連載小説
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第十四話 其々の目的、其々の旅路
亭拉達が教会を訪れた翌朝。
『聖騎士』登録の是非が出るまでの間、少しでも旅の資金を稼ごうと中央区のギルドを目指して歩いている。

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中央区の大通り。
左右を沢山の露店が埋め尽くし、大型の馬車が余裕ですれ違える石畳の道路は中央区の殆どを占める『商業区』を両断しクレバネット領主が住む『ギャバジン邸』へと続いている。

本来防衛的観点からこのような町の作りはされない。
しかし大陸で最も大きな中立領の一つであるクレバネットは教会と魔物両方にとって重要な拠点で有り、そこに攻め入ることは両者を同時に敵に回す事となる。

更に教会と魔物間の争いでさえ教会側は商人を敵に回し補給を受けれなくなる事、魔物側は中立領と言う重要な婚活スポットを失う事を恐れ大通りを境界線として不可侵と言うのが暗黙の了解となっている。(亭拉は初日に破っているが)

だがそのような諸々の事情を抜きにして、

『その方が商売の効率が上がるじゃないか!』

と言うのが領主『ギャバジン』の談である。
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シャーリー「お兄さ〜ん、この町は初めてかしら?」
果物屋の売り子から突然声を掛けられ立ち止まる。

口元を布で隠し褐色の肌に豊満な胸、腰は細く括れかなり際どく浅い股上のスカートの下から蠍の下半身を生やし毒針の折れた尻尾には瑞々しいフルーツが盛られた籠を提げている。

テイラ「ん、俺か?」
声のした方に振り向く亭拉とシルク。
これが漫画なら二人の頭の上には『?』が浮かんでいただろう。

因みに『ネゴシエーター』は鞄の中にしまってあり、振り向くと同時に撥ね飛ばされると言うド○フ的不幸な市民が出ることは無い。

シャーリー「そう、初めての御客さんにはフルーツをサービスしちゃうわ、その代わりこれからもうちの店をご・ひ・い・き・に。」
そう言って胸の谷間からリンゴのような果実とバナナのような果実を手渡してくる。

そんな時、亭拉の足をバシバシと激しく叩く者が居た。

亭拉が足下に目をやるとそこにはハーピーの子供?が居た。

亭拉の腰くらいの身長で頭から一枚の真っ赤な羽をアホ毛のように揺らし、ハーピーにしては少し小振りな真っ白な翼と身長の割りにプルンと自己主張する胸。
極めつけは蜥蜴のような尻尾…

尻尾?

???「も〜、探しましたよテイラさん!」
自分に気づいた亭拉に対して両手(翼?)を腰に当て、胸をそらせ頬を膨らませる白い鳥の魔物は不機嫌そうに蜥蜴のような尻尾をペチンペチンと地面に叩きつける。

???「こ れ で す !これ!」
肩から提げた鞄から紙の束を亭拉に突き付ける。

新聞?

???「昨日は反魔物区に居たでしょう?私頑張って反魔物区のゲート前まで行って午前中ずっと待ってたんですからね!」
ツンとそっぽを向き新聞をブンブンと振り回す。

テイラ「ああ、君は『週刊 魔物娘』の配達員か。」
どうやら昨日、教会に居た頃にルーンプレートが反応していたようだがゴタゴタしていたので全く気付かなかったようだ。

???「そうです!私は『週刊 魔物娘』編集部『クレバネット支部』配達係のコカトリス『タータン・チェック』です!」
そう言うとタータンはどこからか「ドヤァ!」と言う声が聞こえてきそうな表情で新聞を突き出し、ピョンピョンはねる。
跳ねる度に不釣り合いな胸がたゆんたゆんと震え、少々きつめのチューブトップからこぼれ落ちそうになっている。

テイラ「そいつはすまなかった、随分怖い思いをさせちまったな。」
こんな小さな子供が一人で反魔物区に近づくのは相当勇気が必要だったんだろうと思った亭拉は心底すまなさそうに新聞を受けとる。

