連載小説
[TOP][目次]
4:とある道具店の販売記録 [???]
私はしがない道具屋で御座います。

とある繁華街の、路地裏に位置する、ひっそりとした店舗で御座いまして。

しかしながら有り難いことに、毎日のようにお客様にご来店頂けております。

主に、魔物娘のお客様が多いですが。

どんなものを販売しているか?
百聞は一見にしかず、で御座いますね。



***



カランコロン

おや、いらっしゃいませ。

「こ、こんばんは」

...ふむ。

「あ、あのー...?」

あ、失礼致しました。初めてのお客様で御座いますね。どのような商品をお探しですか?

「私、夢の中でも臆病なのが悩みで...。カレの中に入っても、中々勇気がでなくて...それで...その...。」

なるほど。ナイトメア属といえども、個性は有りますものね。私は、それはそれで奥ゆかしさがあって素敵だと思いますが。

「すっ素敵だなんてそんな!わ、私はほんとに臆病で、意気地無しで...」

そうやって卑下しては駄目ですよ。
私からしてもそのフワっとした愛らしさは、ついつい抱き締めたくなりそうな魅力を孕んでおりますね。

「う、うぅ...」

...そうですね、当店に来店された、ということは、そういうモノをご所望で御座いますよね?

「...は、はいぃ...」プシュウ

では、貴女の勇気をお助けする、"良い香り"の、アロマなど如何でしょう?

「アロマ...ですか?」

はい。このアロマを炊いて枕元に置きながら、愛しのカレの夢に入れば、きっと、勇気が出ること間違いなしですよ。

「...ゆ、勇気出さなきゃ...あの子に取られちゃう...そんなの嫌...これ、買います。」

ありがとうございます。そちらは初回サービスで御座いますので、お代は結構ですよ。条件付きで。

「え...!?...ど、どんな条件、ですか...?」

勇気を出した結果を、聴かせていただく事でございます。如何でしょう

「...わ、わかりました...!ありがとうございます...!」


カランコロン

...ちょっとハイライトさんがお出掛けなさっていましたが、なんとかなるでしょう。




その後、彼女はなんと、愛しのカレと共にご来店下さいました。

そしてお渡ししたアロマが、ただの私のお気に入りのアロマであって、"そういう方面の効能は無い"と明かした際は、

彼女は動揺のあまり後ろの棚を蹴飛ばし、カレはとても嬉しそうな、優しい笑みを浮かべておりました。


***


カランコロン

いらっしゃいませ。お久しぶりでございますね。

「お久しぶりで御座います。」

今日もお掃除用具で御座いますか?

「...はい。実は以前購入した一式が、そろそろダメになりそうでして...。」

...えっ

いや、失礼致しました。当店のお掃除用具、もしや不備など御座いましたか?

「いえ、とても良く汚れを吸着してくださるので、助かっております。」

...これはプライバシーに関わる為、差し支えなければ、で良いのですが。...お二人暮らしですよね?

「え、ええ。何か...?」

...いえ、大丈夫です。それではこちらを。
お代は少し勉強いたしますね。

「ありがとうございます。...フフ...コレデ...ヨゴシテ...オソウジシテ...フフフ...」ユラリ


カランコロン

...あ、ありがとうございました

ハイライトさんがお出掛けなさるのが、この町のトレンド、というやつなのでしょうか...?

というか...え?そんなに短期間で、あの清掃キットが駄目になるほど汚れる...?そんな馬鹿な...サキュバス様御用達の、埃だろうがジュースだろうが、それこそ体液や粗相ですら何度でも綺麗にする『魔界清掃キット(業務用)』が...?

...あの方がとてつもなく綺麗好きなキキーモラさんなのだと、思っておきましょう...


***


カランコロン

いらっしゃいませ。...如何なさいました?

「いえ!この町がちょっと苦手なだけですー!あはは」

oh...なんだか初めからハイライトさんが留守がちですが...

