連載小説
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後編
 目が覚めたとき、俺はベッドに寝かされていた。教会の天井……俺が借りている部屋だ。ベッドは温かく気持ちいいが、何かが物足りない。俺を包んでくれる、優しく柔らかな何かが。

「……!」

 はっと我に返り、体を起こした。時計を見るともう夕方だ。記憶を辿るまでもなく、あの双子のワイトのことが頭に浮かぶ。彼女たちはどこにいるのか、考える前に体が動いた。毛布をはねのけ、床に脚をつける。一瞬体に力が入らなかったが、何とか立ち上がった。体に異常はなく、ただ二人に吸い取られた余韻がまだ残っている。

 俺はふらふらと、寝室のドアまで歩き……手をかけようとした瞬間、ドアが外側から開かれた。

「ああ、起きたか」

 一瞬あの二人かと期待したが、そこにいたのはこの教会の修道士さんだった。かなりの美男子だが、暗い赤の瞳が怖い印象を与える。

「ヅギさん、あの二人は……ミーヌリアとスーヌリアは……」
「落ち着け。今シュリーが服を選んでやってるよ。素っ裸同然だったから」

 気だるそうに答え、ヅギさんは苦笑を浮かべる。

「オーギュから話を聞いて迎えに行ってみたら……双子のワイトとはなまた、レアな魔物に好かれたもんだ。しかも昔話のお姫様とはね……」
「昔話……?」

 俺の理解が追いつく前に、ヅギさんは古びた本を差し出してきた。シュリーさんが子供達に読み聞かせている童話集だ。表紙の絵はカモメが群れている景色だが、ヅギさんが開いたページの挿絵を見て、俺は思わず目を見開いた。
 そこに描かれていたのは双子の女の子。ミーヌリアとスーヌリアとは体つきも髪の長さも違うが、間違いなく彼女達二人を描いたものだ。絵の中の双子は美しいドレスを身にまとい、二人並んでじっと目を閉ざしている。そして互いの手をしっかりと握り、縄で結んでいたのだ。

 ヅギさんの手から本を受け取り、そこに記された物語を読んでいく。


 ――むらしむかし、ひがしのマドゥラ王国にふたごの王女さまがうまれました。おねえさんがミー、いもうとがスーといいました。二人はとてもかわいらしく、かしこくそだちました。しかしマドゥラ王国では、『ふたごがうまれると よくないことがおきる』といういいつたえがあり、王さまはしんぱいになりました。

 ふたりが大きくなったある日、マドゥラ王国であらしがおきて、おおぜいの人がしにました。国のしんかんは神のこえをきき、それを王さまにつたえました。

 『ふたごの王女がわざわいをよんでいるのです。いもうとのスー王女をころさなくては、もっと大きなわざわいがやってきます。これは神のおことばです』

 王さまはとてもなやみましたが、マドゥラ王国では神のことばにさからってはいけないことになっていました。やがて王さまはスー王女をつかまえるよう、けらいにめいれいしました。
 しかし、このはなしをかくれて聞いていたミー王女が、じぶんとスー王女の手をじょうぶななわでむすび、だれもスー王女をつれていくことができないようにしました。おうさまのめいれいをうけた兵士たちはそれをみて、ミー王女のやさしさにかんどうし、二人のためにふねをよういしました。

 ふたりの王女はふねにのり、うみをわたりました。そしてたどりついたじゆうならくえんで、なかよくへいわにくらしました――




 彼女たちが目を覚ましたときの言葉が、ふと脳裏に蘇ってきた。


 ――私たち、自由になったのよ!――



「……マドゥラ王国というのは、どこにある国ですか?」
「とっくの昔に滅んだよ。魔王の代替わり前に」

 ヅギさんはさらりと言った。そんなことは大して重要じゃない、とでも言いたげだった。

「短い話だけど、反魔物領でも親魔物領でも読まれてる昔話だ。教団側だと船が難破して二人が死ぬ結末になっててさ、教団側の方が史実には近かったことになるな」
「……じゃあ、『船の吹きだまり』の難破船の中に、二人の乗っていた船が……?」
「多分な。難破したときから記憶が途切れたって言ってたし、そのとき頭でも打って死んだんだろ。で、船の残骸と一緒に吹きだまりの中に埋もれて、何かの魔力でも入ったのか死体が腐りもせず残って、魔物化していたと」