タータン「そーですよ、膝がガクガク震えて家に帰るまで泣きそうだったんですから!まぁ、その分ダーリンにタップリ慰めてもらいましたけどぉ♥///」
前言撤回、子供じゃ無かった。
しかも所帯持ちだった。
両手で頬を押さえ身体をぐねんぐねんさせ、それに合わせて尻尾も奇妙にうねり出す。

テイラ「ソレハヨカッタデスネー(棒)お詫びと言っちゃ何だがこれをどうぞ、貰い物なんだがな。」
少々ゲンナリしつつも先程果物屋から貰った謎の果実をあげることにした。

タータン「え…これって『虜の果実』じゃないですかぁ〜♥良いんですかぁ〜♥先月産まれた赤ちゃんの養育費が大変で全然贅沢出来なかったんですよぉ〜♥これで今夜はダーリンとハッスルナイトフィーバーですぅ〜♥」
更に子持ちだったようだ、道理でたゆんたゆんなわけだ。
両手で『虜の果実』を抱き締めてピョンピョン跳ねて喜び始めるタータンを見て「魔物娘の精神攻撃を受けてるんだが俺はもうダメかもしれない」と、頭を抱える亭拉であった。
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この日、虜の果実を食べたタータンは『ギルダブリルの毒』に当てられ限界まで感度が上昇した挙げ句『虜の果実』のフェロモンで発情したダーリンにに襲われると言う熱い夜を過ごし見事第二子を授かった事を亭拉は知る由もなかった。

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タータン「あ、そうだった。」
今夜のプレイ内容で頭が一杯だったタータンが何かを思い出したように胸の谷間に手(翼?)を突っ込むと、一枚の封筒を取り出した。
この町の魔物娘には胸の間に物をしまうのが流行っているのだろうか?

タータン「テイラさんに御手紙を預かっていたのをすっかり忘れていました、差出人はリザードマンさんだそうです。」
母乳でしっとりと濡れた封筒を若干引きながら受けとると、指先で摘まむように中身を取り出す。

『ギルドにて待つ
スエード』
そう言えば合流場所を決めてなかったな、と思い急ぎギルドへと向かった。


……
………

シルク「ちゅぶ……じゅるっ…んっ…じゅぽっ…じゅるじゅるっ」




果物屋で貰ったバナナのような果実の皮を剥き、ラミア特有の蛇のような長い舌を絡ませ果肉をしゃぶる。

テイラ「さっきからなにやってんだ?行儀が悪いぞ?」
果物屋からずっと果実をしゃぶり続けるシルクを怪訝な顔をしつつたしなめる。

シルク「んっ…果物屋の売り子さんから教えて貰ったんです、『ねぶりの果実』はこうするのが正しい食べ方なんだそうですよ。」
ほんのり頬を染めて惚けたように答えるシルクに一瞬ドキリとする。
気のせいか周囲の男達の視線もどこかそわそわしているようだ。

シルク「うぐっ…ぷっ……プハァッああっ!」
何度も舌でねぶられ、パンパンに膨らんだ『ねぶりの果実』の先から突然白くベタつく果汁が飛び出し口内に収まりきらなかった果汁がシルクの口からこぼれ頬や胸元に滴り落ちる。

暫し呆然とその光景を見ていたシルクだが徐に胸元に付いた果汁を指で掬いチュルッと啜る。
何故だか全く解らないが、周囲の男達の姿勢が若干前屈みになっている気がするが恐らく気のせいだろう。

テイラ「あ〜あ、全く言わんこっちゃない…」
呆れて目を細め、シルクの頬に付いた果汁を指で掬い舐め取る。

テイラ「甘っ!」
余りの甘ったるさに思わず声をあげる。

その後も果肉に残った果汁を舐め取ったり吸い出したりするシルクは何処か妖艶で今まで見たことも無い色気を醸し出していたが、シルクを背負っている亭拉の視界には入らず全然気付いては居なかった。


……
………

クレバネット 中央区『冒険者ギルド』

図鑑世界のある程度大きな町には必ずと言って良いほど有る『冒険者ギルド』だが、ここ『クレバネット』の冒険者ギルドは少々変わった運営方法を取っている。

1 ギルドカウンターが親魔物者用と反魔物者用に別れている。
2誰がどの様な以来を受けたかを他の冒険者は知ることが出来ない。

1は同じカウンターに親魔物者(魔物娘を含む)と反魔物者を一緒に並ばせた時に生じる無駄な争いを防ぐ為。
2はクエストで一人になった所を襲われない(性的な物を含む)為である。

