読切小説
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将を射んと欲すればまず馬を射よ
夫の名前はリンク、妻の名前はユニ。
二人はそこそこ不思議な出会いを交わし、そこそこ不思議な身分に生まれてきました。
そこそこ不思議な人生を歩み、そこそこ不思議な愛を育んで行った二人は、そこそこ不思議な経緯で結婚を果たしました。
ただ一つ違う所があったとすれば、彼女はユニコーンであるという事でした。
ただ一つ普通の所があるとすれば、互いに純潔であるという事でした。

「……」

「さぁ、リンクさま…?」

夜の闇の中、月の光が部屋の中に居る二人を優しく照らす。
互いに素肌を晒して大きなベッドの上に座っている。
二人のその姿は、これから行う事がどんなものなのかを物語っていた。

「……ホントに……するのか…?」

「何言ってるんですか?シようって言ったのはリンクさまじゃないですか…」

「そうだけど……おい…」

ユニがリンクを、捕まえるように腕の中へと引き摺り込む。
自分から突っ込んだ訳ではないが、リンクは口では嫌がっていてもユニの抱擁を振り解きはしない。
そのままユニの胸の中へ手繰り寄せられ、柔らかな胸の感触を顔いっぱいに受けながら頭を撫でられる。

「………」

「どうですか…?苦しかったら…ひゃんっ!」

「……自分の方が年上だからって…いい気になるなよ…?」

優しく抱かれていたリンクだったが、不意に位置をずらしてユニの胸を甘く食む。
歯も立てず、吸い付く事もしないが唇で柔らかな感触を文字通り貪る。
肌を極力傷付けないよう気を付けながら、彼女の胸を何度も食んでは舐めてを繰り返す。
その度にユニは身体を震えさせてはリンクを抱く腕に力が入る。
だがリンクもそろそろユニへの反撃を始める事とした。

「……ここがいいのか…?」

「んぅっ……り、リンクさまぁ…んぁっ!」

「ここか……ならこっちもか…?」

左右の胸を乱暴に、だが慎重に揉んでいきユニの感じやすい場所を探るリンク。
やがて当たりを引いた、いや弾いたらしくユニは乳首の先端に触れられた瞬間に身体を反らす。
移動には不向きなケンタウロスの身体だからか、彼女は身体を反らせたとは言ってもそこまで反ってはいない。
逆に言ってしまえば、彼女はその身体故に屈んだりする事も出来ない訳だ。

「……さて、そろそろ行くぞ…?」

「……はい…」

暫くしてユニが自分からリンクに回していた腕を解いて後ろへと促す。
ユニが指し示す先には、我慢できないとばかりに下品に涎を流す口が開いていた。
十分にユニの大事な場所が濡れているのを確認したリンクは、自分のモノをそこへと持って行く。

「……ユニ、行くぞ…?」

「はい……覚悟はできております…」

「我慢…しろよ…?」

そう囁きながら、ユニの中へと入って行く。
童貞だったリンクは今までに女性経験など無くこれが初めてである為、ユニの膣内がキツいとか緩いとか、そういった事は一切分からない。
ただ、一つだけ言える事は「今までに感じた事が無い程に気持ちいい」という事だった。

「うあぁぁ……が、我慢するだけで精一杯…だな……こりゃ…」

「頑張ってください…リンクさま……あ、これは……リンクさま?」

一気に暴発してしまわないよう、少しずつユニの奥へと腰を進めるリンク。
その表情に余裕は一切なく、ただ真剣に二人の営みをひとつひとつ噛みしめて行く。
ふと自分の足に感じた生温かい物を感じたユニは、リンクにそれが何か見てもらうよう告げる。

「気になるのか……?分かってるクセに…あぅっ!」

「んっ……リンクさまぁ……意地悪せず、教えてくださいよ〜…」

「分かった分かった……ユニ、おめでと…うっ!」

分かってはいたが、いざ確認して貰うとその真実に衝撃を受ける。
それは、ユニが純潔をリンクへ捧げた証であり、血の様に赤い、というか血の証だった。
リンクの方もまた、ユニへ純潔を捧げた事となった訳である。
理解した直後にはユニの膣肉は嬉しかった事もあり、反射的にリンクのモノをキツくキュッと締めつける。
その刺激は、リンクの我慢の堰を切らせるには十分すぎる物だった。