 この町は何が起きるか分からないからな、とヅギさんは呟いた。
 改めて本を見る。この昔話の中から彼女たちがやってきたと思うと、胸の奥に熱いものがこみ上げてきた。実の父親に殺されそうになり、逃げ延びた先で命を落とした双子のお姫様。手首を縄で繋いで、二人一緒に暮らせる場所を求めていただけなのに、何故死ななくてはならなかったのか。

 いや、世界はそんなものだ。理不尽なことばかり起きるのは今も昔も同じだし、俺自身もそんな目に遭ってきた。だから、せめて……

「ヅギさん、あの……!」
「二人はこの教会で面倒を見る」

 言葉をぶっきらぼうに遮り、ヅギさんは苦笑した。

「シュリーがそう決めた。昔話の続きはお前が作ってやればいい」
「……ありがとうございます!」

 俺なんかの考えることはお見通しということか。オーギュさんもだが、まったくこの町の人たちには敵わない。深々と頭を下げ、彼女達の元へ向かう……までもなかった。

 顔を上げたとき、そこにもう二人がいたのだ。お揃いの黒いワンピースを着て、白い肌がよく映えている。俺は思わず息を飲んだ。
 しっかり覚えている、縄の痕が左手にあるのがミーヌリア、右手にあるのがスーヌリア。昔話の世界から出てきた、ミー王女とスー王女だ。やはりその顔は後世に描かれた挿絵とは似ていないが、この高貴な雰囲気を絵に描き写すには相当な腕が必要だろう。

「ニカノル!」
「ニカノル様!」

 二人は花のような笑顔で抱きついてきた。海水に浸っていた体も洗ったようで、良い匂いだけがする。両側から感じる吐息がとても幸せだ。
 今の俺には分かる。彼女たちはただ外見の美しさでけではない。命を落とし、人間であることを辞めても、心を吸い込まれそうな美しさを『纏っている』。その正体が単なる魔物の魔力なのか、それとも彼女たちの心なのかは分からない。そんな目に見えない力を感じ取るから、魔物は魅力的に見えるのだろう。

「二人とも、体は大丈夫ですか?」
「ええ、平気よ」
「ニカノル様から力を沢山いただきましたもの。元気いっぱいですわ」

 スーヌリアが屈託なく微笑む。そうだ、大量に搾り取られたんだ。二人掛かりで俺のペニスにしゃぶりつき、胸を押し付けて、精液を浴びて喜んでいた。白濁で汚れた姿とあの気持ちよさを思い出し、またムラムラした感覚が湧いてしまう。黒いワンピースに浮き出た体のラインがますます情欲を煽った。

「……じゃあ、後は好きにしな」

 俺の心境に気づいているのかいないのか、ヅギさんはもう話すことはないとばかりにそう言った。

「あ、ありがとうございました!」
「オレは何もしてない」

 改めて頭を下げた俺にそれだけ言って、ヅギさんは去っていった。小さく咳をしながらも、規則的な足音を立てて。

「……不思議な人ね」

 足音が階段を下りていったとき、ミーヌリアが口を開いた。

「力強くて、どこか哀しくて。でも、優しい」
「うん……」

 あまり自分からは話さないが、ヅギさんは肺を病んでいるのだと俺には分かる。少し前まで文盲だった俺に医学の知識なんてあるわけないが、煙突掃除夫は肺病で死ぬことが多い。ヅギさんの咳は死んでいった仲間達と同じ音がするのだ。
 だがそんな体で、あの人は何か危ない仕事をしていることも知っている。その仕事に特別な思い入れでもあるのか、それともやらなくてはならないのか。何か、俺に近いものを感じる。

「……あの、ニカノル様」

 スーヌリアが赤い瞳で見つめてきた。少し気恥ずかしそうに微笑を浮かべながら、言葉を紡いだ。

「町へ……連れて行ってくださらない?」









 ……数分後、俺は生まれて初めて女性をエスコートすることになった。同い年(生前は)とはいえとてつもなく高貴な女性を、しかも二人もだ。右手をミー、左手をスーと繋ぎ、冷え込んだ石畳の上を身を寄せ合って歩く。汚れていない服に着替えたとはいえ普段着の俺と、白い体によく映える黒のワンピースを着た二人はいかにも不釣り合いだ。
 当然道行く人の視線も浴びるわけで……

