読切小説
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シングルマザー

 「やっぱり野球部の青山君じゃない?」
「んー、でもちょっといかつ過ぎない?剣道部の横道君の方が……」
 昼下がりの教室。
ざわめきの中で交わされる、あの子とこの子が付き合ってるらしいだとか、あの男子はアリかナシかというような、どこででも交わされる女子達の恋バナ。
それを横目に吉川由美(よしかわ ゆみ)はぼんやりと携帯を弄っている。
「ね、ユミはどう思う?」
「んー……どうかなあ……」
水を向けられても気の無い返事をする由美に友人達は苦笑する。
「ユミっていつもそうだよねー、一番モテそうなのにそういうのに興味ないの?」
「無いって訳じゃないけどお……」
友人が言うように、由美の容姿はかなり男受けのいいものだ。
目鼻立ちがはっきりして気の強そうな美貌に、腰の細さに反してやたらに豊かな胸や尻。
それに続く肉付きのいい太腿からすらりと長い足。
染めずとも少し赤みがかった艶のある髪も、染み一つなくすべすべした肌も、友人からどう手入れしているのかといつも羨ましがられる。
事実言い寄って来る男も相当数いるのだが、由美はどんな相手でもすげなく断っている。
そんな様子から実は女が好きなのだとかの噂が立てられたりしているが、由美にそのケは無い。
「まー、まだいいっしょ、そういうのは」
最初は色々詮索してきた友人達も、恋愛話に関してはいつもそんな調子の由美にはその手の話題は振らなくなった。
ノリが悪いだの、サバサバ気取りだの、裏で色々言われている事も知っているが由美にとってはどうでもいい事だ。
少し退屈で平和な学園生活が乱されない程度の交友関係を持てればそれでいいのだ。







 「ただいまー」
「おっかえりー」
帰宅した由美を台所の母が背中で迎える。
帰って間もないらしく、リビングのソファーの上にスーツが置きっぱなしになっている。
「あーもー、スーツ皺になるから放るなっつってんじゃんもー……」
「あ、ごめんごめん、洗濯機入れといてー」
溜息を吐きつつ洗濯機に放り込む。
どうせアイロン忘れるから干し終わったら後でやっとかなきゃ、と思いながら。
「もうできるよー、久々っしょお袋の味」
フライパンを振りながら言う母の言葉で、卓上に皿を並べ始める。
二人分だ。
「珍しく早かったじゃん」
「今の時期はそんな忙しくないからね、また暫くは作れるから」
「ありがたーい、やっぱ自分だと不味いんだよね」
「練習しな?男捕まえるんだったらやっぱ胃袋からよ?」
「あー、それはそのうちにー」
「んもー、真面目にやる気ないでしょどうせ」
「わかる?」
皿に盛り付け、二人で食卓で向かい合って手を合わせる。
「「いただきます」」







 由美に父親はおらず、デザイナーとして働く母に女手一つで育てられて来た。
小さい頃はその事を少し気にした事もあったが、それによって不自由を感じた事も無い。
それに母と共にその親戚や叔母や伯母も可愛がってくれた。
父の事を聞いた事もあるが、母は曖昧な態度ではぐらかすばかりだった。
娘に言いたくない事もあるのだろう、増して父がいない理由なんて。
離婚かな、と由美は想像し、今ではそれを母に聞かないようにしている。
何より、父親なんていなくても由美は十分に幸せだった。
母は夫がいない事を嘆いたり寂しがったりする様子も見せず、常に懸命に働き、家事をこなしている。
それでいてちっとも苦労しているように見えないのだ。
本当は大変なはずなのだが生活に疲れた様子はなく、常に若々しい。
というより、若すぎる。
そのスタイルは成熟しきっていながらまるで十代のような新鮮さを失わず、自分の方が嫉妬を覚えるほどだ。
一度冗談で学校の制服を着てもらった時は似合いすぎて由美が真顔になるほどだった。
自分も母のようにかっこよくていつまでも若い大人になりたい、と常々由美は思っているのだった。







