連載小説
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第2回放送†
イーサン
「イーリン裏戦記」
エリン
「今夜はNO! ボーダー!」

OP:『雫』
背中にあった鱗は 君と共に無くした
穏やかなる笑顔は あの頃のようには戻ってこない

君を取り戻す そればかり考えていた
神の濁流に 押し流されてしまわぬよう……

エリン
「さあ、本日も始まりました『イーリン裏戦記 今夜はNO! ボーダー!』! 孤児院の主人のエリンです。この番組は、連載小説『イーリン戦記』をベースにした特別外伝。パーソナリティはわたくし、エリンが務めます」

イーサン
「みなさんこんばんは、アシスタントのイーサンです」

エリン
「まず、構成作家の緑の姫君から聴取者の皆様にお知らせをしなければならないことがございます」

エリン
「現在、本編『イーリン戦記』が非公開になっておりますが、これは諸事情により、本編『イーリン戦記』を再構成する事態となったからです。続きを楽しみにしてくださっている読者の皆様には、深くお詫び申し上げます」

イーサン
「……読者と聴取者って、分ける必要あるのか?」

エリン
「それは、こっちがラジオで、私たちの戦記が小説だからに決まってるじゃないの。ずいぶんメタな発言だけど……」

イーサン
「変なところは現実に即してるんだな、緑のは」

エリン
「突っ込んだら負けよ、イーサン!」

イーサン
「……まあ、なんか釈然としないけどさ。俺たちのキャラや世界が宙ぶらりんなまま書き始めるからだよ、緑の」

エリン
「……言っちゃいけないこと言ったわね、イーサン。相当怒ってると思うわよ、緑の……」

(邪悪な笑顔でカンペを出す構成作家の緑の姫君)

緑のカンペ:
イーサン、放送終了後、お楽しみに。

エリン
「ほら、呼び出し喰らっちゃったわよ!」

イーサン
「うわっ、汚ねえ! 職権濫用もいいとこじゃないか!」

エリン
「余計なこと言うからよ。まあ、イーサンだけが悪いわけじゃないし、一番悪いのは緑のだけどね……」

(エリンが愚痴を言っても、カンペが出ない)

イーサン
「……緑の、よっぽどエリン姉が怖いんだな?」

エリン
「まあ、そういうことにしときましょう。それでは……」

イーリン
「イーリン裏戦記 今夜はNO! ボーダー! はじまるよ!」

この番組は

心配疲労、ノイローゼ、その他の精神疾患にお困りですか? でしたら当医院【月詠(つくよみ)】へ。人魔男女隔たり無く、大陸屈指の『心療医術士』達が貴方の心労を軽減いたします。
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―――――――――――――――――――――

エリン
「さて、本日はゲストがいらしております」

ミリア
「こんばんは、ハーピーのミリアで〜す!」

ノッコ
「……リザードマンのノッコだ。こういう場は得意じゃないが、よろしく頼む」

エリン
「久しぶりね、ミリアにノッコ」

ミリア
「えへへ……」

ノッコ
「……ああ」

イーサン
「……なんでこの二人?」

エリン
「一応、今回も私は正体を明かせないことになっているから(カンペ読みつつ)」

イーサン
「あ、そうなの?」

ミリア・ノッコ
「正体?」

エリン
「え? 別に、何でもないわよ?」

ミリア
「こわーい……あれ?」

ノッコ
「なんか、外が騒がしくないか?」

(外が騒がしくなる)

緑のカンペ:
避難してください! 黒タイツの集団がこっちに迫ってきております!

一同
「!?」

(とてつもなく大きな音とともに、掲げられていたカンペが突如見えなくなる)

???
「おーっほっほっほっほっほ!」


イーサン
「何だ!?」

ミリア
「きゃーっ!」

ノッコ
「くっ……」

エリン
「まさか……」

(フル武装の教団騎士が現れる。その瞬間、イーサン、エリン、ノッコは構え、ミリアは脅える)

イーサン・ノッコ
「おまえは……」

エリン
「エミリア! あんた、守衛をどうやって突破したのよ!?」

エミリア
「武器をちらつかせて脅す! この一択ですわ!」

エリン
「まあ、あんたならやりかねないけど……そんな方法を使うなんて本当に呆れたわ」

イーサン
「本編じゃ俺達に勝てないから、こっちを乗っ取ろうって魂胆だな?」

エミリア
「そういうことですわ! それに、まもむすラジオなんて、ふざけた名前ですわね。今日から私が、このラジオ局を乗っ取って、ラジオ局の名前を変えて差し上げますわ! おーっほっほっほっほっほ!」

