連載小説
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リリムと謎の禁書(前編)
「はぁ…」
思わずため息が出てしまった。
その原因は私の手元にある一通の手紙。
これが母様からの指令書だったならどんなにいいことか。
この手紙の差出し人は友達の一人で、その内容はちょっとしたパーティーへの招待状。
ただ、パーティーとは言っても、相手も魔界では有数の貴族なので、集まる人もその賓客をもてなす内容もそれはそれは豪華なものになる。
だったら普通に楽しめばいいじゃないかと思われそうだが、生憎とドレスを着て社交場へ赴くのはあまり好きじゃなかったりする。
なにしろ、色々と気疲れするしね。
これなら、少し前に招待されたヴァンパイア夫婦とのちょっとした食事会の方がよっぽどいい。
「はぁ…」
再びため息をつきつつ、招待の手紙を引き出しにしまう。
行きたくはないが、行かなくてはならないだろう。
それが付き合いというものだし。
日時は少し先なので、憂鬱になるのは日が近くなってからにしよう。
とにかく、今は気晴らしだ。
そんなわけで、ルカの家に来ていた。
ただ、頭であれこれと考え事をしていたせいで、ノックせずに扉を開けてしまう。
「ルカ、遊びに来た―」
全て言い切る直前で、私は言葉を中断した。
いや、してしまった。
扉を開けて見たのは、上半身裸で佇む青年と、その前にひざまづき、青年の腰の辺りに抱きついているルカの姿。
そしてすぐに二人と目が合う。
「ごめんなさい、邪魔したわ」
そう言って静かに扉を閉める。
なんだか信じられない光景を見た気がする。
男なんか嫌いだと豪語していたルカが当の男に抱きついていたのだから、私が驚くのも無理はない。
そんな私に向かって、扉の内側からルカの悲鳴のような叫び声が聞こえてきた。
「ちょ!ちょっと!!違うのよ!!」
慌てたように顔を出したルカの顔は既に赤い。
今日も愉快な一日が始まったのだった。


顔を真っ赤にしたルカに腕を掴まれ、ほとんど強引に家に引きずり込まれた私は初めて青年の顔を近くで見た。
顔立ちは整っている方だが、顔があちこち腫れあがっている。
「あんたのせいで誤解されたじゃない!」と、ルカにしこたま殴られたのだ。
それでも笑みを崩していないあたり、かなり心の広い人物らしい。
「それで、あなたは誰なの?」
「僕ですか?僕は」
「情報屋よ」
青年が話している途中で、ルカが口を挟む。
「情報屋?」
「はい。それで、僕は―」
「黙りなさいよ」
どうやらこの青年にしゃべらせたくないらしく、ルカが再び口を挟む。
「え、でも」
「なによ、あんた!」
じろりと睨むルカ。
しかし青年も黙ったままではいられないらしく、おどおどしながら口を開く。
「せ、せめて自己紹介を―」
「なによ!あんた!!」
語気を荒くしながら言外で黙れと圧力を発するルカに、青年はしゅんとうなだれた。
「…はい。すいません…」
なんというか、この二人の力関係が一瞬で分かるやり取りだ。
ただ、このまま放置するのも可哀そうなので、当り障りのない問いを彼に向ける。
「ところで、あなたはよくここに来るの?」
「はい。ルカさんは大事なお得意さんですから。まあ、依頼がなくてもよく顔を出しに来ますけどね」
あら、これは…。
「よく顔を出すってことは、あなた、ルカに気があったりする?」
ちょっとした興味本位で訊いてみると、青年の顔がパッと輝いた。
「気があるどころじゃありませんよ!もう、完全に魅了されちゃってます!ルカさんはその可憐な姿といい、性格といい、全てが僕の好みです!」
少し興奮気味に語る青年は予想通りルカにお熱らしい。
「確かにルカは容姿も性格も可愛いわね。ふふ、ルカの魅力が分かる男がいて嬉しいわ」
「ええ、僕の理想の女性で―ぐあッ」
「黙れって言ってるでしょ!」
自分のことをあれこれと話されるのが我慢ならなかったのか、顔を赤くしたルカが青年を殴り飛ばした。
体重の乗った渾身の一撃だったらしく、青年の体は吹き飛んで積み上げられた本の山に直撃する。
それだけでも痛いだろうに、床に倒れた青年の上に本の山が崩れ落ちて彼を埋めていく。
狙ったのか、それとも偶然なのかは分からないが、もし狙ってやったのなら見事な二段攻撃だ。
結果、床に散らばった幾多の本から人の足だけが二本出ているというシュールな光景ができあがった。
「ちょっと!人の家を散らかしてんじゃないわよ!!」
散らかる原因を作ったのは間違いなくルカなのだが、本人はそんなことは棚上げして理不尽極まりない言葉を本から出てる二本の足に言う。
「ねえ、ルカ。さすがに可哀そうじゃないかしら?」
「大丈夫よ。そいつもインキュバスだし、これくらい問題ないわ」
しれっと言うルカに、悪いことをしたという感じは微塵もない。
まるで当たり前のような顔をしているあたり、彼に対する態度はこれが普通なのだろうか?
