読切小説
[TOP]
対の翼にはさまれて
「まー、やっぱり押しの強さは要ると思うわけよ」
「俺に騎竜がいないのと関係あるかそれ」
「いやあるよ絶対!俺なんかなあ」
「こないだ失敗したナンパだろ?それさっき聞いた」


 はいはい、と俺は笑って調子づく悪友、フレッドをよそに愛用の双眼鏡と共に空を見やる。
 放っておけばどこまでも図に乗る男だ、構うのも程々に目を離す。

 ……夕暮れである。
 あれはワイバーン、それも二人か。
 気持ちいいんだろう、あんなふうに空が飛べれば。
 にしても銀色と、黒か……子供じみた感想だが、やっぱりかっこいい色だ……


「……お。おい!こっち来てみ!」
「?……いや、お前」


 と、考えていたところ急に俺は扉の中に引きずり込まれていた。
 フレッドは引くくらいにノリノリだったが……

「……」


 溜息を吐く。
 いや期待するのは分かるがそれでも、『慰労館』なんて名前の宿に入る奴があるか。
 しかも屋根と看板滅茶苦茶桃色で、なんというかこれは……
 



 

 とは顔を渋くして見せたものの。



 「……で、結局これかあ」

 
 なんだかんだでずるずると押し負けて、今俺は露天風呂から空を見上げていた。
 正直途方に暮れている。

 「いや悪くはないんだがなあ」 

 とはいえ質も悪くないし料金にしたって高くない。
 風呂も大きめ、だというのにどういうわけだか自分以外は誰もいない。
 まあ実のところ不気味、がとても気分がいいのも確かだ。
 しかも3階建てで景観もよろしい、空が見えるのが特に……

 「……何階建てだこの宿」

 つい後ろの方を見る。
 多く風呂があるのだろうが、外からはそんなに大きかったか?
 落ち着く感じと奇妙さの共存という意味では捕虜になった教団領の人ってこんな気分なのかもしれない。
 
 「それにしてもコース……」

 まあいいか、と息を吐き、カウンターで見た文字列を思い出す。
 最初に選べと言われたものだ。
 淫魔とか有翼とか、他にも竜コースなんてのもあったか。
 

 「……ふっへへ」

 とはいえ、気持ち悪い笑みが漏れる。
 コース。
 と、言われれば勿論ワイバーンだ。
 その後のオプションだとかシチュエーションだとかはよく分からないから受付のエキドナさんにお任せしたが、ここだけは外せない。
 ちなみにあのアホは曰く「シンプルイズベストだ、親友!」との伝言。
 あの豪気な性分があってこそ女性を射止められるのかもしれない。
 そう考えるとこういう場所でワイバーンを目当てにしているのは情けなく感じなくはない。

 「っかー」

 にしても温かい湯、色々と考える気疲れもじんわり癒される。
 それに見上げればいよいよ空には月がのんびりと浮かぶ中、綺麗な星まで光っていた。

 「んんー……」
 
 白い湯気がよく映えて、なかなか好みの空模様だ。
 のんびり、頬杖をつく。
 どんな表情でも空が好きな辺り、俺も竜騎士の端くれかね。

 「持ってくればよかったなあ、双眼鏡」

 となればどうにも悔やまれた。
 曇るだろうしと持ってこなかったが……

 「……」

 そう考えかけたあたりでひじをもとの姿勢に戻す。
 肘の辺り岩がゴツゴツして、少し痛かった。
 幸い見渡せば木でできた所があっちにある。
 動くか、そう遠くはない。

 「おや、双眼鏡?どうぞ」
 「ん、え。ああどう、も……?」
 
 と、立ち上がった瞬間目の前に腕が差し出された。
 視線を上げれば。

 「えと、貴女は」
 「ん?ああ。ふふ、どうも。ご指名に預かった……」

 そこにはワイバーンがいた。
 仄かに月光で煌めく白銀の鱗に肩までかかる長いさらさらした紫色の髪。
 くりっとした目、それでいてまっすぐな視線は、相まって剣のような鋭さだ。
 身長も高い。
 今はしゃがんでいるが、立てば俺よりも少しばかり高いのではないだろうか。
 体つきはすらっとしていた。
 が、胸は決して控えめではない、むしろ覆う鱗皮を張り出して余りある柔らかな胸元にも目が行ってしまう。
 
 「リルウェリア。御覧の通り、ワイバーン」

 そう観察する俺を、彼女は微笑み見つめていた。
 うやうやしく、片手を前にして膝を折る彼女はまるで忠誠を誓う騎士だ。
 美しくしなやかな所作は、ブレが無い。
 それでいて力強い瞳には仄かに野性味がある。
 完璧。
 その二文字が頭をよぎる。
 ワイバーンとしてこれほど理想的な印象を受けたのは初めてだった。

 「あ、はい……」

 圧に押される。
 だが一方で俺はまたも、丸みのある肩や豊満な胸元に目を引かれてしまっていた。
 見下ろす形になっているのもあり、張りの良い双丘が形作る深い谷間にどうしても視線が行く。
 
 「なんてね。まあその、折角の湯船から上がってばかりも冷めるだろう?」

 そんな俺に彼女は、立ち上がり微笑んできた。
 そればかりか自然な態度で俺の腕に自らの腕を絡める。
 そして元々目指していた木造りの場所に隣り合わせで浸かる形になった。
 お互い名も知らぬというのに距離が近い。
 よもすれば肩先が触れ合いそうだ。
 目を逸らそうにも身長がやはり高く、どこに逃げても視界に入って来る。

 ……肌が、白くて綺麗だ。
それに紫色の髪もほんのり薄くて美しい、そして透けた先に見えたうなじも……

 「……」
 「?どうした?」
 「え。いや……」
 
 目が合う、俺はたまらず逸らした。
 緊張が事実だが、それよりも微笑みだ。
 
 「ふふ……」

 美しい、というか。
 角や刺々しいシルエットの騎士甲冑じみた白銀の荘厳が、正面から突き破るように薄紫を揺らし端正な顔で笑いかけてくる。
 ある種暴力的だった。
 見つめていればどうにかなってしまうかもしれない。
 
 「……」

 照れ隠しに双眼鏡を覗く。
 何が見えるかはどうでもよかった。

 「何が見えるんだい?」
 「っ!」

 だが逃げることは彼女の気に召さなかったらしい。
 突如囁かれる耳元の声に肩が跳ねて目線がズレる。
 そこにはまたあの微笑みがあった。
 見た目ばかりは鋭いのに、目元口元が湛える雰囲気はたおやかな……
 
 「驚かせた?でもね……」
 「っ……!」

 と、急に柔らかな感覚に襲われる。
 何事かと視線を向けた時には、リルウェリアが体を滑り込ませていた。
 こちらの右脇腹に左の翼を突っ込み、もう片方が俺の股の間に添えられている。
 突然すぎる。
 心臓が早鐘を打つ。
 だが逃げ場はない。
 湯に浸かったまま後退っても、背中には石の壁があった。

 「さっきも言ったね、ご指名ありがとうって」
 
 さらに近づいてくる彼女は、少しだけツンとして、微かに突き抜けるようないい匂いがした。
 
 「……サービス。させてもらおうか?」
 
 生唾が喉を通り抜ける。
 鼻先に彼女の顔があった。
 その表情、目元がおもむろに歪み妖しい色を纏う。
 美麗に感じるばかりだった野性が唐突にこちらに向けられたと悟った瞬間、胸の辺りから怖気のような身震いが押し寄せてきた。
 
 「ひうっ」

 
 そして喉から声が漏れる。
 本能的に恐怖したのもある、が、実際にも快感が股に走っていた。
 膝裏から付け根の方へかけて細い感触にゆっくりとなぞられる。
 
 「ああいいね……そういう顔、好み……」

 リルウェリアが囁いてくる。
 その顔には期待と恍惚があった。
 獣の牙を見せつけられたように感じて、頭が少しくらくらしてくる。
 
 「おっ、と」

 ゾクリと、反射で体が浮く。
 が、逃れられない。
 むしろ彼女の左の翼に背中を捉えられ、抱きかかえられるような形になってしまった。
 

 「いや、あの」
 「いいよ、力を抜いてくれ」

 リルウェリアが微笑んでくる。
 声音は柔らかい。
 だが裏腹に、今にも牙を剥きそうなほどに口元と目元がゆがめられていた。
 優しく包み込んでくる彼女と、端々から滲む狩人は果たしてどちらが本性なのか。
 どちらにせよ、魔性のものがあった。

 「そうじゃ、なくて、あっ」
 「じゃあ……どういう?」

 言葉に詰まり目を逸らし、体が勝手に後退ろうとする。
 だが勝手に撫でさすられる背中に、体が跳ねる。
 それもあってか彼女の顔が更に近くなった。
 その朱い頬と濡れた瞳は、恋する乙女のようでもあり獲物を前にして興奮しているようでもあった。

