読切小説
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ホットドッグちゃん
ここ最近、滅茶苦茶ウザイやつが寝床に遊びに来る
くたびれた装備から冒険者だとは思うのだが、麓の村に居着いて毎日のようにここまでやってくる
オレのことを「ホットドッグちゃん」なんて妙なあだ名で呼びやがる
来るたび美味い飯を食わせてくれるので追い返したりはしないが、いつもニコニコしていてビビらせてやろうと凄んでも飄々とした態度のまま適当に流してくる
そんな態度の奴を襲うのもなんか癪だからどうしたものかとイライラしているうちに帰ってしまうのでなおさら負けた気がする


彼女のことかい?
まぁまぁボクにまかせておいてよ、話してみるとそこまで悪い子じゃないみたいだしさ
あの感じだと空腹を満たせてるならわざわざ村まで降りてこようって気はないみたいだよ
危険……と言われればまぁそうだけども話が通じる分野生動物よりは全然良いし、悪意みたいなものは感じないんだよね
要はこの村からまた食料を持ってかれたりしなければ良いんだよね、大丈夫大丈夫


あの野郎は今日も来た
もらえる飯は美味いが「ホットドッグちゃんがホットドッグ」を食べてるなんてぬかしやがったのでひっぱたいてやろうと思ったけども上手いこと避けられまくった
なんか麓の村のことを聞かれたが、飯がもらえるなら面倒だしわざわざそこまで降りる必要はない
村の奴らもオレのことをビビリまくるのであまり良い気はしないし


ホットドッグちゃんは……あ、あの狼の魔物の事ね
熱い体のワンちゃんだからホットドッグちゃんだよ
聞いたところやっぱり食料がもらえるならわざわざここまでくる気はないみたいだよ
うーん……追い出すのは多分難しいと思うけどお互いの落とし所さえ見つければ逆に上手い具合に共存はできると思うかな
ここらの獣も彼女の方が格上だと思って避けてるみたいだから家畜を守ってもらったりしてもらえるかもね
偏屈な年寄りも敬意を持って接してれば軟化することはあるし、魔物だって同じだと思うんだ
キミ達が必要以上の悪意や敵意を持って接しなければ彼女も応えてくれると思うよ
現にボクはこうしてピンピンしてるわけだし
……変かな?呼び名については可愛い方が仲良くできそうだと思うんだけど


今日もまた麓の村について聞かれた
なんとも思ってないが、あいつからもらえる飯が美味いからそれを条件に守ってやるのは別に構わない
ぶんどって雑に食べるより料理してもらった方が美味いに決まってる
……罵倒されながら腹を満たすより、感謝されながら腹を満たすほうが美味いだろ
別にここの縄張りに愛着があるわけじゃないし、屋根のあるところで寝れる方が良いに決まってる
ただそれでもオレはヘルハウンドだ、村の人間に「飼われる」わけじゃない
「飯の代金に守ってやる」ってことにするんだからな


えっ!?勇者が彼女の討伐に行ったって……!
いい具合にまとまりつつあったのに……魔物と聞いて飛んでいったのか……
いくら彼女が強い魔物であっても勇者相手なら無事でいられないかもしれないし
二人とも無事でも彼女と村の間の亀裂がまた深くなってしまう
こうしちゃいられない……!




あ?勇者……?別にオレは何も悪いことはしてねぇよ
なんだったら村の奴らを守ってやるって話を最近してるぐらいだから文句言われる筋合いはねぇぞ
グルル……やるってんだったら構わないが……
村の奴らからオレの話を聞いた……?
…………まさか初めからアイツの話が嘘っぱちだったのか?
いちいちピーピーうるせぇアイツ以上に腹の立つ奴だな!


……間に合ってはないか、けどやりあってないならまだ大丈夫!
そこの勇者君、ホットドッグちゃん、ちょっと待つんだ!
まず勇者君、キミは勘違いしているがそこの彼女は悪い魔物じゃないんだ
良いかと聞かれると微妙かもしれないが、近々村の警護をしてもらうって話を取り付けてる所だから討伐される必要はないんだ!
ホットドッグちゃんも、勇者君が早とちりして飛び出しただけで別に村の人達がキミを排除しようってワケじゃないよ
……え?ボクが魔王の尖兵?
いやいや、そんなワケないよ、ボクはただ可愛い女の子がお腹を空かしてたのと村の人達が困ってたからなんとかしてあげようと思っただけでただの冒険者だから……
いやだから……キミは早とちりと勘違いが激しいねぇ……


オイテメェ!そいつに手を出すなら許さねぇぞ!
そいつは…………オレのオスだ!
妙な呼び方してくるしヘラヘラしてるしムカつく事のが多いけどオレの為に色々してくれたんだ
そんな奴をモノにする前に傷物にするなんてのは勇者だろうがなんだろうが許さねぇ!
グルル……うるせぇ!こいつがなんとかなったらお前を犯してやるからな!




結局その直後に村長がやってきてなんとか仲介してくれたんだ
勇者君が剣をしまってくれた直後に言葉通り彼女に組み伏せられちゃったけどね
それから3日ぐらいホットドッグちゃんに絞られたあとに村に戻って村長と彼女と話し合いをして……
約束通り彼女は家畜を守り、村は彼女に対価を支払う事になった
当初と違うのは彼女への対価は食料だけじゃなくなったって事だね
まず最初の報酬にボクを要求して、次に空き家を一つもらって、次に生活に必要なものをと
まぁボクは冒険者だったから村の財産ではなかったけどね……
勇者君は誤解が解けてから謝罪をしてすぐに去っていったらしい
早とちりと思い込みが激しいだけで悪い子ではないんだろうね
そんなこんなあって今は彼女と夫婦生活にしてるよ
ホットドッグちゃん以外の女の子と遊べる機会がなくなっちゃったのはちょっと残念だけども
それよりも彼女のが大事だしそろそろ産まれてくるチビドッグちゃんもきっと可愛いから楽しみだよ


この村の暮らしも悪くない
やっぱり飯は美味いし、自分のオスと交尾するもの気持ちがいい
家畜どもの周りで昼寝してるだけで村人達に感謝されるし、村のガキどもと遊ぶのも楽しい
最初は村とは対等の立場だ!と思ってたが……
なんというか、村長には悪いがオレの群れって感じがする
オレの群れだから守ってやるし世話もしてやる
そろそろ産まれてくるチビも増えればますますこんな気持ちも強くなるだろうか
20/08/16 19:43更新 / 錆鐚鎌足

■作者メッセージ
軟派な冒険者とヘルハウンドさんといったイメージのお話でした
元々ヘルハウンドさんが軽い感じの男から「ホットドッグちゃん」という愛称で呼ばれるのってなんか良いねという思いつきから膨らませてみました

バフォ「男の軟派さが足りない感じはあるの」

そういうタイプの人と関わる機会がないのと自分で摂取する作品でもあまり好きではないタイプなのでインプット不足だなとは思ってます
それもあって登場人物の思考会話のみの軽め、エロなしの作品にしました

サキュ「勇者さんの出番の薄さはどうでしょうか」

元々冒険者君と勇者君の戦闘→冒険者君が傷ついてヘルハウンドさんがブチギレるって流れを書く予定でしたが、今回の描写形式的に戦闘は不向きなのでヘルハウンドさんが冒険者君を気に入っいた事を自覚するためのスパイスになってもらいました
彼には次の村ぐらいで悪いデーモンさんに騙されて変な契約をしてエッチな目にあってもらっています

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