連載小説
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不機嫌な歌姫
 こっちに目線お願いします!
 サッカーSHOP加茂です!こちらの商品と一緒に…
 亮太くん!HP用のシャシンお願い!
 サッカーダイジェストです!後でお時間いただけますか?

無数のフラッシュが亮太を焚きつける…
サッカーをする上で皆が目指す代表入り、W杯優勝。
その挑戦権が自分にもついに与えられた。
確実に、着実にスターへの道のりを歩んでいる。


電車に乗れば

森岡選手、サインください!

コンビニ行けば

森岡選手、サインください!

定食屋で飯食えば

森岡くん、サインくださいな。



「おーい、帰ってこい。リンちゃんの収録終わるよ?」

ヌッと現れたサングラスの男性に話しかけられて我に帰る。
いつもリンが迷惑を…もとい世話になっている司会者だ。

「あっ、どうもすいません。このところ落ち着かなくて…」
 
「代表入り、おめでとう。大変だろう?こんな時期に…」

「強いジパングの再生…やりがいはありますから。」

「がんばってよ?皆期待してるよ?リンちゃん含めてね?」

「はい!…え?」




「みなさん、お疲れ様ですぅ!今日はありがとうございましたぁ!」

独身男性の心をくすぐる猫なで声。そういえばパンダは漢字で大熊猫。
透き通るような白髪を解きリンがやってきた。

「まぁタモリさん。亮太くん最近調子いいんですよ?がんばってますから♪」
 (めんどいことなる前にかえるわよ…?)

「リンに言われたらがんばるしかないですからね。ははは。」
 (おう…ホンマその声なぁ…気色悪い…)

「いいねぇ!わっかいね〜。僕もキップまわしてもらおうかな。」

「はい♪私もぉ、ピッチレポ入る予定なんでぇ、来てくれるとすっごいうれしいです♪」
 (は?ともかく帰るのよ!)


「香川さん、長谷部さん目標に頑張ります!では…」
 (へえへえ帰りますよ…)



流石スター。感情を表には出さない。が、確実に焦ってはいた。
今まで自分のイジリ倒すおもちゃだった亮太が自分に追いつき始めている。
もしもアナウンサーとでもフラグを立てたら?
もしも海外からオファーが来たら?
そう考えただけでも歯ぎしりしてしまう。
なんとか優位に立ちたい。
じゃ、弱点は?
あっこいつ童貞だ。自分も処女だけど。
でも…少なくとも女性に素直になられたことはない。
そして垢ぬけてない。
ならば…


「ねえ。まだ時間あるじゃん?オークラ行ってディナーしない?」

「熱でもあるんか?ゴダイ寄ろか?」

「ケツに竹ヤリぶちこむわよ?もう…代表入りのお祝いよ。」

「アイドルがなにいってんだか…ま、悪くないな。」




海岸線を抜け飲食店街を抜け、やってきたのはジパングの世界に誇る
有名ホテル、ホテルオークラ。
車はエントランスへ。

「お車の方、パーキングへ移しておきましょうか?」

「え?ああ?すいません…お願いします。」

「もう!キィ差したままでいいのよ!」

「そうなん?はえ〜こなれとるなぁ…」

「ふふん。何度もPさんとかスポンサーさんと来てるのよ…」


さぁ…反撃開始よ…

15/02/19 22:36更新 / リエージュ川島
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