「おっ、何か珍しい魔物だな」
「あらあら。ワイトよあの子たち。エスコートしてるの、煙突掃除の人じゃない」
「ニカノルか。あいつも漢を上げたな。俺たちも負けずに、さっさと帰ってしっぽりヤろうぜ」
「やん、貴方ったら♥」

 すれ違うカップルたちがそんな噂話をしていたりする。

「奇麗な町ね」
「住んでいる人々も、皆幸せそう……」

 二人は好奇心旺盛に周囲を見回し、とても楽しげだ。寒さからか俺に体を押し付けて、最初は手を繋いでいたのにいつの間にか腕を組んでいる。無秩序な地域の魔界では下半身を繋げたままデートするカップルもいるというが、本当だろうか。

「姉様、言い伝え通り、ここには理想郷があったのですね……」
「そうね。私たちは死んでしまったけど、それでも……辿り着けてよかったわ」

 ふいに、二人が気になることを言った。

「理想郷って……何?」

 エスコートをするにあたり、敬語は使わないことを約束させられた。同時に名前はミー、スーと呼んで欲しいとも。俺と対等でいたいというのが二人の意見だった。二人の雰囲気に圧されてつい敬語を使いたくなってしまうが、注意しなくては。

「私たちが人間だった頃……私たちの国はこの地を魔境と呼んでいたの。海の魔物が多くいて、どんな船でも辿りつけない土地だって」
「でもこの地には人も、そうでない者も平和に暮らせる楽園がある……そんな言い伝えを聞いたのです」

 二人は切なげに目を伏せた。故郷のことを思っているのか、それとも悩んだ挙げ句スーを殺そうとした父親のことを思っているのか。やはり二人はあの昔話の結末を、『平和に暮らせる楽園』を目指していたのだ。
 人も、そうでない者も。この町は確かにそういう所だ。だがルージュ・シティは二年と少し前にできた町だという。すると彼女たちが生きていた頃にもそんな楽園があったのか……?

 知りたい、という思いがぐっとこみ上げてきた。二人が目指して、倒れた『理想郷』とは何だったのか。だが俺としてはその好奇心を満たすより、先に腹を満たさなくてはならない。もう時間は夕方で、昼飯になるはずの魚は食べ損ねたのだ。

「……ほら、この店が美味しいんだよ」
「わあ、いい匂い」

 今だから看板の文字も読める。この町で最も人気のある店の一つ、『ビストロ・ミンス』だ。人気があると言ってもあくまでも大衆食堂で、俺でも気兼ねなく入れる。元王女を連れて行くにはどうかと思わなくもないが、二人は店内から漂ってくる香りを十分気に入ってくれたようだ。
 ドアを開けると、まだ夕食の時間が始まったばかりだからか席は空いていた。だが隅の席にはオーギュさんの姿があった。

「あ、ニカノルはん、お疲れ様〜」
「……来たか」

 朗らかに手を振る奥さんと、静かに呟くオーギュさん。思えば今日、この二人には結構な迷惑をかけただろう。

「その、今日はすみませんでした。ヅギさんを呼んでいただいたそうで……」
「この程度のハプニングはどうとも思わない。むしろ日常だ」

 無表情のままそう応えるオーギュさん。この町は何が起きるか分からないというヅギさんの言葉が頭をよぎった。俺は来てからあまり長くないが、町ができた頃からいるというオーギュさんは何度もハプニングを経験しているのだろう。もっとも人が死んだり傷ついたりするようなことはほぼ起きないようだが。

「お二人ともよう似合ってはるねぇ、その服」
「ありがとうございます、紺さん」

 奥さんに穏やかな笑顔を返すミーとスー。俺が寝ている間に交流があったのだろう。
 そうしている間に、店の奥からウェイターのシャルルが出てきた。見習い料理人でもあり、元は俺と同じ流れ者だったため気が合う。