 「どうと、言われても」
 「なら、私から教えてあげようかな」


 そうこうしているうちに目線がクイっと持ち上がる。
 何事かと思った時にはもう顎に尖った感触があった。
 右の翼、爪だった。
 いつの間にやら股から抜き去られたそれに、彼女の顔を見せつけられていた。

 「ふふ……」

 ……濡れた瞳、仄かに欲望が滲んで見える視線は顔が焼けそうで、それでいて目を逸らせない。
 そればかりか胸の辺りでドクドクと流れる何か熱いもののせいで力が抜けていく。
 そんな中でも彼女はどんどんと近づいてきて。

 「……!教……っ!」
 「んちゅ、んっ、んんっ……」

 次の瞬間にはもう唇が触れ合っていた。
 彼女は、あたかも当然であるかのように口を重ね合わせると、ゆっくりとすり合わせてくる。
 
 「ぷは……♥」
 「な、なん、何……」
 「何って……そりゃあ」
  
 鼻孔に未だ残る痺れるような甘さの中、当然の疑問をどうにか吐き出す。
 だが彼女は、リルウェリアはゆっくりと抱き寄せてきた。

 「分からないか。それとも、分からないフリ?」
 「う……」
 「わかってるだろ?お・客・様♥」

 見下ろされながら呻く。
 口説かれるような、いや事実口説かれていた。
 注ぎ込まれる言外の好意に、震えあがるような熱情を感じてしまう。

 「そういう、いや、そういうのは」

 そのせいか何かが体の底から湧き上がってきた。
 身が焦げるような。
 体が少しずつ熱に包まれるような心地に、頭がどこかぼうっとしてくる。 
 しかし初対面だ、あまりに行き過ぎるのはよくないとどうにか歯止めをかけてみる。

 「でも」
 「でも、じゃない」
 「その、こういうのは」
 「んー……案外堅物だなあ……あーむっ♥」
 「っ」

 しかしリルウェリアは容赦なくまた重なり合ってきた。
 今度は、舌が入ってくる。
 抱かれながらする一方的な接吻。
 
 「んじゅっ、んふっ♥ふーっ、ふーっ♥んんんん……」
 「っ、っ、−−−っ……」
 
 気持ちは、いい。
 くねる舌が口の中を一舐めする度に燃えるような熱が頭を焼いてくる。
 舌の裏側をなぞられ体が浮かされるような奇妙な快感に、溺れそうになってしまう。
 
 「ぷはっ。……別にいいだろう、身を任せても……あーむ……♥」
 「−−−っ」

 離れ、また、繋がる。
 見透かしたような言葉は、選択肢があるような物言いと裏腹に、拒否権が無かった。
 じくじくと焼けつくような好意と劣情が、否応なく叩きつけられる。

 「んっ、んっ、んんっ。じゅるるる……♥」

 舌が絡め捕らわれる。
 生まれた唾液が根元から啜り取られていく。
 舌裏をゆっくりと持ち上げられ、ぬるぬるとらせんのように。

 「ーーーっ♥」
 「っぱぁ……フフ、どうよ……♥」

 そうするうちに更に脱力する。
 何も、抵抗出来ない。
 というより彼女から与えられる濁流のような熱に、その気もずるずると無くなっていく。
 だからというわけではない、はずだが。

 「ん……♥……ん……?」
 「ん、んう……」
 
 むしろ次の一回は、自分から絡みつかせていた。
 ほとんど無意識に体が勝手に動いていた。
 一瞬、驚いたように目を見開いたリルウェリアだが、すぐに嬉しそうに目元をくにゃりと歪ませる。
 一層深まったその顔の赤みに、まずい火をつけた、と悟ったのもつかの間。

 「……じゅずずうぅっ♥んっ♥んっ♥んんんんんーーっ♥」
 「っ!?んぅっ……♥」

 彼女の舌が一段と激しくなった。
 絡みつくような柔らかさが、喰らいつくように変化する。
 吸われる度にびりびりと体が痺れて、女のような声が漏れそうになる。
 
 「んふーーっ、ぷああっ♥」

 彼女は鼻息まで荒い。
 腕も、更にがっしりと体を抱き締めてくる。
 その目元は潤んだ中にも欲望が輝き、わたしのものになって欲しいな?と語り掛けてくる。
 命令じみた力強さだった。
 その縦長の濡れた瞳を見つめてしまった瞬間、思考が一段とふやけていく。

 「ん……♥」
 
 こうされたかった、のかもしれない。
 とはいきなり変な話だが、さておいてもこの感触は悪くない。
 そう感じたら止まらなくて、溶けるように肩へ頭ごともたれかかっていた。
 そうすると何とも暖かく、何より余計なことを考えていたくは……
 
 「ーーっ♥ーーーっ♥そういうことをさ、もう♥」

 そこへ上から、興奮した声が聞こえてきた。
 見上げる元気もないが絶対にその顔はいやらしい。
 随分ガツガツ詰め寄ってきていたから、満足感にもだえているのかもしれない。

 「っ……♥」

 と、次の瞬間首元に鈍い痛みが走った。
 それは始めのうちはじっくり、そして続いて2、3度感じられる。
 されるがままにじくじくと滲むような快感の波に身を任せながら分かったのは、それが何かを確かめるような動きだということ。

 「ふふ。もうこんなことをしても、動かない、か……♥」

 目の前にリルウェリアの顔が戻ってくる。
 それが分かったのはまた顎を持ち上げられたからだ。
 見つめ合うことを強いられ、すぐにでもくず折れそうになる。
 煌めくような瞳と白銀の鱗の威容に、彼女のものになりたくなる。

 「っ……♥」

 ……彼女のもの。
 その言葉の持つ甘美な響きに、仄かに喉が鳴り身が震える。
 経緯はどうあれ自分を好きで好きでたまらない相手に心奪われるということに、何かが燃え上がるのを感じてしまう。

 「……でもねお客様。サプライズはまだあるんだよ」
 
 囁かれた。
 えっ、と口が動く。
 これまででも相当だが、まだ、あるのだろうか。
  
 「……ふふ」

 リルウェが愉快そうに笑う。
 顔の動きで、視線を俺の後ろに向けたのが分かった。
 反射的にそちらを追いそうになる。

 「んぷあっ……っ♥」

 だが唐突に、口に触れる濃厚な香りに阻まれた。
 唇だ。
 それも前までと違うぴちゃぴちゃと音を立てる口を半開きにしてのキスだった。
 まるで誰かに見せつけているような、と蕩ける頭がぼうっと考える。


 「あら……もうずいぶんと盛り上がってるみたいねえ?」


 ビタ、ビタ、という足音と女性の声を聞いたのはその直後だった。
 

 「んっ……♥んあっ♥」

 リルウェリアの舌使いが激しくなる。
 声には耳を貸さず、いや、むしろ答えるかのように、はしたなく音を立て、まるで自らの責めを見せびらかすかのように。
 それは事実、確かに気持ちがいい……
 
 「あらら、後で一緒にって言ってたのにねえ……」

 が、一方で俺は、入ってきた彼女の声に聞き入ってしまってもいた。
 リルウェリアよりも齢を重ねて感じられる成熟した低さがある。
 不思議な響きだ。
 心をくすぐるように挑発的でありながら、包み込むように深い。
 その声に妙に心奪われて……
 
 「んんんっ♥んっ、れう、えおえろぉ♥」
 「っ!?ーーえぁっ♥」

 と、突如リルウェリアの唇が暴れ出した。
 あくまで丁寧だった舐めとる動きが一変、荒れ狂うように舌を絡め取ってくる。
 べちゃべちゃと下品に涎を滴らせながら、体全体を抑え込むように上から覆いかぶさり……

 「んっ……んんっ♥んふふ♥」 
 「いっ……!?」

 いや、それだけではない。
 そう分かったのは、下半身、特に股の間をまさぐるような動きに自分の体がビクンと跳ねた時だった。
 リルウェリアがついに、男の象徴に手を掛けていた。

 「あら……もうそこまでなのね♥」

 焚きつけた本人が──勝手に焚きつけられたのはこっちだが──ざぶざぶと湯の中に入って来る。。
 彼女は俺の背後側から浸かると、ゆっくりとこちらに近づいてきているようだった。


 「へ、んっ」
 「えう、れう……♥」

 ……背中側。
 まさか、とにわかに顔が上がる。
 結局唇は奪われっぱなしだし股間も弄られっぱなしだしで、その姿を見ることは出来なかったものの。

 「……フフ♥」
 「いっ……♥」

 密着された、それだけは分かった。
 柔らかい、それも酷くふわふわしている肌触りが背中にむっちりと伝わって来た。
 ……多分これは、丸くて大きいのが2つだから、そういう。

