読切小説
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博士と悪魔
 博士は、自室でため息をついていた。窓からは落日が差し込んでおり、棚に整然と並べられた数多の本を照らしている。そして数多くの実験器具が鈍い光を放っている。
 かつてそれらの物は、博士の心を躍らせていた。だが、今となっては何の価値も無い。博士は、鏡に映った自分の姿を見た。老いさらばえた男の姿だ。彼は、ため息をつきながら考える。
 私の人生は何だったのだろうか。若い頃の私は、知の欲望に溺れていた。数々の学問を貪欲に求めた。数学、天文学、論理学、文法学、修辞学、法学、医学、神学などを貪った。自分の一生を学問にささげ、知の追及に心血を注いだ。
 だが、何もならなかった。膨大な知の世界で道に迷い、たいしたことは知ることは出来なかった。世界とは何か?人間とは何か?そんな根源的な問いに応えることが出来なかった。錬金術や黒魔術にも手を出したが、無駄な努力だった。
「何もかも無駄だった」
 博士は、薄暗がりの中でつぶやいた。

 博士は、部屋の真ん中を見つめた。そこには魔法陣が描かれている。黒魔術にのめり込んでいた時、その魔法陣を使って様々な儀式を行っていた。その結果知ったことは、黒魔術は子供だましに過ぎないということだ。
 博士は立ち上がると、魔法陣を描いた床を蹴った。
「悪魔よ、無能惰弱な詐欺師よ。私はお前に失望した。せいぜい子供相手に手品でもしているが良い」
 そう言い放つと、低く笑った。
 次の瞬間に、魔法陣は紫色の光を放った。同時に煙がわき上がる。閃光が放たれ、博士は目をつぶる。彼の口からはわめき声がほとばしる。
 気が付いた時には、博士は床に座り込んでいた。すでに夜となっており、部屋は闇に包まれている。博士は立ち上がり、首をふる。
「夢か」
 彼の口には苦笑が浮かぶ。
 部屋の中に薄明かりがともった。光の珠が1つ浮かんでいる。その灯りに照らされる者が博士の目前にいた。背か高く、長い黒髪を生やした女だ。娼婦ですら着ないような、露出度の高い革の服を着ている。露わになっている肌は青い。女の頭には赤い角が生えており、背には黒い翼がある。薄明りの中でも類まれな美貌だと分かる女は、赤い瞳で博士を見つめていた。
「ごきげんよう、博士。あなたの言う所の無能惰弱な詐欺師が参りました。子供を相手にするよりも博士を相手にした方が面白いですからね」
 そう言うと、女はわざとらしく一礼した。
「私としても、どうせやるのならば大きな手品をしてみたいものです。どうです、私と戯れてみませんか?」
 博士は、女をまじまじと見た。そして笑う。
「なるほど、芸人が押し掛けてきたわけか。よかろう、私を楽しませてくれれば、銀貨の1枚でもくれてやろう」
 女悪魔は、口の端を釣り上げて笑う。
「私の芸はそれほど安くはありませんよ。博士に満足を与えてあげますよ。その代価として、博士の魂を頂きたいですね」
 博士は笑いを収め、女悪魔を見つめた。そして再び笑い出す。
「よかろう。だが、お前の力を見せて欲しい。お前の芸を見なければ話にならん」
「いいでしょう」
 女悪魔は、紙を胸元から取り出した。それを博士に渡す。博士はぞんざいに目を走らせた。胡散臭げに見ていた顔に驚愕が走る。
「こ、これは、微分、積分式ではないか!このやり方は、私の師しか知らないはずだ。彼は、未発表のまま死んだはずだ!」
「確かに、あなたの師が作り出したものです。ただ、彼にいくつかのことを示唆した悪魔がいます。その悪魔は、あなたの師を引き継ぎました」
 博士は、すわった眼で女悪魔を見つめた。自分と師しか知らないことを知っている。しかも、その式は自分たちの考えたことの先を行っている。
「確かにお前は、知に優れているかもしれない。だが、知で何が出来るというのだ?私は知に失望したのだぞ」
「それでは、これはいかがですか?」
 女悪魔は鏡を指した。そこには、ガラス容器の中にいる子供が映っている。
「ホムンクルスか?」
「人を作り出すことは、あなたの望んだことの1つのはずです。私の知は、人を作り出せるかもしれませんよ」
 博士は大きく息を吸った。そして吐き出す。
「よかろう。悪魔よ、お前と契約しよう。せいぜい、私を楽しませるが良い」
 女悪魔は、ほほ笑みを浮かべた。彼女は、胸元から契約書を取り出す。
「どうぞ、これをよく読んで下さい。納得出来たら、血でサインをして下さい。法学を学ばれた博士ならお分かりでしょうが、書いてあることだけではなく書いていないことにも気を付けて下さいね」
 博士はたんねんに契約書を見た。そして言う。
「付け加えたいことがある。『時よ止まれ、お前は美しい』そう私が言った時、お前に魂を渡すというのはどうだ?」
 女悪魔は、口に指をあてて少し考える。
「よろしいでしょう。それを書き加えましょう」
 女悪魔は羽ペンを取り出し、契約書に書き加えた。博士は小刀で指を切り、羽ペンでサインをする。そのサインを確認すると、女悪魔はひざまずく。
「これで契約は成立しました。私ことメフィストは、ご主人さまの僕としてお仕えいたします」
 女悪魔は、いたずらっぽい表情で言う。
「それともメイドとしてお仕えしましょうか?あるいは奴隷としてお仕えしましょうか?肉奴隷でもいいですよ」
「お前には全部やってもらうつもりだ」
 博士は、口の端を釣り上げて笑った。

