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3

 長い半年間だった。私が最も長く共に過ごす相手は必然的にキャスであり、私は耐えに耐えた。今思えば耐える必要があったかどうかは定かではないものの、曲りなりとも彼女の元で暮らす事になったのだから、最低限のマナーは守り粗相を起こさないよう努めたつもりだった。その日は特にする事もなかったので、共同の寝室を出てから普段私が使っている居間でスティーブン・ハンターのペーパーバックを読みながら10時ぐらいまで過ごし、ソファから立ち上がり地上へと上り、玄関を出て菜園の世話をした。ラディッシュの育ちが微妙に悪いようで、さてどこを間違ったかなと現実逃避をしながらズッキーニの調子も見てみた。こちらはそろそろ収穫できそうだ。いずれ食卓に上がるだろうな、と新たな楽しみを覚えながら11時半頃には再び地下へ戻った。
 着替えてから居間でソファに寝転びながら、そろそろ昼食でも作ろうかと考えた矢先、不意にキャスの事を意識してしまった。昨夜も彼女は無防備にも私の隣で眠りに就いていた。私は気合で何とか眠れたが、この戦いはまだまだ続きそうだった。久しぶりに手淫でもしようかと考え、私はどちらの手を使っていただろうかとローランド・デスチェインさながらに下らぬ想いを馳せた。あの小説に登場するかのガンスリンガーは両手効きなので不味そうなロブスターの襲撃後も事なきを得ていたが。
 いかんいかんと私は頭を振り、ラジオを付けて気分を切り替える事にした。雇い主(?)の自宅で一発抜くわけにはいかんだろうと自分に言い聞かせ、何かイギリスの流行りの曲でも流れるかと期待していたが、あろう事か何故かシカゴの「素直になれなくて」が流れ始め、慌ててラジオを消した。何となくあの曲はキャスを想起させる。
 それから東洋の禅について考えながら必死に振り払おうとしていると、妙に甘ったるい声が聴こえてきた。最初は気のせいかと思い、耳を済ませた。もちろんそれが意味するところは明白だが、人間は想定外の事態に陥ると現実を虚構ではないかと疑う事がままある。嘘だろうという気持ちとアホ臭い期待の混ざった気持ちが混ざった状態で耳を澄ましているとやはり再び聴こえてきた。
キャスも人並みにそういう欲求はあるのだろうし、その事でとやかく言うつもりはない、と冷静なフリをしながら平常心を保とうと努めた。しかしソファに寝転がったままだった私は立ち上がろうとして不意に大きな音を立ててしまい、それと同時にキャスの甘い声は途絶えた。私は血の気が引いていくのを感じながら昼食の準備をしようと居間を出た。正直なところかなり溜まっていたが、そうでない風を装った。
 2人だけの食堂として使っている部屋―キッチンもあった―で準備を済ませ、テーブルの上に乗せていると、ドアが開きキャスが入ってきた。今日の昼食は私が作り、サラダと鹿肉ステーキ、マフィンを作り、ついでにエッグ・ベネディクトも作っておいた。朝食向けではあるが、いつかのホームパーティーで誰かの奥さんが作ったエッグ・ベネディクトの味が忘れられなかったので度々空いた時間に練習していた。私は彼女に所有されているのだから、こうしたささやかな文化侵略による反撃をしても構わないだろう。
私は何気ない風を装いながらキャスの方を向いたが、彼女の顔が思いの外上気しているのを見るや、料理の方を見るフリをして顔を背けた。正体を見せた時に見せたあの煌びやかな服は正装らしく、普段は翼を隠し自然な服を来ているのだが、普段着から感じるエロスというものも、それはそれで馬鹿にならない事を私は知らないわけではなかった。気まずいのはお互い様らしく、食事中もあまり会話はなかった。私はしたたかにベネディクトをキャスに勧めながら考えた。ヴァンパイアは最初、男を血の供給源にして召使いとして使う。だが彼女は未だ私の血を吸ってはいない。他の誰かの血を吸っている様子もない。更に言えば、ヴァンパイアの生態から考えてゆくゆくは我々の関係も…。
 ムラムラとした気持ちを断ち切るため私はキャスに、もし私に手伝える事があれば何でも言って欲しい、できる限りの事はするからと告げた。