「うっ……あ…あぁぁぁぁ…」

「あはぁ……リンクさまのが…ドクドク流れて……?」

腰を震わせながら、リンクは早くもユニの中へ精を迸らせる。
ふとユニはリンクに違和感を感じた。
正確にはリンクにではなく、彼の放った精液に違和感を覚えたのだ。
魔物娘の多く、特に精液を糧とする種族の者たちは精液を「味」としても楽しむと言う。
本来であればユニコーンがそういった物を嗜むような種族という訳ではない。
だが、ユニにはリンクの精が違和感を感じずにはいられなかった。

「り……リンクさま…?んぅうぅっ!!?」

「はぁ…はぁ……だ、だめだ……もう一回…するぞ…?」

そう聞いてはいるが、有無を言わさぬほどに激しい腰振りは先ほどまでのユニの余裕っぷりをブチ壊す。
彼女の気持ちなど一切考慮せず、気持ち良さをただ貪るように腰を振ってはユニの一番奥の大事な場所を抉り取ろうと前後の動きを繰り返す。
だがユニは、リンクの気持ちを全て理解していた。
ユニの事を全く考えていない訳ではない。
快感と刺激に耐え切れず、だがそれでも求めようとあがいている結果、リンクは自分で歯止めが効かなくなっているだけなのだと。
本当にただ気持ち良くなりたいだけだと言うのなら、馬の身体にただ置かれているだけのこの手は尻が猿の様に真っ赤になるまで叩き続けている事だろう。

「はぁ…はぁ……あぁぁあぁぁぁぁぁぁ!!」

「んっ…たえっ…耐えてっ……がんばって……んぅっ!……リンクさまぁぁぁぁ!」

後ろから思いっきり突かれている体勢では、ユニにどうこうするだけの力は無くただただリンクのありったけを受け止める。
ユニを壊さんばかりに暴れ狂うそれを、優しく包み込んで身を任せる。

「ユニっ!ユニっ!ユニィィィィ!」

「はいっ!リンクさまっ!わたっ……わたひはここにぃぃっ!」

一体どれほど激しく愛し合えば、これほど大きな音が出るだろうか。
パチンパチンと、まるで何かを叩くように聞こえる音は、互いが腰を打ちつけ合っている音に他ならない。
その合間に微かに聞こえるぐちゅぐちゅという音は、リンクがユニの膣内をかき回している音である。
更には二人の嬌声や吐息の声も混ざり合って、まるで一つの音楽を奏でているようだった。

「そろっ……そろそろっ!……ユニィィィ!!」

「はいっ……はいぃぃっ!リンクさま……リンクさまぁぁ!」

リンクが腰を振るペースを落とせば、ユニがそれをフォローするように激しく腰を振り、ユニが腰を振るペースを落とせば、リンクがそれをフォローするように激しく腰を打ちつける。
一体どれだけの間、そんな行為が続いただろう。
だがそんな幸せな時間も、そう長くは続かなかった。
互いにペースは衰えはじめ、リンクのモノは限界とばかりに激しい脈動をユニに伝えていた。

「げんっ……かいだっ!だす……だすぞっ……ユニっ……いい…かっ…?」

「はいっ!リンクさまっ!奥に……いちばんおくにっ……っ?!」

おねだりを最後まで言い終える直前、ユニはどうしようもない程の悪寒を感じ取った。
それは直感にも似た刹那の間でしかなかったが、きっと忘れてはいけない感覚なんだろうと一瞬で悟る。
背筋は凍るように硬直し、全身の毛と言う毛が総毛立ち、さっきまで感じていた快感など全てがどこかへ吹き飛んでしまう。
自分が自分で無くなるような恐怖と後悔、その他の色々な負の感情がまとめて自分の中に入ってくるような不快感が彼女を包む。
奇しくもそれは、今にも爆発しそうになっているリンクにとっては最後の堰を切るには十分な施しを与える。