 「はー……」
夕食を終え、風呂も済ませた由美は髪を拭きながら自室に戻った。
見かけによらず(と言われるのも不本意だが)真面目な由美は少しの間机に向かって予習復習を済ませると、ベッドに横になってスマホを覗く。
「……」
ちょっとゲームをした後、適当なニュースを流し見していると、もう遅い時間だ。
そろそろと思い、充電してから布団を被る。
「……」
「……」
「……」
もそ、と起き出す。
(もう……今日はやめようって思ってたのに……)
消していたスマホをまた立ち上げ、画面を開く。
ネットを検索する。

 「魔tube」

 通常、子供にスマホを持たせる時にはそれ相応のセキュリティを掛けるのが普通だ。
だが、由美の母はそういう方針なのかあるいは無頓着なのか、検索に制限もかかっていなかった。
そうして由美はいわゆる耳年増になったのだが、最終的に落ち着いたのがこの動画サイトだった。
どこからどうやって辿り着いたのかは覚えていないが、なんとなしにバナーをタップした所で急に変な画面が立ち上がったのだ。

 魔力認識中

 ……

 ……

 ……

 クリア

 welcome to ma tyube!

 最初、ウイルスにでも感染したかと怖くなってすぐに閉じたが、気になって調べたところよく知られているアダルトサイトであるらしい、との情報が掲示板に書かれていた。
何より抗いがたい好奇心と奇妙な引力に惹かれてそのサイトを開いて見ると、そこには奇妙な世界が広がっていた。
情報の通り、そこは素人が性的な動画を投稿するアダルトサイトのようだったが、他にはない特徴があった。
例外もあるが、女性達が奇妙なコスプレをしているのだ。
尻尾を付けていたり角が生えていたりはまだしも、下半身が丸々異形なものまであった。
しかもどれもが作り物に見えない。
そしてもう一つの特徴が、女性が男性を責める動画の割合が大半を占めているという事だ。
世間に溢れているエロ動画というのは大抵女性が色々されるというのが大半だが、ここは逆なのだ。
無論、中には女性が縛られて好き勝手されるものや、カップルがイチャイチャと絡み合う動画も沢山ある。
だが、全体の割合で言うといわゆる「逆レイプ」ものがメインを占めているらしいのだ。
これはなんなんだろう、と思った。
何より、この女性達は何なのか、コスプレのはずだが、コスプレに見えないこの女性達は……。
「えっ!?」
思わず声を上げて、慌てて口を塞いだ。
並んでいる動画達の画像。
ジャンル分けされているものとは別に、ランキング形式でも掲載されているようだ。
その視聴数ランキングの三位の動画。
「兄さんと」というタイトルの動画。
「……MIKA……?」
ファッション雑誌「デビル」の看板モデル。
そのクールな美貌と、魔性を感じさせるほどに整ったスタイルで若年層を中心に圧倒的人気を誇るカリスマモデル。
その彼女が、どう見てもその彼女にしか見えない少女が、動画の画像に映っている。
「そっくりさん」というジャンルがあるのは知っている。
有名な女優などに顔が似ている、というのを売りにしている女優は確かにいる。
それに違いない、きっとそうだ……。
そう思い、恐る恐るタップする。

 ガサ ゴソ と、カメラ位置を調節しているらしい音と共に映像が映る。
調節している人物が間近に映る。
MIKAだ、「似ている人」ではなく、そのクールに整った顔立ちは疑いようもなくMIKAその人だ。
そのMIKAは少し、カメラに笑いかけると調整を終えたカメラから離れる。
薄暗い部屋が映る。
ベッドがあり、その上に一人のガウンを羽織った男性が座っている。
引き締まった体に整った顔立ちをしたその男性は、カメラから離れて近付いてくるMIKAに不安げな表情を向けている。
どうやら、その人が男優らしい。
その全国のファンに殺されても文句の言えない男優は、見た事のない人だった。
少なくとも芸能人ではなく、増してAV男優でもない。
だが、何となく見た事がある、いや、誰かに似ている、ような……。
さあ、と由美の顔から血の気が引いた。
つい今、目の前にいた人。
MIKAだ。
少し気弱そうだけど整ったその顔立ちは、MIKAの面影があるのだ。

