連載小説
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第3回放送(クリスマス特別版)
イーサン
「イーリン裏戦記」
エリン
「今夜はNO! ボーダー!」

OP:『エリンの季節』
ああ繁殖(はらみ)の
季節がはじまる

盛りの炎が消えたこの世の
最後の精子(たね)から生まれ落ち孤児院に育った子らよ

純潔の膜 生命(いのち)の泉 その底に潜む
卵巣は卵(らん)の道 本能の声が呼ぶ

槍をかまえて
faire l'amour
卵(たまご)生み出す手解きを
膣(なか)に食い込む男の槍
魔物の母の子守唄
子宮中を熱く巡り ひかれ合う精と卵(らん)

もっと強く啜らせてほしい
ソコに湧く享楽の美酒を
魔物の永遠よ!

エリン
「さあ、本日も始まりました『イーリン裏戦記 今夜はNO! ボーダー!』! 孤児院の主人のエリンです。この番組は、現在休止中の連載小説『イーリン戦記』をベースにした特別外伝。パーソナリティはわたくし、エリンが務めます」

イーサン
「みなさんこんばんは、アシスタントのイーサンです」

エリン
「それにしても、緑の。OP変えたわね」

イーサン
「この曲、エリン姉のイメージに合ってるっていう理由で、緑のが替え歌を作ってしまったからなぁ……」

エリン
「さて、本日はクリスマス特別版!」

イーサン
「なんと、孤児院メンバーが全員登場するんだ! みんなのことを知らない人もいるだろうし、一言ずつでいいから自己紹介してくれ」

ミリア
「こんばんは、ハーピーのミリアでーす!」

ノッコ
「リザードマンの、ノッコだ。こういう場はあまり得意じゃないが……」

ナーシャ
「ワタシはケンタウロスのナーシャ。よろしく頼む」

メイセ
「スキュラのメイセ。よろしくね」

スゥ
「ジャイアントアントのスゥだよ! よろしくね!」

緑のカンペ:
ナーシャ・メイセ・スゥの三人はこちらが実質的な発情……もとい、初登場です。

イーサン
「随分ひどい間違い方してるカンペだな。それはさておき、ありがとう、みんな。それじゃあ、自己紹介も終わったところで……」

イーサン・エリン
「イーリン裏戦記 今夜はNO! ボーダー!」

ミリア・ノッコ・ナーシャ・メイセ・スゥ(以下、五人の総称は娘達)
「はじまるよ!」


この番組は



の提供でお送りいたします。

―――――――――――――――――――――

ナレーション:緑の姫君(以下緑の)
「ここは、とある街にある孤児院。この孤児院に一人の少年が拾われました。
 少年は戦災孤児で、周囲と打ち解けることができず、ずーっと一人で過ごしていました」