「なるほど。まずは若返りたいのですね」
「そうだ、老いぼれた体では何も出来ん。若返らなくては話にならん」
「いいでしょう。これをお飲みください」
 メフィストは、容器に入った紫色の液体を博士に差し出した。
「用意がいいことだ」
「ご主人さまのことは調べてありますよ。若返りたいことは分かっております」
 博士は鼻を鳴らすと、ためらわずに薬を飲む。
 変化は急激に起きた。博士は、うめき声を上げて崩れ落ちる。白かった髪は金色となり、しわだらけの肌はつやを放つ。曲がった腰はまっすぐとなり、痩せた体には筋肉が付く。
 博士は、うめき声を止めると立ち上がった。20歳くらいの青年が女悪魔の前にいる。青年は、鏡に映った顔を見つめる。
「確かに若返ったな。だが、さえない顔だ。美青年になりたいものだ」
「それも出来ますよ。ただし、手術が必要ですが」
「では、それをやってもらおう」
「ためらわないのですね」
「今更ためらってどうする?」
 メフィストはほほ笑むと、大げさに一礼する。
「それでは手術をいたしましょう」

 博士の顔を追う布が解かれた。博士の前に鏡が出される。彼は、鏡の中の顔を見つめた。古代神話の彫像を思わせる、精悍で整った顔だ。
「これが私の顔か。理想通りの顔ではないか」
「喜んでいただけて嬉しいですわ」
 メフィストは一礼する。
「手術をしたのは私だぞ」
 黒いローブをまとったはぐれ魔女ダークメイジは、憮然として吐き捨てる。
「もちろん感謝しているわ。ありがとう、メイちゃん」
 大げさな態度で感謝するメフィストを見て、ダークメイジは肩をすくめる。
「ダークメイジよ、そしてメフィストよ、感謝するぞ。よし、私は街へ出かけて、青年時代に出来なかった楽しみを味わうぞ!」
 博士は、勢いよく立ち上がる。
「まあ、お待ちください。まだ、なさらなくてはならないことがあります。ご主人さまはおしゃれについてご存じないのでしょう。私が1から教えてさしあげますよ」
 いつの間にか、メフィストの手に櫛と整髪料があった。彼女のそばには、絹服や毛皮、首飾り、腕輪、香水などがずらりと並んでいた。