「あっ……あぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁっ!!」

「だ…だめ…リンクさまっ…」

一瞬だけ、リンクを包む膣肉の全てが彼を絶頂へ導こうと締まったのだ。
ユニが声を掛けるも既にそれは何の意味もない。
海に浮かぶ一枚の板に必死にしがみつくように抱きついたリンクはそのまま腰を目一杯ねじこませる。
直後にはびゅるびゅると音が聞こえてきそうな程の勢いで精をありったけユニの一番奥のその向こうめがけて吐き出していく。
だが、ユニにとってそれはある種のスイッチになってしまう。
確信の無い恐怖は、その時点で関連付けられた真実である事を理解した。

「だ…だめって……うあぁぁあぁぁぁぁ!!!」

「ゆ、ユニっ?!あっっ!!絞られっ……ユニぃ…」

言いようのない苦痛がユニを襲い、彼女を唸らせる。
頭を鈍器で殴られたような激痛が何度も続き、頭を抱えて……気付く。
耳のほんの少し上のあたり、丁度手が抑え込んだ所が妙に出っ張っているのだ。
だがすぐにそれがたんこぶのような可愛らしい物ではないと気付く、気付いてしまう。
苦しむ彼女の背後では、未だに射精が続くのか腰を捻じ込んだまま離れようとしないリンク。
だがここにきてようやく彼もユニの異変に気付いたらしく、腰からモノを引き抜いて彼女を抱き寄せる。

「ユニ!おい!どうした!」

「り…リンクさま……私が、どんな姿になっても…っっつ……愛してくれ…ますか…?」

「当たり前だろっ!しっかりしろ!」

声を掛け続けるリンクだったが、腕の中でユニはどんどん衰弱していくのが見て分かった。
その頃だっただろうか、ユニに変化が訪れたのは。

「……っ?!角が…消えていく…?」

リンクの目の前で、ユニの角が砂の様に崩れて消えていく。
そのまま頭も消えるかと思ったがそんな事は無く、衰弱して顔色まで変わっていたユニの表情が急に安らいだのも見えた。

「ユニ、大丈夫か?ユニ…?」

「……えぇ、リンクさま……これは……はぅぁっ!」

ユニが一瞬喘いだかと思えば、彼女の額に不思議な模様が浮かび上がってくる。
その模様を見て、リンクは全てを察した。
同じような模様を持った者はこの領地にいる事を知っている。
だが、その人は種族が違っていたはずだ。
ユニコーンではなく、それから派生した種族であるバイコーンだ。
しかしここで一つの疑問が浮かぶ。

「……どうしてバイコーンになったんだ…?」

「んぅっ……感じたんです……リンクさまの精子に…魔力が…宿っているのを…」

普通、人間に魔力など宿る筈がない。
だがいくらか例外は存在するだろう。
それが先天的な物か後天的な物かは分からない。
もしかすると魔物由来の物を食べた事によって魔力を溜め込んでいたのかもしれない。
もしかすると知らない間に何者かによって童貞を奪われていたのかもしれない。

「っくっ……リンクさま、はなれて…」

「うん?わかった…」

ユニに言われ、手をどけて少し離れたリンク。
苦しさにもがくユニは、息を整えると一気に覚悟を決めた。

「っっっっっっっ………はっ!」

「おぉぉ……角だ…」

気張った末に伸びてきたのは、ユニコーンの白く輝く長い角ではなく、バイコーンの黒く怪しい対の角だった。

「っ?!んはぁぁぁぁぁぁ……」

「毛並みが黒くなってく…」

ストレスのあまり髪が白くなる、というのはたまに聞く話だがこれはその逆であった。
今まで白く綺麗だった毛並みは艶やかさこそそのままだったが、その色は妖しい黒色へと姿を変えていた。

「……切り揃えなきゃな…」

「はぁ…はぁ……はいっ!」

以前の倍以上に伸びてしまい毛並みが崩れていたユニに、リンクが最初に掛けた言葉がそれだった。
だがそれは、リンクがユニの状態を見て安堵した事も同時に表していた。

「……これからもよろしくな…?」

「はい…リンクさま…」

互いに何も言わずとも、顔を近づけて優しくキスを交わす。
そのままじっくり丹念に舌を絡ませ、脳が蕩けそうな程に熱く濃いキスを続けて行く。
こうして二人は互いの初めてを捧げあう事が出来たのだった。
少しの事故はあったが、これも一つの勲章のようなものとして残る事だろう。