 「んぱっ、んんっ♥」

 が、そこまでだった。
 触発されるようにリルウェリアの刺激が強くなっていく。
 翼の先でモノの突起周り……俗に言うカリ首を引っ掻くように擦ってくる。

 「ひ、んむっ♥」

 おかしな声が漏れ、体が跳ねる。
 が、それもまた身を乗り出して来た彼女の口に封じ込まれてしまった。
 出来たことといえば精々仰け反ることくらいで……
 
 「フフ、本当に面白い……♥」

 そうしたところで背後にいる謎の女性にゆったりと包み込まれるだけ。
 肩口を覆うように、そして腰とお尻を下からゆっくりと、正面の彼女とで上下から挟み込まれる。
 その感触はつるつるとしていて、恐らくは鱗だろう中にゴツゴツと突起も感じられ……

 「ぷ、ああっ……」

 と、リルウェリアが口を離す。
 その一瞬の隙にチラリと横目で肩越しに見えたものに、俺は朦朧とする思考の中目を見開く。
 白い爪だ。
 それも指から伸びるでもなく直接そこから生えていた。
 真っ黒な……鱗に覆われた翼の先にだ。
 そんな体のつくりをしているのはリルウェリアと同じく。

 「う、フフ……♥」

 その彼女が笑いかけてくる。
 耳元で色っぽく、少々の悪戯っぽさを滲ませながら。

 ──大アタリ♪
 
 声が聞こえた気がした。
 
 「ひ、んっ……♥」
 
 体が跳ねる。
 おそらく幻聴なんだろう。
 だがそれでも、しゅるしゅると心の敏感な部分ににじり寄られる心地がしていた。

 「んんーっ♥んーえうれうれう……♥」
 
 しかもそれだけではない。
 またリルウェリアの責めが始まる。
 
 「んっ……んっ♥んっ♥」

 舌は相変わらずべちゃべちゃと苛烈、その上カリ首が執拗に、スリ、スリと追いつめられる。
 押し寄せる暖かな波に、身を任せてしまえばふわふわとどこかへ行ってしまいそうだった。

 「うふふっ……」

 そんな心地でいると、背後の彼女に抱きとめられる。
 彼女はただひたすらに、受け止めてくれた。
 まるで止まり木か、船を待つ港のようだ。
 けれども妖艶な微笑みは、リルウェリアの激しい求愛に浮ついた心に絡みついてくる。

 「れう、えろえおえおぉ……♥♥」
 「フフ……フフフフ……♥」

 もう頭は働けなかった。
 快感がじっくりと全身を舐め回しているのに、何の抵抗もしたくない。
 包み込むようにゆっくりと狭まってくる快楽も下半身からにじり寄る疼きも、ただ受ける事しか考えられない。

 「あっ……?あ、待っ、待ってく……っ……♥」

 と思いながら限界を感じとった時にはもう遅く。

 「うぅっ……♥」

 俺は精を放ってしまっていた。
 見る気力さえわかなくても自分の体だ。
 とぷとぷ、とぷとぷ、ゆったりと漏れ出すのがすぐに分かった。
 あまりにも呆気ない。 

 「あら、あらあら……♥」
 「ん?んん♥んー……♥」

 勿論見逃す彼女達ではないようで、気づいた時には次の行動に出ていた。
 微笑む背後の彼女は一際肌を寄せると俺の臀部にそっと尻尾だろう細長い感触を摺り寄せてくる。
 そう思ったのは目の前でいつの間にか踊っていた銀色の尻尾がこちらの胸元を愛おしそうに撫でてきたから。
 その持ち主はというとこちらも負けず劣らず体を寄せて、唇を再び奪ってくる。
 前と後ろを揉みくちゃに……というよりは、体中を弄る動き達は労わるようにゆったりとしていて……

 「ー……♥」

 それは気持ちいいなんてものではなくて、脱力するに任せて快感に浸る。
 ただ何もできず、とは正しくないかもしれない。
 望んでそうしている気がする。
 体を仰向け気味に背後に預け、快楽に肩までどっぷりとはまり込む。
 やれていることといえば、時折体をびくんと跳ねさせるくらい。
 そうしているうちに尻尾が、鱗の隙間で乳首をしっとりと挟みながら這いずってきて……

 「ーーっ♥」
 「ぷは……やっぱかわいい……♥」

 唇を離したリルウェリアがゆったりと笑い、続けざまに、半ばのしかかるように体を前のめりに倒してきた。
 流石に完全な仰向けにこそならなかったものの。
 ぷるん、とした、おそろしくやわらかいふたつの丘を胸と腹で感じる。
 

 「あっ、おあ」
 「んっ、んっ、んっ♥あむ……」
 
 2、3度ずりずりと擦り付けられ、思わず声が漏れる。
 それで気を良くしたかリルウェリアは、急に、首筋に牙を突き立ててきた。
 こちらの肩に爪を引っかけ寄りかかると、無遠慮に、一度、二度、三度。
 ついには数えられない程にかぷかぷと幾度どなく、だが決して激しくはなかった。

 「んふ……」

 幸せそうな鼻息は、むしろ甘えているようにも思える。

 「っ、ふふふっ……♥」
 
 それに触発されたか、あるいは対抗心を燃やしたのか。
 背後のワイバーンがゆっくりと身を揺らす。
 果たして何をするつもりなのか……

 「ひ、あっ♥」

 と思った次の瞬間には俺の口が、自分のものとは思えない甲高い声を上げていた。
 胸元から響く。ジクジクと疼くような感覚がそうさせたのだ。
 
 「ほぉら。カリ……カリ♥」
 「んんうっ♥」

 また声が出る。
 どうにか震える目で胸元を見れば、鋭く白い爪の先が踊っていた。
 それは、一旦乳首を、潰すかのように押し込むと……

 
 「っ、ま、待っ……」
 「待たない♥……カリカリカリカリ♥」

 ぴん、と硬くなった性感帯を激しく上下に往復してくる。
 頭の奥へ運ばれてくるその快感は、すぐにでも絶頂しそうなくらいに熱かった。

 「あっ、く……はあっ♥」
 「ふふ、可愛い……♥」

 その上、激しく体を跳ねさせることもできない。
 紛らわすこともないまま、快感だけが意識を蝕んでいく。
 というのも密着され、ふわふわした感覚のまま、柔らかな女体二つに挟み込まれていた。

 「カリカリ……フフ、ほら、こっちだけじゃなくて……♥」

 だから、ペニスに触れた何かがあっても蕩けた声しか出せない。
 細長いながらもみっちりとしたものがゆるゆると、そうでありながらしっかり巻き付いてくることだけがはっきりわかる。

  「あ…………っ、あ……♥」

 俺はもう、ただ喘いでいた。
 その気持ちよさに脳が支配され、溶けそうな自分をどこか遠くで感じながら、快感の証左だけを口から吐いていく。
 

 「あ……ネヴィー、ズりい」
 「あんっ……♥もう、リルウェは一回イかせたでしょう……?」

 ……ネヴィー。
 背後のワイバーンは、そういう名前らしい。
 リルウェとは、あだ名だろうか。
 頭の隅でぼんやり考える。

 「ふ、ぁ」

 ともう一つ感触が股間へ纏わりついてきた。
 それは隙間をゆっくりと探ると、補うようにしゅるしゅると絡みついてくる。
 まるで、ぎっちりとホールドされてしまったような感覚だった。
 しかも勃起したモノの上を絡みつくように、ねっとりとした動きで這いずり回ってくる。

 「こ、れ……くああっ♥」
 「んんっ♥ほぉら、こっちにもちゃんと集中して?」
 「そうそう♥お客様には気持ちよくなってもらわないとね」
 
 と一瞬の観察すら見透かしたかのように再び乳首への刺激が再開される。
 胸元から頭頂部へじんわりと流れる甘い痺れに、たまらず仰け反ってしまう。

 「……あら、もっと気持ちよくなりたいのね……あむっ、じゅるっ、じゅるるる……♥」
 「はぁあっ♥あ、っ、あっあっ♥」
 「あむっ♥んれろ……ふふ。首筋を舐めたらまた硬くなった♥」
 「ち、違っ……」
 「よそ見はいやよ……♥ほぉら、カリカリカリ……♥」
 「あっ!?いっ、はあああ……っ♥」

 あるいはそれさえも術中だったのかもしれない。
 反射的に反り返った俺の体は、彼女達の中へ一層深くはまり込んでいた。
 伸ばした背筋はそのままに、無防備な乳首、首筋、ペニス、耳などすべてが彼女達の毒牙の前に曝け出されてしまう。

 「ほぉら……カリカリ♥おちんぽにゅっこにゅっこ♥」
 「あっ、くあ、あっあっあっあああっ♥」

 すると乳首の快感からくる暖かさに、頭がじわじわと蝕まれる。
 かと思えばペニスはリズムカルに上下に扱かれてしまう。
 その二つの尻尾の動きは、微妙なズレがあった。
 しかしむしろその細かなズレが絶妙な振動となっている。
 それは体全体が震え上がるほど気持ちが良い……
 