 「兄さんと」

 動画のタイトルが頭をよぎる。
MIKAのプロフィールに家族構成とかあったっけ?
兄弟がいるって言ってたっけ?
思い出せない。
だけど、いや、空似かもしれない、だけど、タイトルと合わせて考えると……。
混乱する由美の思考をさらに掻き回すように、ばさりと画面の半分が黒色に埋まる。
何事かと思った、が、その黒色がMIKAの背中から出現したものだと気付く。

 「……悪魔……?」

 馬鹿らしいけど、思わずそう呟いた。
そして、馬鹿らしいけど、納得した。
彼女の悪魔のような美貌、当然だ、本当に悪魔だったのだから。
それと同時に露わになるMIKAの裸体。
グラビアアイドルではない彼女の、皆が見たいと思っている裸。
想像を遥かに超えて美しく、淫蕩な彼女の裸体。

 「み、みか、やっぱりこんなの」

 男優が何かを言おうとする。
多分、MIKAを制止しようとするような言葉。
だがその言葉が最後まで発される事はなかった。

 「むぐっ、ん、んむ」
 「んー、んっんん……」

 「んあぁ、ぉあ」
 
 ギシッ

 「ふふ……兄さ……ふふふ……」
 「だっ……!ぁっ……!」

 ギシッ ギシッ
 
 「兄さん……!兄さん……!」

 ギシッ ギシッ ギシッ 

 「あぅぉ……!あぁ……!」

 ギシッ ギシッ ギシッ ギッ ギッ ギッ

 「にぃに」

 ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ

 「にぃに♡ にぃに♡ にぃに♡ にぃに♡ にぃに♡ にぃに♡」

 ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ

 ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ ギッ







「……無い、ね、やっぱり……」
そのサイト、「魔tube」を閲覧しながら、由美は呟く。
いや、実はそのサイトではなく、その中にただ一つの動画を探し続けているのだ。
一定期間、由美はそのサイトに夢中になった。
有名モデルの少女が、恐らくはその兄弟であろう男性を襲うその動画は由美の理性を滅茶苦茶にした。
流出すればスキャンダルどころではないそんな動画が転がっているこのサイトに対する謎は深まるばかりだったが、もはやそれはどうでもよかった。
その他の動画達。
いずれもモデルやグラビアのように美しい異形の女性達に男達が貪られる動画に、今まで淡泊だった由美は猿のように欲情した。
だが、それもほんの数週で終わった。
見付けてしまったのだ。
自分の中の至高の動画を。
それは毎日多数の投稿がある中でたまたま見つけた動画。

 「削除覚悟」

 というタイトルの動画。
投稿時間はほんの数時間前でありながら、爆発的に視聴数を伸ばしている。
それでいて大量の高評価と同じくらいに低評価も付いている。
画像を見る限り、やけにブレた背景らしきものが映っているだけで、どんな内容なのかはわからない。
そこそこの長さのようだ。
期待というより、これは何なのだろうという好奇心でそれをタップした。


 「んんんんーーーー」

 「押さえて!そっち……(ピー)っちゃん……!」


 ぎょっとした。
ブレまくる不安定な映像に、荒い画質。
犯罪系の番組でよく使用される変声処理を施された奇妙に甲高い女性の声、修正の入った言葉。
何より、基本的に無修正であるこのサイトでは見かけないモザイク処理。
それが、女性の顔に施されている。
どうやら、狭い車の中で一人の少年を三人の豊満な肉体をした少女がレイプしようとしているらしい。
それも、本気で。
逆レイプ系が多いサイトだったが、やはり男性側もまんざらでないような傾向が多かった。
だが、これはどう見てもガチだ。
そして……

