連載小説
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転生者〜砂塵に磨かれし刃翼〜 前編
魔界の砂漠地方、フェラチーオで、奇妙な出来事が発生していた。

証言その1 町の男性
「オアシスにあるヤシが大量に切り倒されていたんだ!しかも、切り口はとても鋭利な刃物で切ったような形をしている!伐採用のオノでもあんなことはできないよ!」

証言2 ファラオの元で働くスフィンクス
「いつものように仕事を終えて、愛する旦那の元に帰る途中、いきなり強い風が吹いてきたと思ったらいつの間にか気持ちよくなってイッちゃって、気がついたら私の服が切り裂かれてまっ裸になっていたのニャ!あれは高かったんだニャ!突風を起こしたヤツマジで許さないニャー!」

証言3 観光ガイドのゴブリン
「いつもの様に砂漠の自然ウォッチングツアーをしていたら、突然目の前にある岩山が真っ二つになったんですよ。割れたというよりはむしろ斬られたみたいな感じでしたねぇ。観光客の皆さんは突然の出来事にビックリしていましたが、その後スゲースゲーって大盛り上がりしていましたよ。」

フェラチーオ砂漠では、ここ最近、岩や木がかなり鋭利な刃物で斬られたように綺麗に真っ二つになったり、突然吹いてきた突風を食らった魔物や人間が身体中に魔界銀で切られたような跡をつけてアヘ顔で倒れていることが度々ある。
フェラチーオ砂漠を治めるファラオは、この原因を直に解明するよう王国の軍を調査に向かわせたが、ある日、王国から近いオアシスで国で重要指命手配されている魔物の盗賊団が全員防具を切り裂かれてイっているのが発見された。
しかも、不可解なことに何故か魔界銀でできた武器や防具だけが奪われていた。
この報せを受けたファラオは軍を盗賊団のような被害に遭わせないために直に調査を中止ししたため真相は闇の中になってしまった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜フェラチーオ砂漠のとある城下町のギルド〜

いよおっす!俺の名前は田村まさし!
この世界に来て冒険者をやっている者だ!
前の世界である日本で新発売のカメラを買いに行こうとしたらいきなり全身が光に包まれて、気がついたらアニメやゲームなんかでよく見る魔法陣の中に立ってたんだよ!しかも回りは真っ暗で、目の前にサンタみたいに白いヒゲをもっさり生やしたおっさんがいて、「私はお前の住んでいる世界とは別の世界を管理している神なのだが、異世界にこの世界のある人間を召喚しようとしたら手違いでお前を召喚してしまった」とか言うのよ。
俺はふざけんな、元の世界へ帰せってブチギレかけたよ。そしたら今度はな、「すまないが、今の召喚で力を使い果たしてしまったからそれはできない」って言いやがった!俺はこんどこそ本当にブチギレかけたが、神様はそんな俺の気迫にビビッたのか慌てた声でこう話を振った。
「これから行く世界は剣と魔法で戦わなければならない所なのだが、間違って召喚してしまったお詫びとして、そこでもやっていけるようにチート級の能力値とスキル、チート武器とチート防具を与えよう。」

威厳もへったくれもなく情けない声で謝る神を俺は寛大な心で許してやった。
ただでさえ現実ではうだつが上がらず冴えない日々を送っていたので未練はないので悪くはない、というかむしろ望んでいた。
青春時代は教室の隅っこでアニソンを聞いていたような日陰者の自分がやっと輝ける時が来たのだ。
そんな思いを胸に、俺は神が定めた運命に従い、異世界へと旅立った。
俺は異世界に来ると、まず最初に凄く驚いた。そして、もの凄く嬉しかった。
なぜなら、俺が転生した世界は、なんとあの、健康クロス氏が手掛ける魔物娘図鑑の世界だった!
前から大好きであった、憧れを抱いていたあの世界なのだ。
モン娘ハーレムを作って世界の頂点に立つことも、夢ではない!
さっそく、俺は前の世界にいた頃に培った持ち前の知識と、神より与えられたチート能力を武器に各地のギルドで無双しまくり名を上げた。
今では、俺は俺の推し魔物娘である魔女のメイちゃんとコンビを組み、今では特A級冒険者としてあちらこちらのギルドを股にかけて大活躍してるのだ!
くぅ〜っ!いつしかハーレムを作って、特A級冒険者からギルドマスター、さらにそこから魔王へと成り上がり世界を支配してやるのも夢じゃないぜw
今日は火山を根城にしているヘルハウンドの盗賊の撃退依頼を軽やかに達成してきたぜ!
いや〜!あのワンちゃんたち結構可愛いかったなぁ!特に盗賊の頭がメイの放った氷魔法を尻に喰らって、尻を押さえて涙目でピョンピョンしてた所とか可愛すぎwギャップ萌え美味しいですw上位の魔物だっていうからもうちょっと強いかなって思ったけど全然強くなくてつまらなかったなぁ。
この前のドラゴンといいガッカリだw

田村まさし。彼は元々日本にいたごく普通の青年だったのだがある日、神と名乗る者によってチート能力とチート装備を持ってこの図鑑世界に召喚された。
召喚後はありえない早さでレベルアップしてメキメキと力をつけていき、今ではドラゴンやデーモンのような上級の魔物を素手で倒せる程の実力を手に入れてしまっている。

「あー、もっとどこかに強いヤツっていないのかなぁー!な、メイもそう思うだろ?」
「は、はい・・・ただ、田村さん・・・」
「なにー?」
「田村さんが一日に何度もクエストを達成しているせいで、クエストが無くなってしまい、他の皆様がクエストを受けられなくなって困っているので今日はこの辺にしておいたほうが・・・」