 1人の青年が、街を歩いていた。金糸で刺繍をしている青絹の服を着て、その上に黒貂のコートを羽織っている。そして金剛石のはまった白金の首輪や腕飾り、指輪をしている。それらの服や装身具は、背が高く引き締まった彼の体に似合っていた。彼の体からは、ライムの香水の香りが漂ってくる。
 彼は顔を上げて歩いていた。その目を引く美貌は、男性用の化粧により引き立っている。彼の髪は、整髪料により凝った形に整えられている。入念に身だしなみを整えた貴公子といった格好だ。
「ご立派な姿ですよ、ご主人さま。おしゃれについて教えた甲斐がありました」
「おしゃれとは縁の無い生活だったが、こうしてやってみると悪くはないな」
「そうでしょう、そうでしょう。せっかく美貌を持っていても、おしゃれにこだわらなくては宝の持ち腐れですよ」
 道行く女たちは、博士を目で追っていた。その表情には、欲情があらわとなっている。
「それでは、女漁りを始めるとしよう。あの女から始めるか」
 博士は、1人の娘に目を付けた。彼女に向かって優雅に歩いていく。
「お嬢さん、夕暮れにひとり歩きは危ないですよ。よろしければ、あなたのお家まで送りましょう」
 娘は、可憐な顔を赤らめる。
「あ、あの、あなたは…」
「私は東の国からの旅行者です。博士と呼んでいただけると嬉しいですね」
 青年は優雅に一礼する。
「わ、私はマルガレーテと申します。お気遣い感謝いたします」
「さあ、それでは」
 2人は歩き出した。その後ろから、メフィストは博士の頭を殴る。
「あべしっ!」
「この女こまし!外道!恥を知れ!」
 メフィストはわめき散らす。
「ご主人さまは、この娘とやりまくった挙句、この娘の母親を殺し、兄を殺し、この娘に子供をぶっ孕ませて破滅させるつもりですか?」
 博士とマルガレーテは、唖然とした顔をしてメフィストを見つめた。
「な、何を言っているんだ、メフィスト?」
「な、何この人?キ○ガイなの?」
 メフィストは、悪鬼のような形相でマルガレーテをにらみつけた。
「キ○ガイとは何だ、このクソビッチ!私はご主人さまの肉奴隷だ!」
 マルガレーテは後ずさりをする。そして逃げ出した。キ○ガイと吐き捨てながら。
 後には、呆然としている博士とクソビッチとわめくメフィストが残された。

 博士は、とぼとぼと歩いていた。その隣には、目を吊り上げているメフィストがいる。博士はため息をついて言った。
「どういうつもりだ、メフィスト?私の女漁りを邪魔するつもりか?」
「女とやりたければ、いくらでもやらせてあげますよ」
「そうか。それでは、とりあえずあそこで買うか」
 博士は、娼館に向かって歩き出す。
「ファーック!」
「ぶべらっ!」
 メフィストの握りこぶしが、博士の顔に炸裂する。
「誰が売女とやらせるといった!もっといい女がいるだろ!」
 そうわめくと、メフィストは博士を宿屋に引きずっていった。

 メフィストは、博士を寝台の上に放り投げた。そして自分の服を脱ぎ捨てていく。
「博士、あなたに極上の女の体をたっぷりと味合わせてさしあげます」
 そう言うと、メフィストは博士に飛びかかった。猛烈な速さで博士の服を引きはがしていく。
「へっへっへ、いい体をしているじゃねえか。骨までしゃぶってやる。お婿に行けない体にしてやるからな」
 メフィストは舌なめずりをすると、博士の体を貪り始めた。
「オラオラオラ!どうだ、私のバキュームフェラは!金玉の中まで吸い取ってやるからな!」
「私のパイズリは最高だろ?もう、私の胸で3発出しているじゃねえか!」
「ほらほら、もっとしっかり私のマンコを舐めるんだよ!チーズみたいな味と匂いがたまらないだろ?」
「ウラウラウラ!どうだ、騎乗位でやられるのは快感だろ?これでご主人さまは童貞卒業だ!」
「ほらほら、さっさと中出ししろ!お前がパパになるんだよ!」
「次は正常位だ!これが基本だ、覚えておけ!」
「もっと足腰に力を入れんか!男だったら駅弁くらいやって見せろ!」
「どうだ変態野郎!アナルファックは最高だろ!」
「さっさと勃起させろよ。10発出したくらいでへこたれているんじゃねえ!」
 宿屋の一室からは、いつ果てるともなく女のわめき声と男の悲鳴が響いてきた。

 博士とメフィストは城の一室にいた。その古びた城は、メフィストの居城だ。2人は、共に寝台の上に座っている。メフィストの腹は、丸々と大きくなっていた。彼女は、主人の手を引き寄せて自分の腹に当てる。
「どうです、ご主人さま?ご主人さまの子供ですよ。元気な子供を産みますからね」
 朗らかなメフィストに対して、博士は憮然としている。
「何を不機嫌そうな顔をしているのですか?ご主人さまの望む通り、若返って欲望の赴くまま女と交わりまくることが出来たでしょう」
「お前とだけしか交わることが出来ないではないか。しかも子供まで孕みおって」
「あら、別の女と交わってもいいのですよ。私が搾り取った後に、精力が残っていればの話ですが。それに中出ししていれば、当然子供が出来ますよ」
 博士はうなり声を上げた。メフィストは、子供を孕んだ後も彼の精を搾り取る。とてもでは無いが、他の女の相手をすることは出来ない。そして女に中出ししたら子供が出来るのは当たり前だ。
「さあ、ご主人さま。親子で欲望を満たしていきましょうね」
 メフィストは、自分の腹を撫でながら彼女の旦那さまに身をすり寄せた。