 その晩、食事と風呂を済ませ、共同の寝室でベッドに腰掛け、ベッドから漂うキャスの匂いを意識せぬよう耐えながらペーパーバックの続きを読んでいると、キャスが部屋に入ってきた。しかし見てみると彼女はあの正装姿―上着や装飾は取り払っているが―で、一体何事かと私は疑問を抱かざるを得なかった。私が近くのテーブルにペーパーバックを置くと、彼女は無言のままじっとこちらを見ながら真っ直ぐ歩いてきた。妙な威圧感を感じながら次に起こる事態へ身構えていると、キャスが私の左隣に腰を下ろした。次に何が起こるのだろうかと考える間も与えず、キャスは私の左腕に抱きついてきた。いよいよもってヤバい展開になってきた事を感じながら私は彼女を見た。私の方が背が高いため、必然的に少し見下ろす形にはなったが、そのせいで彼女は私を見上げる形となり、よく見れば無言のまま頬を染めながら上目遣いでキッと睨んでくる事も相まって、それを見た私の心臓が早鐘を打つのが恐らくは彼女にも伝わっていただろう。彼女のふくよかな胸が当たっている事を意識せぬわけにはいかなかったのだから。1分ぐらい沈黙が続いたが、キャスはもぞもぞとベッドに上がり今度は後ろから抱きついてきた。必然的にその胸が私の背中に押し当てられるわけであって、更に不味い状況が招かれてしまった。この時も無言だった。そこから何分経ったかは焦りすぎていたせいで覚えていないが、次にキャスは両脚を私の右方へ投げ出す形で私の膝に乗ってきて、ついでに上半身は正面から私に抱きついてきた。私の胸に顔を押し当てながら少し恥ずかしそうに睨んでくるのを見て、何かの粗相をしでかした事への抗議なのか、それとも…とそこでもう1つの可能性は切り捨てた。ヴァンパイアの性質上、基本的にあり得ない。
 その時私がどういう表情をしていたかはわからないが、彼女は更なる抗議をするかのように投げ出していた脚で私を正面から挟み込むように座り直した。私は理性が降参しそうになっているのを感じながらも、否定していたもう1つの可能性が正しかったのではないのかと考えた。それを確かめるため、私はキャスの頭を撫でてみた。予想通り嫌がらない。様々な想いが駆け巡る。昼間のキャスの自慰は私を想ってしていたのだろうか。そして今彼女がこうして無言で抱きついてきているのは、不器用な彼女なりに私を誘惑しているのだろうか。私はそこまで考えて、自分が今の状況をとても嬉しく思っている事に気づいた。同棲が続いて、彼女を次第に好きになっていったと改めて気づく。そしてその彼女が…。
 そう思い至った事で、私は彼女が可愛くて仕方なく思えてきたが、それも無理はない事だろう。私は試しに、これからセックスに至っても構わないかどうかを聞いてみた。彼女は何も答えなかったが、しかし赤面したままこちらを見たり目を逸らしたりしていた。私は少し笑った後、彼女と唇を軽く重ねた。5秒程で離したが、特にキスを嫌がっている様子もなくこちらを睨んでいる。頭を撫でると再び恥ずかしそうに俯きながら睨んでくる。
 事に至る前に、私はキャスを抱きしめた。すまないが今の君を見ているとこちらも我慢ができそうにない、と言ったが彼女は無言のままだった。物言わぬまま抱きしめ返してきたキャスの様子から、いちいち言わなくてもわかるでしょ、と不器用さと恥ずかしさ故に無言なのだと何となく悟る。
 まず2人でベッドの上に上がって、服の上から胸を触った。触ったまま彼女の反応を伺い、嫌がっているならやめるつもりだったが、目を逸らすだけで何も言われなかったので、欲望に突き動かされて揉んでみた。胸の感触が更なる興奮を与えて我を忘れそうになり、キャスの反応を確認した。彼女は耐えるような表情をしていたが、やはり嫌がっている風でもなかった。この時点で既に私の肉棒がいきり立ち、ズボンを圧迫していた。胸を揉みながら再びキスをしたが、今回のキスはより深いものとなった。やってから、今回は彼女の同意を得られるか確認を取っていない事に気づいたが、極度の興奮でそれも困難だった。あの感覚はなんと言えばいいのだろうか。とても面白い物語を見ている時の、早く次が見たいという急かしに少しだけ似ていた気がする。