 「記念撮影だよぉ、ねえ(ピー)」

 「んぐぅ……!」

 少女達の顔にはモザイクが入っているが、その少年の顔は無修正だった。
口に詰め物をされて、涙目のその少年を見た瞬間、由美の身体に電流が走った。
「はっ……」
ひゅぅ、と肺がせり上がり、ぎゅん、と子宮が降りて、ぐじゅり、と濃い愛液が分泌されるのを感じた。
こんな事があるだろうか。
こんな事って、あっていいんだろうか。
由美はその動画の中でレイプされる少年に、破滅的な欲情を覚えた。
これを、一目惚れ、なんて呼んでいいのだろうか。
その一目惚れした少年が、必死の抵抗も虚しく、少女達に滅茶苦茶に犯されて行くのだった。


 「ホラ、すっご……我慢してたもんね?(ピー)すぐに食べたげるね?」

 「あは、暴れて?抵抗して?興奮しちゃう……」

 「んんぐ!」

 ぐぢゅ、みぢゅくちゃっ

 「お゛ぉぅっ」

 その少年の顔からは不釣り合いな程に大きな陰茎が、少女の身体に呑み込まれる瞬間に響く淫猥な水音。
それを聞いた瞬間に、まるで脊髄反射のように由美の腰がぐんっと前に突き出た。
「へぁ、あ?」
そんな事は生まれて初めてだった。
自分の統制を離れた腰は、2、3往復 へこ♡ へこ♡ と恥ずかしい前後運動をした。
訳が分からない、それでもその動画から目を離す事ができない、下着がぐちゃぐちゃできもちわるい。


 ぐちゅ、ぴちゅ、ぐちゅ、ぐちゃ、ぐっちゃ、ぐっちゃ、ぐっちゃぐっちゃ

 動画は腹立たしいくらいにブレて定まらない。
お陰でよく見えない。
よほど少女が濡れているのか、水音ばかりが鮮明に鳴り響く。
由美はその不鮮明な動画を食い入るように見ながらくねくねとまた腰を振る。

 ゴトン

 という音と共に急に視点が天井を向く。
スマホで撮影していたらしく、撮影者がそれを落としたのだ。
「あぁっ」
由美思わず哀願じみた声を漏らす。
それと同時に腹立たしさすら感じた。
撮ってるのが誰だか知らないがちゃんと撮れこのやろう、と。
だが、情事そのものが視界から消えても、音声が届く。
それと同時に、座席のシートの揺れが伝わり、映っている天上が揺れる。
あたかも犯されている少年の視点のように。

 
 「うん!うん゛!おぉぉぉぉぉ……お!おぅ!ほっほ……」

 たんっ たんっ たんっ だちゅっ だちゅっ だちゅっ だちゅっ だちゅっ

 「ほ!ほ!ほぉ!ほぉ!おぅ!おぅ!おぅぅん!おんっ!おっ!おっ!」

 ぎっし ぎっし ぎっし ぎっし ぎっし ぎっし

 視界に入らない分、想像が刺激される。
水音とシートの軋む音、そして変声された女の奇妙な嬌声、そして、蹂躙される少年の呻き声。

 「あっ!あ゛っ!出る!?出るね?ね?ほら!出して!」

 切羽詰まった少女の声と同時に撮影者がスマホの事を思い出したのか、またぐい、と視点が変わる。
「ふぐっ……」
興奮の余り、由美の息が詰まる。
画面に映ったのは、まさに男性器と女性器が繋がっている部分の大写しだった。
無毛の女性器が激しく上下し、わななく男性器がそれに上から下までしゃぶられる様。
と、女性器が深く咥え込んだ所で上下運動を止め、ぐりぐりと左右に腰を揺らし始めた。
膣の隅々を使って陰茎を味わい尽くすような動き。
「……っっ……っっ……」
いつしか仰向けになっていた由美は蛙のようにぱっくりと股を開き、動画に合わせてぐりぐりと中空に迎え腰を振る。
なおかつ、狂いそうに疼いているそこを弄る事も出来ず、両手はスマホを固定し、視線は映像に食い入る。

