連載小説
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白熱!!ロータリーバトル!!
-とあるサバト教会-




男「また…、走りに行くのか?」

1人の男が、出口へ向かう山羊娘を呼び止める

バフォメット「……」
男「やっぱりそうか…。なぜそこまで危険を侵してまで走りに行くんだ?」
バフォメット「…」
男「なあ…?」
バフォメット「兄上よ…。今は……、その問いには答えられん…」
男「ならなぜ――」
バフォメット「来週、わしは…最後の公道バトルをする」
男「…!」
バフォメット「これで最後じゃ、最後なんじゃ…。だから…許せ、兄上…」
男「死んだら…承知しないからな!!」


バフォメットは静かに出口を出て行った…―――――




-八方ヶ原-




バフォメット(いつからだったかのぅ…)

ヴァン!!ヴァァァァァァアアアア!!

バフォメット(走る楽しみを忘れてしまったのは…)

ヴァンッ!!ヴァンッ!!

バフォメット(昔のわしであれば…、あの問いにも簡単に答えられたはずじゃ…)

ギュギュ!ギュギュギュ!!

バフォメット(昔は…、エンジンを掛けて、ハンドルを握るだけでもワクワクしたというのにのぉ…)

ヴァァァァァアアアア!!

バフォメット(なのに今では…、走り出しても、事務的に同じ走りをグルグル繰り返すだけ…)

ヴァァァァアアンッ!!ヴァァァァァァァァァアアアア!!

バフォメット(自分でもうんざりしてるのじゃ…、いつまでこんな事続ける気なのじゃ…と)

ヴァンッ!ヴァァアア!!

バフォメット(走るのをやめてしまえば…ラクなのかもしれん…)

キュキュッ!!ヴァァァアアン!!

バフォメット(じゃが…、今まで走り続けてきたこの時間と経験、そしてあの時の気持ち…、簡単にやめてしまえば、そのすべてを無かった事にしてしまう…、そう簡単には捨てられんのじゃよ…)

ヴァァァァアアアア!!

バフォメット(だから…、わしはキッカケが欲しいのじゃ…)

ギャギャ!ギュアア!!

バフォメット(最後の最後で区切りとなる何かを作りたい)

ヴァン!ヴァァァァァァアアアア!!

バフォメット(だからわしは…――)

ヴァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!!

バフォメット「走るのじゃ…!」


ヴァンッ!ヴァァァァァァァァ……――――――――――




-翌日-

-神奈川 チューニングショップ「Silent Sport」-




瞬「なぁ?4ローターって、どんな感じなんだ?」

瞬は、次の対戦に控える為
FDのセッティングに来ていた
ガレージには、白いFDが停められている

シエラ「どんな感じって…?」
瞬「そもそもどんな風に速いんだ?」
シエラ「…多分…、レスポンスは…、そこらのレーサーレプリカのバイクに引けをとらない位に…、すごいと思う…」
瞬「な!?」
シエラ「でも…、そもそもそんなバカみたいなパワーの車…、ましてや何十年も前のRX-3で…、峠なんかでまともに扱えるようなモノじゃない…」
瞬「まあ…、普通に考えたらそうだよな」
シエラ「もしレーシング用のタイヤを履いたとしても…、峠みたいなギャップの多いところでは…、ブンブン振り回されると思う…」
瞬「それを乗りこなすヤツだとなると…、ヤバイな」
シエラ「かなりの強敵になる…、気をつけて…!」
瞬「ああ、ありがとう」




-一週間後-

-栃木県 八方ヶ原-




夜、対戦者の二人が向き合っていた

瞬「斉藤瞬です。よろしくお願いします」
バフォメット「エリシアじゃ、よろしくのぅ」

二人は静かに握手を交わした
その瞬間
瞬は、明らかに何かを感じ取った

瞬(…!?なんだよ…、このプレッシャーみたいな感じ…!こんなヤツ初めてだ…!)
エリシア(ふむ…、瞬か。やはりわしが見込んだ通りじゃな…)

瞬は冷や汗を掻きながらも
改めて相手の車を見た

瞬(!?)

瞬は、またしても驚くべきものを眼にしたのだ

瞬「…ドラッグスリッグですか」
エリシア「よくわかったのぅ。そうじゃ、あれはドラッグ用のスリックタイヤじゃ。市販のスポーツタイヤでは、あのじゃじゃ馬は抑えられんのじゃ」
瞬「エンジンもそうですが、よく手に入りましたね」
エリシア「フフ…、これでもいろいろな事に手を出していてのぅ、金だけはあるんじゃよ」
瞬「うらやましい限りですよ」
渉「そろそろ始めてもいいか?」
瞬「そうだな、いいですか?」
エリシア「ふむ、わしのほうもいつでも行けるぞ」
渉「わかりました、では始めましょう」

二台のロータリー車がスタートラインへと並べられる
一台は、従来の13Bにビッグシングルを載せたFD
そしてもう一台は、旧車でありながら
4ロータリーという掟破りのエンジンを載せたS124Aサバンナ
どちらもロータリーでありながら
大きく違う特徴を持っている

渉「それじゃあカウント行きます!!」

5!

ヴァン!!ヴァァァン!!

4!

瞬(すごい音だ…)

ヴォン!!ヴォォォン!!

3!

エリシア(このバトルで…なにかを…)

ヴァァァァァアアン!!

2!

瞬(がんばってくれよ…FD…!)

1!