魔女が苦笑しながらクエストに行こうとする田村を咎めようとする。

「いーじゃん!いーじゃん!確かに無くなりはするけどまた出てくるでしょ!だから誰も困らないって!」
「理屈がムチャクチャすぎますよ!とにかく、今日はこの辺に・・・」
「いいでしょー!もっとクエスト行きたい〜!」
「ダメです!今日はこの辺で・・・」

押し問答を繰り返している田村とメイの耳に隣の冒険者たちの声が入ってきた。

「なぁなぁ聞いてくれよ!近くのオアシスに行ったらよぉ・・・」
「あぁ、知ってるぜ。情報屋から聞いたんだが最近ここの近くのオアシスを縄張りにしていたアポピスが何者かによってぶちのめされたって話で、なんでも、砂漠で倒れていた盗賊団の連中みてぇに全身を魔界銀の刃物でメッタ斬りにされたような跡を付けて潮噴いてイッてたそうだな。」
「おいおい、そりゃもう一昨日聞いてるよ!俺が言いてぇのはそれじゃなくてよぉ、つい昨日俺がオアシスに行ったら、水場の近くの小さな岩穴に例の盗賊団のモノらしき魔界銀の武器や防具が山のように積まれてたのを見つけちまったんだよ!」
「マジかっ!?」
「せっかくなんでちょっとだけかっぱらおうとしたら、「コソ泥、私の縄張りで何をしている」って凄みのある女の声が聞こえてきたんで慌てて逃げたよ!あのオアシスにはヌシがいるんだよ!もしかしたら盗賊団とアポピスをぶちのめしたのはきっとソイツだよ!」
「もしかして、そのオアシスのヌシを倒せば俺らの株もうなぎ登りになるんじゃねぇの!?」
「やめとけ!やめとけ!冗談じゃねぇよ!相手は国もヤバイって認定してる盗賊団一つ全滅させた上にここの魔物じゃ超大物ランクのアポピスすら倒してるんだぜ?Aランクのお前でも話にならないかもしれねぇんだぞ!?」
「そ、そうか・・・」

二人の会話を聞いた田村は目を輝かせてメイの方を向いた。

「おい、メイ!早速オアシスに行くぞ!盗賊団を全滅させて上級魔物すらぶっ倒したヤツとか面白そうだ!」
「ちょっと、田村さ・・・あー・・・行っちゃった。仕方ないなぁ・・・私も付いていくか・・・。」

メイは大きく溜め息をつき、勢いよくギルドの扉から飛び出した田村の後に続いた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜フェラチーオ砂漠のオアシス〜

「メーイ!置いてっちまうぞ〜!」
「わ、わかってますよ〜・・・田村さん・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

メイはやっとのことで田村の元にたどり着いた。
田村は魔物娘よりも上回る速度で走っていたにもかかわらず全く元気そうだ。

「た、田村さん少し休ませて下さい・・・」
「別に構わないぜ!その間に俺はその間に例のオアシスのヌシとやりあって来るから!」
「た、田村さん、単独では行かないほうがいいですよ!私はもう少し休憩すれば大丈夫なので、その時に一緒に・・・」
「心配すーるーなー!俺は転生者なんだぜ〜!特典として貰ったこのチート装備とチート能力があるんだからよー!」

田村は高笑いしながら金色の刀身の西洋風の剣を、子供が棒切れを振り回すような仕草をしてドヤ顔をする。

「はい、それは結構ですけど、油断しないでくださいね・・・」
「はいはい分かってまーすーよー!」

田村はメイの忠告を遮るように大声を出してオアシスの奥へと進む。

「さぁて、どんな奴が出てくるかなぁ〜?」

もし美少女か魔物娘だったら、俺のチート的な強さと魅力でメロメロにして嫁にしてやろう。

オアシスの主にそんな期待を寄せながら辺りを歩き回る田村。
その姿はまるでヨダレを垂らしながらエサを探している熊のようだ。

「うへへへへ・・・」

田村がニヤニヤしていると、上空から低い女の声がした。

「おい、そこのお前。ここは私の縄張りだ。さっさと出ていけ。」
「おいおい、声しか出してないで俺の前にさっさと降りて来いよ〜」

田村が(本人としては)クールで格好良い声(のつもり)で上空の人影にそう返す。

「そうか、それではお望み通り、降りてきてやろう。」

女性の影はそう告げると、凄まじい速さで空中から地面に急降下した。

ゴオオオオオオオッ!!!

「うぉっ!?」

最上級クラスの風魔法ですらビクともしないチート装備を装備した田村ですら、吹き飛ばされそうになる爆風が正面から襲ってきた。

「ぐぐぐぐぐぉっ・・・・!!!」

田村はなんとか足を踏ん張って爆風に耐えた。

「ほら、降りて来てやったぞ。」
「な・・・・!?」

田村の目の前に現れたのは金属のような質感の銀色の甲殻に全身を覆われたワイバーンだった。
頭にはプテラノドンのようなトサカがあり、刀のように鋭く、細長い尻尾の先も同じく刀のように鋭い刃が付いている。
そして、特に特徴的なのが翼である。
鳥で言うところの風切り羽の部分に当たるところは大きな刃となっており、彼女の体にある刃のうち最も研ぎ澄まされていた。

「来い。せっかく売られた喧嘩だ、買ってやる。」
「・・・・・・・!」

これまでに教団軍の将軍や、上級魔物を相手にしてきた猛者である田村が銀色のワイバーンからただ者ではない気配を感じて全身を強ばらせた。

チート転生者と銀色の飛竜の戦いの火蓋が切って落とされた。
18/02/21 17:45更新 / 消毒マンドリル
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■作者メッセージ
テンプレ異世界転生は別に嫌いじゃないんだけど、あまりに物事が上手く行きすぎてることに突っ込みたくなってしまうんだよなぁ。

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