「…なんだか納得してはいけない気がするけど、とりあえず置いておくわ。で、さっきはなぜ抱きついてたの?」
「そんなことするわけないでしょ。さっきのは、あいつの腰回りを測ってたのよ」
ルカはものすごく嫌そうな顔で巻尺を取りだし、手で弄ぶ。
どうやら抱きついていたのではなく、計測していたらしい。
あまりに衝撃的な光景だったので、つい見間違えたみたいだ。
「そうだったの?でも、なんでそんなことを?」
「それは―」
「僕が頼んだからですよ」
しかし、ルカが言いかけた言葉は、散らばった本の下から体を起こした青年によって阻まれた。
「どういう意味かしら?」
「単純な話です。ルカさんの今回の依頼に対する代価として、服を作ってもらう。そのための計測ですよ」
「そういうことよ。依頼の報酬として、そいつの指定した服屋に服を作ってもらいに行ったってわけ。で、そこの店長のアラクネが、半端な物は作らない完璧主義で、体に合ったサイズのものを作るとかで、こいつの体のサイズを測ってこいって言われたのよ」
そう言いながらルカはため息をつく。
なるほど、そういうことね。
ルカの言葉で納得した私は、青年へと視線を戻した。
「事情は分かったけど、なぜお金ではなく服なの?」
「ああ、基本はお金でもらってますよ?ルカさんだから特別です。お金は誰からもらっても等価値ですが、物は違う。僕にとって、ルカさんからもらう品は一級の情報と同等の価値がありますから」
ようするに、ルカから何か物をもらいたいらしい。
そこにルカの気持ちがこもっているかは別だが、物をもらうだけなら手段としては悪くないだろう。
「それが、ルカの気持ちがこもっていない物でも?」
「ええ。ルカさんからもらった物。どんな経緯があれ、僕にとってはその事実があればいいんです」
それだけで満足とでも言うように、青年は穏やかな笑みを浮かべる。
ところが青年がそう語り終えた瞬間、その顔に辞書並みに分厚い本が直撃した。
言葉にならない悲鳴を上げて、本の海に再び沈む青年。
そんな彼に向って、犯人は短く言い放った。
「黙れって何度言えば分かるのよ」
ルカのあまりにも暴力的な行動に、私はため息が漏れてしまう。
「ルカ、本はそういう使い方をする物ではないと思うの」
「そうね。害虫を殺すよりも無益なことに使ったって思うわ」
素っ気なく言うルカに反省の色はない。
これは、もう何を言っても無駄ね…。
頭がそう結論を出し、この終わりが見えないやり取りに終止符を打つことにする。
「で、情報屋の彼にどんな依頼をしたの?」
「ああ、そう言えば訊くの忘れてたわ。ちょっとあんた!いつまでも寝てないでさっさと起きなさいよ!」
ルカに怒鳴られ、青年はよろよろと体を起こす。
「酷いですよ、ルカさん…。かなり効きました」
「うっさいわね。あんたがくだらないことばかり話してるのがいけないんでしょ。それより、ちゃんと調べてきたんでしょうね?」
「もちろん」
ふらつきながら立ち上がりつつも、返事はしっかりと返す。
その声音から自信はあるようだ。
「じゃあさっさと話しなさいよ」
「お望みとあらば、すぐにお話ししますが…」
青年はそこで意味ありげに私を見た。
部外者に話を聞かせてもいいのかということだろう。
今までの言動からただの好青年だと思っていたが、こういうところはきっちりしているあたり、さすが情報屋といえる。
「かまわないわ。さっさと話して。アレはどこにあるの?」
ルカも視線の意味に気づいたらしく、そう言って手をひらひらさせる。
「魔界でも有数の貿易都市」
さっきまでの穏やかな雰囲気とは打って変わって、流暢に青年は語り始める。
だが、次の言葉が紡がれる前にその胸倉をルカが掴んだ。
「ちょっとあんた。情報屋の分際で、なにもったいぶった言い回しなんかしてんのよ。殺されたいわけ?」
情報屋らしいところを見せようとした矢先にこれである。
なんだか、色々と報われない子ね…。
私が内心で同情するなか、青年は「すいません…」と申し訳なさそうに謝る。
恋愛は惚れた方が負けと言うが、まさに目の前の光景がそうだった。
「分かったら要点だけさっさと言いなさいよ」
舌打ちしながらルカが手を離すと、青年はちょっと泣きそうになりながら話しはじめた。
「えーとですね、クリューゲル地方の領主様の屋敷にあるのではないかと」
そう聞いて、私の脳裏には瞬時にクリューゲル地方の領主である彼女の顔が思い浮かぶ。
領主はヴァンパイアで、その夫が元ソムリエ。
私はその夫の方と、過去に少しばかりあれこれと文通をしていたことがあるのだ。
今思えば随分と気まぐれな行動だが、そのおかげか、今も時々食事会に招待されたりする。だから、ついこの間もお呼ばれしたばかりだ。
情報屋の青年が語った人物は、あの夫婦で間違いないはず。
ただ、彼女達の屋敷に一体なにがあるというのだろう?