「いらっしゃい。三人だな?」
「ああ、シチュー三つで」
「はいよ。オーギュさんから聞いたけど、お前も隅に置けないな。おめでとう」

 シャルルは笑顔で軽く冷やかし、厨房へ引っ込んだ。まだ客は少なくても食材の準備で忙しいのだろう。あと少しすればそれはもう大勢人が集まるだろうから。
 俺たちは着席して一息ついた。後は漂ってくる匂いに食欲を膨らませながら、待つ時間だ。それはミーとスーも同じようで、うっとりとした顔で席に着いている。

「姉様、美味しそうな匂いですね」
「そうね、スー。……ねぇニカノル、その張り紙には何て書かれているの?」

 ミーが細い指で示したのは近くの壁にある、領主の印が押された張り紙だった。何やら難しい言葉も書かれているが、スコップを持った人間の絵が描かれており、土木工事の人員募集のようなもののようだ。

「地底……遺跡の、発掘隊員募集……?」
「……この町の地下には巨大な遺跡がある」

 表題を読み上げた直後、オーギュさんが助け舟を出してくれた。

「とうとう本格調査に乗り出すことになったようだな」
「遺跡……いつ頃のですか?」
「知らん」

 極めて簡潔に告げ、オーギュさんはワインを呷った。
 俺の脳裏にはまた、ミーとスーが目指した『理想郷』のことが浮かんでいた。もしかしたらその遺跡こそが、かつてこの地にあったという魔境の楽園なのではないか?
 二人も俺と同じことを考えたのだろう。読めない張り紙をじっと見つめて物思いにふけっている。求められる人材の項目には『考古学の知識がある者』『土木工事の経験がある者』『狭い場所での作業に耐えられる者』などが書かれていた。報酬もそれなりの額だ。
 
 今まで過去なんてものに興味を持ったことはない。考古学というやつに心血を注ぐ人たちのことも、心のどこかで馬鹿にしていた。俺自身の過去にろくな記憶がないからだ。
 そもそも煙突掃除夫というのは大抵、奴隷同然に売られた子供がなる仕事だ。体の小さい子供の方が煙突に潜るのに都合がいいし、買った親方は自分が煤を吸って病気になるリスクを減らせる。俺もそのクチで、はした金で親に売られてこの仕事に就いた。俺を買った親方は優しい人だったが、他の仲間たちは食事もろくに与えられない奴も多かった。こき使われた挙げ句に屋根から落ちたり、肺病を患ったり、肌に溜まった煤で『ガン』とかいうのができたり……大人になれず死んでいった仲間たちの顔は今でも覚えている。

 俺は契約期間満了まで生きのび、自由の身になった。親の顔も、故郷がどこなのかも思い出せないし、帰りたいとも思わない。後ろを振り向いても何も変わらないのだ。

 だが遠い昔から蘇った王女たちが目の前にいる。彼女たちも故郷を追われて、今ではもう故郷が存在しない。そんな二人が希望を託した地が本当にあったのか。どんな場所だったのか。何故滅びてしまったのか。


 俺は生まれて初めて、『知りたい』と思った。


「うーっす、また食いに来たぞー」

 やがて店に続々と町の人が訪れ、名物のシチューを注文したり俺たちを冷やかしたり、店内が活気づいてくる。人気の食堂は今夜も大盛況のようだ。
 俺もミー、スーと一緒にシチューを味わいながら、これからのことを考えていた。



















………












……





















 夜の町を少しうろつき、教会へ帰ってきた後、ミーとスーは俺の寝室で寝ることになった。教会の寮にはまだ空き部屋はあるものの、いざというとき怪我人を収容するのに使うとのことで、できるだけ節約したいそうだ。狭いベッドに身を寄せ合って横になるのだが、二人は嬉しそうだった。
 そして、裸だった。

「ねえ、ニカノル……」

 真っ白な頬を赤く染め、ミーは微笑んだ。横たえたからだが動くたび、大きな胸の塊がぷるんと揺れる。真っ白な肌は本当ならおぞましく感じるだろうに、二人の体は間違いなく死者のはずなのに、無性に欲望を煽る力を持っていた。縄の痕が残る手をしっかり繋ぎ、姉妹揃って瓜二つの微笑を向けてくる。胸の膨らみも互いに寄り添っていていやらしい。その下には可愛いおへそのあるお腹、さらに下には……物欲しそうに少しずつ汁を垂らす、割れ目があった。