 博士は本を閉じた。彼の膝には、彼の娘であるアーリエルが乗っている。彼らのいる所はメフィストの城だ。ここで、親子3人で暮らしている。博士は、娘に古代の神話を読んでやっていたのだ。彼は読み終わった後、宙を見つめていた。
「お父さん、どうしたの?」
 アーリエルの言葉も彼の耳には入っていない。ただ、宙を見つめ続ける。彼は古代世界、神話世界を想っていた。博士のいる時代には、古典作品が伝わっている。彼は、そこから得られるイメージで甘美な想いに浸っている。すでに失われた時代と世界、彼はそれにあこがれてしまう。
「古代神話の世界か…。私は手に入れたい」
 僕であるメフィストは、彼のすぐそばに控えていた。そして見守っている。
「メフィストよ、古代神話世界を私は手に入れたいのだ!そこに行く方法はあるか?」
 あまりにも無茶な要求である。今は無い世界、しかも幻想でしかない神話世界に行きたいというのだ。
「承知いたしました。それでは古代神話の世界へ行きましょう」
 メフィストはあっさりと言った。
「出来るのか?」
「もちろんです。この城にはタイムマシンがあります」
「タイムマシン?」
「過去や未来に行くことが出来る道具です」
 博士は、メフィストを食い入るように見つめた。過去へ行くことが出来る道具、そのような物があるのならば、ぜひ使いたい。
「タイムマシンをだれが作ったのだ?そのような天才がこの世にいるのか?」
「未来の人間が作ったのですよ。その人間が今の時代に来た時に、私が奪い取ったのです」
 博士は、じっと考え込んだ。そして次のことを考え付く。
「未来から来た物がこの時代に存在する。無かったはずの物が存在する。つまり今の世界は、すでに元の世界とは別なのか?元の世界はどうなったのだ?」
「あー、ハイハイ。面倒なことは考えないで下さい。このSSの作者はバカですから。眉○卓のように面倒なことは考えないで下さい。藤○・F・不○雄のようにアバウトに考えて下さい」
 博士は、納得がいかない顔をしていた。だが、古代神話の世界に行く欲望の方が勝った。
「よし、それではタイムマシンを見せてくれ。すぐに古代神話の世界に行くぞ!」

 眼下には、柱廊の目立つ宮殿が建っていた。その宮殿の前に大勢の兵士たちがいる。その兵士の格好は、博士のいた時代の兵士とはかっこうが違う。歴史書や古代の絵画、彫像で描かれる姿だ。博士は、その兵士たちをじっと見下ろしている。
「あの兵士たちに美女が捕らわれているのだな」
 博士の誰何に、メフィストは答える。
「そうです。あの軍を支配する王が、美女を手にしているのです。エロゲーやエロ漫画真っ青の凌辱をやりまくったのですよ。その挙句、美女を生贄にしようというのです」
 エロゲー、エロ漫画とは何だ?そう博士は言いそうになったが、今はそれどころではない。メフィストの言うとおりだとすれば、古代神話に出てくる憧れの美女は、生贄にされる寸前なのだ。
「メフィストよ、美女を救うぞ」
「はい、お任せください」
 いつの間にか、メフィストは灰色の軍服を着ていた。彼女の左胸には鉄十字勲章が付いている。彼女の後ろには、灰色の軍服を着て銃を持っているデビルたちの軍勢がいる。
「敵を殲滅し、美女を救い出せ!突撃!」
 メフィストに命令されて、彼女の部下であるデビルたちは整然と進軍した。銃や大砲を撃ち、魔界銀製の銃弾と砲弾を叩きこんでいく。王の兵士たちは、アヘ顔ダブルピースをしながら倒れていく。
「どうだ、我らの力は!我がド○ツ軍は世界一ィィィィーーーーッ!」
 メフィストの叫びが戦場に響き渡る。
 言うまでもないが、このSSに時代考証など無い。