 「……フフ。アンアン喘ぐだけでは伝わらないなあ♥ほら、何が気持ちいい?言えって」
 「へ、っ、あ……??」

 と、浸っているとリルウェリアがささやいてきた。
 言葉は質問の体を装っている。
 だが声音には、抑えきれない興奮がにじんでいた。
 目の前のおやつがもらえると分かりきっているのに食べてよいかたずねるような、そんな誘惑にも似ていた。
 
 「それ……っ!?は、ぁっ♥」
 「なぁに?うふふ、あたしも聞きたいわ♥」
 
 しかも。
 言いよどんでいればネヴィーがさらに詰めよってくる。
 乳首をピンピンと弾くように弄び、限界へと近づけてくる。
 快感が、背筋を伝い頭のなかに駆け込んでくる。

 「あっ♥ーーーっ♥」
 「こ・た・え・て♥」
 「ね……♥ほら、カリカリやめちゃうわよ……♥」
 「や……」
 「うん……♥なあに?」
 
 そんな最中、踏みとどまる。
 ふらっと、かすれた声で口から飛び出そうになった言葉に、俺の中の何かが
崩されようとするのを、最後の理性が押しとどめていた。


 嫌。
 止めるの、いや。
 乳首止める……つまり……それを言ってしまえば俺は……

 「ほおら、言わないの?本当にやめちゃうかも……♥」
 「聞きたいなあ……♥」
 「つ、っ♥」

 と、悩んでいるうちに爪使いはゆるくなっていた。
 ビリビリとした快楽が薄まる。
 だが解放された、とは思えなかった。
 むしろジクジクと体中を毒のようにむしばむ穏やかな快感の残滓が、どうしようもなくつらかった。

 「や、や……っ」
 「……な、あ、に?聞こえないわ……♥」
 「ほおら♥本当に止まるかもよ……?」

 彼女達はというとそんな俺の様子さえ楽しげに見つめている。
 いつでもとどめを刺せるのに、あえて生かして楽しんでいるようだった。

 「うふふ、言わない?言いたくないの?それとも……言わされたいのかしら……♥」
 「それでもいいけどね……どうせ……フフ……♥」
 

 そうするうちにまた、股間に快楽が走る。
 にゅちゅ、にゅちゅ……とリズミカルに……

「っ♥くあんんっ♥」

 体が跳ねる、こともできず彼女達に震えが吸収されていく。
 じんじんと胸の奥を焦がしていく疼きは、耐えようとしても……

 「はーっ、はっ……はっ……?」

 …………耐えようとしても?
 考えてみれば、自分の決定権は完全に握られている。
 どうあがいてもどう転んでも、彼女達に挟まれている時点でもう選択肢なんて……大体、一回俺はイかされて……

 「……ぁ」
 「……ふぅん。本当に言いたくないのね……」
 「えっ……」
 「なら。やめてあげようか。お客様だ、大事にしないと……♥」
 
 そこでふと、かけられる優しい言葉。
 だがそれが追いうちなのは、すぐにわかった。

 ……堕ちろ♥はやく堕ちろ♥

 燃えるように潤う瞳がそう言っていたから。
 微笑みの中の濡れた目の輝きを、どうしようもなく上位者のそれだと感じてしまったから。
 しかもそれが2人なんだから、逃げられるはずも耐えられるはずもない。

 「……や」
 「……フフ♥」
 「うふ……♥」

 事実、多少緩くなった責めだが、それでも二人の体は離れていなかった。
 ゆったり、ゆったりとぬるま湯のような快感だけを、寄せては返す波のように送り込んでくる。
 ……耐えられない。
 快楽だけはゆっくりと漂ってくる中、あの響くような、奥の奥まで染めつくすような深く濃すぎてむせかえる恍惚を思い知らされた以上。

「や、だ……いや……」
「ん♥️なぁに?なにがいやなのかしら……♥️」
「んあっ♥️」
「なにがいやなんだい♥️」

 また、始まる。
 これだ、この感覚が欲しかった。
 そう思ってしまえば口は自然と動いていた。

「やめないで、くれ……もっ、もっと……♥️」

 言ってしまった。
 言った瞬間リルウェリアとネヴィーが、喉の奥をくくくっと締め上げるのがわかった。
 狩人二人の舌なめずりにも似たその音に、背筋がぞくりとおののく。
 だが頭は、すでにじんじんと熱を帯びていた。
 来る、来る……♥️

 「くあぁあっ♥」
 「ほぉら、カリカリカリカリ……♥これが良いのよね♥これが欲しかったのよね♥」
 「あ、うっ♥もっと……っ♥」
 「うふ。ええ♥カリ、カリ、カリ……♥」
 「ひぁああ……っ♥」

 堕ちていく。
 待ちわびた乳首刺激、一回ごとでさえビリビリと脳の奥に電流が走るそれが、幾度となく繰り返され頭のなかが桃色の痺れに……

 「……フフ」

 そして正面からはリルウェリアが近づいて、耳元に回り込み……

 「ん、れろれろれろ……♪」
 「っ、うっ……♥」

 と思った時には耳元がべちゃべちゃとぬめる。

 「んんっ♥ほら、カリカリ、カリ……カリカリカリカリ……♥」
 「やっ、んんっ♥」

 かといって体が勝手によじれれば逃げた先でネヴィーが追い込んでくる。
 自分のものとはおもえない、まるで女の子みたいな声が口から勝手に漏れ出てしまう。

 「……♥ねえ、乳首。きもちいい?」
 「ふ、ぇ……♥」
 「ち、く、び♥気持ちよくってたまらない?」
 「っ……そ、ひっ……♥」

 そうこうしているうちに、彼女の問いにさえ答えられなくなる。
 体中をちいさな雷が駆けずり回り続けて、口も、頭も、まともに働かない。
 というか、気持ちいいかと言われれば気持ちいい以外ないのにいったいなんだと

 「へあ……んうあぁあっ♥」
 
 
 そうだった。
 密着されて、乳首こすられながら耳を舐めずられてたが、今、ペニスには……
 
 「れう……フフ、おちんちんも、にゅこにゅこ、にゅちゅにゅちゅ……♥」
 
 リルウェリアの、楽しくて楽しくてたまらないといったような、耳の奥まで滑り込むようなささやきに、股間がびくびくと呻く。
 それは一旦意識し始めるとはっきり感じられるようになって、でも、さっきまで味わってた感覚も消えないで、それどころかもっと敏感に。
 
 「……さ♥そろそろかわいそうだ、一思いにイかせてあげようか……♪」

 リルウェリアが呟くのが聞こえた。
 期待に、下半身がヒクっと疼く。
 
 「ええ。……よーく味わってね、お客様……♥」
 
 ネヴィーが煽ってくる。
 耳元に寄せられた口の、湿っぽい言葉はそれだけでも十分過ぎるほどだったが……

 「ほおら、にゅっこにゅっこにゅっこ……♥」
 「んんうっ……♥」

 始まってしまえばそれ以上だった。
 くすぶるようにして溜まっていた快感の爆弾に、ついに導火線が付けられてしまったと言えばいいのだろうか。

 「フフ、気持ちよさそう……こうするとどう?」
 「いいわね、それ……ほおら、ぎゅううう……♥」
 
 体も、みっちりと彼女達の肌を感じさせられてしまう。
 しかもふわりとした甘い香りが背後から、スッと抜けるような爽やかな香りが前から、混ざり溶け合って鼻さえも犯してくる。

 「っ、うっ……♥」
 
 頭がくらくらしてくる。
 もとよりその気もなくなっていたものの、我慢もますます効かなくなる。
 
 「気持ち良さそうね……なら、もう我慢なんてせずにイってしまいましょうよ?ねえ……♥えろぉ……♥」
 「っ!?ーーっ♥」
 
 更にはベロベロとしつこい粘り気が、肌を舐めてきた。
 恐らくネヴィーまでもが首筋へ舌を這わせ始めたのだろう。
 頭の中にほぼ直接這い寄ってくるいやらしいおぞけは、だがそれさえ素直に気持ちがいい。

 「……ねえ、ネヴィーに乳首弄られながら、尻尾に犯されるの気持ちいい?けどこれじゃまるで……♥」

 その様に焦れたか。
 リルウェリアが見下ろし気味に口を開いた。
 上気し赤く染まる、優越感に浸る微笑みから放たれるのは、まるで、まるで何なのか。
 
 「……獲物。狩られているみたいだ……♥」
 「いっ……!……っ♥」

 と言いながらきっと、と分かっていたからかもしれない。
 言われる前より、胸の中ではどくどくと早鐘が鳴りやまなかった。
 ビキッ、と股間が張り詰めて、尻尾を押し返すようにして膨れ上がったのが自分でもわかってしまう。
 