イーサン
「はぁ……今日もやることがないなぁ……。外は雪か。綺麗だな……。それなのに、俺は一人、か……」

???
「おーっほっほっほっほ!」

イーサン
「その声は……」

???
「あら、お忘れですの?」

イーサン
「忘れもしないさ、エミリア! 何しに来たんだ!?」

エミリア
「余程暇人のようですね、イーサン。私はもう忙しくて忙しくて」

イーサン
「忙しいのに、どうしてここに来られるんだ?」

エミリア
「よくぞ聞いてくれましたわ! 私はこれから、彼とパーティーをするのですわ! おーっほっほっほっほっほ!」

イーサン
「こいつうぜぇ……」

エミリア
「……あら、誰が誘ってあげると言いましたの? 薄汚いみなしごが、我が家のパーティーに参加できるとでも思いまして?」

イーサン
「誰も言ってねえし……。つうかただ自慢しに来ただけかよ! どこまでも性悪だな!」

エミリア
「まあ、せいぜい独りで寂しいクリスマスを過ごすがいいですわ! おーっほっほっほっほっほ!」

イーサン
「くそっ、悔しいけど言い返せない……。それにしても、エリン姉やみんなはどこに行ったんだろうな……」

緑の
「その頃、イーサンと同じ孤児院で暮らしている娘たちは……キッチンにいる者と、買い物をしている者とに分かれていました」

ミリア
「ん〜、けっこうむずかしいね……」

???
「大丈夫よ、そんなに難しく考えなくても……」

緑の
「赤くて尖った帽子をかぶっているハーピーのミリア。彼女の目の前には、うず高く積まれたケーキの生地がそびえ立っていました」

ミリア
「う〜ん、ちゃんときれいにつくれるかなぁ……」

???
「大丈夫、ミリアなら、きれいなのを作れるわ。あとは、あなたが持っていくだけよ」

ミリア
「はーい!」

メイセ
「お〜い、アタシの方も見てもらってもいい?」

緑の
「こちらは壺の代わりにバンダナを巻いて、たこ焼きを焼くスキュラのメイセ。タコヤキを焼くスキュラ……うぷぷ

メイセ
「誰よ、今アタシのこと笑ったの? まぁ、いいか」

???
「はいはーい、ちょっと待ってね」

メイセ
「こんなもんなのかな?」

???
「ん〜、いい焼き加減ね。なかなか上達してきたじゃない」

メイセ
「それにしても、どうしてスキュラのアタシに『タコヤキ』を焼かせるのさ? 軽い嫌がらせじゃないの」

???
「それは……緑のが、ね」

メイセ
「まったく、緑のもひどいよねぇ……ん?」

???
「どうしたの?」

メイセ
「今、緑のの気配がしたような……」

???
「気のせいよ、気のせい」

(チン!)

???
「チキンが焼けたみたいね。メイセ、終わったらミリアの飾りつけを手伝ってくれない?」

ミリア/メイセ
「はーい!/はいよ!」

緑の
「キッチン組は順調に進んでいるようですね。買い出し組を見てみましょう」

スゥ
「ふうっ、彼が喜びそうなものってなにかな? あの人が喜びそうなものならわかるけど……」

ナーシャ
「考えるまでもないだろう。スゥ、考えすぎるのはおまえの悪い癖だ」

ノッコ
「そうだぞ。こういうのは直感で決めればいい」

緑の
「サンタ帽子をかぶったジャイアントアントのスゥとリザードマンのノッコ、トナカイの角をかぶったケンタウロスのナーシャの三人は、プレゼントの買い出しに出かけていたのでした」

スゥ
「しょうがないじゃないか、私はジャイアントアントなんだから」

ナーシャ
「ほら、言ってる間に着いたぞ」

緑の
「そんなこんなで、店に着いた三人。そこには、雑貨屋『ルルエル』の文字が……」

???
「いらっしゃいませですぅ〜」

ノッコ
「エンジェル……?」

スゥ
「教団絡みじゃないかな?」

???
「大丈夫ですよぉ〜。魔物だからといって、皆さんをひどい目にはあわせませんからぁ〜」

スゥ
「本当かな?」

ナーシャ
「だから考えすぎだって。行くぞ」

スゥ
「えっ! ちょっ! 引きずらないで〜!!」

???
「うふふ……。あたしも、プレゼントを買わないといけませんねぇ〜……」

ノッコ
「さてと、ここからは三人とも別行動だ」

スゥ
「全員分のクリスマスプレゼントを買えばいいのかな?」

ノッコ
「ああ、そうだ。ナーシャはスゥとわたしの分、スゥはミリアとあの人の分だ。そして、わたしがナーシャとメイセの分だ」

ナーシャ
「分担はそれでいいとして、あいつのは、誰が選ぶんだ?」

スゥ
「三人で考えればいいんじゃないかな?」

ノッコ
「名案だな、スゥ。全員、選び次第ここに戻ってきてくれ。」

緑の
「かくして、三人のプレゼント選びが始まりました。実はルルエル、武器まで売っている始末……」

ノッコ
「えーと、ノッコは……あれか。あと、メイセはっと……これか」

ナーシャ
「ノッコはこれしかない。あとは、スゥか……」

スゥ
「えーと、ミリアとあの人、か……。よし、これにしよう!」

三人
「あとは、あいつの分か……」

緑の
「一方、イーサンは……。大地を揺るがすほどの大きなため息をついていました」

イーサン
「はぁぁぁぁぁぁ……みんな、俺のことが嫌いなのかなぁ……。なんか俺だけ仲間外れにされた気分だな……」

(コンコン)

???
「イーサン、いる?」

イーサン
「は〜い……」

(がちゃ)