私が静かに考察するなか、ルカは審判者のような目を青年へと向ける。
「その情報、確かなんでしょうね?」
「はい…と言いたいところですが、所詮は情報ですから。今までの実績から、真偽を判断してもらうしかありませんね」
神妙な顔で青年が説明し終えると、ルカはルカでなにやら考察し始める。
時折ぶつぶつと呟いていることから、完全に思考へと没頭したようだ。
クリューゲル地方を治める領主といえば面識があるので、それを言おうと思ったのだが、真剣な顔で考え事をしているルカに話しかけるのは躊躇われた。
だから、同じようにすっかり忘れられてしまった青年へと話しかける。
「あの子がああなったら、当分は話しかけられないわね」
「ええ。でも、ルカさんの真剣な顔を見られるなら、今みたいに放置されても僕は文句ないですけどね」
そう言って柔らかな笑みを浮かべながらルカの横顔を眺める様子は恋する青年そのもの。
だが、そんな顔をされては好奇心が首をもたげてしまう。
よって、つい余計な詮索をしてしまった。
「あなたは、なぜ情報屋になったの?」
私が問いかけると、青年は苦笑を浮かべた。
「実は、僕は元は教団の斥候だったんです。それで、魔界へと送り込まれたんですが、任務中にちょっと失敗して魔物に見つかってしまいましてね。なんとか逃げ切ったまではよかったんですが、今度は迷ってしまって。で、さ迷いながら見知った場所へと戻ってきた時には、既にインキュバスになっていました」
「なるほどね。教団にとってはインキュバスも魔物。だから、そのまま魔界で情報屋になったと」
「ええ。魔界への偵察任務は危険ですから、期日があるのです。それまでに戻ってこられなければ、その者は殉職したと見なされる。ましてや、僕はインキュバスになっていましたからね。戻ったところで待っているのは浄化という名の死刑だけ。だったら、このまま斥候としての経験を活かして情報屋でもやろうとかと思い、今に至るわけですね」
長い年月を生きる者が相応の人生を歩んでいるとは限らない。
山も谷もない平地のような人生を粛々と歩んできた者は数えきれないほどいるだろう。
逆にこの青年は、若くとも波乱の人生を歩いてきた。
どちらがいいかは、きっと人それぞれ。
ただ、自分の人生を振り返った時に思わず笑ってしまうのはきっと後者だ。
「あなたも苦労しているわね」
同情の言葉を言ってあげると、青年は再び苦笑する。
「ええ、まったく。最初は魔物となった自分に絶望したものでした。でも、そのおかげで僕はルカさんに会えましたから。悪いことばかりだったとも言えませんね」
青年は自分の過去をそう言って締めくくった。
そしてちょうどルカの考察も終わったらしい。
「とりあえず、クリューゲル地方の領主とやらに会ってくるわ」
「それは、僕の情報を信じるということで?」
「一応ね。ただ、今回の情報代は成功報酬。それを忘れんじゃないわよ?」
「ええ、それはもちろん。では、僕はこれで失礼します。また来ますね」
名残惜しそうルカに視線を向けると、青年は家から出ていく。
そして静かに扉が閉められると、ルカは私に向き直った。
「ほら、あんたもよ。アタシはこれから出かけるんだから」
「それなんだけど、私も一緒に行っちゃ駄目かしら?」
そう言った瞬間、ルカの藍色の瞳がすっと細まる。
「なんのために?」
こちらを見つめる顔は感情が欠落したかのように無機質なもの。
まるで初めて会った時のようだ。
こんな顔をするあたり、かなり真剣な用事らしい。
「あなたが情報屋を利用してまで探し求める物に興味あるからよ」
だから、私も偽らざる本音を答える。
「これは興味本位で関わることじゃないわ」
「じゃあ、あなたの手伝いがしたいという理由では駄目?」
これも私の本心。
それが分かったからか、ルカはため息をついた。
「悪いけど、今回はあんたに手伝えることはないわ」
きっぱりと断られ、今度は私がため息をつく。
やっぱり簡単にはいかない、か。
仕方ない、こちらからカードを切ろう。
「確かに直接手伝えることはないかもしれないわね。でも、間接的になら話は別よ」
「どういう意味よ?」
ルカが思惑通りに食いついてくれて、私は笑みを浮かべる。
「一地方を治める領主に、簡単に会えると思うの?」
「手続きをすればなんとかなるでしょ」
「そうね。でも、それがいつになるかは分からない。ましてや、なんの面識もない人がいきなり会いたいと言ってきたら、あなたが領主の立場だったらどう思うかしら?」
優しく語りかけると、ルカはしばし黙ったあとに目を細めた。
「…なにが言いたいわけ?」
聡いルカは、私が意味もなく話しているわけではないことに気づいたらしい。
「あなたは領主には会えないわ。手続きを済ませても、会うことができるのは当分先」
「そうかもね。でも、あんたを連れて行ったって結果は同じよ」
きっちり反論してくるルカだが、それでも話を終わりにしようという雰囲気はない。
ルカの性格上、益なしと判断すれば、そこで会話を終わりにするはず。
それでも、今こうして私の返事を待っているということは、少しは期待してくれている…はずだ。
だから、私は言った。
「私が、その領主と個人的に知り合いだと言っても?」