 「っ、はっ♥はっ♥ハッ♥」
 「あら、大きくなった……餌、って言われて興奮したのね……思った以上にイケない人……♥」

 獲物、餌、狩られている。
 二人のワイバーンに、逃げ場すら奪われて蹂躙される側なんだ。
 否応なくそんなことが頭をよぎる。
 
 「っ♥♥♥−−−っ♥……う……♥」

 すると、あの身震いがやってきた。
 ビクビクと腰が跳ねるのが自分の意志で抑えられず、そればかりかもはや感じるに任せて放出へ備えていく。
 狩られる側、食われる側、抵抗は無意味、なら、だったら……♥

 「……♥」
 「じゃあ……♥」

 リルウェリアが顔を、口元をくしゃりとゆがめるのが見えた。
 ネヴィーの喉がゴクリとなった後、くっくっと笑うのが聞こえた。
 
 「イきましょうか、お客様……♥」
 「イっちまえ、お客様ぁ……♥」

 ビクンッ、と腰が動く。
 もう限界だ、考えるまでもなく分かった。
 堪え切れずに自分から腰を振ろうとした瞬間。

 「っ……♥〜〜〜っ♥くぅう……あ、ああ……♥」

 俺は二度目の精を放っていた。
 びゅる、びゅる、びゅく、びゅく……と、下半身が震える度に増す放出感が浮ついた頭にそれをはっきりと自覚させる……

 「あ、あっ!?あっ、あ、あっ♥あああっ、あああぁあ……♥♥」
 
 と、そこへ更なる快感が叩き込まれる。
 胸から、乳首から、ジクジクと疼くような波が体全体へ押し寄せてくる。

 「……あら、あらあらごめんなさい♥気持ちよさそうだったから、こうしたらもっとイイかなあって……うふふ♥」

 その主が笑う。
 こちらの耳元へ、笑ってくる。
 自らの首でこちらの後頭部を這うようにして口を寄せ、笑っている。
 まるで、首筋に牙を突き立てられているようだった。

 「いっ、あっ、いいっ♥あへぁ……♥♥」

 それがまた先の獲物の二文字を思い出させて、快楽に浸る頭へさらに熱が送り込まれる。
 限界は既に超えている。
 
 「うぁ……♥」

 屈服、とはこんな気分なのかも、等とふわふわした頭で考える。

 「っふふ、ゆーらゆーら……♪」
 
 そこへ、突然にネヴィーが体を揺らし始めた。
 ということは当然、包まれている自分も動きを同じくする。
 一定の間隔で右へ左へとぐらぐらと、そののんびりとした動きは湯の暖かさも相まって、全身がマッサージを受けているような心地よさ。

 「……うふっ、気持ちよさそう♥️」
 「ん……♥️」
 「ええ、一杯♥️とぷ、とぷ、出してちょうだい?お客様……♥️」

ネヴィーがそう言って頭を撫でて来る。
ポン、ポン、とまるで寝かしつけるように甘く優しく。
 もうずっとこのままでもいい、そんな考えが頭をよぎった。

 「はー……いっぱい出たな……♥……ん……っ……」
 
 と、リルウェリアが身を震わせる。
 何か、駆け巡る衝動に思わずそうした、という感じの動きをしたかと思うと。

 「ねーえ。キツいだろうとは思うんだけどさ……♥」

 そしてねだるようにこちらの胸に爪を走らせてきた。
 顔はこれまでになく上気し、その息は湯気のように口から吹き出ている。
 その言葉の続きは、せっかちに、またがるような形で蜜壺を亀頭に擦り当ててくる様を見れば聞くまでもなかった。

 「うふふ♥……リルウェったら、我慢できなくなったみたい。お客様……良いわね?」

 弾かれるようにかくかくと頷く。
 自分でも正直受け止めきれるかは分からないが、体がそう動いた以上素直に腹をくくっていた。
 それに、あんなに射精したのに、もうペニスは痛いくらいになっていた。


 「うはぁ……!っ、ありがと、お客、さ、まぁっ♥」
 「う、くぅ−−−っ♥」
 
 言うが早いかリルウェリアは、辛抱たまらないといった具合にこちらに跨ると腰を落とし始める。
 ぬぷ、ぬぷぷ、とゆっくりと体が下がっていき、みるみるうちにモノが飲みこまれていく。

 「っ……あっ♥」
 「−−−っ♥」 

 その度にリルウェリアが息を吐き、隠そうともしない嬉しそうな赤い顔で微笑む。
 そしてついに、ぐっぽりと……

 「入った……ふふ。なあ、入った、入ったぞ……♥」
 「っ♥」
 「なあ……入ったら……♥そりゃ次は♥」
 
 すべてが呑み込まれたとき、リルウェリアは言うとほとんど間髪入れずに腰を振り始めた。
 すると股間へ走る快感はより淫らに、そしてしつこく変化する。

 「っ♥あっ、あっ♥」
 「ははっ、感じてる感じてる♥なあもっとっ、もっと感じてえ……♥」

 たまらず漏れた喘ぎ声が相当にうれしかったのだろうか、彼女がその笑みを深くする。
 獲物の肉に食らいつこうとして獣が牙を見せるように感じたわけは、考えるまでもなかった。

 「ふあっ……♥」
 「ふふ……堪えようとしてる?ダメよ、身を任せて……」
 「そういう、わけじゃ……っ」

 強張る体に背後のネヴィーが声をかけてくる。

 「……ああ。気持ち良すぎて体がいうことを聞かないのね……♥」
 「ひああっ♥」
 「ほぉら♥えうっ……♥体の力、もうぜーんぶ抜いちゃいましょ……♥」
 
 首筋をなぞる、いや、嫐る舌の動きに体がビクッとひとりでに跳ねた。

 「ははっ、かわいい。かわいいぞアンタ……♥」
 「あ……〜っ♥〜〜〜っ♥」
 「気持ちよさそうにアヘえってしながらっ、それでもちんぽビンビンなんだもんなあ……♥どれ……」
 
 笑いながらリルウェが近づいてくる。
 はぁはぁと荒れた息遣いが吹きつけてくる熱気が口元に迫るのを、俺はもはや待ちわびるようにして口を開けていた。

 「んむっ……♥」
 「えうっ、れうっ……♥えおえおれろぉっ、ん、んん〜〜っ♥」
 「んんんんん〜〜っ……♥」
 
 そして彼女に触れられた後は、蕩けた頭が命じるとおりにその口の中へ舌を滑り込ませていた。
 それからは体の赴くままに腰を跳ねさせようとして
 
 「んっ!?んっ♥んんんっ♥」
 「っぷはぁ……気持ちいい?気持ちいいよなっ♥ほ、らっ、腰……もっとグリグリぃ〜〜♥」

 先手を打たれていた。
 ねっちり、ゆっくり、打ち上げられた腰がぐっぽりと彼女のすべてに咥え込まれ、揉み解される。

 「ぅあ……っ、あ〜〜っ……〜〜〜〜っ♥」
 「れろれろ……ウフ。もうすっかり、リルウェの虜ね……♥」


 噛みつくように強く締めつけてくる中、彼女はペニスの根元から先まできゅうきゅうと吸うような刺激が、くる。
 溶けてしまいそうなくらいに暖かさの籠った蜜壺でそんな刺激を与えられてしまっては。


 「つっ、あ……♥」
 「あ……フフっ、ビクンッって跳ねた♥もう限界か?出る?出ちゃうよな?」
 「……♥」

 限界が近いと悟ってくれたらしくリルウェリアが、これまでになくその口角を持ち上げた。
 かくかくと頷く。
 その瞬間を待ち侘びたのは彼女も同じであってくれたらしかった。
 
 「……っへへ♥」
 
 ゆっくり、また彼女の顔が近づいてくる。
 熱情と劣情に真っ赤に染まるその顔に、俺は躊躇うことなく唇を明け渡した。


 「あーーむ……じゅずずずず……!」
 「んっ……」
 「ずずっ♥じゅずずっ♥んっんっ♥ふうーっ、ふうーっ♥」
 「んっ♥んんっ♥んんんっ♥んんぅっ♥」

 彼女の舌はもう止まらない。
 蜜壺で咥え込んで強く締め付けながら搾り取るようにして上下する中で、その欲望の加熱を表すかのように激しくなっていく。
 唾液はおろか、体中の液体なにもかもを啜り取られてしまいそうな口づけだったが、むしろ捧げるようにして舌を自分から絡めていく。

 「っふふ……完っ全に射精させる気になっちゃってる……♥じゃあアタシも、お手伝い……えおぉ……れろれろれろぉ♥」
 「んっ♥っ♥」
 「じゅずずずずず……っ♥」

 その様を見て興奮したのだろう、ネヴィーの舌が首筋を伝い、耳元まで這いずってきた。
 煽るような口調と妖しい声音、そしてびちゃびちゃと滴る水音にどんどんと昂ぶりが果てへと近づいていく。