 王の軍は壊滅し、宮殿はメフィストの支配下に納まった。博士とメフィストの前には、王と美女が並んでいる。
 王は裸にひんむかれ、ロープで亀甲縛りにされていた。尻の穴にはディルドが突っ込まれている。
「王よ、妻を寝取られたお前には同情する。だが、お前はやってはならぬことをした。女を取り戻すために他国を侵略し、蹂躙するとは言語道断。民の前でクソを漏らすがいい」
 そう言い放つと、メフィストはディルドを抜いた。その瞬間に、王のケツ穴から糞便が噴き出す。王は、民の前でアヘ顔を晒した。
 その王を放置して、博士は宮殿の中に入っていく。かたわらには、生贄から救われた神話上の美女がいる。彼らは一室に入った。その部屋は白大理石で出来ており、所々が金で装飾してある。部屋の中央にある寝椅子は、毛皮で覆われており、花が敷かれている。博士は、美女を寝椅子に座らせて彼女の前にひざまずいた。
「ヘレネよ、神話世界最高の美女よ。私は、あなたにあこがれ続けてきた。そのために、この世界に来たのだ。王の軍勢からあなたを救って差し上げた。ヘレネよ、私を受け入れてくれないだろうか?」
 美女は、じっと彼を見つめていた。そして静かに微笑む。博士は彼女の手を取り、その手に口付けをする。
「ファーック!」
「ぶべらっ!」
 博士は、メフィストから飛び蹴りをくらった。壁まで飛んでいく。メフィストは向き直ると、美女に往復ビンタを食らわせる。
「このクソビッチ!お前の男好きのせいで戦争が起こり、国が滅んだんだぞ!反省もせずに、新しい男をひっかけるつもりか!このメス豚め!調教してやる!」
 メフィストは、美女を裸にひんむいた。そして大股開きの格好にして縛り上げる。メフィストは口角を釣り上げる。彼女の手には2本の太い大根があった。

 博士は目を覚ました。彼は寝台に横たわっている。辺りを見回すと、白大理石で出来た壁や天井、床が見える。彼は、王の宮殿の一室で自分は寝ているのだと分かる。彼のすぐそばにはメフィストがいた。
 彼女はすわった眼で博士を見ている。
「ヘレネと王はどうした?」
「ヘレネには、マンコとケツの穴に大根を突っ込んでやりました。その後で、別の時代にある修道院に放り込みました。残りの人生を懺悔しながら過ごすでしょう。王には、ヘレネに突っ込んだ大根を食わせてやりました。その後で、別の時代にある見世物小屋に亀甲縛りの状態で放り込みました」
 まったく容赦が無い。博士は身震いをする。その博士を、メフィストは底光りする目で見つめている。彼女は、博士を寝台に押さえつけた。
「ご主人さまは、精力が有り余っているのですね。わざわざ古代神話の世界に来て女とやろうとするのですから。分かりました。私がご主人さまにご奉仕して、精を搾り取って差し上げます」
 すでに博士の服は脱がされていた。メフィストは自分の服を脱ぎ捨てると、博士に襲い掛かる。
「オラオラ!さっさとチンポを勃起させろよ!」
「妻を放り出して、神話の女とやろうとするとはいい度胸じゃねえか!」
「どうだ、生身の女の味は?神話の女に味はあるか?匂いはあるか?温かさや柔らかさがあるか?」
「どうだ、私の腋はいい匂いだろ!この、匂いフェチの変態野郎め!マンコとケツの匂いもかぎやがれ!」
「神話の女で抜いている暇があったら、私で抜け!顔射好きの変態野郎め!私の顔にザーメンパックをしやがれ!」
「オラオラオラ!さっさと中出ししろ!1に中出し、2に中出し、3、4が無くて、5に中出しだ!」
「20発くらいでヘタってるんじゃねえよ、この粗チン!」
「どうだ、ケツの穴に舌と指を突っ込んだらまだ勃つだろ!これで勃たなければ前立腺パンチを食らわせるぞ!」
 古代神話の宮殿の中からは、女の哄笑と男の悲鳴が響き渡った。