私の言葉に、ルカの眉がぴくりと反応するが表情は崩れない。
でも、後一押しだ。
「それこそ、個人的な食事会にお呼ばれするような仲なのだけど、それでも駄目?」
そう付け加えると、黙っていたルカはやがてため息をついた。
「…分かったわよ。ただ、面倒事になる可能性がある。それは覚悟しておきなさいよ?」
念入りに言ってくることから、ルカの探し物がやっかいな物であることがうかがえる。
「ええ、分かったわ。それで、あなたの探し物って、一体なんなの?」
「本よ」
あまりにも短い答えに、私は訊き返していた。
「本?」
「ええ。ただ、普通の本じゃない。特別な文字で書かれた、この世に存在するべきではない本。禁書よ」
禁書、ね…。
ルカが真面目に語ったことを考えると、決して大げさな言い方ではないのだろう。
だからこそ、その内容が気になる。
「禁書となると、その内容はやっぱり秘術?」
「人道に反することよ。悪いけど、それ以上は言えないわ」
「じゃあ、あなたはそれを手に入れてどうするつもり?」
ルカのことだから、その内容に手を出すということはないだろう。
考えられるのは、研究者としての好奇心だろうか?
「誤解される前に言っておくけど、アタシは禁書の内容になんか興味ない。それでも手に入れようとするのは、あれをこの世から抹消するため」
「じゃあ、その禁書を消すために?」
「そうよ。言ったように、あれは存在するべきではない物。だから消すの」
ルカが淡々と語るなか、私はふと思う。
そんな物騒な物であれば、魔王城で管理しているはず。
それが、人知らず世の中に出回っている?
「ねえルカ。あなたはどこでその禁書のことを知ったの?」
「見つけたのは師匠よ。その師匠でさえ驚いていたわ。こんな物が存在するのかってね。だから、あれを完全に消すべきだと判断したのも師匠」
「妥当な判断ね。ただ、禁書を一冊消すより先に、まずは元を断つべきじゃないかしら?」
いくら枝葉を切ったところで大元の木を切らなければ、枝は再び生えてくる。
それと同じで、禁書も書き手が存在する限り、いくらでも増える可能性がある。
「その点は問題ないはずよ。書き手はとっくに死んでるから」
「そうなの?」
「ええ。だから、今存在している物だけで全てよ。禁書は全部で五冊。それも、残りは二冊だけ」
「数まで分かるの?」
「禁書に全部で五冊って書いてあるのよ。まあ、その内容を信じるならだけど。で、そのうちの三冊はアタシと師匠で処分してある。残りもずっと探しているんだけど、なかなか見つからなくてね」
軽くため息をつくと、芳しくないとでも言うようにルカは可愛らしく首をかしげる。
「なるほどね。ただ、そんな物が存在してるなんて全く知らなかったわ。一体、誰がそんな物を書いたのかしら」
「書き手も含めて禁書については諸説あるけど、アタシと師匠の見解を言うと、旧時代の物じゃないかと思ってる。その内容は旧時代の特別な文字で書かれるしね」
「旧時代の?」
その部分を復唱すると、ルカは藍色の瞳をこちらに向けてきた。
「旧き時代の負の遺産。あんたならこれだけ言えば、書き手が誰なのか分かるんじゃない?」
試すような口ぶりとは裏腹に、ルカの顔は少しも楽しそうではない。
そんな彼女の顔を横目に見ながら、ルカからの情報を基に仮説を構築していく。
仮に旧時代に書かれたとしたら、その内容から察するに高度な知識を持った存在だったはず。
そうなると必然的に上位魔族が候補になるが、その中から一人を特定できるものだろうか?
疑問にぶつかったところで、今ルカに言われた言葉を思い出す。
ルカは負の遺産と言った。
それはつまり、今はこの世に存在していない?
旧時代では存在していたが、今は存在していない者。
「まさか…」
思わず呟いていた。
ルカの言った言葉を一つ一つ整理していくと、ある存在へと集約されたから。
「その顔は、誰が書き手なのか気づいたみたいね」
ルカの言葉に素直に頷く。
「旧魔王」
私がそう答えると、ルカは小さなため息をついた。
「アタシと師匠の結論も同じよ。断定はできないけど、否定するにはあまりにも可能性が有り過ぎる」
父様と母様に倒された旧魔王。
その旧魔王が残したとされる人道に反する内容の本。
そんな世に仇なすような物が出回っているとしたら。
「笑えない話ね」
「そういうことよ。これで分かったでしょ。この件は、軽々しい気持ちでどうこうする物じゃないって」
「ええ」
「じゃ、行きましょ。あれはさっさと処分するべきだから」
すっかり準備を終えたルカの言葉に従って外に出ると、扉に鍵をかけるルカの背に向かって思ったことを言った。
「それにしても、あなたが男の情報屋を利用してるとは思わなかったわ」
「アタシだってできるなら女の情報屋を利用したいわよ。でも、ものすごーーく癪だけど、アイツ、情報収集能力だけは優秀だから」
ルカは忌々しそうな顔でそう語る。
「そう?私は好青年だと思ったけど」
そう言った途端、ルカに胡散臭そうな目で見られた。
「あんた、目は大丈夫?アレはこの世に掃いて捨てるほどいるバカな男の代表みたいなヤツよ?」
あれだけルカに尽くしているのに散々な言われようである。
でも、ルカが家に入れている以上、それなりに気を許しているのではないだろうか?
