連載小説
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三年と五日目 夜
気がつけば私はグズグズに溶けて床一面に広がっていた。

ちーくんも、椅子に座ったまま眠りこけている。

凄い夕食だった。時計を見ると、深夜二時になっている。

私は丁寧にちーくんを床に引き下ろして、その身体へと私を押し広げた。
ちーくんは。

「ふふっ」

思わず笑みが漏れる。ちーくんは私を受け入れてくれたのだ。ちーくんは優しい。

ここじゃいくら私が下敷きになっても寝づらいだろう。私は丁重にちーくんを持ち上げ、私塗れのちーくんを風呂場へと運んだ。

まだまだ夜は長い。

ちーくんを私の詰まった浴槽に入れる。
ちーくんに触れているところが熱を持っているので、間違っても寒くなることはないだろう。
だが、なにぶんちーくんの身体は大きくて浴槽に入りきらない。だからちーくんの太もも半ばから下を私にした。
これで入る。

ちーくんの気管はもう私なので窒息することはない。
ちーくんを完全に沈めきった。

これでいい。だが少し腕が長い。肩口から先は私にしていいだろう。

今のちーくんにとって浴槽は広いので、これで自由が効くようになった。

「ふふ」

こぽりこぽりと私が笑う。
ちーくんの全てがこの浴槽で完結している。
だからこそ、私でもちーくんでもないところがあるのが許せない。

ちーくんのお腹が上下している。中に空気が入っているんだ。
あ、そうか。肺も私にすれば、ここも私で埋めていいんだ。

私はちーくんの食道を私の膣壁にしながら通り、気管支から肺の全てを私にした。ちーくんにもあの感覚を味わってほしかった。あとでベロベロ舐めてあげよう。
ついでに肋骨も私にしよう。私の方が頑丈だ。

このままちーくんを私にしていけば、そうすれば私がちーくんになれるかな?
ちーくんがちーくんのまま、私がちーくんに。

こぽこぽり、りと私が沸き立った。
落ち着け私。まだ全部終わってないんだから、ちーくんに余計な刺激を与えるのは嫌だ。

ちーくんは私だけを感じるようになればいいのだ。

ふふ。

私が血管を通り、私を通ってちーくんを私にしていく。私がちーくんになっていく。

全身の血管が私になった。
肋骨が、骨盤が、背骨が私になっていく。

横隔膜はもういらない。いるって言われたら私が代わりをやればいい。大事にしまっておこう。そのうち二人で食べるのも楽しそうだ。

空いた空間には私をぎっしり入れておこう。これで内臓も固定できる。
腎臓も、病気になりやすいらしいし私にしておいた方がいいね。私にする。

胴体の内側から、どんどん私にしていく。
筋肉まで私にしていいかな。
ちーくんの皮膚の中に私が詰まっているのを想像する。魅力的だ。私にしよう。

内臓の中に空気があるのが腹立たしい。私を詰めておこう。
ちーくんは気持ちよくなっちゃうかもしれないけど、気持ちよくなるならいいよね。

私の膣の感覚を植え付けられて、ちーくんの膣になった食道に私が詰まる。

私を生み出し、気持ちよくなるための器官になった胃がとびきり重い私の粘液で一杯になる。

私を快楽の象徴にするための十二指腸が私の媚薬粘液で埋まる。

小腸、大腸はいっぱいにすると苦しいかもしれないから、気持ちよくなれるように私の膣壁にしておいた方がいいかな。

慣れてないちーくんは大変かもしれないけど、ちーくんもきっと気持ちいいよね。苦しくなったら困るから、壁の外側に出せるようにするための穴をつけておこう。形はおちんちんを真似して。
これでいいよね。射精の快感なら、慣れてるしきっと大丈夫だよね。

大腸はもう前立腺でいっぱいで気持ち良さそうだけど、私のGスポット感覚も植えておいて良いだろう。私もちーくんに入れたいし、その時には気持ちよくなってほしいし。
襞がみっしりと増えた。撫でるとざわざわと震えて気持ちいい。ちーくんも気持ちいいよね。襞が私に絡みついて答えた。

上機嫌になっていた私が消化器官の外に目をやると、まだちーくんの場所が私に変えて欲しそうにアピールしていた。
心臓だ。急に変なことになったら怖いから、私にしておかないとちーくんも不安だよね。
ふふ。大仕事だ。けどもう慣れた。すぐに私になった。