そのギルド内の親魔物者用休憩所でテーブルに剣を立て掛け顔の前で指を組んだスエードが、神妙な顔で座っていることに気付く。

テイラ「待たせて悪かったな、それに待ち合わせ場所も決めてなかったし気を使わせちまって…」
スエードに声を掛けつつ向かいの席に座る。
椅子には背もたれがあるのでシルクは亭拉から降り隣の席に座る。

スエード「ああ、その事は気にしなくても良い。」
亭拉が席に着いた後も表情を変えずに話を続ける。

スエード「教会の方はどうだった、『聖騎士』として認められたか?」
テイラ「いや直ぐには認められなかった、答えが出るまで暫く時間がかかるそうだ。」
スエードの問いにヤレヤレといった表情で答える。

スエード「そうか、なら丁度良かった…」
亭拉の答えを聞いて意を決したように言葉を続ける。

スエード「今日から私はお前達と別れ、一人修行の旅に戻ろうと思う。」
それを聞いた亭拉達はまるで時間が止まったかのように固まってしまう。

シルク「あの、私達が何かお気に障るような事でも…」
スエード「いやそうじゃない、二人との旅は楽しかった。」
そう言うと今までの旅を思い出したのか何処か遠い目をしている。

テイラ「何か目的が出来たのか?」
スエード「目的ができたと言うより思い出したといった方が正しいな。」
そう言うと一度チラリと自分の大剣を見てから言葉を続ける。

スエード「私は本来愛する人を倒すために修行の旅をしていた、強敵と出会い己の技を磨くためにな。」
話を続けるスエードの表情は微笑んでいるようで何か強い決意を感じさせる物だった。

シルク「それなら私達と一緒でも…」
身を乗りだし再度引き留めようとするシルクを亭拉は片手で遮りスエードに話を続けるよううながす。

スエード「確かにそれでも強敵と闘う事はできるだろう、私が一騎討ちを申し込めばテイラも手を出さずにいてくれるだろう。」
そこまで言うと一度言葉を切る。

スエード「だがいざ私が危機に陥ればどんなに私が止めてもテイラは私を助けるために割って入ってくる、コイツはそう言う奴だ。」
自らの未熟さを思い浮かべ自嘲気味に笑う。

スエード「私が倒すべき相手には命も賭けずに獲られる強さでは到底届かない…だから私はお前達と別れ、改めて修行の旅を始めようと思う。」
テイラ「意志は固いようだな。」
そう言うと亭拉は鞄の中に手を突っ込み数本の色糸を取り出すと手早く20センチくらいの平たい組紐を編み上げる。

テイラ「左手出しな。」
それを剣を振るうときに邪魔になら無いようにスエードの左手首にしっかりと結び付ける。

テイラ「ミサンガって言ってな、ずっと身に付けて努力していると願いが叶った時に切れるんだそうだ。」
早口でそう説明するとそそくさと色糸を片付ける。

ミサンガを見つめキョトンとするスエードと興味深そうに身を乗り出している。

二人の瞳の先には緑と白、その間を赤の糸が絡み合うミサンガが揺れている。

まるでリザードマンの愛する人への想いのように。

テイラ「行ってらっしゃい。」
スエード「行ってきます。」
13/03/12 19:38更新 / 慈恩堂
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■作者メッセージ
どうも慈恩堂です。
皆様お忘れかもしれませんがスエードは教会の『カーボン・ケブラー』と結ばれるために修行の旅をしていました。
しかし出会った敵や困難は大抵亭拉が蹴散らしてしまうので全然活躍してませんでしたね。
実は『カンバス』でも討伐系クエストを受けていたのですがSS内では全く書かれてません。
とある事情で亭拉の『聖騎士登録』は暫くかかるのでスエードとはここでお別れになります。
何だかんだで予定よりも長い出演だったのでまた登場させたいキャラでも有ります。
私のSSに時間を割いていただき誠に有り難う御座います。
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