イーサン
「エリン姉……」

エリン
「イーサン、私と一緒に来てくれない? 話があるの」

イーサン
「話って……ここじゃできないのか?」

エリン
「ま、つれないこと言わずに、行きましょ?」

イーサン
「おい! 俺を巻きつけてどこに行くつもりなんだ! エリン姉、エリン姉っ!」

緑の
「半ば強引に、エリンさんに連れて行かれたイーサン。果たして、彼がその先で見たものとは――」

娘達
「メリー・クリスマース!」

イーサン
「みんな! どうして!?」

ミリア
「みんなで、イーサンをおどろかせたかったの!」

ナーシャ
「なんで、ワタシがこんな格好をしなくちゃならないんだ……。頭に飾り物の角を乗っけて……」

ノッコ
「おまえが言うか? プレゼントを選んでるときなんて、結構楽しんでたくせに」

ナーシャ
「ま、まあな。ワタシの背に乗っていいのはノッコ、あなただけさ……///」

メイセ
「あんたはまだいいじゃないの、ナーシャ。アタシなんて、自分の足を料理させられるようなもんだからさ……」

エリン
「イーサンのために、腕によりをかけて作ったの。お腹いっぱい食べてね」

イーサン
「へえ……おいしそうだな」

スゥ
「あと、みんなにプレゼントがあるの!」

イーサン
「エリン姉、みんな……ありがとう!」

???
「みなさん、お疲れ様ですぅ」

スゥ
「あ、さっきの店員さん」

ルルエル
「今日は早く店じまいしてきたのですぅ。この子たちが、パーティーに誘ってくれたので」

スゥ
「本当に、誘ってよかったのかな?」

ルルエル
「いいんですよぉ〜。私も、もともと早くお店を閉めるつもりでしたしぃ」

エミリア
「しくしく……」

ルルエル
「エミリアちゃん……?」

イーサン
「エミリア、どうしたんだ? デートじゃなかったのか?」

エミリア
「それが……『高飛車なお前には付き合いきれない』……ですって。うわーん!!!」

イーサン
「ふん、いい気味だぜ」

エミリア
「ひどいですわっ!」

イーサン
「おまえの態度が悪いから愛想を尽かされたんだ。諦めろ」

エミリア
「私も、パーティーに参加させなさい!」

イーサン
「何を都合のいいことを……」

エリン
「そんなこと言わないの、イーサン」

ミリア
「いれてあげようよ〜!」

ノッコ・ナーシャ
「絶対に嫌だ!」

メイセ
「こんな高飛車女、ほっとけばいいのよ」

スゥ
「参加しないでとは言わないけど……迷惑かけないでほしいかな?」

ルルエル
「……エミリアちゃんのためにも、お願いしますぅ」

イーサン
「……しょうがねえなあ。でも、みんなの悪口を言ったら、叩き出すぞ」

エミリア
「! ありがとうですわ!」

エリン
「もう、現金ねぇ……。それじゃあ……みんな、テーブルについて」

(エリンが全員分のジュースを注いでいく)

エリン
「グラスは持った? せーの……」

全員
「メリー・クリスマース!」

緑の
「こうして、このパーティーをきっかけに、イーサンは孤児院の仲間と打ち解け、エミリアはちょくちょく孤児院に遊びに来るようになりましたとさ。めでたしめでたし」

(チン!)

―――――――――――――――――――――

エリン
「さあ、お時間がやってまいりました。みんな、初めてのラジオドラマ、どうだった?」

全員
「……」

エリン
「慣れないことだったから、疲れてしまったみたいね」

イーサン
「ま、楽しかったのは楽しかったけどさ……。特にしゃべり慣れていないノッコはつらかっただろうな……」

ノッコ
「……」

ナーシャ
「ま、気に病むことはない。あんたは口よりも剣で語るタイプだからな」

ノッコ
「そ、そうだな……」

スゥ
「それにしても、楽しそうだったね! これが現実にならないかな?」

エミリア
「しかし、ラジオドラマの中でも、なんで私がああいう役回りですの? 納得いきませんわ!」

イーリン・娘達
「日頃の行い!」

ルルエル
「ですぅ!」

イーサン
「うわっ! いつの間に!?」

ルルエル
「最初からですよぉ? 姫から『収録に来てほしい』って言われて、ここにいるんですからぁ」

エミリア
「ルルエルちゃんまで……。まったく、緑のの行動は理解できませんわ。こんなに素行がいい私をどうしてそういう役回りにするのか。私に恨みがあるとしか思えませんわ!」