「シュリーさんから聞いたの……ニカノルのあそこから出てきた、あのとろっとした白いの……アレは赤ちゃんのも元なんだって」
「私たち、ニカノル様の赤ちゃんを産みたいです……♥」

 脚をすりあわせながら、スーも熱っぽい笑みを浮かべる。愛液で濡れたふとももが、くちゅっといやらしい音を立てた。こんな光景を前にしてこんな台詞を言われたら、当然その気になってしまう。もう股間のモノはズボンを大きく押し上げており、二人の赤い瞳がそれを見つめ、視線だけで感じてしまうほどだ。
 だが、それでも。

「二人とも……その、本当に俺でいいの?」

 それでも、俺には迷いがあった。本当に俺なんかが二人の愛をもらっていいのかと。するとミーの表情がムッとした。

「ニカノルでいい、なんて言ってないわ。ニカノルがいいの。ニカノルじゃなきゃ嫌なの」
「ニカノル様は……私たちでは嫌なのですか……?」
「そんな! 俺は……」

 まったく情けないことだ。女の子にこんなことを言わせてどうする。ここで漢を見せなくては仕方ないだろうに。
 煙突の上から飛び降りるつもりで、俺は上着を脱いだ。下も。直に二人の体を味わいたいから。



 ……そして。

「……ニカノル、これでいいの……?」
「ああ……何だか、ドキドキする……♥」

 裸に俺はベッドの上に仰向けに寝た。そしてミーが俺の腰の上、スーが顔の上に腰を降ろしている。顔に愛液がぽたぽた垂れて、不思議なニオイで咽せそうだった。下半身の方も間近にミーの体を感じ、ペニスが限界までいきり立っている。
 二人は魔物ではあっても生前は清らかで、こんなことのやり方なんて知らなかった。そもそも精液が何であるのか知ったのが今日なのだから、『赤ちゃんを作る方法』は俺が教えなくてはならない。と言っても俺も童貞だ。以前何でも屋の人がヅギさんに「嫁を複数同時に相手にする方法」を話しており、それを立ち聞きして得た知識を総動員させた結果がこれだ。一番ドキドキしているのはむしろ俺だった。

「ねぇ、次はどうすれば良いのですか……?」
「もしかして……コレをお股に挿れるのかしら……♥」

 勃起したペニスをミーがそっと握った。それだけで気持ちよく、竿がぴくんと震えてしまう。彼女たちのなしではいられなくなってしまいそうだ。

「う、うん。アソコが……おまんこがよく濡れてれば入るはずだから、ゆっくり挿れてみて」

 おまんこ、とわざわざいい直したのは、何となく卑猥な言い方をしてみたかっただけだ。高貴な彼女たちにそんな言葉を教え込みたい、汚してみたいという欲望である。

「オマンコ……ココのことかしら……?」

 ミーがおずおずと腰を降ろし、入り口がペニスに少しかぶさった。

「う……!」
「あンッ……♥」

 俺たちは互いに声をあげた。俺は柔らかなミーの割れ目の入り口に、敏感な亀頭を出迎えられた感触。彼女はそれを受け入れた感触。

「そっか……ココ、なんだぁ……♥」

 うっとりと呟きながら、ミーはゆっくりと腰を降ろしていく。

「ココの、オマンコに……アゥン♥ 挿れて、オマンコで、ニカノルの……んんっ♥ 赤ちゃんをぉ……♥」

 ペニスは徐々に、きつい割れ目に飲み込まれていった。まるで食べられているかのように、女の器へと挿入されていくのが分かる。

「うおっ、し、締まってる……」

 ミーの中はキュウッと締まり、そうかと思えばゆるみ、咀嚼するかのようなうねりを繰り返している。ペニスを味わうような動きは「下の口」そのものであり、気を抜けばすぐに漏れてしまいそうだ。
 やがてその一番奥で、ペニスがこつんと止まるのを感じた。

「ミー、どう……? 俺は凄く気持ちいい……」
「ふあぅぅん……♥ ニ、ニかノル、わ、わた、し、もね……あんっ♥」

 自分で腰を動かして、その感触で言葉が途切れたらしい。もっと味わいたいかと言うように、ミーはぎこちなく、ゆっくりと腰を動かし始めた。ぐりぐり、ぬちゃぬちゃと、中に収めたペニスを玩具のようにこねくり回す。