ヴァァアアアアアア!!

ヴォォォォォオオオオン!!

GO!!!!

ギャアアアアアアアアア!!!!

ギュアアアアアアアアアア!!!!

二台は一斉にスタートの合図とともに走り出した
スタートはやはり
4ロータリーを積んでいるサバンナが有利であった

渉「くっ…、やっぱり加速では敵うはずは無いか…!」
セルフィ「当たり前だよ、あんなのに普通のエンジンが適うはず無い。しかもあのタイヤ…」
渉「ああ…、ドラッグスリッグ。さっき瞬と相手が話してたよ」
セルフィ「あの車、もしあの状態でドラッグレースに出ても絶対に速いよ」
渉「そんな車を峠に持ってくるなんてな…」
セルフィ「正気の沙汰じゃないよ…」


-第四コーナー-


瞬(速ぇ…、バッカじゃねぇの…!?こいつ…!)

瞬はサバンナのあまりの速さに毒づいた

瞬(スタート地点での加速勝負でついた差が…!縮むどころか開いていく!?)

FDは、八方ヶ原の連続したコーナーを
振りっ返しでドリフトしていくのに対し
サバンナは、ただでさえ乱れる挙動を押さえ込み
抑えきれない分をテールスライドで流しながらも
ベタグリップで曲がっていくのだ

瞬(あんなフラフラな状態で、よくあそこまでグリップできるな…!クソッ!俺でさえ結構ふらつくのに…!)
エリシア(フフ…わしはこの峠を何年走ってると思ってるのじゃ…、簡単には勝たせんぞ…)


-スタート地点-


隆文「どんな感じだ?」
渉「どんどん差が開いていってるそうだ…!」
隆文「マジかよ!?まだスタートしたばかりだぞ!?」
渉「それだけ相手が強敵って事だ…!しかも、コーナーでも離されているそうだ…!」
隆文「ウソだろ!?こんなジグザグの峠で…あんなパワーの車がまともに走れているどころか…、瞬のコーナーワークよりも速いなんて…ありえねぇ…!」
渉「こうなってくると、瞬は何らかの形で走り方のアプローチを変えない限り…、差が開いていく一方だろう…」
隆文「…まずは瞬がそれに気づくか、だな」
渉「あいつなら気づくだろう。だが、問題はその先だ」


-第二セクション-


瞬(ヤバイ…!このままじゃホントに相手が視界から消えちまう…!!)

あれから、FDとサバンナとの差はどんどん開いていった
ここまで急速に差が開いたバトルは瞬の経験では一度も無かった
一気に窮地に立たされた瞬は必死に考えていた

瞬(今のままの走り続けてたら、こっから先も差が開く…!ならどうする…!?どう走りを変えりゃあいい!?)
エリシア(ほれほれどうした?もっとガンガン来ぬと追いつけんぞ?)

有り余るパワーをテールスライドに変えて
フラフラとコーナーを抜けていくサバンナ
それを見た瞬は閃いた

瞬(そうだ、パワーは圧倒的に向こうが上だ。ストレートで敵わないのは当然だ…!でも、それだけパワーがあるって事は、コーナーではかなりそのパワーが無駄になってるはずだ…、コーナーではパワーが少ない分こっちの方が有利だ…!なら、向こうと同じように曲がればある程度は拮抗できるかも…!)

瞬は、大きく開いた差に焦りながらも
1つの答えを出した

瞬(仕方ない!あんまりやった事は無いが…イチかバチかだ!こっからはドリフトは捨ててギリギリのグリップで行ってやる!!)

FDは大きく走り方を変え
今まで大ぶり小ぶりに振り回していた走りを
真逆に変えて
タイヤを滑らせないように曲がるベタグリップへと
走りを変えたのだった

瞬(今まで、シングルのドカンと来る挙動にはドリフトのほうがラクにぶん回せてたからな…グリップなんて久しぶりだが…、今までドリフトだった分、タイヤが滑るか滑らないかの境界は体が完全に憶えている…!行ける!!)

瞬が走りを変えたことは正解だった
ドリフトの経験からタイヤのグリップギリギリを使ったグリップは
ただでさえパワーが邪魔になっているサバンナには敵わない
少しずつだが、確実に差は縮んでいく

瞬(よし…!このまま追いつけ!!)

二台はそのままスネークヘアピンへと近づく
まずサバンナが
もの凄い白煙を上げながらドリフトでターンしていく
続いてFDが
リアタイヤをギリギリスライドさせながら曲がっていく
両者のコーナリングを比べても
明らかに瞬の方が
タイヤをスライドさせる技術は上であった
続けて2、3、と連続ヘアピンを曲がっていく二台
差はかなり縮んでいた

バフォメット(ほう…走りを変えおったか…、あれだけあった差が縮んでしまった…。じゃが…まだ追いついただけじゃ!このわしを抜かせるか!?)




走りを変え、大きく開いた差をなんとか縮めた瞬

大きく特徴の違うロータリーバトルは

遂に後半戦へと突入した―――――――







15/02/08 13:38更新 / 稲荷の伴侶
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■作者メッセージ
お久しぶりです、稲荷の伴侶です。

遂に4ロータリーとか言う馬鹿げたエンジン載せた生きた化石とのバトルですw
正直、現実で考えてこんな車を峠で操れる人はいても、速いなんて人はいるんでしょうかね?疑問です(- -;)

というわけで次回もがんばります!

次回、決着!!

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