「ねえ、ルカ。彼に少し気があったりは」
「全くないわね。禁書と同じで、この世から消えればいいと思ってるわ」
私の言葉を遮るように、ルカは即答で言い放つ。
しかも、彼の扱いは禁書と同じ。
なんというか、彼がルカを落とすのは不可能な気がしてくる。
前途多難ね…。
「あなたが男を好きになる日は来るのかしらね」
「一生ないわね。それより、さっさと行くわよ」
男よりも禁書を優先するルカに軽くため息をつき、それと同時に彼に同情すると、領主の屋敷へと向かったのだった。



領主の屋敷の前へと転移した私達はさっそく門へと向かう。
門の脇には見張りがいたが、向こうは私を覚えてくれていたらしく、あっさりと門を通してくれた。
できれば仕事の邪魔はしたくないけど、仕方ない。
屋敷を見上げながらそんなことを考えていると、後ろから声をかけられた。
「ねえミリア。訊きたいことがあるんだけど」
「なにかしら……あら?」
言いかけて、あることに気づいてルカを見つめた。
「なによ、人の顔じろじろ見て」
「もう一度言ってもらえる?」
「だから、訊きたいことがあるって言ってるでしょ」
「その前よ」
そう言って静かにルカの顔を見つめると、その頬に赤みがさしていく。
「え…、ミ、ミリア……?」
戸惑ったような顔で私の名を呼ぶルカに、つい笑みが漏れてしまう。
「初めて名前を呼んでくれたわね」
「ッ!!それは、その、べ、別にいいでしょ!!」
口調は強気なのに視線は全く合わせようとしないあたり、恥ずかしいらしい。
「ええ、もちろん。友達なんだしね」
友達なのだから、名前を呼ぶのは当然のこと。
ただ、ルカに名前を呼ばれるとなんだかむずかゆい。
それが可笑しくて、つい笑みが漏れてしまうのだ。
「ッ〜!!も、もうこの話は終わり!!さっさと行くわよ!!」
顔だけでなく首筋まで赤くしたルカは早足で行ってしまう。
「ふふ、一体なにを訊きたかったのかしらね」
遠ざかっていく小さな背中を見てそう呟きながら、私も後を追う。
そして屋敷の扉の前に辿り着くと、呼び鈴を鳴らす。
小さな鐘が済んだ音で鳴り、しばらくすると扉が開かれた。
「どちら様ですか?」
扉を半開きにして顔を覗かせたのは若い男。
領主であるヴァンパイア、レゼルバの秘書兼世話係であり、その夫だ。
「こんにちは、カーヴ。元気かしら?」
「ミリア様!お久しぶりでございます」
カーヴは私を見て驚いた顔になったが、すぐに扉を開け放つと一礼する。
「確かに久しぶりね。最後に会ったのは食事会だったかしら?」
「はい。して、本日はどのようなご要件でしょうか?レゼルバ様よりミリア様が来るとは伺っていないのですが」
返事を返そうとして、横からの強い視線に気がつく。
横目で見れば、腕組みをしたルカが無言で睨んでいた。
挨拶はいいからさっさと要件を言えと言いたいのだろう。
「ちょっと急ぎの探し物があってね。それがこの屋敷にあるみたいだから、訪問させてもらったの」
「探し物、ですか。失礼ですが、それはどういった物でしょうか?」
「本よ。だから、この屋敷の蔵書を見せてもらいたいのだけど」
あまり時間を取らせるのも悪いので手短に説明すると、カーヴは少しだけ考えるような仕草をした後、中に入るように手で促した。
「そういうことでしたらすぐにご案内致します。こちらへどうぞ」
「話が早くて助かるわ。でも、彼女に断らなくていいのかしら?」
「レゼルバ様には後で私から伝えておきますので、お気になさらず」
「ありがとう。それと、この子も一緒に連れて行きたいのだけど、いいかしら?」
横にいるルカを目で示すと、カーヴの視線もルカへと移動する。
当のルカはというと、澄ました顔で視線をあらぬ方向へと向けている。
無愛想、というのがしっくりくる様子だが、カーヴは特に気にすることなく微笑を浮かべた。
「ミリア様のお連れの方でしたら、問題ないでしょう」
そう言いつつ「どうぞ、こちらへ」と、私達を先導する。
そして一つの部屋の前で立ち止まると、扉を開けた。
「どうぞ」
促されるままに部屋に入ると、そこは小洒落たという言葉が似合う部屋だった。
幾つもの本棚には綺麗に本が並べられ、丁寧に保管されていることが窺える。
それらの本を読むための丸机や椅子も用意されていて、いちいち持ち出さずともこの場で読めるようにと配慮されているようだ。