―――――――――
――――――――

「そういえばさ…」

「はい…?」

あれからいくらかの時間が過ぎた。
リンクの最近の悩みは、ユニと初めて交わった時から身長が一向に伸びない事を嘆いてばかり。
ユニの最近の悩みは、リンクといつも交わってばかりいるもののなかなか子供が出来ない事を嘆いているんだそうな。
事務仕事に追われているリンクが息抜きにとユニの持ってきたコーヒーを飲みながら、ふと思った事を口にする。

「始めての時、バイコーンに変わったじゃん?」

「ええ、そうですね。でもそれはリンクさまの所為じゃ…」

「アレ、憶測ではあるけど原因突き止めたぞ?」

「えっ?!」

そう言ってリンクは、事務作業を一時中断して机の上に何冊かの本を広げる。
その中の一冊は魔物娘と関わりを持つ者ならだいたいが知っているであろう「魔物娘図鑑」の写本だ。
世界全国津々浦々の魔物娘たちの事を紹介している図鑑であり、その中にはユニコーンの記事もあればバイコーンの記事についてもしっかりと記されている。

「ほらここ。ユニコーンは他の魔物の魔力が精に混じって体内に入ると変化するって書いてあるだろ?」

「ええ、確かにユニコーンは夫以外の精力とそれに準ずるもの以外は受け付けないですが……?…それは?」

「ウチの家系図」

図鑑を片づけて次に出してきたのは、かなり古い物であろう書物だった。
拡げるとたくさんの名前と共に線が引かれている図が並んでいる。
その末席にはリンクの名も確かに記されていた。

「ええと……ほら、ここだ」

「これは………っ?!」

「気付いた?」

ユニがその家系図を見ていて、一つ気付いたことがあった。
基本的に黒で枠取りされて線も黒く引かれているが、一か所だけ青色で枠取りされた名前があった。
リンクの曾祖母にあたる人物の名前だけそう枠取りされている事は、ある一つの事実を表していた。

「……この方は……魔物、だったんですね…」

「そういう事……時代的にも今の魔王が世界の秩序を書き換える以前だから……人間型だったんだろうな…」

「なるほど…」

そう話すリンクの顔が、少し落ち込んでいるのをユニは見逃さなかった。
気が付けばリンクを優しく抱き締めていた。

「っ?!ゆ、ユニっ?!」

「大丈夫ですよ、リンクさま……何もユニコーンである事に固執してた訳じゃないですから…」

「い、いやそんな事思って…」

「目は口ほどに物を言う、って言葉があります……だったら、その口…塞いじゃえばいいんです!」

勢いに任せて、そのままユニはリンクの唇を奪う。
まるで大好物にありついた動物のように、彼女はリンクを貪るようなキスをする。
身動き一つ出来ない程に身体をしっかりと抱きしめ、頭の中が快感と性欲が支配するまで舌を絡ませ合う。
昼間の仕事中なのだから、もしかすると誰かが入ってくるかも知れない。
だが、そんな事など考える事も無くユニはリンクを只管に貪る。

「………ぷはぁぁっ!」

「ぷはっ!げほっ!げほっ!……ゆ、ゆに…」

「………うふふっ、さぁ、どうぞ…?」

蕩けた表情になっているリンクを見て不敵に微笑むユニは、ようやくリンクを解放したかと思えば馬体を覆い隠しているスカートを捲りあげて晒された尻をリンクへ向ける。
その頃にはリンクもズボンを脱いで限界まで勃起したモノをぶらぶらさせながらユニへと迫っていく。

「ユニ……いいよな…限界なんだ…いくぞ…?」

「はい…リンクさまのお好きなように。ずぅっとこうしていましょうね…『ずぅっと』…」

そんな言葉を交わしながら、今度は身体を交わしていく。
これから先、二人はどれほどの時間を愛し合うのかは分からない。
だが一つだけ言えるなら二人はその最後の時まで幸せに生きていく事だろう。    終わり
16/09/13 18:58更新 / 兎と兎

■作者メッセージ
図鑑の順番おもいっきり飛ばしたなぁとか思ったけれど、よくよく考えてみたらちょくちょく順番飛ばしたまま忘れてる子とか居ましたわ。

あぁ、目標達成への道は険しいなぁ。
あ、感想じゃんじゃん待ってます。

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