 私はキャスの斜め後ろに回って胸を揉みながら時折お互い横向きにキスをしつつ次第に彼女の腹や脚を撫で始めた。スカートの上を暫く撫でていたが、相変わらず赤面しているキャスがムッとした様子を見せたので私は焦った。だが彼女の様子を観察すると、やはり嫌がっているわけではなさそうだった。ならば焦らしていると勘違いされたのだろうか。
 私は、嫌だったらやめるから、すまないと断りを入れてゆっくりと紅いスカートの中に手を入れた。指が彼女の下着に触れた時点でもの凄い興奮が押し寄せてきて、その興奮を制御しながら下着越しに秘所に触れた。ビクッとキャスの体が揺れて、私の心に更なる興奮とこの先に進んでもいいのだろうかという不安をもたらした。
 それに耐えかねたのか、キャスは自分から私の唇を奪い、自分から舌を絡めてきた。求められる感覚に新たな喜びを覚えた。キスが終わると彼女は気恥かしそうに目を逸した。心の中で納得し、彼女の秘所を下着越しに愛撫し始めた。空いた方の腕で胸を揉んだり、髪を撫でてあげながら暫くそうしたが、下着が汚れるかも知れないので―実際下着は湿り始めていた―慎重に下着を脱がせた。とりあえず全部脱がさず、この時点では膝の手前辺りまで脱がせた。まだ私は彼女の斜め後ろにいて、彼女のそこがどのような具合か確かめたい気持ちはあったが、ひとまずは彼女を気持ちよくしてあげる事を優先した。もちろん私は彼女に仕える身なのだから。
 最初は外側をゆっくりとなぞった。それだけでも彼女は耐えるような表情をし、少し苦しそうに息を漏らしたりした。慣れてきたのが見て取れると、既に液の垂れ始める内部へと指を入れた。今までの共同生活では、恐らく最も慎重な作業だったと思う。ゆっくり鳴らし、少しずつ動かす、その繰り返しでついにここまで侵入した事で、凄まじい達成感を味わった。既に自分のものが硬くズボンを押し上げているだけでなく、彼女同様濡れ始めている事に、この時ようやく気づいた。正確には既に自分の下着がかなり濡れて少し不快な感じがしていたが。
 私は次第に指を激しく動かすようになり、キャスの喜ぶ場所をそれとなく探し始めた。やがて反応の異なる場所を見つけ、そこを重点的に意識しながら指を動かした。キャスは時折目をキュッと瞑ったり首を後ろに逸らしたりしてそれに応えた。無言ではあったし、昼間のように嬌声を挙げるでもなかった。恥ずかしいから我慢しているのだろうか。しかし特に不愉快な印象も受けず、変な嗜虐心を喚起するものでもなかった。私は綺麗だとか可愛いだとか囁きかけながらスパートをかけた。彼女がそろそろ達するだろうと踏んでいたからだが、しかしながらここで彼女は息も絶え絶えに、私の手を腕で握って止めてきた。またもや私は正確な判断を要する岐路に立たされていたのだ。不愉快ではないはず、ならば何故か。考えに考え、気づいた事を口にした。もう挿れても大丈夫か、中でイキたいのかと、返答される事に期待せず問いかけた。返答はなかったが、息を整えながら私を見つめるキャスが切なそうに、物欲しそうにしているのが見て取れたから、私は次の段階に差し掛かった。
 キャスを抱えて2人で使っている大きな枕へと彼女を寝かせ、脚の方に移動した。その時初めて彼女のスカートの奥がどうなっているかを目にし、その様相に目を奪われこのまま暫く凝視していたいという気持ちにもなったが、ジロジロと見て必要以上に恥ずかしい思いをさせるのは望むところではなかったため、5秒程度で切り上げて彼女の脱ぎかけの下着を脱がせにかかった。が、しかしここで妙な気分を覚えて、完全には脱がせず片方の脚だけ脱がせたままにしたため、キャスの右膝の辺りに下着が引っかかる形となった。この光景のもたらす新たな興奮は一体何か。私にされるがままのキャスが、しかしながら赤い顔でキッと睨んでいるのを見て、私は変態ですまないと謝りつつ、上は着たままズボンと下着を一気に脱ぎ捨てた。いきり立つ私のものが現れたのを見てキャスが手で顔を覆いながらチラチラと見ているのが目に入った。私は微笑んで腰を下ろし彼女の頭を撫でながら可愛いと言い、これからするつもりだが大丈夫かと聞いた。予想していた通り、今までと同じ反応が帰ってきたので、私は彼女のスカートを少し上にずらし、膝丈よりも長い可愛らしく飾り立てた黒いソックスが妖艶さを際立たせている脚を開き、暫く彼女の秘所に自分のものを擦りつけ形式だけになりつつある意思の確認をした。もう充分だろうと判断し、その内部へと侵略を始めた。