「ああ、姉様……気持ちよさそう……♥」

 ハッと、顔に跨がらせたスーを放置していることに気づいた。もう俺の顔は彼女の愛液でドロドロだというのに。
 慌ててスーの股間に顔を埋め、そこをペロリと舐めた。

「ひゃぁぁん♥」

 びっくりしたからか、気持ちよかったからか、恐らくは両方だろう。スーは反射的に腰を持ち上げた。だが赤い瞳でじっと俺を見下ろし、再び濡れぼそった割れ目を接近させてくる。
 彼女のお尻をしっかり押さえ、むにっとした感触を楽しみながら、俺は再び舌での奉仕を始めた。

「はぅぅぅん♥ し、舌がぁ……♥ だ、ダメ、汚いですよぅ……♥ あんっ、もっと舐めてくださぁい……♥ やっ、汚いですってばぁ……でも、もっとぉ……♥」

 混乱しているのだろうか、ダメと言ったり舐めろと言ったり、相反する言葉を交互に垂れ流すスーヌリア。そして割れ目からは愛液を垂れ流す。それも俺は舐めとっていく。不思議な味がした。もっと味わいたくて、ぷっくりした豆のようなものを舌先でつついてみたり、奥までねじ込んで舐めたり、むしゃぶりついた。

「ひゃ、イイ、気持ちイイです……幸せぇ……♥」

 やがてスーは俺の顔面に、グリグリと股間を擦り付けてくるようになった。気持ちよさに目覚めたらしい。汚してやったぞという妙な満足感が湧いてくる。
 だがそれに浸っている余裕はなかった。下半身ではミーの動きが徐々に激しくなり、やがて慣れたものであるかのように腰を使い始めたのだ。狭い膣内で横に捻ってみたり、パンパンと音がなるほど激しく腰を打ち付けてみたり。魔物の本能が完全に目覚めたに違いない。

「あんっ、やぁんっ♥ ひぅぅ♥ はぁ♥ イイわぁ、オマンコがぁ……ニカノル、大好きよぉ……♥」

 ミーの言葉の一つ一つが嬉しくて、気持ちよかった。蠢く肉壁がペニスをしゃぶっている。俺もまたスーの股間を舐めている。徐々にミーの膣が強く締まっていき、言葉も支離滅裂になっていった。
 イきそうになっているのだと分かったが、俺の方も限界だった。いつしか下から彼女の器を突き上げ、中に全てを出し尽くす準備に入っていた。気が狂いそうなほどの快楽に、ますます力を込めてスーの股間を舐め上げる。

「ふぁぁ♥ や、め……♥ ダメぇ!」

 突然スーが腰を上げたかと思うと、俺の上から退こうとしてベッドから転げ落ちた。次の瞬間、じょろじょろと水の音が聞こえた。

「嫌ぁ……見ないでぇ………♥」

 床の上で大きく開いたスーの股から、勢いよくおしっこが漏れていた。気持ちよすぎて我慢できなくなったのだろう、見ないでと言いながら隠すこともできず、幸せそうな顔で放尿していた。アンデッドとはいえ先ほど食事をして水も飲んだ以上、出るものは出るのだと感心してしまう。生前は王女だった女性にこんなことまでさせてしまった罪悪感と、その卑猥な光景への達成感がこみ上げてくる。

「ん……♥」

 直後、ミーに唇を奪われた。俺の顔が空いたのを見て、騎上位の状態からしなだれかかってきたのだ。柔らかな胸がぐにゃりと潰れ、その感触を味わいながら互いの唇を舌で犯し合う。

「ぷはっ……ひあぁ、あふぅ……♥ ひぃ、あはぁ♥ くる、なんか、くるぅ……♥」
「う……出る、出るよミー! 俺の子供、産んで……!」

 思わず口走りながら、ペニスからそれを迸らせた。

「はぁぁぁっ♥ き、きたァ……♥ あつ、アツイよぉぉ♥」
「うっ、くっぁ……き、気持ちいい……!」

 絶頂という奴だろうか、ミーの膣は思い切り強く締め付け、精液を吸い出してきた。勢いよく迸った俺の子種をしっかりお腹の中に受け止めていく。たまらなく気持ちいい。
 蕩けた彼女の顔が可愛くて、今度は俺からキスをする。海岸でペニスを翻弄したぷるぷるの唇だ。最期の一滴を出し終わるまで、そのまま唇を重ねていた。