イーサン
「宿利社長と秘書の沈黙の天使さんに失礼だろうが、この馬鹿たれ!」

エミリア
「おおかたこのラジオ局で、魔物の宣伝をしてたわけでしょ? でも、そうはいきませんわ! これからは、ここを拠点にして教団の宣伝を下賤の者どもにして差し上げますわ! おーっほっほっほっほっほ!」

(ブチッ)

エリン(マイクOFF)
「あのねえ、エミリア。私達は別にそんな大仰なことなんて考えてないの。ただ単に緑のが馬鹿げた企画をするから付き合ってるだけなのよ」

ノッコ
「そうだぞ。わたしなんて何もわからないまま付き合わされてるんだ」


エミリア
「そ、そうですの?」

(一同、うなずく)

エミリア
「うっ、うわあああああああん!!」

(突如泣き出すエミリア)

エミリア
「私だって……私だってラジオをやりたかったのに!」

イーリン・ミリア・ノッコ
「……?」

エミリア
「私だけ仲間外れにして楽しいんですの? 私が教団騎士で、あなた達が下賤な魔物だからって……。私だって、『イーリン戦記』の仲間なのにっ……!」

(何かを察したミリア、エミリアにゆっくりと近づく)

エミリア
「な、なんですの! 私をどうするつもりですの!」

エリン
「ミリア、殺されるわよ!」

(ミリア、翼を広げて飛び立つ。目にも留まらぬ速さで、エミリアに飛びついて抱きしめる)

ミリア
「……くるしかったのね」

イーリン・ノッコ
「ミリア!?」

エミリア
「私の名前を盗んだ鳥の分際で近づくなんて……しかも抱きしめるなんて!」

ミリア
「わたしは、あなたをなかまはずれにしないよ?」

エミリア
「ええい、離れなさい!」

エリン
「ミリア、危ないわよ!」

ミリア
「はなれない! あたしはなかまはずれにされたくないもん!」

ミリア以外
「……」

ミリア
「おねーさんだって、そうでしょ?」

エミリア
「……そう、ですわ」

緑の姫君(以下:緑の)
「みなさん、お怪我はありませんか!?」


エリン
「あ、緑の。なんとか収まったわよ」

緑の
「それならよかった」

イーサン
「一時はどうなることかと思ったけど、ミリアが場を収めてくれたんだ」

ミリア
「えへへ……」

エリン
「さてと、怪我もなかったことだし、エミリア。聴取者の皆様に、暴れたことを謝りなさい。そしたら、お姉さん許してあげるから♪」

エミリア
「おーっほっほっほっほっほ! これからは、魔物なんてくそくらえ! 教団の天下ですわーっ!!!!!!」

イーリン
「前言撤回!」
すぱーん!!

(緑の姫君(以下:緑の)がエリンとイーサンとミリアとノッコに緑のハリセンを渡して、エミリアを思いっきりしばく。その後しばらく乱打――)

エミリア
「痛いですわ! 痛すぎますわ!」

ミリア
「そんなこといっちゃダメなの!」

ノッコ
「さっきの言葉は嘘だったのか!?」

イーサン
「すまん、やっぱりむかついたからな」

エリン
「これでも手加減してるのよ。手荒な真似したら、こんなんじゃ済まさないわよ?」

(エリン、邪悪な微笑を浮かべて右手に魔力を練って冷気を出す)

エミリア
「ひぃ……後生ですから、謝りますから! どうか命までは取らないで!」

エリン
「ん? カンペが出てるわね……」

緑のカンペ:
今後、偶数回でエミリアさんの主演コーナーを予定します。

エリン
「空気読めないわね、緑の。それにしてもエミリア、よかったわね。緑のがコーナーを作ってくれるらしいわよ」

エミリア
「本当……ですの?」

緑のカンペ:
本当ですとも。

エミリア
「うっ……ぐすっ……」

エリン
「ほうら。エミリア、泣かないの」

緑のカンペ:
ただし、コーナー以外では、悪趣味な高笑いは禁止で。破ると……ふふふ。

エミリア
「続きが怖いですわ!」

エリン
「ですって。エミリア、これからもよろしくね!」

エミリア
「なんか、釈然としないですわ……」

エリン
「以上、ゲストのコーナーでした!」

―――――――――――――――――――――

エリン
「さあ、お時間がやってまいりました。エミリア、初めてのラジオ、どうだった?」

エミリア
「ちっ、もう少しで乗っ取れるところだったのに……」

エリン
「そんなこと言っちゃダメよ?」

(邪悪な微笑を浮かべるエリン)