 博士は寝台に座っていた。すでに元の時代の戻ってきており、メフィストの居城にいる。彼は、虚ろな目で宙を見つめていた。彼の夢見た古代神話世界はもうない。彼にとっては、もはや夢のような存在だ。
 彼の隣にはメフィストがいた。大きくなった腹を嬉しそうにさすっている。博士とメフィストの娘であるアーリエルは、母の腹に顔を押し当てている。
「お母さんのお腹の中に、私の妹がいるんだね」
「そうよ、お父さんとお母さんはがんばったんだから。タイムマシンで昔に行って、子作りに励んだのよ」
 メフィストの顔はつやつやと輝いていた。それに対して、博士の方はげっそりとした顔をしていた。博士は、部屋の隅に並べてあるガラス容器を見つめた。確か、ホムンクルスを造る予定だったはずだ。それはどうなった?
「もう2人も子供がいるのだから、いちいちガラス容器で子供をつくる必要はありませんよね。ご主人さまに出会った時に見せた子供は、私のお腹の中にいますよ」
 博士はがっくりと首を垂れる。メフィストは、博士に向かってほほ笑みかける。
「さあ、ご主人さま。子供も増えることだし、頑張ってくださいね」
 博士はそれに応えず、虚ろな目を漂わせていた。

 博士は、皇帝の宮殿にいた。彼は、白大理石と御影石で出来た謁見の間にいる。彼は、メフィストの暗躍により廷臣の1人となることが出来た。博士は皇帝の前にひざまずく。皇帝は、金で装飾された玉座に座りながら博士を見下ろしている。
「卿は、国の財政を立て直すことが出来るというのだな?」
「その通りでございます、陛下。手を講じる準備は出来ております」
「よかろう。やってみよ」
 博士は皇帝に一礼した。謁見の間を出て行こうとする博士を、皇帝と廷臣たちは猜疑の目で見送っている。
 謁見の間を出た所で、メフィストが歩み寄ってきた。博士は彼女を一瞥する。
「帳簿の改善は進んでいるか?」
「アーリエルたちが進めています」
 2人の娘であるアーリエルは、既に大人となっていた。彼女は、メフィストの補佐役として活動している。
 博士は、1つの野望を持っていた。この現実世界を彼の望む姿に変えるのだ。恋と快楽の溺れようとする第一の欲望は、アーリエルの誕生で終わった。古代神話世界で生きようとする第二の欲望は、今では夢のようなものだ。現実に残っているのは、2人目の娘であるオイフォーリンだ。そして第三の欲望へと、今、突き進んでいるのだ。
 博士は皇帝に取り入り、財政を任される所までたどり着いた。
「しかし、こんな所に財政の穴があったとは。こんなざまで帝国を気取っているのか?」
「現実の国は、案外そんなものですよ」
 彼らは、帳簿の改革を進めていた。帝国の財政がすぐに悪くなるのは、帳簿に問題があるからだと睨んだのだ。そしてすぐに原因が分かった。帝国の帳簿は、昔ながらの単式簿記だったのだ。商業の盛んな南の国々では、すでに複式簿記が使われている。だが、帝国はまだ複式簿記を導入していなかったのだ。
 博士たちは、初めは兌換紙幣を発行することで財政を立て直そうとした。だが、この時代は貨幣が中心であり、紙幣に信用は無い。そもそも、兌換紙幣は金銀の裏付けが必要だが、その金銀が帝国国庫には乏しい。金銀の幻影を見せて発行する、あるいは金銀に混ぜ物をすることも考えた。だが、そんなことをすれば、すぐにばれて兌換紙幣と国そのものが信用を失う。
 結局、地道に帳簿の見直しをすることにしたのだ。そして帳簿そのものに問題があると分かったのだ。
「財政はこれで良いとして、次は軍事だな」
 博士は、軍事改革についても皇帝から命令されていた。
「そちらも進んでいます。傭兵たちを常備軍へと切り替えている最中です」
 帝国軍には大きな問題があった。傭兵に頼っていることだ。すでに大陸の軍は、騎兵から歩兵へと切り替わっていた。それに伴い、騎士たちは没落しつつある。歩兵を担っているのは傭兵たちだ。傭兵は、金次第で誰にでも付き、金を払っても真面目に戦わないことが多い。しかも帝国を荒らすことがある。皇帝にとっては、管理しにくい者たちだ。
 この傭兵たちを元にして、博士たちは常備軍の創設を進めていた。大きな傭兵団とは契約を結ばない。代わりに、数多の小さな傭兵団と契約する、あるいは傭兵個人と契約を結ぶ。そして、その契約はなるべく長い期間にし、あるいは契約更新をくり返す。これにより傭兵は、長く帝国に留まることになる。その間に、傭兵たちを帝国の者と結婚させてしまう。そうすれば、傭兵たちを帝国に結び付けることが出来る。彼らを元にして、皇帝の常備軍を作ろうというのだ。
「出来れば、農民たちを元にした国軍を作りたかったな」
「まだ、そんなことを言っているのですか。時代に合いませんよ」
 傭兵に対抗するための方策として、もう1つの手は農民による軍を作ることだ。古代の共和制を念頭に置く者たちは、この農民による軍の創設を考えている。
「今、軍を担っている者たちを考えて下さい。騎士が没落した今、軍を担っているのは傭兵です。彼らを利用するしかないのですよ。農民、あるいは市民による軍の創設は、革命が起こることによって近代国民国家が出来て、徴兵制が導入されなくては無理なのです」
 近代国民国家とは何だ?博士は首を傾げた。メフィストはよく分からないことを言いだすことがある。そもそも今は、いつの時代なのだ?博士は次第に分からなくなる。
 時代考証?なにそれ、食べられるの?