「はぁ……はぁ……はぁ……♥」

 唾液の糸を引きながら、ミーはゆっくりと口を離した。甘い香りが周囲に充満している。俺を見下ろす赤い瞳はしっとりと潤んでいて、とても淫らだ。

「ミー、可愛い……」

 頭を撫でると、彼女は嬉しそうに微笑み、膣からぬるりとペニスを引き抜いた。愛液がねっとりと糸を引く感触がたまらず、穴から抜かれたペニスは挿れたときと同じくらい硬くなっていた。俺はもしかしたら町の空気でインキュバスとかいうのになりかけているのだろうか。
 だが、そんなことを考えている間はなかった。床でへたり込んでいるスーの手を、ミーが引いたのだ。

「ほら、スー。頑張って、今度は貴女の番よ……♥」
「はい、お姉様……♥」

 うっとりした声で応えながら、スーはゆっくりと、ベッドの上に戻ってきた。股の割れ目を大きく指で広げ、たらたらと果汁が滴るピンク色の中身を見せつけながら。

「スーのココ、凄くいやらしくて、素敵よ……♥」
「あんっ、姉様こそ……奇麗ですわ……♥」

 互いの股を指で軽く触る二人。ミーの割れ目からは白い液が少し漏れてきた。

「ああ、こんな淫らになった、お、オマンコに……ニカノル様の白いのを出されたら、私……♥ どうなってしまうのでしょう……♥」

 期待に震える手で、花を摘むようにペニスを掴み、スーは腰を降ろしてきた。舐めまくったことでミー以上に濡れたソコはするりとペニスを受け入れていく。

「ア……♥ ん、んんっ♥ ……あはぁ♥」

 根元までずっぽりと咥え込まれたとき、スーは感極まって泣き出していた。笑顔の白い頬に涙が伝っていく。下からも止めどなく愛液が溢れ、ミーより締め付けが弱い代わりにつゆだくのヒダがペニスをくすぐってくる。いつまでも挿入していたくなるような感触だった。瓜二つの双子でも、体の一番神秘的な箇所はこんなに違うのか。ますます興味を惹かれてしまう。

「は、入っちゃったぁ……♥ 姉様、見てぇ♥ 私、ニカノル様と、赤ちゃん作りまひゅぅ……♥」
「見てるわ、スー。とても可愛くて、気持ちよさそうよ……♥」

 片割れに優しい言葉をかけながら、ミーは俺の顔に体を寄せて、胸の谷間に挟み込んでくれた。汗ばんだそこの感触は天国であり、多幸感で胸が一杯になる。母性の塊……親に捨てられてからこの方、俺はずっとこれが欲しかったのかもしれない。豊満な胸の可愛い乳首を舐め、そしてしゃぶりつく。

「あんっ♥」

 ミーはまるで赤ん坊のような俺をより一層強く抱きしめ、頭を撫でてくれた。そしてまた、妹に言葉をかける。

「スー、腰を動かして、ニカノルを気持ちよくしてあげるのよ。とっても気持ちイイんだから……♥」
「はい、お姉様ぁ……♥ ニカノル、様ぁ、私、頑張り、ますぅ……♥」

 途切れ途切れの言葉で呟きながら、スーは一生懸命に腰を振り始める。優しい感触の膣内はまさに『蜜壷』という言葉そのもので、抜き挿しされるたびにと愛液がねっとり絡んでくる。ミーの胸に甘えながら、俺は思い切り腰を突き上げた。

「きゃぅぅんっ♥」

 体を仰け反らせながら嬌声を上げるスー。おしっこの穴から、少量の液体がぴゅっと吹き出した。

「ニカノル、スーには優しくしてあげなきゃダメよ……♥」

 そう言うと、ミーは体の向きをくるりと変え、俺とスーの繋がっている所へ顔を近づけた。必然的にお尻をこちらに向けてきたのでそれを撫でていると、彼女は結合部をぺろりと舐めてきた。