エミリア
「ごめんなさい……」

(エリン、いつもの柔和な微笑へ)

エリン
「わかればよろしい♪」

イーサン・ミリア・ノッコ
「うわぁ……」

エミリア
「えーと、次回以降も私も参加してもいいんですの?」

エリン
「緑のからちゃんと許可は下りてるし、大丈夫だと思うわ」

エミリア
「きゃっはー、楽しみですわ!」

イーサン
「悪趣味じゃない笑い方もできるんだな、案外」

エミリア
「むっ、イーサン。心外ですわね」

ミリア
「まぁまぁ……」

ノッコ
「ふん……」

エリン
「さて、仲間も増えたので、いい感じに締めようと思います。ここまでのお相手は、孤児院の主人、エリンと」

イーサン
「孤児院のイーサンと」

ミリア
「ハーピーのミリアと!」

ノッコ
「リザードマンのノッコと」

エミリア
「すれ違う男たちは誰もが振り返る美貌の、エミリア・アーデルハイト・シュヴァルツシルトでお送りいたしましたわ! おーっほっほっほっほっほ!」

デデ〜ン♪
緑の(録音音声)
「エミリア、OUT!」

イーサン
「何時の間に録音してたんだよ、緑の!?」

ノッコ
「……」

(その声に反応したノッコが立ち上がり、エミリアを捕まえる)

エミリア
「な、なんですの!? きゃーっ!」

(どこかに連行されていくエミリア。リザードマンの腕力には抗えない)

ミリア
「あ〜あ……」

イーサン
「いい感じで締まると思ったのに。エミリア、やらかしたな……」

エリン
「お耳汚し、失礼いたしました。それでは、次回放送もお楽しみに! 引き続き、チャンネルはそのままで」

イーサン
「……この後はラジオ番組『もふもふ☆Day's』です」

エリン
「周波数はSM072お願いします。Stay Tune!」

この番組は

神様の御利益はありませんが・・・人の良い白妖狐の白光が貴方の願い事の手助けをしてくれます。ご参拝を心よりお待ち申しております。
(from『白いということ・・・・・』 by jackry様)

人間・魔物問わず受け入れる孤児たちのオアシス【エリンホーム】(from『イーリン戦記』 by 緑の姫君)

の提供でお送りいたしました。
11/11/23 02:09更新 / 緑の
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■作者メッセージ
―放送終了後―

イーサン
「お疲れ様。エミリアが武装して飛び込んできたときにはびっくりしたな」

エミリア
「イーサン、エリン! あんた達は手加減というものを知らなさすぎですわ! それに緑のまで……」

エリン
「それは、エミリアが武装して暴れたからじゃないの」

エミリア
「それに、来週は出られないって、どういう了見ですの!?」

エリン
「アレね……」

イーサン
「アレだな……」


ミリア
「ぶぅ……」

イーサン
「エミリア、せっかくあの場をミリアが丸く収めてくれたんだぞ」

エミリア
「むぅ……」

エリン
「あ、そうだ。みんな、後でフラン軒(by 宿利京祐様)に行かない?」

イーサン
「いいけどさ、俺達まだ酒を飲めないぜ?」

ミリア・ノッコ
「うん……」(うなずく)

エリン
「大丈夫よ。お子様メニューも充実してるらしいわ。社長曰く」

イーサン・ミリア・ノッコ
「やったー!」

エミリア
「ふんっ……(どうせまた、私を仲間外れにするつもりなのですわ……)」

エリン
「良かったら、エミリアも行かない?」

エミリア
「えっ! いいんですの!?」

エリン
「もちろん、あなたの奢りで♪」

エミリア
「むきーっ!」

緑のカンペ:
本日は緑の姫君が奢ります。皆さんで楽しみましょう!

エミリア
「な、なら行きますわよ! おー!」

イーサン
「現金な奴……」

緑のカンペ:
なお、イーサンは自腹でお願いします。

イーサン
「うわっ、ひでえ!」

エリン
「心配しないでね。イーサンの分は、私が出すから」

イーサン
「ほっ……」

ミリア
「おこさまメニュー!」

ノッコ
「ふふっ……」

(ノッコ、ミリアの頭をなでる)

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