 びゅぐんっ

 射精した。

 中に。

 目視できずとも、その陰茎が震えながら子宮に白くて熱いのを吐き掛け、膣がそれをうねりながら歓迎する様子がまざまざと見える。
それを見ていた由美の腰も一際卑猥にへこへこと上下する。
情けないけど、恥ずかしいけど、空腰が止まらない、目は視聴を止められない。
誰かの手が画面外から伸びて、ごり♡、と腹の上から陰茎をしごいて射精を延長させるのを見た瞬間、由美も達した。

 ぷしっ
 
何と、自分の下半身はおろか体のどこにも指一本触れる事すらなく、由美は初めての潮吹きを経験したのだった。







 それから暫くの間は大変だった。
普通に暮らしていても、不意にその動画が脳内にフラッシュバックで蘇り、所構わず体が発情状態に陥るという事態が発生した。
由美はその度に必死で我慢したり、慌ててトイレに駆け込んで一人で処理したり、予備の下着を何枚も持ち歩かなければならなかった。
最近は不意に起こる事は無くなったが、毎夜のようにその動画で自慰に耽らないと寝付けなくなってしまっていた。
その「削除覚悟」はタイトルの通り間もなく削除されて消えてしまったが、由美はしっかりそれを保存しておいたのだった。
以降、他の動画……いや、他の動画の男性では興奮できなくなってしまった。
この動画の続きがいつか投稿されないか。
もしくはその犯されている少年が出ている動画がどこかに無いか、と探し回りながら保存された動画で欲情を発散する日々だ。
つまり、由美は男性に興味が無いから誰とも付き合わないのではない。
性欲が無いという訳でもない。
極めて慎ましい言い方で表現するなら、好きな人がいるから他とは付き合えないのだ。







 「あんたさ、そろそろ好きな子とか出来たりしないの?」
ある休日の昼下がり。
家でのんびりしていると、事情を知らない母はそんな事を聞いてきたりする。
これは定期的に聞かれる質問だ。
まあ、親としては気になる所なのかもしれない。
「んー、まあ……」
いつもなら「いない」で通している。
だが、この日はほんの出来心でこう答えた。
「好きな人は動画の中にいるよ」
割と、当たり障りのない返答と言える。
映画俳優かもしれないし、好きな動画の配信者かもしれない。
結局のところ「いない」と変わらない答え。
しかし、実際には本心からの答え。
まさかそれが違法なエロ動画の中の人だなんて想像できるだろうか。
「……」
ところが、母は予想に反して少しの間考え込むように沈黙した。
聞き返された時の適当な返答を考えていた由美は、その母の反応を訝しく思った。