さて、どのような商品をお探しですか?

「頑張る旦那さんに、ちょっとしたプレゼントを、と思いまして!」

それは良いことですね。

「たまには違う刺激も良いんじゃないかなーって、ここに来てみたんです!」

なるほど。ではこのマンネリ対策グッズ
『バジリスク謹製目隠し』など如何でしょう?

「目隠し...色々捗りますねぇ」ジュルリ

ただの目隠しでは御座いませんよ。これを付けた者は視覚を遮られるだけでなく、聴覚、触覚、嗅覚、味覚がとても鋭敏になるので御座います。

「おぉー!なんか凄そうです!」

そうですね...例えば、お客様の種族で御座いましたら、吸血される快感が倍増、などでしょうか。

「倍増...」ゴクリ

逆にお客様ご自身が着用なさるのもお薦めでございますよ。

「へ?」

想像してみてください。愛する旦那様の精液が子宮口をノックする様を、研ぎ澄まされた感覚で楽しめるのですよ?

「......ふへへ...そんな...壊れちゃうかもぉ...♪」

そんな姿を見て旦那様もいつも以上に元気になるかもしれませんね。相手が気持ち良さそうにしているのは、見ていて飽きないものですから。

「...よし、買います!」

はい、ありがとうございます。


カランコロン

健気なヴァンプモスキートさんも居るものなのですね。

...とりあえず、床を掃除しましょうか。


***


雨が降ってきましたね...

カランコロン

いらっしゃいませ。...男性のお客様がいらっしゃるのは珍しいですね。

「ええ、妻に何か贈り物でもしようかと思いまして。ここなら魔界の商品もあると聞いたので...。」

そうですね。日用品は勿論、精力剤から媚薬、性具にいた...るま...で...

「?どうされました?窓の外に何か...?」

い、いえ、ゴホン。

そうですね。魔物娘というのは、夫を大事にする生き物です。

勿論、魔界由来の商品や、贈り物も喜んで受け取って下さると思います。

それで当店も成り立っているわけで御座いますね。

しかしながら、我々魔物娘の一番の贈り物は、夫と暮らす日常なので御座います。

...察するに、お客様は何かの記念日なのでは?

「良くわかりましたね。今日は結婚記念日なんです。」

...であれば、一刻も早く家に帰って、奥様との時間を大事にした方が、奥様もきっとお喜びになりますよ。我々は、そういう生き物ですから。

「そう...ですね。すみません、ありがとうございます。」

いえいえ。必要な物が出来たときは是非、奥様と一緒に、御来店くださいませ。


カランコロン


雨の中、窓からカンペを持って覗き込むハイライトオフのぬれおなごさん...

見た瞬間は「あぁ!窓に!」と錯乱しそうな程怖かったです...

あ、去り際にめっちゃ良い笑顔でサムズアップしてくれた...でもなんか、去り方が某ターミ●ーターみたい...


***


さて、本日は閉店で御座います。

本日は瞳に光を灯していない方が多かったですね。本格的に、流行りの可能性が...?

とはいえ、最近は稼ぎもそこそこ。
私の主人を養う分には、問題ないですね。

...あなた?どうされました?

外?今日は雨ですよ。

え?外に出てみたい?

ジャラリ



やだなぁ。私が居るのですから、良いではないですか。あ な た。

19/03/06 13:08更新 / スコッチ
戻る 次へ

■作者メッセージ
「チーフ、今日も監禁だそうです。」
「ん〜、この場合は子作り休を当て込めばいいのか...?」


***


これを書いている最中「あ、この町危ないな。」と思い
これを書き上げた頃には「あ、平常運転だな」と。
かくしてこの店主は何属なのか、実は詳しく肉付けしておりませんでしたか
ら、後になってどうしようか迷っております。
出さなくても雰囲気が出ているならば、そのままでも良いかもしれません。
しかし、書きたい娘が多すぎますね...
てな訳で今後も宜しくお願い致します。

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33