 心痛むブリーチング作業は上手くいったが、破る際キャスが明らかに顔をしかめた。左目を瞑り、右目だけでこちらを睨み、涙を流している。しかも今気づいたが、私は避妊具を使っていなかった。痛くしてすまない、嫌ならすぐにやめる、それに避妊を忘れてすまないと告げたがそうすると彼女は脚力だけで私を拘束した。勝手に判断してやめるな、という事だろう。またしても私は謝りながら、彼女が落ち着くまで様子を見る事にした。暫く様子を見て、慣れてきた風に思えたので私は彼女の中を少しずつ堪能し始めた。しかしすぐに自分の立場を思い出して、独りよがりなセックスにならないよう注意した。万が一の可能性どころではないが、一応達しそうになったら引き抜くとしよう。今までこのような快楽を味わった事などなく、恐らくどんな薬物でも得られないような快楽を感じながら、私よりもキャスが気持ちよくなれるように、色々と試した。しかし胸を愛撫している際に、まだ彼女のシャツを脱がせていない事に気づいた私はシャツを脱がせようと、ボタンを外すため手をかけた。しかしその手をキャスが掴み、私をキッと睨んできた。乳房を直接見られたくないのか、と聞いたがそうでもないようだった。反応からするとむしろ直接触って欲しいようにも見えたが、ならば他の要因で見られたくないのだろうか。色々と考えて、もしかしたら上半身のどこかに何かの痕があるのだろうかと思い至った。私は、もし君が何かコンプレックスを抱いているとしてもその事で悪いようにはしない、と言った。反応から見て納得もいかないようだが、私のボタンを外す手を弱々しく躊躇いがちに握るだけで、本気の抵抗はしてこなかった。私はここで我がままを言ってすまないと謝罪―久しぶりにここまで謝り続けたので日本人になった気分だ―し、シャツのボタンを全て外し終えた。しかし上部をはだけさせただけで、この時点では情欲を促す下着以外には何も目についていなかった。下着を上にずらして乳房を露出させると、形のよいふくよかさが見て取れ、興奮が高まっていった。腰を動かす傍ら、乳房全体を愛撫したり、あるいは指で乳首を刺激したり口で舐めたりした。私の愛撫が激しさを増すと、キャスもそれに合わせて体が跳ねたり、我慢をしているような声が漏れた。時折手を握ってやったり、顔に私の手を添えてあげたりした。また、この時点でまだ好きだとか愛してるだとか私は一言も告げていなかったので、慌てて愛を囁いた。彼女はその度に顔を逸らしたり、キスをねだって誤魔化そうとしたが、それが私にとってはこの上なく愛らしくて仕方がなく、何度も何度も言ってあげた。段々と快感が上り詰めていくのを感じて、私は彼女の太股を外側から掴んで、次にくびれを掴んで腰を振り続けた。
 いかん、自分だけが快楽を得ようとしているなと自制し、再び愛撫や手繋ぎに戻ったが、その時私は何気なしにボタンの全て外れたキャスのシャツを下まで開かせた。キャスがハッとするのが見え、私は何故彼女が脱ぐのを躊躇ったかをようやく知る事ができた。腹部中央の胸のすぐ下の辺りに菱形と円錐を二つ繋げたものの中間のような形の、5インチか6インチはある傷痕が右を上にして緩やかな傾斜で斜めに走っていた。私は例によって謝って彼女の機嫌を損ねぬよう努めた。性交は中断され―挿入されたままだが―、私は彼女の意思を尊重したい趣旨を述べた。
 今まで無言だったキャスが口を開き、ゆっくりと事の経緯を話し始めた。辛いなら無理して言わなくてもと進言したが、いずれ話す事になっていたからと彼女は応えた。彼女が言うには、オーストラリアで負った傷らしい。言われてみれば彼女が滞在していた時期のある夜中に、負傷者だと誰かが叫んでいるのが聞こえた事があった。それから少しして彼女はキャンプを後にしていたのを思い出す。彼女は特殊な任務を帯びており、敵が要する強力な戦闘員―馬鹿げた事にあの化け物どもは勇者と呼んでいたが、我々は専らスローターのコードネームで呼んでいた―の排除を命じられていたらしい。機密レベルはかなり高いはずだが、それでも私が口外せぬと信頼して話してくれたようだ。そのうちの最も手ごわかった相手―なんと我々が苦戦していたブルーヘッドだった。奴は化け物どもの例に漏れずフルフェイスの防具で顔面を覆っていたが、それは自分専用とでも言いたげに青い模様でペイントされていた。重要人物だと自分で公言するような狂気じみた行為に思えたが、奴らは実用性よりも優美さを求める節がいくらかあった―との交戦中、反撃を受けて奴の剣で刺されたらしい。剣は祝福―呪いの間違いだ―を受けていたので傷が残ってしまったという。ブルーヘッドが排除された事は知っていたが、まさか彼女だとは。魔物娘は人間を殺せないのではなかったかと聞くと、その制限も強い意思を持てば無視できるし、それに奴らは人間ではない、悍ましい連中だったからと答えた。
 キャスは傷を気にしているようだったので、私は賭けに出る事を決めた。まず彼女の傷を手で撫でる。愛おしそうに、愛撫するようにして。突然の事にキャスはビクッと驚き、無言に戻って目で抗議してきたが、私は何度目かもわからない謝罪と共に、今度は傷を舐め始めた。何故か彼女は気持ちようさそうにしていたが、舐め終えると私の胸を両手で軽く何度も叩いてきた。微笑ましさを覚えつつ、ブルーヘッドがムカつくのは事実だがこの傷も含めて君が好きだと告げた。