 「っぱっ、んじゅうっ♥んっ♥んっ♥んっ♥」
 「っ♥っ♥」
 「ふあっ♥いい、いいぞ♥出してっ♥出せっ♥私にくれっ♥」
 「はッ、は―ッ♥ハッ♥」

 息が跳ねる。
 ネヴィーにべったりと責められることを幸福に思いながら、リルウェリアから目を離したくない。
 贅沢なのは分かっている。
 それでも体全体で彼女を感じながら……ほんの僅かに彼女の腰が浮いたのが分かった。
 ほんの少し緩慢になったはずの刺激は、吸いついたままゆっくりとペニスの上へと動くのはまるで持っていかれそうなくらいに強烈に感じられ……


 「んうっ……あむっ♥」
 「へ、ああぁああぁあ〜〜っ……む……ぅ……♥」

 次の瞬間それが押し込まれ、絶叫してしまいそうな快感にしてはいっそ惨めなくらいか細い抵抗として放たれた声を、同時に恍惚として蕩けた彼女がぐらりと上体を倒して封じにかかってくる。

 「じゅずずずずずぅ……っ……ん、むぅぅう……っ♥」
 「うっ、ふふ……♥かわいい、ほんっとうにかわいいわ……♥」

 そして次の瞬間、唇や舌のみならず、みっちりと鍛えられていながらも柔らかな肉体が貪るようにして肌に食らいついてきた。
 ネヴィーさえもが後ろからさらに絡みつき腰、足、腕、ありとあらゆる体がみっちりと挟み込まれるようにして擦り合わされる。
 気持ちいいのはもう股間の性的な疼きなのか柔らかな体の感触なのか分からなくなるくらい、高まった先でさらに高められていき。

 「〜〜〜っ……うっ……〜っ♥」

 直後のこと、たまらず、放つ。
 
 「っ……ん、ぅ……っ♥ぅあ……っ♥」
 「ぷぁ……♥んんっ……んっ……んんん……♥」
 
 とぷん……とぷん……と漏れ出るように、精がリルウェリアに注がれていく。
 それは、彼女の食らいついて放さない蹂躙するような接吻と、ぎゅうぎゅうともみ込むような膣肉の動きとは裏腹に、緩やかな快感となって体を伝っていった。

 「うふ……出てる、出てるわね……♥リルウェもお客様も、とっても気持ちよさそう……♥」

 ネヴィーがからかうように、それでいて心底羨ましそうなどこか恍惚とした色を滲ませて語りかけてくる。

 「〜〜〜♥んふ〜〜〜……っぱぁ……えうれぅ……♥」

 それを聞きながら、ぼやけた視線を前に向ければ、そこには抱きつくようにして未だ接吻を止めないリルウェリアの顔が見えた。
 端正な顔を淫らに歪ませ、もうそれ以外頭にないといった風体でこちらの唇へと舌を滑り込ませてくる。
 射精にまで追い込んでおいて満ち足りておきながらまだ求めようとする彼女がゆっくりと迫る様に、自分がうっとりとするのがわかる。

 「っ、う……♥……んっ……むっ……♥」
 
 そして訪れた温かいぬめりはまるで俺の体を、じくじくとした快楽の沼の奥と水面とを往復させるようにして繰り出されていた。
 ねじり、ねぶり、ぴちゃぴちゃと水音を立てたかと思うと付け根まで絡み合わせ、そして抜いてまた入れての繰り返しは、天に昇るような快楽だった。

 「ん……っ……んっ……♥」
 
 そんなふわふわと浮ついたような、芯までふにゃふにゃと溶かされるような心地に指先一つ動かせず、精を放つがままに体を揺らしていると、リルウェリアがまたぐにゃりと目を笑わせる。
 ああ、まだらしい、と心のどこかがほんのりと沸き立つ。

 「んふーっ♥んんんうーーっ♥♥」
 「んんっ♥んんーっ♥ぷは、〜っ……♥」
 
 次の瞬間、さらにぐりぐりと押し付けられた腰のしなやかな左右運動に、たまらず空気を求めて口を放そうとしてしまう。
 すると新鮮な空気が口の中に入ってくる、と同時に甘ったるい、おそらく彼女のだろう発情したむんむんとした香気が口から鼻へとむせ返るままに入り込んできた。

 「あ、ああっ……♥」
 「ふへぇあ……♥もっと……もっとびちゃびちゃチューしようよ……なあ……♥」
 「ふ、ぁ……♥」

 彼女がまたも、ニマアッ、と獣が狩りの時にそうするように口元をゆがめた。
 喉が鳴る。
 心の中では何かが、どろどろに溶けた心臓のように思える何かが跳ね上がっていた。
 自分のくたくたの体をどこかいたわるようにして食らいついてくれる彼女が、一度だけでは物足りないと求めてくれるのがどうしようもなく愛おしい。

 「……あー……♥」

 だから動かない体とぼやけた視界の中ふたたび口を開けた。
 当然のように、彼女の息遣いが近づいてくる。
  
 「あーんむ……♥じゅず……ぷは……んぅ……好きぃ……えう……っは……好きぃ……♥」 
 「っ……ぁ……♥」

 とめどないリルウェリアの、隠そうともしない好意と情欲のこもった言葉と行動が垂れ流されてくる。
 その心地のよさとはまり込むような幸福感に中てられた俺は、口の中にわずかに残った彼女の残り汁でもある湿った液を、ゆっくりと喉へと送り込んでいた。

 「っ……んく……っ……♥」
 「っあ……っ♥大きく、なってるぅ……♥」
 「っ……♥はーっ……♥リルウェリアぁ……♥」

 効果は覿面で、もう3度も仕事を終えたオスの部分が、またむくむくと膨れ上がってくる。
 ぐっぽりと搾られきったはずの心身が、喉の奥でむせ返った目の前の淫猥な女狩人の香りに奮い立つ。

 「……♥」
 「あら……ふ、うふふっ……♥」
 
 嗜虐に瞳を輝かせたリルウェリアが口を開け、ネヴィーが妖しく耳元で笑う。
 背筋を駆ける怖気にたまらず喉が鳴り、唾を飲み込んでいた。
 それで十分だ、とばかりにリルウェリアが腰を上げる。
 ぬぷうっ……♥とペニスが持っていかれそうな快感を伴ってゆっくりと動き、そしてある程度のところで止まる。

 「はぁっ……っ、あぁあ……っ♥」
 「っあっ♥あっ、あぁあ〜……♥」

 直後に、ぐちゃぐちゃに溶けそうな快楽が下半身へ流れ込んできた。
 リルウェリアが、円を描くようにして腰を回し始めたのだ。
 そればかりかオスの付け根へは細いみっちりとしたモノの先端が、2つも這い寄ってくる。
 
 「ほら……ほおら……♥お精子の袋、つん、つん……♥」
 「っ、あ〜……き、気持ちい……っ♥」
 「ははっ……♥うっとりしてる……それそれ、チンポの根元、ぎゅっぎゅっ♥先っぽは私の中でとろっとろぉ……♥」
 「あはぁあぁ……♥」
 
 張り詰めそうなほど膨れ上がった根元はぴっちりと絡みつかれ、煮詰まった欲望はつんつんと圧されどんどん上ってくる。
 その出口もぎゅるぎゅると捩じられる温かい蜜壺に擦り立てられ、そして、二人に挟まれた体は心からその快楽を受け入れ、もう動くこともなかった。
 そんな中で、気持ちいいなんて言葉では表せない、まさに天国のような快感が全身を満たすようにして上ってくる。

 「あっ、あ……あぁあ〜……っ、ぁ、は、あぁぁああっ……♥」
 「んぁ……ふふ……出てるぅ、出てるよぉ……♥」

 だから耐えられるわけもなく、俺は身を震わせて精を放っていた。
 乱れた心音に一拍遅れたリズムを全身で奏でながら、微笑むリルウェリアへどろどろと雄を注ぎ込んでいた。
 
 「っふふふっ……♥もう我慢もできないくらい快感に溺れてるのね……かわいいわ……♥」
 「ひ、ぁ、あっ♥」

 ネヴィーが笑いかけてくる。
 その度に俺は、芯から湧き上がってくる疼きに堪えられずにリルウェリアへ更なる白濁を吐き出させられていく。
 単なる言葉ではある。
 だが頭の奥までうっとりとした快感に浸された思考の中ではそんなあざけるようなからかいの言葉さえもが、直接の刺激にも似て感じられてしまっていた。

「んっ……♥️ふぁ……お疲れ様……んんぅ……♥️」

 一方で正面の彼女は少しの間ゆっくりと背筋を伸ばしたかと思うと、満足そうにこちらの胸へと頬ずりをしてくる。
 未だ抜かないままではあったものの、二度も出したという事実と穏やかに目を閉じるその顔を見ていれば、確かな充実がそこにはあった。
 下世話な言い方をすれば、自分の女になったというのだろうか。
 もちろんあちらも、自分のオスにした、と思っているのかもしれないが。