「ひゃっ…♥」
「ん……!」

 俺とスーは同時に声を上げる。ペニスも、スーの恥ずかしい所も、ミーはペロペロとくすぐるように舐め始めた。ただ繋がっているだけでも気持ちいいのに、舌責めが加わりどんどん高められていった。
 スーはくちゅくちゅと小刻みに腰を動かしてペニスを刺激し、自分も嬌声を上げて楽しんでいる。大人しい彼女も魔物の情欲に染まっていた。ミーのいたずらな舌は膣内にまで入り込み、俺とスーをよがらせた。お返しに俺もミーの股間を、そしてお尻の谷間から後ろの穴を探り当て、そこをほじくった。

「んはっ♥ やぁ……♥ んちゅっ、はぁっ……ちゅるっ♥」
「ふあぅぅぅ♥ イイ、気持ちイイですぅ……あふっ♥ あ、頭がおかしくなりそう……おかしくなりたいですぅぅ……♥」

 耳に届く卑猥な音を聞きながら、俺も再び限界に達していた。

「ああっ、出る! スー、中に出すよ!」
「はいぃ♥ ください……赤ちゃん産ませて、産ませてくださぁぁい♥」

 柔らかな蜜壷へ、ドクドクと射精していく。垂れて溢れた分はミーが卑猥な音を立てながら舐めとり、スーは涙とよだれを垂れ流して恍惚の表情を浮かべ、受け止めてくれた。蠢くヒダが精液を奥へ、奥へと運んで行くかのようだ。ミーのお尻を触りながら、最後まで気持ちよく出し尽くしてしまった。

「あはぁん……姉様ぁ……♥」
「スー、素敵よ……♥」

 潤んだ瞳で顔を見合わせ、双子のワイトはキスを交わした。互いに手を繋ぎ、同じ顔の姉妹同士で舌まで使った濃厚なキス。
 だがそれは短時間で終わった。二人は互いの唾液が糸を引く唇を、俺の顔に近づけ……同時に、キスをしてくれた。

「ん……ちゅ♥」
「ちゅるっ……はぁ……♥」

 同時に二枚の舌を口内に押し込まれる。ねぶられる。
 貴方は私たち二人のもの……頭を撫でてくれる彼女たちの優しい手つきが、そう言っているかのようだった。

 包み込んでくれる人がいる幸せ。意識していなくても、ずっと欲しかった。
 擦りつけられる白い肌、見つめてくる赤色の瞳に、俺はまた奮い立っていた……。



















………










 俺と煙突掃除の仕事はどんな関係かと言えば、『腐れ縁』という言葉がぴったりだろう。好きでなったわけではなく、嫌々働いているうちに延々と続けることになっていた。
 それでも屋根の上に立ってこの町を見下ろせば、ここを俺が火事から守っているんだという誇りが湧いてくる。掃除した煙突から元気に煙が立ち上るのを見て、また頑張ろうという気になってくる。

 だが、煙突掃除夫という仕事はいずれ、少なくともこの町からは消えるだろう。煤を出さない魔法火が普及してしまえば、もう用済みだ。実際にもっと大きな魔界の都市では煙突自体使われなくなっている所も多いという。俺のように人買いに売られて掃除夫になる子供が減るなら、それは大歓迎だ。
 後はどうせ煙のように消える仕事なら、煙のように上へ向かっていきたい。そうでなくては生きる甲斐もないだろう。

 そのために俺は、まず地面の下へ潜ることにした。双子の王女が目指した『理想郷』が本当にあったのか、この目で確かめるために。発掘隊が招集されるまで本を読んで勉強して、準備を重ねておくつもりだ。例え行く先が地下でも、俺自身は少しでも上へ行けるはずだろう。

 ミーヌリアとスーヌリア。彼女たちが褒めてくれた、『立派な働き者』でいられるように。
 胸を張って、二人をエスコートできるように。





……fin……
14/01/06 23:44更新 / 空き缶号
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■作者メッセージ

お読み頂き、誠にありがとうございます。
何が短編と同じだよ、結局時間かかっちゃったよorz
しかも一話が長いぞ。
ともあれ、無事投稿することができました。
ちょっと他の趣味の調子が悪くて自堕落になったりしましたが、いろいろな手を使いながら前進していきます。
応援していただければ幸いです。
ちなみにミーとスーはこの後領主と面会したりもしたと思いますが、それは別の機会にでも書ければと。

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