 膝を掴んで腰を振る際に、私はキャスの右膝に引っかかっている脱ぎかけの下着の、湿っていた箇所を探り当ててそれとなくそこを触り始めた。徐々に妙な興奮が高まったが、キャスにもバレているようで、涙を流すそのキッとした目で私に抗議をしていた。見たところまだ彼女は達していないようで、しかしながら私の方はそろそろかな、という予感がしていた。自分だけでなくキャスもイケるように頑張ろうと決め、スパートをかけた。彼女に覆いかぶさるよう体勢を変えた。これはキャスが私に抱きつけるよう配慮したものだが、案の定彼女はそうしてきて、それがとても可愛く思えた。可愛いとか愛してるとか色々と言いながら私からもキャスを抱きしめる。キャスも段々余裕がなくなってきたようで、押し殺した声が漏れる感覚が狭まり、明らかに呼吸が荒くなった。やがてその瞬間かと思われたタイミングで私は腰を引こうとしたが、キャスはそれを許さなかった。綺麗な腕を私の首に回し、そして黒い膝丈上のソックスでその美を称えられた脚が私の背中に回っており、引き抜く事は不可能だった。妊娠するかも知れない、と私は慌てて言ったが、強く睨まれてしまう。我慢しようと下半身に意識を集中させ、腰を止めようと熱くなった頭でぼんやりと体へ命令を出そうとした。だがキャスは私をイカせようとしたのか、遂にここで私の無防備な首の右側面を噛み、迅速に血を吸った。絶頂寸前の状態で血を吸われ―ヴァンパイアの吸血には催淫作用があるようだ―私にそれ以上の我慢は不可能だった。キャス、すまない…。
 長い長い射精の快感と、生でヤって孕ませた可能性があるという罪悪感を二重に覚えながらも、強くキャスに抱きしめられた私は、どこか安心していたのかも知れない。