 「で・も♥まだアタシもいるのよ、お客様ぁ……♥」



 ……そんなことを考えていた最中、ネヴィーが信じられないようなことを口にした。

 まだ?アタシも?それは、どういう。

 「え、あ……?えぇ……♥ま、だ……♥」
 「そう、まーだ♥まだ、アタシとも交尾、しましょうよ……♥」

 いや分かっていた、分かってはいた。
 しかし頭では分かりながらもくたくたの体が理解を拒む。
 指先一つさえピクリともしない状態で、それも先程まであんなに激しく交わってきた彼女と同じ種族を、もう一人相手にするのか。
 しかも背中にいるのはネヴィーだ。
 ねっとりと纏わりつくような言葉を投げかけてくる、お世辞にも清楚とは真逆の、淫猥な、言ってしまえば搾り取ってくるであろうワイバーンだ。

 「ん…………フフ……まあ、そういうことになるかなぁ……んっ♥」
 「うぁっ♥」
 
 しかしそんな思考とは裏腹に、状況はすぐに変化していった。
 リルウェリアがおもむろに体を起こしたのだ。
 そして緩慢な動きでペニスを抜き去ってから額を合わせてきたかと思うと、名残惜しそうにこちらの下半身を見て微笑む。

 「ああ、ごめんね……私だって名残惜しいよ……♥でもお客様、ネヴィーが待ってるから……♥️ほら、体、ひっくり返したげるよ……♪」
 「え、ぁ……」

 そこからはあれよあれよという間に、俺の体は回転させられていった。
 ゆっくりと、座った姿勢のままリルウェリアに操られ、ネヴィーへと向き直る。


 「うん……?ああ……アタシの体、そういえば見るのは初めてね……?どう?好み……?」

 と、本人に言われて気づく。
 そういえば、ネヴィーの体をまじまじと見るのは初めてだったかもしれない。
 
 「っ……」

 褐色の肌、黒い鱗で編み上げられた翼や尻尾と、そしてアングラな雰囲気の灰色の髪を、裏腹なポニーテールにして可愛く纏めている、まず目につくのはそんなところだろうか。
 全体的に少々威圧的な組み合わせ、それを活かすように顔の半分を眼帯が覆っている。
 息をのんだのはそのせいだった、が。

 「……っ……」
 「ふふ……怖くなった?カワイイわ……でも、それだけじゃないでしょう?」

 彼女が妖しく笑いかけてくる。
 俺はただ、喉を鳴らして頷くしかなかった。

 「ん、んんっ……♥」

 揺らされるたわわに実った二つの果実に、リルウェリアよりやや熟れて感じる、といってもだらしないわけではなく、むしろ引き締まっている体つき。
 ただ少し、ほんのちょっぴりだけむっちりとしているような肢体は、十二分に女の魅力に満ち溢れていた。

 「……どうしたの♥ねーえ」
 「っ!」
 
 そう観察しているとネヴィーが語り掛けてくる。
 そこで俺は気づいた。
 彼女の、大人びた空気がそう見せている、と。

 腰が揺れ、尾がしなる度に漏れる蠱惑的な吐息のすべてが、こちらを引き寄せる毒のように漂ってくる。
 それでいて、ギラつきを滲ませながら潤む瞳はちらりちらりと俺の顔と股間を往復しているのである。
 一度喰いついてしまえば絶対に逃れられないのが分かっていても、たまらなく欲しいと思わせてしまうエロスがそこにあった。
 リルウェリアが洗練された鋭い激しさだとすれば、彼女は荒々しさを秘めた妖しさだろうか。

 ……一言でいえば、リルウェリアとは別方向で好みだった。
 

 「はーっ……はーっ……♥」
 「ああん、やらしい……♥アタシを犯したくってもう仕方ないって顔……」

 だから息がどんどん荒くなる、だからネヴィーから視線を外せない。
 ふらふらと引き寄せられるようにして彼女の元へと湯を進んでいた。

 「ほら……キて……お客様……♥」

 そしてもう少しといった頃合いでネヴィーが囁いてくる。
 狩りの成功を確信して、抑えられない舌なめずりのままに最後の一押しをするような、うっとりとした声音だった。
 

 「あ……」
 
 ビキリ、と雄が張り詰める。


 「く、う、ぁ……っ♥」
 「うっふふ、いらっしゃぁい♪ようこそ、アタシのナカへ……♥」

 気づいた時には誘われるがままに、彼女へとそれを突き刺していた。

 「っ、ううっ……♥」
 「ああ……その顔イイわ……動かしたくってたまらないんでしょう?でも動けない……」

 ネヴィーの言葉通り、彼女の膣は凄まじく具合がよかった。
 どろどろと、今にも男性器が溶けてしまいそうなぐらいにねっとりとした快感の洞窟は、それでいてぎっちりと包み込んできて身じろぎ一つできない。


 「はっ、はあっ、はあ、あっ♥」
 「そういうの、すごく好みよ……やっぱり、可愛いわね、アナタ♥」

 それでも熱に浮かされ切った体と頭は、目の前のネヴィーを味わうこと以外考えられなかった。
 ほんの少しでも、今でさえ快楽で焼き切れそうになっているのに腰を振りたくてたまらない。

 「く、っ……」
 「あ、ぁんっ、ちょっと動いた……♥頑張ってくれてるの?健気で素敵ね……」

 それを、ネヴィーが褒めてくる。
 尻尾で頭を撫でてくる。
 たったそれだけのことで、脳みそまで炎が突き抜けるように体が熱くなる。
 もっと、もっとネヴィーに褒めてもらいたい。
 もっと気持ちよくさせたい。

 「はっ、ハッ……♥️」
 「……なぁネヴィー」
 「ええ、わかってるわリルウェ。……動きたい?お客様♥」

 ネヴィーが聞いてきた。
 がくがくと震えるようにして頷く。
 涎を垂らす犬のような情けない顔をしているだろうが、そんなことは構えなかった。
 動かしたらすぐにでも射精してしまいそうなくらいなのに、この快楽を貪りたくて仕方がなかった。

 「……そ♥……リルウェ、お願いね♥」
 「ああ。さ、お客様。肩の力抜いてくれよ……」

 ネヴィーに促されたリルウェリアが、背中に密着してくる。
 肩を掴み、腰をこちらの腰に押し当ててくる。
 何をされるのかはなんとなく分かっていたし、自分でも期待に瞳が輝いているだろうことがはっきりわかっていた。

 「っ、あ、があっ……♥」
 「ああ……深く、刺さってきたぁ……♥それに、さっきの声……獣みたいでとっても好み……♪」

 そしてほどなくして、リルウェリアの助けを借り、動かせない腰を後ろから押し込んでもらう。
 ゆだるような熱が顔面までを一気に染め上げてくる。
 ぬぷ、ぬぷぷ、と入り込む度、股間の先のものが蕩けていくような心地がした。
 ややもすれば抜いてみればどろどろになくなってしまっているのではないか。 
 ともあれ男性器はついにずっぷりとネヴィーの陰部へ呑み込まれていた。

 「さて、お客様?交尾は、挿れたら……」
 「え?あっ……待って、待っ、て」

 が、リルウェリアが耳元でささやいてきた。
 その意味は言わずともわかる。
 しかし入れただけでこの有様だというのに、そんなことをしてしまえばどうなるかわかったものではない。
 もちろん気持ちよくはなりたい。
 なりたいが、なりたいのは確か、なのだが…… 

 「うふ、ふふふっ……」

 そんな中ネヴィーが妖しく笑った。
 濡れた瞳がこちらを見つめてくる、心の奥底まで見透かされるかのようなねっとりとした視線の艶めきに、自分が取り繕おうとしていたものがべりべりと剥がされていくような心持ちになってくる。
 ……気持ちよくなりたい。
 思考がそれ一色に染め上がったその時。

 「……〜っ!ぅ〜〜〜〜〜っ……ぁ!」

 俺の体はひとりでに動いていた、いや、動かされていた。
 リルウェリアが俺の腰を掴んで自分のそれと同じ位置に合わせると、前後に動かし始めたのだ。
 
 「ぁっ、あんっ……♥」

 ひとたび、ふたたび、みたび。
 腰が前後し、灼熱の蜜壺をくぐらされる度に、頭の中が壊れそうになる。
 ばちゅっ、ばちゅっ、と響く水音が、まるで脳の深いところへ届いていじろうとしてきているかのようだった。
 
 「ふぁ、は、あっ」
 「ああ……気持ちいい?気持ち良すぎてふらふら?……大丈夫よ、私達がいる……♥」
 「っ……っ……ネヴィー……ネ、ヴィっ……♥」

 ネヴィーが、微笑んでくる。
 息も絶え絶えの俺に、優しく、あたかも女神のような顔をして笑いかけてくる。
 その美しさと淫靡さの入り混じる表情に一瞬で心奪われ、俺は、たまらず彼女の名前を呼んでいた。