用さえなければ、お茶を飲みながら読書したくなるような雰囲気である。
「さすがクリューゲル家ね。魔王城の資料室と比べても遜色ないわ」
「恐れ入ります。では、私はレゼルバ様に報告してきますので、お二人は目的の物をお探し下さい」
恭しく頭を下げるとカーヴは踵を返して部屋から出て行く。
それを見計らってルカが口を開いた。
「さて、アタシは禁書を探すわ」
「私も手伝うわ。どんな感じの本なの?」
これだけの本がある中から一冊の本を探すとなると一苦労だ。
そう思って言ったのだが。
「ああ、ここからは別に手伝わなくていいわ。禁書は微量だけど魔力を帯びているから、大して時間もかけずに見つかると思うし。そんなわけだから、あんたはその辺の興味ある本でも読んで待ってて」
私の申し出をあっさり断ると、ルカは奥へ行ってしまった。
「読んでてって言われてもね…」
元々私はルカを手伝うつもりでここに来たのであって、本を読みに来たのではない。
ルカなりの気遣いなのかもしれないが、ちょっと虚しい。
とはいえ、ただ立っているだけというのも時間の無駄なので、近くの本棚を眺めてみる。
ルカの話では禁書は魔力を帯びているようだから、私でも見つけられるはず。
そう思い、様々なタイトルの本が並べられた棚を眺めていると、部屋の扉が開いてカーヴが戻ってきた。
「ミリア様、飲み物をお持ちしました」
カーヴの手には銀の盆があり、その上にグラスが二つとワインボトルが一つ。
それを近くのテーブルに置くと、グラスにワインを注いでいく。
そしてワインで満たされたグラスを差し出してきた。
「どうぞ。最近入手した上等の白ワインです。気に入っていただけるかと」
そう言って微笑む姿は、今も昔も変わらぬまま。
出会った頃となんら変わりない姿のままだ。
「私にワインを出していいのかしら?今のあなたは彼女専属のソムリエでしょう?」
グラスを受け取らずにその縁をそっと指で撫でつつ、いたずらっぽく訊いてみる。
まるでいけない悪戯をしているみたいに。
「そのレゼルバ様よりお出しするように指示されていますので、ご安心を」
それを聞いて軽く微笑むと、グラスを受け取る。
「お連れの方は奥でしょうか。お呼びしてきます」
「待って。あの子の邪魔はしないであげて」
奥へ行こうとしたカーヴを呼び止めると、彼は困った顔を浮かべた。
「そうですか。しかし、グラスには注いでしまったのですが」
「じゃあ、あなたが飲めばいいじゃない」
「お客様にお出しした物に口をつけるわけにはいきませんよ。それに、私は仕事中ですし」
謙虚なカーヴらしい返事だ。
だからこそ、少し意地悪をしたくなってしまう。
「あの子は当分戻ってこないと思うわ。つまり、このワインを飲む人はいない。ソムリエのあなたが、ワインが飲まれずに捨てることになるのを良しとするの?」
そう言うと、カーヴの表情が曇る。
そんな彼へと、止めの一言を言い放った。
「ここはバーではなく、あなたの住む家。そして目の前にはグラスと私。これだけ好条件が揃っているのに、あなたは私に一人で飲めと言うの?」
言えるわけがない。
カーヴの性格上、それは分かり切っていることだ。
もっとも、私の意地悪はここからなのだけどね。
そんな内心を隠して穏やかな笑みを向けていると、カーヴは盛大なため息を吐いた。
「…一杯だけですよ?」
そう言ってグラスを手に取る。
「そうでなくてはね。じゃあ、乾杯といきましょう」
「なにに対しての乾杯ですか?」
彼の問いに小さく笑う。
「この地方の、更なる繁栄を願って」
「なるほど」
カーヴも同じように笑い、グラスを掲げて軽くぶつける。
「「乾杯」」
乾いた音とともに、グラスの中で揺れるワインをそっと口に含む。
それは、香り、味、飲みやすさ、どれをとっても文句のないワインだった。
「味はいかがですか?」
「意地悪ね。分かっていて訊いているでしょう。それより、乾杯までしておいて飲まないつもりかしら?」
「いいえ」
苦笑を浮かべ、カーヴもグラスを口につける。
そこを見計らって、私は言葉を投げかけた。
「ところでカーヴ、赤ちゃんの予定はいつかしら?」
そう言った途端、カーヴは盛大に咽せた。
「げほッ、げほッ!ミリア様、いきなりなにを…」
咽せ返って涙目になっているカーヴへ、満面の笑みを返す。