 「ね、アンタそれって違法な動画?」

 完全に不意打ちだった。
由美はギクン、と体の動きを止めた。
それはまずい反応だった。
本来ならば「はあ?」と、意味が分からないというような反応をすべきだった。
自分の反応はその通りですと言わんばかりだ。
「なんっ……な、な、なぁーにを……」
続けた言葉も最悪だった。
あからさまに動揺を隠せていない。
「それは、一人の男の子が三人の女の子に色々されるやつ?」
「!!!!??????」
何で? どうして? 何で? どうして? 何で?
なんで知られてるの?
ヤバい、怒られる?
でも何で?どうしてそんな事お母さんにわかるの?
わかるはず無いじゃない、私が「あの」動画を見てるなんて、なおかつその中の男の子に……。
と、ぐるぐる考えるうちに母は大きく溜息をついた。
そして小さく。
「やっぱりこうなっちゃうかぁ……」
と、呟いた。
何のことだろう、さっきから何一つ分からない。
不意に、母は真面目な顔になった。
「いーい?怒らないから正直に言いなさい、それは動画配信サイトだか何だかで見たエッチな動画ね?」
「…………はい……」
どうしてこんな事に、と思いながらもはや言い訳も思いつかず、由美は正直に答える。
「その動画の中の男の子の事を、好きになっちゃったのね?」
「……はい……」
母はどうやら本当に怒っている訳ではないらしい、ただ、事実確認のように質問を投げかける。
「その子の事って諦められない?」
諦める、とはどういう事なのか。
諦めるも何も、出会う事すら出来ない相手だというのに。
いや、もしかして、ひょっとして……。
「知ってるの?あの人……」
そんな訳はないだろう、と思いながらもそんな言葉が口をついて出た。
言った後何を馬鹿な、と後悔した。
「会ったらどうするの?」
どちらに分類されるかというと、知っている、という方に近い答え方をされた。
急激に心拍数が上昇する。
「知ってる?知ってるの!?会えるの!?」
「落ち着きなさい、会ったらどうするのって聞いてるの」
「おっ……お付き合いしたい」
押し倒したい、とは流石に言えなかった。
母はそんな由美を見て「うーん」と唸る。
「お、お母さん、その、あの……」
「落ち着いて聞きなさい、由美、今までの常識がひっくり返るような事を知る事になるわよ」
「え、ええ?」
物騒な事を言われてたじろぐ。
いや、今までの話も十分に意味不明で衝撃なのだが。
「よおく心の準備をして聞きなさい、そしたらその後に、「あの人」に合わせてあげる」
「……!」
由美は瞬時に覚悟を固めた。







 場所は都内のホテルの一室。
かなり高い階層にあるその部屋に複数の男女が集まっている。
いや、男女、というより正確には男一人と女達、という方が正しい。
部屋に据え付けてある鏡台の前に二人で座っているのは茶色がかったロングの女性と、同じ髪色をした大学生くらいの女。
二人共長身であり、外人のグラビアタレントばりに張り出した胸と尻が高級そうな衣服を押し上げている。
少し意地悪そうな美貌も似通った二人はどうやら親子だ。
とは言え、親の方はとてもその年齢の娘がいるようには見えない女ざかりという妖艶さだ。
「こっちの方がいいんじゃない?」
「えー?こっちの方が……」
二人は鏡台の上の化粧品をあれこれと試しあっているらしい。
その部屋の反対の窓側でわいわい騒ぐ女性が二人。
「凄い景色!ね、お母さん!」
「わわ、私ちょっと高いとこダメだから見ないようにしとく……」
高校生ぐらいの少女と、その母。
二人共に髪は金髪であり、先程の二人に比べると少々ラフな格好をしている。
とは言え美貌もスタイルも負けず劣らずであり、特に娘の方は身長が一番低いに関わらず胸のサイズは一番のようだ。
「すー、はー、すー、はー、」
そして、中央に据えられた大きなベッドの上で胸に手を当てているのは一人の少年。
色白で小柄、見た目は高校生程に見えるが……。
「んもー、お父さん緊張しすぎ、娘に会うだけでしょ?」
「そうだよよっしー、いきなりがばーっとは来ないんじゃない?……多分」
茶髪の親子が言う。
「いや、多分がばーっと来ると思うなああたし……」
「ま、そうなって大丈夫なようにこんな場所なんだし……」
金髪の親子が言う。
「お、お、襲われる事前提にしないでよ……!」
二組の親子に涙目で言い返す少年は吉川典明(よしかわ のりあき)。
茶髪の親子は麻里子(まりこ)美紀子(みきこ)
金髪の親子は千沙(ちさ)悠乃(ゆうの)
四人共に姓は「吉川」になる。
数十年前に起きた拉致事件の被害者と、加害者、そして、その間に生まれた子供達だった。