こぽこぽこぽと私が喜ぶ。ちーくんが喜ぶ。

おちんちんは私にするのは抵抗がある。私はまだ処女だから、それを破ってもらったら記念に私にしたい。これでも私は乙女な方なのだ。

ちーくんが夢精した。気持ちよくなってる。ふふ。私も気持ちいい。

そうだ。尿道だけ私にしておこう。射精の時に傷ついたら怖いよね。
膀胱も私にしよう。どうせ私しか流れてこないし、ちーくんの中のいらない私は射精で出せばいい。
だから気持ちよくなるためのところに。

あ、そうだ。
もしちーくんが子供を産みたくなった時のために、これは子宮にして腸につないでおこう。入り口は弁をつける。当然私専用だ。ちーくんも喜ぶだろう。
ふふ、私って気がきく。やっぱり種族的なものなのかな。
ちゃんと子供ができたら気持ちよくなるようにしておかないとね。内側に私のGスポットとクリトリスをいっぱい植えた。

あとは細かいところを私にして、と。

これでちーくんの胴体が私になった。
おちんちんと精巣以外、皮膚の内側が全部私だ。気持ちいい。ごぷごぷと沸いた私がちーくんに詰まっていく。

後は頭。

ちーくんが苦しそうな顔をしている。やっぱり気持ちよすぎたのかな。
でも痛いよりはいいよね。

耳は私にした方がいいかな。ピアスとか開けたくなるかもしれないし、私なら痛くない。
私になる。

耳の穴はちゃんと気持ちよくなれるように、粘液を出すところを一つつけておいて、と。ちょっとずつ媚薬を出して慣らしていかないとね。
鼓膜は私がいい。ちーくんの聞いたものを私も聞くのだ。私にした。

鼻。奥の粘膜ごと私にすれば、もう鼻が痛くなったりしないし鼻血も出ない。
鼻血が出るのはそれはそれで興奮するけど……。血も私になってるし今更だよね。

そして舌と唇。
私を気持ちよくしてくれた。
私にするのは勿体ないかもしれない。
うーん。
私は迷った。保留だ。そのうち舌は伸ばしたい。けど今じゃない。

頭蓋骨は私にしないといけない。
万が一にもどこかにぶつけたときに、私が全部の衝撃を吸収できるようにしておかないと流石に不安だ。

間違っても脳を傷つけて私にしないように注意しながら、私はちーくんの頭蓋骨を私のものに置き換えた。脳との隙間に私を注ぐ。これで衝撃対策は十分。私にちーくんが浮いている。ふふ。

眼球。目が半開きになってるけど、起きてないよね。気持ち良さそう。
ずっと射精が続いている。根元の筋肉を締めてないからだ。おっぱいもちょっと膨らんで、私を噴き続けている。
今はこの方がいいよね。ずっとずっと気持ちいい。

ちーくんごめんね。お願いだから寝ててね。

私は眼球を私に変えた。周りの筋肉も私にして、これでちーくんの目はずっと良くなったはず。最初は慣れないかもしれないけど、私がいるから大丈夫だね。同じ景色を見ようね。

ふふ。こぽ。ふふふ。こぽり、こぽり。

私が笑う。ちーくんが笑う。
私が沸き立つ。ちーくんが沸き立つ。

適当に済ましていた口の中を弄り直す。
ただ私にしただけじゃ芸がない。ちーくんに申し訳ない。私がつまらない。

私はちーくんの口蓋に私の陰唇部分を埋め込んだ。
だって気持ち良かったし、これくらいのワガママは許してくれるよね。ちーくんも気持ちよくなれるし。ちゃんとクリトリスも植えよう。三つぐらい。見栄えが良くなった。

舌の下部分が空いている。うず。私は何かを埋め込みたくなった。せっかくだから、粘液を生成できるようにしようかな。良く滑るやつを。そうすれば私が喉の奥に入りやすくなる。ずっと出てたら大変だし食事の時だけでいいか。

鼻の後ろ部分にも結構大きな空間がある。
鼻に鼻毛が必要なくなったので、ここも何か別のものを作ろう。
なんてことを考えていたら、ちーくんが起きる気配がした。

ふふ、ちーくん。起きたらびっくりするんだろうなぁ。
すっごい気持ちよくて、最初は気絶しちゃうかもしれないけど。





なにかの中に浮いている。ぼんやりした視界は黒紫の一色で、何かが口一杯に、食道にも詰まってて呼吸が出来るはずもないのに息苦しくない。
じわじわと快感を発する身体中に何かが詰まっていて重たいはずなのに、しっかりとした支えが柔らかく俺を浮かせていた。