 「……♥」

 すると彼女が舌なめずりをする。
 ずらりと並んだ牙がチラリと見え、ぞくり、と背筋が震える。
 しかしそれは恐怖ではない。
 慈母のような顔をしていた彼女の見せた、その褐色の肌と黒い鱗に似つかわしい隠された獣の野性に、胸の奥深くの方がどろどろに溶け落ちていくような心地は、屈服、といえばわかりやすいだろう。
 天使と悪魔、ネヴィーの持つ二面性を前に俺は、差し出すようにして力が抜けていっていた。

 「く、ぁあぁああっ……♥」
 「ほぉら、ぱん♥ぱん♥私だって腰を動かしたげるんだ、お客様は気持ちよくなることだけを、さ♥」

 だからリルウェリアの動きが激しくなっても、俺は蕩けた顔をしてネヴィーを見つめていた。
 いやらしいささやきにも従順に、自分の体が貪り貪られるのをただただ楽しんでいた。

 「は、あぁ……あ……」

 何せ快感を求めて乱れがっつく動きはすべてリルウェリアがやってくれる。
 魅惑の名器はネヴィーがやってくれる。
 自分では指先一つ動かせないのに、気持ちよくて気持ちよくてたまらない。
 まるで天国のようだった。

 「んっ……」

 それに快感を欲しがり涎を垂らしていれば、近づいたタイミングでネヴィーがおもむろに唇を寄せてくれる。

 「〜……♥ぅ……♥」
 「れう……ん……んん……んぅ……ん……」
 「ん……♥♥」

 べちゃべちゃ、ぐちゅぐちゅ……と口の中が蹂躙される。
 触手が絡みつくような、ネヴィーのしつこい舌遣いが俺を捕らえて放さない。

 「うわ……口元は動かないのに体はビクンビクン揺れてる……ネヴィーとのねっとりキス、きもちいんだな……♥」
 
 舌の付け根がなぞられる。
 ずりゅ、ずりゅ、と永遠のような深い深いキスで絡み合う。
 そんな中でネヴィーの鼻息と、リルウェリアのささやき、そしてぱんぱん、と振らさせてもらっている腰の水音だけが耳に入ってくる。

 「っ、ぁ……っ♥♥」

 そんな折、唐突に体がびくりと跳ねた。
 膨れ上がり、爆発してしまいそうな熱が体から出て行こうとして股間に集っているのを感じる。
 ああ、限界だ、と悟った。
 今にも射精してしまいそうだ……

 「ん、ふふ……跳ねちゃってカワイイ。もう限界?良いのよ、出して♥」
 「そうそう♪もう何度も出してるんだから、我慢なんてしないしない♥」

 それを彼女達が促してくる。
 早く出せ、イけ、射精しろ、種を吐き出しメスにオスをわからせてくれとねだってくる。

 「あ、っ、ぅう…………ううっ……っ♥♥」
 「良いわよ、全部出して♥全部、ぜん、ぶ……く、ぅ……っン……ッ♥♥♥」

 言われるまでもなかった。
 リルウェリアが一番深くまで押し込むのに合わせて、射精する。
 ぐちゅぐちゅぎゅちゅうっ♥と収縮する膣の脈動に身を任せ、そしてネヴィーの翼爪を握り締め、一滴も残されないように彼女の蜜壺を自分の色を叩きつけていく。
 対してネヴィーは俺の腰を、リルウェリアごと掴まんばかりの強さで足でがっちりと抑え込んでくる。
 まるでサソリやカニのハサミのように。

 「ほら、ゆっくり、とん、とん……♥」
 「うぁ……っ……♥うぅ……♥」

 そんな中でもリルウェリアはそれを助けてくれていた。 
 余韻に浸り全く動けない俺を、彼女は細やかに揺らしてくれる。
 前、後、前、後とゆっくりと押して引いてを繰り返してくれていた。
 
 「ほぉ……らっ♥私にしたように、ネヴィーにもたっぷり……どぴゅぴゅぴゅーっ……♥」
 「はぁーーー……っ……っ……♥ぁー……っ……♥」

 そして最後の最後に、ネヴィーに押し付けてさえくれる。
 おかげで俺は、緩やかな連続の絶頂と止まらない精液の奔流にさらされつつも、ネヴィーの奥の奥まで白濁を余すことなく吐き出すことができた。
 案外尽くすタイプなのかもしれない。

 「ぁー……っ♥」

 と考えていたが、流石に限界の限界が来たらしい。
 ひとしきり射精した後、俺はネヴィーの体へと、糸が切れた人形のように倒れ込んでいた。
 やるだけやって、体力が尽きたのだ。

 「……ん……疲れちゃったかしら?ふふ、沢山、何回も出してくれたものね……♥」

 だが情けない、等とは思わなかった。
 むしろ誇らしい気持ちでいっぱいだった。
 それはふんわりとした甘い匂いと、顔を包むゆったりとした胸元が楽園のように俺を迎えてくれたのもあるが……

 「良いのよ、このまま寝ちゃいましょ……♥」
 「アンタはオスの仕事をちゃあんとしたんだからな……♥」

 彼女達がこう言ってくれたからだろう。
 頭を撫でながら、労うように首筋に鼻を寄せ、すりすりと肌を擦り合わせながら。
 俺のオスを搾りに搾りつくした美しく淫らなメスがそう言ってくれるのだから、そんなことを考える余地などあるわけがなかった。

 「ぅ……ん……♥」

 二人がいてくれる。
 俺よりも強くて、俺を好き勝手に蹂躙出来て、俺のことを大好きな二人が見てくれている。
 だから俺は身を任せ、ゆっくりと眠りに落ちていった……



















 「……ん……」
 
 と、ふと、目が覚めた。
 あれからどれだけの時間が経ったのだろうか、とぼんやりと考える。
 
 「……っ……?」

 と、ピンクの灯りがともる天井を見れば……という通りここは室内らしかった、仰向けに寝かされているが、あの二人が連れてきてくれたのか。
 体にかかる暖かなもふもふとした感触は毛布らしい。
 見ればなかなかに豪華そうな装飾だ、ということは慰労館の中だろうか。

 「……あぁ、起きたかい?」
 「ふふ、随分とぐっすり寝ていたものね、おはよう」

 そう観察していると横から声がかかった。
 すっかり聞きなれた声達に顔を向ければ左にリルウェリア、右にネヴィーがそれぞれ包み込むように翼を重ねながら微笑んでいた。


 「あ、あぁ、おは……っ」

 それへ返事をしようとして、詰まる。
 股間へと走るぴりぴりっ、という痺れに体が震えたのだ。

 「……ふふ。起きた傍からこんなにビンビンなんて、流石は私達のお客様ね」
 「私達、の……」

 ネヴィーが笑う。
 屹立した男性器をじっくりと付かず離れず触り続けて弄んでいるのは、彼女だろう。
 しかし微笑みながらの楽しそうな言葉の意味に俺は、止めるのも忘れて続きを促していた。

 「そ。……アンタ、竜のいない竜騎士なんだろう?だから、さ……♥」
 「私たちが騎竜になってあげる……♥」

 願ってもない申し出に、弾かれたように視線を巡らせる。
 二人の顔を交互に見れば、どちらとも期待と満ちた欲情の笑みを浮かべていた。

 「これからよろしくな、お客様。いや……」
 「私達の。竜騎士様……♥」

 騎竜、そして、竜騎士。
 ついに俺は騎竜を手に入れることができる。
 その事実に、ぼやけていた思考の糸がゆっくりと纏まってきた。
 
 
 「ふふ……れろれろれろっ♥」
 「っウフ……あむっ、ん……♥」
 「あっ……♥♥あっ……♥」

 が、すぐにそれは崩れてしまう。
 ネヴィーからはねっとりと粘っこくしつこく、リルウェリアからは繰り返しびちゃびちゃと舌が這ってきたからだ。
 片方ずつ舐めしゃぶられた両耳の快楽に、否応なく湯の中でのことが思い出され、体が搾り取られる為に血を股間へ集めはじめる。


 「あ、あぁ……よろしくお願い、します……♥」
 
 だから返事も、情けないおねだりへと変わってしまっていた。
 二人の喉が、ググクッ、と鳴るのが聞こえる。


 「えぇ……任せて頂戴♥」
 「今日もしっかり、オスの仕事を果たそうな……♥」

 
 二人が身を起こし、2人して覆いかぶさってくる。
 胸元、足、腕、手のひらへ、爪や翼、尻尾が突き刺さるようにして抑え込んでくる。
 文字通りの蹂躙の前準備だとすぐに分かった。
 だが……

 「あぁ♥分かった……♥」

 それがたまらなく嬉しいあたりどうやら。
 

 「……♥」
 「……ふふ♥」

 思い描いていた、かっこいい関係には当分なれないらしかった……♥
21/01/04 08:14更新 / GARU

■作者メッセージ
久しぶりのワイバーン、それも二人にぬぷぬぷと搾りつくされるシチュエーション、ようやく書き上げられました!

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33