 こちらの世界でも、あちらの世界でも罪となる方法で結ばれた一人の少年と三人の少女。
捜査をかいくぐって少年を万魔殿(パンデモニウム)に拉致して潜伏した三人は、止まった時の中で更なる堕落を重ねた。
その爛れ切った関係は二人の娘とまで婚姻を結ぶに至る。
しかし、三人目の新たな命が宿った時、少年は淫らな妻達に懇願したのだ。
「どうかこの娘は普通の人間のように育てて欲しい、出来れば自分の存在を知らせず、普通の女の子のように……」
それは自然の理を外れてしまった少年の、普通の親でありたいという願いであった。
妻達はそれを受け入れ、三人目の娘を母は現世で生んだ。
そうして現世での暮らしを始めた母娘を五人で助け、三人目の娘は現世での常識の中に生きて来たのだ。
だが、淫らな因果はその娘をも引き寄せる。
いや、娘が引き寄せたのだ。







 「動画を見付けたのも驚きだし、その動画のよっしーに一目惚れするのも驚きだよ」
「どう考えても運命なんだよねえ……」
「だだだだけど、本人を見れば幻滅するかもしれないし……」
うんうんと頷く千沙と悠乃に典明は半泣きで抗議する。
「そもそも、常識的な考えを持ってるんだ、一目惚れした相手が父親だなんて嫌悪感があるはず……」
「やっぱりちょくちょく顔見てたのが良くなかったんじゃない?」
「赤ん坊の頃の記憶をそんなに保持してるはずが……」
「魔物娘にその考えは駄目だって警告したよねえ?」
「む、娘の顔を一目くらい……」
「あ、来たよ」
部屋の呼び鈴が鳴り、瞬時に典明の心拍数が跳ね上がる。
慌てて胸元を整える。
「父親らしい」印象を与える為、極力フォーマルな恰好を選んだつもりだ。
時の止まったパンデモニウムに監禁されていた影響か、あるいはインキュバス化の影響か、典明の容姿はほぼ高校生の時と変わらない。
そのためちょっとスーツに着られている感は否めないのだが……。
「ど、どうぞ……」
声を掛けるとカチャリとノブが回り、敦子が入って来る。
「ほら」
その敦子が声を部屋の外に声を掛けると、おずおずと娘の由美が入って来た。
そして、典明の姿を目にした途端、大きく目を見開き、目の端にじわりと涙が浮かんだ。
「……お父さん……」
その呟くような言葉に後押しされ、典明は深呼吸をして言った。
「はじめまして、由美」
「今更出てきて、父親面をしようとは思わない、聞いたとは思うけれど、うちは家系が特殊でその……」
赤面して、言葉を探す。
「ずっと、事情があって、顔を合わせないようにしていたんだ」
女性達は黙って典明の言葉に耳を傾けている。
「勿論、皆と……娘、と、結婚した事は後悔してない……というか、受け入れたというか……その……」
頭を掻く。
「やっぱり、皆の事愛してるよ、とても歪な形だけど……だけど、その、由美にはそういう環境の外にいて欲しかった」
愛してるよ、の言葉を発した瞬間、皆が一斉にごくりと喉を鳴らしたが、典明は緊張で気付かない。
「お父さんと結ばれるのが当たり前、という価値観から距離を取って、そうしてから会いたかったんだ……これは僕の我儘で」
「お父さん」
割り込むように由美が言った、典明は言葉を切る。
「気持ちは、伝わったよ、私の事考えてそうしてくれてたっていうのも……だから……」
おずおずと、由美が距離を縮める、壊れ物に触ろうとするように、典明に近付いて来る。
典明も足を進めた、娘に向かって。
「寂しい思いさせてごめん……」
そうして由美を抱き締めた。
「ん……」
由美は感極まったように、典明を抱き返す。
典明の胸に感動が起こる、自分なんかに何が出来る訳でもないかもしれない、だけど、これから父として……。
「ぁ、やっぱり無理」
「え?」
唐突に、耳元で由美が呟いた。
と、同時に体がぐうん、と浮き上がる。
「はぇ!?」
何が何だかわからないまま、典明は背後にあったベッドに放り出された。
体勢を立て直す間もなく、甘い匂いの肉体が覆いかぶさって動きを封じて来る。
「はっ……はっ……はっ……はっ……」
先程まで愛しい娘の顔をしていた少女は、もう既に雌の顔へと変貌していた。
その頭頂部にぴこぴこと揺れる耳、恐らく背後には尻尾が揺れているのだろう。
「わかってる……!わかってるの……お父さんが、私に望んでる関係……!普通の……!フツーの親子関係……!だけど……!」
耐えられないというように自分の身体を抱き締めると、ミリミリと衣服から音が鳴り始める。
「出会った瞬間から!子宮降りちゃってるのぉ!」
ビリリリ!と音を立てて由美が自分の服を破り捨てる。
どぷりん♪とはち切れんばかりに発育した若々しい肉が弾け出ると同時に、その谷間に溜まっていたであろう雌の匂いがむわぁ♪と周囲に広がる。
何度も何度も何度も擦り込まれ、典明の身体に沁みついている、発情した雌の匂い。
典明は泣き笑いの表情になり、両手を広げた。
「……おいで……」
「〜〜〜〜っっっ♡♡♡♡っっっ」