 私はキャスに腕と脚で拘束―数十年後の日本ではこれをだいしゅきホールドと呼んだ―されて動くに動けず、私は苦笑しながらキャスと密着していた。もう暫く彼女は余韻に浸っていたいと見える。さすがに射精は終わっていたが、この余韻だけでもかなり気持ちよく感じられ、何とも言えない、油断をすれば眠ってしまいそうな感覚に耐えていた。血を吸い終えるとキャスは度々自分からキスをしてきた。彼女の顔には涙が流れた跡が残っており顔や髪のところどころに汗が見え、表情からすると彼女も絶頂を迎えており今はその余韻でぼんやりとしているようだった。私はキャスの事を愛してるが、キャスはどうかね、と聞いてみた。彼女が答えない事は知っていたが、愛を囁くとキスを求め一層強く抱きしめてくる彼女を見ていると、ただ快楽を得たいだけではなく、彼女なりに私への愛を告げている事が何となく理解できた。そんな彼女がたまらなく可愛く、愛おしく見えたのは言うまでもない。さすがにいつまでも彼女に覆いかぶさっているのは、男としてのプライドが許さなかった―この程度キャスには重くもないだろうが、それでも私は嫌だった―ので、未だ互いの性器が繋がったまま体を起こし、互いに対面した状態でベッドに座った。
 そう言えば、と私は思い至った。ヴァンパイアは伴侶が抱くに足る、インキュバスになるまではセックスをしないはずだった。私はまだインキュバスではないので、彼女は特殊な例だと言える。どこかの大学にうるさく質問されそうなのでこの事は2人の秘密にしようと心を決めた。もしかしたら、彼女は一生私へ素直に愛を告げられない可能性もあるな、と何となく予感を覚えるも、しかし別に構わないかもなと勝手に納得した。
「キャス、愛してる」
「私は別にあなたの事が好きなわけじゃないわ…!」とキャスは言い、それと共に私の背中に回された彼女の手足が強く私を抱きしめた。彼女の背中から翼が出現し、私を包み込んだ。心なしか彼女の秘所の締まりも強まった。さながら、誰にも渡さない、私のものだからと言いたげに。
「こんなに出して…妊娠したらどうするのよバカ…」
 そう言うとキャスは私を赤面した状態で睨みつけ、そして愛おしそうに私の唇を奪って舌を絡めてきた。私もそれに応え、そしてキスが終わると、彼女の理不尽な抗議内容に苦笑しながら「すまない。もし妊娠したら、キャスさえよければ産んで欲しい」と告げた。
「ふんっ」
 不機嫌そうな返事と共にキャスは私に体を預けるようにして抱きしめ、そして私も抱きしめ返した。とりあえず目先の仕事はシャワーとシーツの交換だな。

 かくしてマイケル・ルイス・ジェンキンスとカサンドラ・クロフトの生活は続いていく。他のヴァンパイアの例とは少し違えども、本人同士が幸せなので誰も突っ込みはせんだろう。娘が例の種族だった場合以外は。

―おう長々とした自慢話やめーや。
―べ、彼と一緒にいて別に嬉しいわけじゃないから。ただ、ええと。その、暖かくて幸せで…そ、そう言えばあなたはともかくそこのロリドラゴンは旦那さんと幸せそうよね。
―旦那じゃない! あいつは従者、じゃなくて…旦那…いややっぱり違うが…でもやはり旦那のような…
―おうどさくさに紛れて自慢するのやめーや。今日来てる3人で私だけ独身なんだけど!
―気になる者はおらぬのか?
―いるけど全然私に靡いてくれないわ。堅物だし。
―大変ね…。

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無駄に長い3話。「化け物ども」=教団のモデルはモロにサーベ○スです(笑)
あの白基調なのにどこか気持ち悪い雰囲気は敵組織として秀逸ですね。地獄の番犬というより冒涜的な角度の猟犬(ry

このSSについては、書きたい事は大体書いたのであとは後日談が少々の予定。

14/12/25 22:01 しすてむずあらいあんす

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