「あら、あなたと彼女は夫婦なのだから、子供を作るのは当然でしょう?」
「……」
頬を赤くして視線を逸らすカーヴ。
そんな初心な反応は期待通りのもの。
可愛らしく恥じらう顔を見て、つい笑みをこぼす。
「どうやらレゼルバはあなたをからかったりはしないみたいね。こんな可愛い顔をしてくれるのに」
「ミリア様、これ以上は勘弁して下さい…」
降参とでも言うように、カーヴは懇願するような声を出す。
「ええ、からかうのはこれくらいにしておくわ」
彼女の魔力がこの部屋に近づいていることだし、カーヴとの会話も潮時だろう。
彼女の嫉妬心を煽るような真似は良くないしね。
自嘲の笑みを浮かべていると、彼女が部屋に到着した。
「カーヴ、ミリア様が来ているとのことだが…」
扉を開けて開口一番にそんなことを言ったレゼルバだが、すぐに私の姿が目に入ったらしく、カーヴの返事を待たずに私の傍までやってきた。
「これはミリア様。ようこそいらっしゃいました。それと、ご挨拶が遅くなり、申し訳ありません」
「あなたは領主としての仕事が忙しいのだから、挨拶なんてかまわないわ。それより、私こそ急に訪問してごめんなさい」
「いえ、それこそ些細なことですから。それより、探し物があるとお聞きしましたが、それがこの屋敷に?」
「どうもそうみたい。今友達が探して…、どうやら見つかったみたいね」
そう言って視線を向けた先では、一冊の本を手に持ったルカが歩いてきていた。
ただ、心なしか、その顔が優れない。
まあ、禁書などというやっかいな物を持ってれば当然かもしれないが。
「お疲れさま。それが、目的の物?」
「そうとも言えるし、違うとも言えるわ」
ルカはつまらなそうな口調でそう言うと、無造作に本を机に投げ置く。
それは一見してどこにもありそうな普通の本。
ただ、タイトルがなんと書いてあるか分からない。
「偽物だった。複製魔法で作り出したオリジナルのレプリカね」
「それは誰かが増産したということ?」
「そうなるわね。見てて」
禁書にルカが手を当てて魔力を送ると、まったく同じものが精製された。
「見ての通りよ。巧妙に隠されてるけど、これ自身に複製魔法が付加されてるわ。一定量の魔力を送ると増産できるようにね。ちなみに、オリジナルにそんな機能はないわ」
つまりは外れということか。
私が小さくため息をつくなか、カーヴが禁書を覗き込む。
「これが、お探しの物ですか?」
「そうよ。どうやら外れだったみたいだけどね」
「カーヴ、私にも見せてくれ」
「ああ、はい。どうぞ」
カーヴが二冊に増えた禁書の一冊を手渡すと、受け取ったレゼルバはおやという顔になる。
「む、これは…」
「レゼルバ、あなた、これを知ってるの?」
「はい。これは、私がワインを探して各地を旅していた時に出会ったドラゴンからもらった物です」
レゼルバの言葉を聞いて、ルカに視線をやると目が合った。
そしてルカが小さく頷いたのを確認すると、レゼルバに問いかける。
「差支えなければ、その時のことを話してもらってもいいかしら?」
「ああ、はい。分かりました」
レゼルバは頷き、その時のことを語り出した。
彼女がそのドラゴンと出会ったのはリーベルという港町で、「これが読めるか?」と声をかけてきたそうだ。
「その時に見せられたのがこの本です。まあ、読めませんでしたが。それでもどんな内容なのか興味を持ったので、今のように複製して一冊もらい受けたのです」
話を聞き終えた私はルカと顔を見合わせる。
「どう思う?」
「そのドラゴンが本物を持っている可能性があるわね。複製魔法は複雑な魔法だけど、ドラゴンなら使えても不思議じゃないし」
そうなると、次の行き先はリーベルか。
ただ、ドラゴンが街に暮らしているとは考えにくいから、まずはそこで情報収集になりそうだ。
「あの、ミリア様」
思案していた私はレゼルバの声で我に返った。
「なにかしら?」
「話から察するに、その本は重要な物のようですが、ミリア様はその内容をご存じなのですか?」
元は興味をもってもらい受けたからか、レゼルバが問いかけてくる。
ただ、その質問にはどう返事を返すべきかと困ってしまう。
ルカが言うに、禁書の内容は知るべきではないもの。
しかし、レゼルバにはこうして協力してもらっているわけだし、話すべきだろうか?