 「まあ、こうなるよね」
「知ってた」
四人は激しく軋むベッドを眺めながら納得顔をしている。
「結局パパをしゃぶるおまんこが一人増えるだけっていうね……」
「でもさあ、どうしよっかこれ」
「だよね」
「本当に責任取るつもりであんな事言ったのかなあ」
「知ったこっちゃないよね、下りてる子宮一つじゃないんだよねえ」







 ずっちゅ!ずっちゅ!ずっちゅ!ずっちゅ!ずっちゅ!
ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!ぱんっ!
由美は今までずっと憧れていた動画の中の行為を実行していた。
空腰を振ってオナニーしていた成果を存分に、世界一咥えたかった陰茎に存分に披露する。
「おぅ!お!お!お!お!おぉ!え、えろい、お父さん、エロ過ぎ、るぅ♪むちゅぅ……!」
舌を引き抜かんばかりに舐り回し、ちゅぱ♪と解放した後に興奮で早口にまくし立てる。
「お父さん可哀想♡可哀想すぎてエロい♡立派なパパになりたいのに結局娘にレイプされるお父さん可哀想♡」
再び舌を吸い上げ、首元に噛み跡を残してまた顔を上げる。
「お父さん、きっとそういう運命なんだ♡どんなに逃げても、どう足掻いても、エッチな女の子にじゅるじゅるしゃぶられる星の元に生まれたんだ♡一生♡永遠に♡エッチなお肉に絡みつかれて、逃げられないんだ♡」
「そういう、コトだねぇー……」
「……!?」
腰を振られる典明の周囲を囲むように、五人の妻達が目を輝かせながらベッドに上がって来る。
そうして、次々に自らの衣服に手をかけはじめる。

「愛してる……だって……♡」
ぶるんっ……♪
「普段言わないような事言っちゃってぇ……♡」
だぷん……♪
「タダで済むと思ってないよねえ……♡」
ぶりんっ……♪
「アタマとろっとろにしたげる……♡」
どぷんっ……♪
「人の言葉喋れなくしてやる……♡」
ぷるんっ……♪

 解き放たれる、全員の淫らに熟した肉体。
徹底的に典明に合わせて仕込まれた媚態から、むわぁ……♪と、ただでさえ濃密だった雌の匂いが更に濃縮される。
「ん、じゅる!ふぶ、んんんぅーーー……!」
しゃぶりつかれた口から、絶望とも歓喜ともつかない声を漏らし。
典明は新しい妻の初々しい子宮に、またたっぷりと濃厚な白濁を捧げた。




21/12/27 20:22更新 / 雑兵

■作者メッセージ
このハーレムは当然、現代への進出を管理する機構には認識されている。
しかし結局当人達が幸せであれば追求すまいと罪状については曖昧にされた状態である。
こういった魔物娘達の緩さによって結局現代での逆レイプからの強制婚姻の被害件数は一向に減少しないのである。やったぜ

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33