読切小説
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フェチ
キマイラ

ひとつの肉体でありながら4つの異なる人格を持つ。
それぞれの人格がある以上、好き好みがはっきりと分かれている。
それは彼女たちの夫に対しても同様で、特に私たちは体の部位に関して顕著である。



オレは獅子

肉食獣において最強を誇るオレに敵うものはいない。
ただ、一つ例外があるとすれば、それは夫の首元だ。

そう、何を隠そうオレは夫の首フェチである。

ラインがくっきりとしている首筋は、手を這わせたくなる。
鎖骨のくぼみにはオレの唾液をいっぱいに注ぎたい。
話すたびに動く喉ぼとけは誘っているようにしか思えない。

だからオレはアイツの首をよく甘噛みする。
捕食者が獲物を確実に仕留めるように、何度も入念にハムハムするとアイツは全身を脱力させて「アッ、アッ」と熱のこもった声を上げてオレを高ぶらせる。



ワシは山羊

学術を極め、高度の魔法を操るワシにとって人体は研究を修了し関心がないものである。
ただ、一つ例外があるとすれば、それは夫の腕だ。

そう、何を隠そうワシは夫の腕ふぇちである。

決して筋骨隆々なわけではないが、引き締まった筋肉が力強さを感じさせる。
浮き出た血管はアヤツ自身の生命力を誇示し、生きていることを証明してくれる。
大きな手は、モノも心も掴んだものを離さない。

だからワシはアヤツによく後ろからギュッと抱きしめてもらう。
ワシの胸元で組まれた腕にワシの手を重ねながら、全身でアヤツのぬくもりを感じる。
アヤツはいつもためらってしまうが欲を言うともっときつく抱きしめてほしい。



我は竜

全ての生物の頂点に君臨する、ほかの下等な生物には全くもって興味がない。
ただ、一つ例外があるとすれば、それは夫の背中だ。

そう、何を隠そう我は夫の背中フェチである。

弱いと思っていた人間が我をかばうときに見せた決意に満ちた背中。
戦地で互いの命を守るために預けあった背中。
夜を共にするときも恥ずかしさでそっぽ向いていたが、背中だけ我に見せてくれた。

だから我は我が宝の背中から抱きしめる。
ガラス細工を壊さないように優しく包み込むと我が宝は安心して我に体を預ける。その瞬間がたまらなく愛しく、我の支配欲を満たしてくれる。山羊とはよく揉めるがこれだけは誰にも譲れない。



アタシは蛇

狡猾と痴虐をつかさどるアタシは男なんて弄ぶだけのものだと思っていた。
ただ、一つ例外があるとすれば、それは夫の尻である。

そう、何を隠そうアタシは夫の尻フェチである。

初めて見たときは衝撃だった。女の子のようなツルツルした尻たぶ。
彼にとってはコンプレックスらしいが恥じらっている姿も含めてたまらなくそそる。
アナルのしわ一本一本をほぐすように舐め回すのが好きだ。

だからアタシは彼の尻に顔をうずめる。嫌がっている彼を強引にねじ伏せてスーハーする。涙目になっている彼もまた素晴らしい。いずれはアタシの尻尾をぶち込んでヤりたい。意外にもケツを舐めることに獅子が肯定的なのは驚いた。肉食獣の本能だろうか。



私たちはキマイラだ

生物の倫理に反し、誰とも関わらず孤独に生きていた。
だた、一つ例外があるとすれば、それは夫だ。

そう、何を隠そう私たちは夫フェチである。

共に戦い、共に愛し幾年も時を過ぎしてきた夫が大好きだ。
官能的な首、たくましい腕、凛々しい背中、エロい尻がなくても私たちは夫が大好きだ。
これまでも、これからもずっとこの思いは変わらないだろう。



いつまでも幸せでいような。










俺は夫だ

いくつもの困難を共に乗り越えてきた妻のことが大好きである。
ただ、一つ例外があるとすれば、それは娘だ。

そう、何を隠そう俺は家族フェチである。

傭兵時代のすさんでいた頃と比較すると想像もつかないような幸せな家庭を築くことができた。これもすべて二人に出会うことができたおかげである。
今まで本当にありがとう。



これからも一緒にいような。
20/08/25 12:37更新 / 甘党大工さん

■作者メッセージ
お読みいただきありがとうございます。
皆さんは何フェチですか?

実はこの作品、高校時代の女友達から言われた。
「〇〇の喉ぼとけだけは好きなんだよなー」
という苦い思い出がきっかけだったりします。

これからはパクリ以外も頑張っていきたいと思います。それでは。

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