「知るべきではないもの。その本は、そんなことばかりが書かれた禁書よ。だから特別な文字で書かれてるの」
そう言ったのは私ではなくルカ。
「知るべきではない…」
ルカの言葉を繰り返すレゼルバ。
その様子はまるで自分に言い聞かせているような感じだ。
「…なんにしても、私には過ぎた物のようです。だから、これはミリア様に差し上げます」
「いいの?あなたも興味があったのでしょう?」
「かまいません。どの道、私には読めない物ですし。それに、ワインを求めて各地を旅していた昔ならいざ知らず、領主としての仕事に忙殺される現在では、その本を解読する時間もありませんから。今の話を聞いて興味も薄れましたし、私にはもう不要な物です」
そう言ってそっと禁書を差し出してくる。
「分かったわ。これは、私が責任を持って処分しておくから」
「ありがとうございます。カーヴ、手紙用の紙とペンをここに」
「はい。ただちに」
秘書らしく、問い返すようなことはせずに、カーヴはすぐに部屋を出て行く。
そして大した時間もかけずに、指示された物を持って部屋に現われた。
レゼルバはそれらを受け取ると、紙にさらさらと文字を書き綴る。
文章が書き終わると彼女は親指を噛んで少しばかり血を出し、その血で最後に自分の名を署名した。
「ミリア様、これをお持ち下さい。彼女、イデアスが私のことを覚えていれば、会う際に役に立つかもしれません」
「悪いわね。このお礼は必ずするから」
「いえ、微力ながら、ミリア様の力になれれば幸いです。では、陰ながらご健闘をお祈りしております」
「ありがとう。じゃあ、私達はこれで失礼するわ」
レゼルバの屋敷に本物の禁書はなかった。
だが、まだ手掛かりがあったことは幸いだ。
レゼルバとカーヴの二人に屋敷の入り口まで見送られると、その別れ際に並び立つ二人を見つめる。
その光景は仲の良い夫婦そのもの。
だから、思いついた言葉を言いたくなってしまう。
「ああ、言い忘れてたわ。レゼルバ」
「なんでしょうか?」
首をかしげるレゼルバに、笑顔とともに言葉を返した。
「赤ちゃんができたら教えてね。お祝いの品を贈るから」
言った瞬間、二人の顔が赤くなる。
「なッ」
「ミリア様!」
戸惑ったように口を開けたままのレゼルバと、困り顔で叫ぶカーヴ。
まったくお似合いの夫婦だ。
でも、この調子では子供ができるのは当分先だろう。
「ふふ、じゃあね」
クスクスと笑いながら屋敷を離れると、ルカに呆れたような目で見られた。
「あんた、禁書を探してんだから、少しは真面目にしなさいよ」
「あら、禁書の件に関しては真面目にしてるわよ?だからこそ訊きたいのだけど、これは回収してきてよかったのでしょう?」
笑みを消し、ルカの藍色の瞳を見つめる。
「どういう意味よ?」
「偽物も回収する必要がある。あなたが屋敷でこれを見つけた時、そうとも言えるし違うとも言えると言ったのはそういうことでしょう?」
ルカの瞳は私がそう言っても動きを見せない。
だが、お互いに見つめ合っていたのはほんの僅かだった。
「…あんたの察しがよくて助かるわ。禁書の偽物は、禁書であって禁書じゃない」
ルカは視線を外すと、静かに歩き出す。
それに合わせて私も歩き出すと、ルカは再び語り始める。
「言ってなかったけど、禁書は本物じゃなくちゃ意味がない。そこに記されていることを実行するには、媒体として本物の禁書が必要不可欠だから。なら、偽物は放置してもいいと思うかもしれない。でも、偽物だとしても回収する必要がある。それはなんでだと思う?」
少し先でルカは立ち止まり、振り向きながら問いかけてくる。
「例え偽物だとしても、禁書の存在を世に知らしめる伝達手段になり得るからでしょう?」
「その通りよ。読むことはできなくとも、特別な文字で書かれた禁書は見た者の興味を惹きつける。そうして興味を持った人がやがて本物に辿り着かないとは限らない。それみたいに、複製魔法を付加されて出回ると最悪だわ。だから、偽物であっても回収して処分する必要があるのよ」
「じゃあ、リーベルに向かいましょうか。レゼルバの話を聞く限り、イデアスというドラゴンは少なくとも禁書を一冊は持っているみたいだし」
「そうね。じゃ、行くわよ」
ルカが転移魔法陣を展開し、私もそこに入る。
そして私達は港町リーベルに向かったのだった。




11/11/30 16:59更新 / エンプティ
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■作者メッセージ
どうも、エンプティです。
前回の『秘密のお仕事』から大した間も置かずに書けております。
やはりコラボ作品でもあるからだろうか?
そんなわけでKOJIMA様、大変お待たせしました!!
コラボ及びに宣伝ありがとうございました!!
この場を借りてお礼を言わせていただきます。
何を言っているか分からない読者の方のために説明しますと、今回登場したレゼルバとカーヴは作者のキャラではなく、KOJIMA様の作品である『Sommeliere』及び、『Sommeliere 〜After Story〜』に登場する二人です。
このお話では二人の魅力をほとんど書くことができなかった(エンプティがしょぼいため)ので、興味を持った人はぜひ読んでみて下さい。きっとニヤニヤできるはず。コラボなので、うちのミリア様もちゃっかり登場しています。
さて、次回はもう一つのコラボを仕上げますので後編は少し先になりますが、なるべく早めに仕上げられるように努力します。
…時期的に、行事があれこれあったり、欲しいゲームがもうじき発売だったりで大変ですが、頑張ろうと思います、はい。
ちくしょう、俺がもう一人いれば効率いいのに…。
では、また次回でお会いしましょう。

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