イーサン
「こいつ全然聞いてねえし……」

エリン
「しかも自覚がないなんて……もう末期ね」

エミリア
「なんですって!?」

ミリア・ルルエル
「まあまあ……」

メイセ
「あんなのの肩を持つ必要はないよ、ミリア」

ノッコ・ナーシャ
「そうだぞ」

スゥ
「そんなことないよ! ……かな?」

ルルエル
「ごめんなさいですぅ! エミリアちゃんが失礼をしましたぁ……」

(バキッ!)

エミリア
「まったく。そんなんだから魔物にコケにされるのですわ!」

ルルエル
「痛いですぅ!」

 〜〜〜〜♪

エリン
「聴取者の皆様にはお聞き苦しいところをお見せいたしましたが、次回は……なんと、新年放送!」

一同
「えー、またあれをやるの?」

エリン
「大丈夫よ、緑のは別の企画を用意してくれているから」

イーサン
「まともな企画なんだろうな?」

エリン
「緑のが考えるから、どうかわからないけどね。それでは、次回放送もお楽しみに! 引き続き、チャンネルはそのままで」

イーサン
「この後はラジオ番組『もふもふ☆Day's』です」

エリン
「周波数はSM072、お願いします。Stay Tune!」

この番組は

なんでもありのバトルの聖地、バトルするならここしかない!集えバトルジャンキーどもよ!「バトルクラブ」byデルフィニア
(from『激闘!!!バトルクラブ!!!』 by チェチェ様)

の提供でお送りいたしました。
11/12/26 23:07更新 / 緑の
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■作者メッセージ
―放送終了後―

(ラジオドラマ収録を終えたスタジオに、構成作家の緑の姫君が走って飛び込んでくる)

緑の
「エリンさーん! みんなー!」

エリン
「緑の、あわてて飛び込んできてどうしたの?」

緑の
「お待たせしました、パーティーの準備ができましたよーっ!」

エリン
「あら、気が利くじゃないの。ありがとう」

エミリア
「ふん……」

緑の
「いえ、脚本を書いていたら、無性に実現させたくなりまして」

イーサン
「それだけで実現させたいなんて、緑のはすごいのか馬鹿なんだか……」

ミリア
「じゃあ、おいしいもの、たべられるの?」

メイセ
「でも、アタシは別に嬉しくないんだからねっ!」

緑の
「ええ。ただし、条件があります」

一同
「え?」

緑の
「みなさん、ラジオドラマの衣装に着替えていただけないでしょうか?」

ノッコ・ナーシャ・メイセ
「ひどーい!」

エリン
「まあまあ、いいじゃないの。そうすれば、雰囲気も出るしね」

ミリア
「は〜い!」

ナーシャ
「姉さんがそういうなら……」

ノッコ
「そ、そうだな」

メイセ
「はぁ、その恰好を想像するだけでイヤになるんだけどねぇ……」

緑の
「さあさあ、パーティー会場に移動しましょう!」

エミリア
「ふ、ふんっ! べ、別にあんたのために行くわけじゃありませんからねっ!」

エリン
「あらあら、顔は嬉しそうじゃないの」

エミリア
「そ、それは……」

エリン
「いいじゃない、楽しみましょう」

エミリア
「魔物どもと一緒だというのが癪ですが、では……」

緑の
「パーティー会場へご案内いたしますっ」

(イーサンと魔物娘たちを連れて、パーティー会場へと向かう緑の。エミリアが置いてけぼりなのは恒例となりつつある)

イーサン
「まさか、緑のが本当に用意してたとはな……」

エリン
「緑の、この日のために私にご飯の作り方を聞いてきたんだから……」

イーリン・娘達・ルルエル
「あははははは……」

エミリア
「やっぱり私は置いてけぼりですのね! ひどいですわ! 待ちなさーいっ!!」

(エミリア、ダッシュで追いかける)

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