「おはよう、ちーくん。気持ちいいね」

気持ちいい。姉さん。身体中に姉さんが詰まっている。放尿するように射精が続いていて、姉さんが出て行く。胸から射精するように姉さんが出て行く。

身体から姉さんが出て行く。
身体の中のあちこちを擦って、強烈な快感を齎しながら。ばちばちと視界が光る。気を失う。
その度に姉さんが戻ってきて、また気がつくと姉さんが出て行く。
身体が動かせなくて、いつまでも快感が留まっている。

それを何度か繰り返していると、突然神経が繋がったような感覚がして、ぴくぴくと身体が震えた。

「ふふ、気持ち良さそう」

姉さんの声だけがはっきりと聞こえる。
ばちばちと光が積み重なり死にそうな快感が叩きつけられる中、俺の目は姉さんだけをしっかりと捉えていた。ほんのちょっとだけ快感が逃げる。姉さんを見るとお腹から快感が沸いてくる。

声が出せない。
俺を軽々と抱き上げた姉さんがとんとん背中を叩く。
ゆっくり、ゆっくりと。

「落ち着いて。ちょっと強すぎたから、半分くらいにしよっか」

急に快感が引いて行く。それでも身体に熱は残っていて、俺はそれを下半身と胸に集めて姉さんを放出し続けた。


俺が落ち着くまでたっぷり二十分はかかった。

「で」俺は努めて身体を動かさずに言う。「なにがどうなってるのこれ」

小さくなっている俺を人形のように抱きしめた姉さんは何でもないことのように言った。

「ちーくんは私と気持ちよくなるだけの存在になったんだよ」

「…………?」

俺は首を傾げた。

姉さんはしょうがないなあもうとばかりに言った。

「ショゴスを食べたりすると、その相手もショゴスに変わって行くの。で、ちーくんはいっぱい私を飲んだでしょ?」

俺は頷いた。間違いなく俺の限界を超える量を飲んでいた。

「だから、身体が私のものに変わったんだよ。それが気持ちよさの原因」

「明らかにそれだけじゃないけど」俺は言った「怒らないから、教えて」

姉さんは照れていたが正直に言ってくれた。

「内臓を、いろいろ気持ちよくなるように改造しました……」

「なるほど」俺は瞑目した。しょうがない姉さんだ。「んーと、腕とかはまた生やせるの?」

肩より先と腿より先がないのは流石に不便だ。それさえなんとかなればこの際いい。姉さんに包まれているのは心地いいし。
姉さんはコクリと頷いて粘液の海に俺を下ろした。

「粘液さえあれば身体はどうにでもなるよ。ちーくんは脳みそがまだ真人間だから、自分ではできないけど」

姉さんが話してるうちに、手脚の感覚が戻ってくる。
引き抜いてみると、若干青白いものの元通りの身体になっていた。

「不思議な感覚だ」

短くても、痛くもなんともなかっただけに違和感は逆に強い。
姉さんはにこにこ笑って言った。

「そういうことだから」

パシャリと俺の手足が崩れ、粘液になって俺の身体を支える。

「姉さん?」

俺が存在しない手脚をぴくぴく動かしているのを、姉さんは恍惚の表情で見ていた。

「私たち奉仕種族にとって、一番良いことってわかる?」

「えっと、全部自分でやることだろ?」俺は答えた。「自分を食べさせたり、世話したり」

「そうなんだけどちょっと違うの。私にとってはね」

姉さんにとっては。

仕えるべき主人が、何かをしようにもできない状況。
それが最も素晴らしいと。

だからちーくん。

私と二人でいる時は、欲しいものはなんでも言って、やりたいことは全部言って、与えられるがままに受け止めてくれないかな。

それが一番幸せだから。

姉さんはそう言った。

俺はしばらく姉さんの瞳に魅入られていた。
その目は蠱惑的で、冒涜的で、疑いようもなく淫らだったが。確かに愛に満ちていたのだ。

「姉さん」俺は言った。「喉が渇いた」

姉さんは「はい」と言って乳房を出し、それを俺の口元に添えた。
甘い。姉さんの粘液の味だ。それを少し飲んで。

「姉さん」俺は言った。「セックスしたい」

姉さんは顔を赤らめていたけど、俺がもう一度呼びかけると、「はい」と応えて服を粘液に戻した。
粘液の滴るクレバスが現れる。昨日は散々味わっておきながら、ついぞ見ることのなかったそれ。
ぴっちりと閉じたそこが開き、動けない俺の肉棒をゆっくり飲み込んでいく。

