かした。
 「目が覚めたのね。よく眠っていたわね」
 女が、壁際の椅子に座っていた。泰成を犯した妖孤だ。紫の地に金の鷹が縫われた着物を羽織っていた。着物の合わせ目から、豊かな胸が見えていた。
 泰成は、部屋を見回した。壁は、装飾過剰なロココ式だ。天井と床はモザイクになっている。扉は、虎が描かれた朱塗りの物だ。窓には障子がはまっている。泰成の寝ているベットは、絶対王政時代のフランスを描いた映画に出てくるような天蓋つきベットだ。ベットの傍らには、金屏風が立てかけている。ベットのそばにある台には、鳳凰を彫刻した香炉が置いてある。この館の他の部屋と同様に、意味不明な組み合わせだ。
 妖孤は、泰成の方に歩いて来た。手にはグラスが握られている。
 「飲んだらいかが?」
 泰成はグラスを受け取った。ヴェネチアンガラスで出来たグラスだ。飲まずに手で持ち続けた。無言のままベットに座り続けた。
 「事情を説明したほうがいいみたいね」
 妖孤は、苦笑しながら言った。泰成の隣に座り、宴の目的を話し始めた。
 宴には2つの目的がある。1つは妖孤の婚活だ。男達を集めて酒池肉林の宴を行い、妖孤のパートナーを作ろうというのだ。既成事実を作った上で、性の快楽を男達に叩きこみ続け、男をものにしようという訳だ。
 2つ目の目的は、人材を集める事だ。妖孤達は、企業グループを経営していた。妖孤の夫となった者達をグループに入れ、人材として育て上げて働かそうと言うのだ。
 泰成は首をかしげた。人材が欲しいならば面接をすれば良い。雇用が劣化しきっている現状ならば、いくらでも人材を集めて選別出来るだろう。優秀な者を選別して引き入れればよい。企業に入れて働かせた上で、能力があるか否かを観察する。そこで、また選別して妖孤の夫を探せばよい。そのほうが、使える夫を手にする事ができるだろう。
 泰成の言葉に、妖孤は笑いながら首を振った。
 「その結果が、今のこの国の現状でしょう。あなたの言うやり方は、この国を初め『先進国』なんてくだらない呼ばれ方をしている国がやっている事よ。即戦力になる有能な者を求め続ければ、採用されるのは経験のあるベテランが大半よ。経験の無い若者は、淘汰される。採用される若者は、何らかの方法で訓練を受けた者か、要領のいい者くらいね。多くの人が淘汰され、すり潰される。その結果、国と社会は衰退する事になる。企業は、笑いながら別の国を食いつぶすために出て行くでしょうね」
 妖孤は、手に持ったグラスを口につけた。ゆっくりとすすると、グラスから口を離した。
 「今のこの国で必要な事は、人材を育てる事よ。一部の優秀な人間を育てる事より、普通の人、あるいはそれ以下の人に能力を身につけさせることが必要なの。下を底上げする事が国と社会を強くし、結果として企業のためになるの。私達は、人材を食いつぶして膨張しようとする企業とは、別の事をやろうとしているの」
 泰成は、妖孤の言う事を信用しなかった。企業は、利益を得るために人間を食いつぶす。それは企業の本質であり、企業を支配する者達の本能だ。人間を食いつぶさない企業など、存在するはずが無い。
 「まあ、口ではなんとでも言えるわね。これからあなたは、私の言った事を体で理解する事になる」
 妖孤は、微笑みながら泰成の足を撫でた。顔を寄せてささやいた。
 「私達妖孤の夫となる者は、高い能力を得る事が出来ると言われている。私達は、人を育て上げる事が得意なのよ」
 妖孤は、泰成の顔をのぞき込みながら言った。
 「バルコニーにいた男の人を覚えている?あの人は、私達の長である華陽様の夫よ。私達の企業を経営している人よ。今でこそ辣腕家だけど、元々はホームレスだったの」
 泰成は、妖孤をまじまじと見た。冗談を言っているのだろうか?
 「華陽様の凄い所は、人材を育成する事が天才的にうまいことよ。人材育成にかけて華陽様の右に出る者は、見た事が無いわ。指導者としての力量もある方だけど、それ以上に人を育てる能力に私達は敬服しているの」
 泰成は、テラスの男を思い返していた。堂々とし、姿かたちの優れた男だった。元ホームレスとはとても思えなかった。
 「これも、口で言っても信用できないでしょうね。実際に証明しないとね」
 妖孤はグラスを台の上に置き、泰成の体を撫で回した。
 「私は若藻と言うの。これからじっくりと育ててあげるわ。よろしくね、あなた」

 泰成は、若藻と交わり続けた。若藻は、様々な性技を用いた。部屋の中でいる間のほとんどの時間は、悦楽で満たされた。一週間が過ぎるころには、泰成は若藻の虜になっていた。セックスによって虜にするなど、陳腐な事だ。その陳腐なやり方が強い効果を発揮する事を、泰成は体で思い知った。泰成は若藻の夫となり、共に働く事を誓った。

 泰成は、館の玄関のホールにいた。黒い執事風の服を着ていた。これから新しい男達が来る。泰成は、彼らを宴へと誘導しなくてはならない。
 あれから3年たった。若藻たち妖孤は、この3年の間に自分達の言葉が嘘ではない事を証明してきた。泰成達を、丁寧に辛抱強く育ててきた。泰成は、3年前とは別人のような能力を手にする事ができた。
 泰成は、ホールを見回した。ヘラクレスの石像のそばに、天人五衰を描いた日本画が飾ってある。その隣には、中国の書家が書いた陶淵明の詩が架けられている。泰成は苦笑した。相変わらずわけのわからない組み合わせだ。
 「さあ、抜かりのないようにね。あなた」
 隣にいる若藻が、泰成の肩を撫でながら言った。若藻は、黒地に金の刺繍をしたチャイナドレスを着ていた。体の曲線が浮き出た上に露出度の高い、扇情的な格好だ。分かってるさと答えると、若藻は耳元に口を寄せてささやいた。
 「会場で待ってるわ。たっぷりと搾り取ってあげる。新人君達に見せ付けてやりましょう」
 泰成は、宴で若藻と交わる事が多かった。宴では、気後れする者が出る。彼らを煽るために、2人の交わりを見せ付けるのだ。
 若藻は、泰成の尻を撫でると中庭の会場へ歩いて行った。泰成は苦笑した。若藻とは毎日セックスを楽しんでいる。妖孤の力で精力の強くなった泰成でさえ疲れを感じるほど、性の交わりを行った。どれだけ俺から搾り取れば満足するのやら。泰成は笑うしかなかった。
 泰成は、時計で時間を確認した。さあ、新しい仲間を迎えなければ。泰成は、バスの到着する玄関前の広場に歩いて行った。
14/04/13 15:40更新 / 鬼畜軍曹

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