 博士は、城の上から自分の領地を見わたした。田舎にある領地であり、広さもそれほどでは無い。ごく平均的な取れ高の畑が広がり、特産物は無い。金銀の取れる鉱山は無く、小さな港が海沿いにある。漁獲量も平凡だろう。博士は、一応は諸侯の1人となれたが、帝国内ではそれほどの者ではない。
 博士はため息をついた。
「そう落ち込まないで下さい。領地をもらえたのだから、いいじゃありませんか」
「これだけしかもらえなかった」
「国を立て直したわけではないから、仕方ありませんよ」
 博士は、皇帝が期待したほど成果を挙げることは出来なかったのだ。帳簿の改善は、支出を抑えることは出来るが、収入を増やすことは出来ない。依然として帝国は、金のやりくりに苦しんでいた。
 軍事にしても、すぐに成果が出るわけではない。軍事改革とは長期間にわたるものだ。すぐに傭兵制から常備軍制に代わるわけではない。博士は、軍の改革に携わり続けているが、いまだ道半ばだ。
 こういうわけで、博士は皇帝からはあまり評価されなかった。一応は成果もあるというわけで、田舎の領地をもらったのだ。
 博士はため息をつくことを止め、自分の領地を睥睨する。
「これで諦めたりはせんぞ!この領地を帝国で最も豊かな土地にしてやる!」
 博士は海をにらみつけた。
「よし、海を埋め立てるぞ!大規模土木工事をやってやる!帝国中の失業者を集めろ!失業問題を解決してやる!でかい港をつくって、ここに交易中心都市を造ってやる!」
 メフィストは、驚いたように博士を見る。
「あ、あの、そんな工事をすれば自然環境がおかしくなりませんか?それに、海岸沿いの住民はどうなりますか?第一、工事の予算はどうするのですか?」
「自然環境なんて知ったことか!自然を征服するのは人間の義務だ。海岸沿いの愚民どもは、力ずくで叩き出してやる!893にやらせればいい。立ち退きが終わったら、893は口封じのために殺せ。どうせ生きる価値の無いクズどもだ」
 博士は、メフィストの肩を叩く。
「工事予算はお前が稼ぐんだ。これから軍船を一隻購入する。そいつを海賊船に仕立て上げるんだ。お前は、海賊を率いて海を荒らし、金を奪ってこい!」
 メフィストの握りこぶしが博士の顔に炸裂した。
「ほげぶっ!」
「この腐れ外道!貴様、それでも人間か?その腐った性根を叩きなおしてやる!」
 メフィストの拳が博士に次々と炸裂する。その姿は、ケン○ロウか江田島○八だ。博士の顔はどんどん変形していく。
「ママが怖いよ〜」
 2人の娘であるオイフォーリンは、物陰で震えている。
「よく見ておきなさい。お父さんが悪いことをした時、お母さんはああやって鉄拳制裁を食らわせるの」
 アーリエルは、自分の妹の背を撫でながらそう言った。