どろどろに溶けた粘液。昨日浴びたものより更に濃い。姉さんの中に詰まった熱を持った粘液が、静かな身体の動きに反して激しい動きで俺を射精へと誘う。

姉さんは動けない俺にのしかかり、ゆるゆると腰を振った。それだけでも舐められ、締められ、吸われ、耐えきれなくなった俺は射精した。姉さんはそのまま腰を振り続ける。

「姉さん」笑顔に涙を浮かべた姉さんが俺を見る。「お腹が寂しい」

姉さんは最初キョトンとしていたが、その意味を理解したようで妖艶な笑みを浮かべた。
膣の動きが変わる。

「ちーくんってば、可愛らしい誘い方覚えちゃって」

「胃まで入れて。あとキスして。喉まで」

俺は何一つ身体を動かさずにずけずけと言った。
姉さんがぶるりと震え、その衝撃で俺は射精した。

「仰せのままに、旦那様」

姉さんがキスを落としてくる。舌を入れ合うと、口に甘い液が滲み出てきた。姉さんの味だ。
姉さんの舌がその粘液を口蓋に塗りつける。
俺はイった。衝撃で噛みちぎった姉さんの舌を飲み込む。食道で暴れる感触が気持ちいい。

尻にピトリと柔らかく太いものが当てられた。俺が姉さんの新たに生やした舌を吸うと、合わせるかのようにズルズルと侵入してくる。慣れない快感が無闇矢鱈に気持ちいい。絶頂。噛みちぎった舌が食道を嬲りながら胃へ。その間も全身が弄られる。脳天に稲妻が走った。

どんどんと満ちていく感覚。改造された内臓への圧迫感が気持ちよさを生む。擦られて快感が走る。姉さんが中にいる。それを知覚させられて絶頂する。

姉さんは舌を突き出して俺の喉を陵辱しながら腰を振り続け、精を受け止めながら俺の胎に侵食してきた。

そのまま姉さんの舌を食べること二度。
姉さんが言った。

「胃まで全部、私で埋まったよ」

俺はすかさず言った。「もっと気持ちよくして。でも、言葉は喋りたい」

姉さんの瞳が怪しく瞬く。
だらだらと乳首から姉さんがとめどなく溢れ出す。奇妙な射精感が続く。
ズルズルと腹の中で姉さんが動くたびに。
尿道を際限なく姉さんが通るたびに。
姉さんの舌が食道を荒らすたびに。
全てが過度な気持ち良さで、俺は絶頂し、姉さんを味わった。

「姉さん」それでも、舌を食べれば言葉だけは発せられる。俺は言った。「結婚して」

一瞬の硬直ののち、姉さんの顔が花開いた。肉棒が内外両面から激しく刺激され、体内の姉さんが暴れまわりあちこちに粘液を放った。全く動かない身体の中で、気分だけが突き上げられてふわふわと漂った。それがとてつもなく心地良かった。

「ちーくんっ!安心して。私、もうちーくんから離れないからっ」

「子供がほしい」

「何人でも産むからっ! ちーくんも産めるようにしてるからっ! 孕ませるから!」

「幸せにして」

「する! 私が絶対に幸せにするからっ!」

姉さんはぎゅうっと俺を抱きしめた。
そして言う。

「だから、絶対に離れないで……」

俺は言った。

「それはこっちのセリフだ」

もう、姉さんと離れたら生きていけないだろうから。
一生面倒を見てもらわないと困るのだ。

俺はそれだけ言うと、暴力的な快楽に身を任せて姉さんの粘液の中に沈んでいった。

黒紫色の水面がキラキラと星のように黄金に煌めく。
ばちばちと光る快感の幻覚が降り積もっては消えていく。

俺はそれをぼんやりと見つめるだけで何もしない。
意志を放棄し、心まで依存するのは案外悪くない気分だ。

ただ。
薄紫の顔が優しく微笑む。
この星の双眸を見つめていることだけは、俺自身の意志によるものである。
それだけは確かだ。
19/07/28 22:46更新 / けむり
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■作者メッセージ
全国数億人のドM触手ヘソ姦ファンの皆さま。大変申し訳ございません。
当初の予定では子宮はヘソに繋がっておりましたが、アナル派との論争の結果敗北アクメをキメたため登場は見送りとなりました。合わせてヘソ開発シーン、淫紋刻印シーンも消滅してしまいました。
このような醜態をお見せしたこと、心よりお詫び申し上げます。

クレイジーサイコショゴスさんに強制全身性感帯ライフを強要されたい人生だった

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