 年月が経った。博士は、領地経営をしてずいぶんになる。彼の領地は、劇的には変わらなかった。大規模な土木工事は行われず、交易の中心となることは無かった。鉱山が見つかることも無く、莫大な富が入ることも無い。依然として田舎の領地だ。
 博士は、開拓事業を起こして畑を広げていた。鉄製農具を用いることにより、開拓は可能になった。領内では、魔物であるサイクロプスや人間の鍛冶師が活躍している。開拓により領地は少し豊かになったが、それだけだ。
 漁業も少し盛んになった。博士は新たな漁船を作り、それを漁師たちに貸し付けた。それにより漁獲量は増えたのだ。たくましい魔物であるオーガの漁師たちが、人間の漁師と共に働いている。
 領主の仕事は忙しい。土地を調べ、台帳と照らし合わせ、農産物の取れ高を調べる。開拓に必要な人間と物資、そして予算を集める。それらをなるべく効率よく配置する。法や税制の改正を行って、開拓を進め易くする。開拓するために道路や橋を造る。そのために計画を立て、準備を行わなくてはならない。漁業を盛んにするためにも、もちろん同じくらいの手間が必要だ。
 派手なことは無い、地道で根気のいる仕事ばかりだ。博士は、それをまじめに行っている。そして得られるのは、田舎領主としての立場と評価くらいだ。その一見さえない博士を、メフィストと娘たちは支えている。
 博士は、城から領地を見わたしていた。晴れ渡っており、明るい日差しが領内を照らしている。畑には、麦の豊かな実りが広がる。海を見れば、複数の漁船が猟に励んでいる。博士のそばには、いつも通りメフィストが控えていた。
 博士はほほ笑んだ。これで良いのだろう。現実世界を自分の思うように変えることは出来なかった。だが、少しばかり良くすることは出来たかもしれない。そうだとすれば、自分の人生は空しいものでは無かったのかもしれない。
 日に照らされる博士を、そよ風が優しくなでる。彼は、心地良さそうに目を細めた。
「時よ止まれ、お前は美しい」
 崩れ落ちる博士を、メフィストは支えた。彼女は博士をじっと見つめ、深くため息をつく。
「人間というものは、自分を安売りしてしまうものなのね」
 契約完了を手にした悪魔は、静かに首をふった。

「さて、契約が終わった以上、約束通りご主人さまの魂を頂きますよ。ただ、その前にやることがありますけどね」
 メフィストは、天をにらみつけた。天からは無数の者が地に下ってこようとしている。それらは、不快な音を立てて飛んでくる。
 天界は、博士とメフィストを監視していたのだ。彼らは、博士の魂を横取りする機会を狙っていた。今がその時なのだ。天界の先兵であるエンジェルたちは、メフィストに向かってやってくる。
「スピッ○ファイアに乗って来るとは、やってくれるじゃない」
 すでにメフィストの部下であるデビルたちは、メッサー○ュミットに乗って迎え撃とうとしている。
 博士の城の上空で、戦闘機による空中戦が展開された。両軍は編隊を組み、空を縦横無尽に飛び回る。機銃掃射が繰り返され、戦闘機は次々と黒煙を上げていく。いつの間にか、城の中から高射砲が出て来た。城そのものが高射砲塔のような有様だ。轟音を立てて砲撃し、敵戦闘機を撃墜していく。
 博士は目を覚ました。あまりの有様に倒れているわけにはいかなくなったのだ。彼は、自分の城の上を飛び回る戦闘機を見た。そして自分の城から砲撃している高射砲を見る。
 彼は首をふった。このSSの設定について考えても無駄なことは、彼にも分かっている。
 天界の軍は退却し始めた。悪魔軍団が予想以上に強かったのだ。エンジェルたちが乗る戦闘機は引き上げていく。途中までデビルたちの戦闘機が追ったが、敵が領空を出た所で追撃を止めた。博士を守ったことで、彼女たちの勝利は決まったのだ。
 メッサー○ュミットでスピッ○ファイアに勝つことは出来ないだと?こまけえことはいいんだよ!

「戦いはいつも空しいものね」
 メフィストは、戦火の跡を眺めながら気だるげに言った。博士は、彼女に抱きかかえられている。
 博士は、視線をさ迷わせていた。この話がどこへ行きつくのか分からないのだ。
「さあ、ご主人さま。契約通り、あなたの魂を頂きます」
 そう言うと、メフィストは博士を抱きかかえながら歩き出した。
「わ、私をどこへ連れていくつもりだ?」
「もちろん地獄ですよ。肉布団地獄へ堕として差し上げます」
 メフィストは、城の中の寝所へ向かって歩いていく。そして自分たちの娘を振り返る。
「パパとママは、これからしばらく子作りを励むからね。妹が出来たら可愛がってあげるのよ」
「ママ、本当なの?うん、妹が出来たら可愛がるよ!」
「それじゃあ、がんばってね。2人がいない間は、私が仕事を処理しておくから」
 博士は、娘たちに見送られながら、悪魔に肉布団地獄へと連れて行かれた。

18/11/22 21:58更新 / 鬼畜軍曹

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