読切小説
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死骸悪法
 霧の大陸。そのとある都市外れの場末、いわば半スラム街と化した地区であった。
 いつもは下品な雑踏に包まれているが、今は暴力的な罵倒悲鳴で満ち、汚れたコンクリビルに飾られ夜を照らす煌びやかなネオンサインが銃弾に貫かれる。
 二つのマフィアの抗争であった。勢力は服装を見れば一目瞭然で、一方は霧の大陸由来の古風な衣装を身に纏い、他方は黒いスーツを着ていた。
 彼らは各々剣、銃、そして魔法で敵勢力を削り落としていった。周囲を破壊しながら。
 だがしかし、彼らはそれに夢中で気が付かなかったのだ。大いなる力が、彼ら二つに迫っていることに。
 苛烈な銃撃戦が行われている、ボロアパートの駐車場でのことだった。廃車と化した車を盾に、大きな空白を挟んで彼らは撃ち合っていた。双方とも連携の取れた波状攻撃で、銃弾は絶えることなく飛び交っていた。
 だが、その空白の地帯に一人の男が舞い降りた。老け込んだ、だが恰幅のいい、白髪をオールバックにした男性。その口は愉しそうに笑んでいるが、丸いサングラスに隠された目がどのような表情を浮かべているかは検討が付かなかった。
恐らくアパートの屋上から飛び降りたのだろう。急な客に呆気にとられるマフィアたち。だが構わず弾丸は放たれ続ける。一般人の一人や二人撃たれても構わない、ましてや彼は自分から飛び込んできたのだ、歯牙にもかけない。
 しかし、マフィアたちは見誤っていた。彼、いや、「彼ら」こそ、己たちに牙をむく存在であったというのに。
 異変に気付いたものは少なからずいた。銃弾が、闖入者に一発も当たらないのである。確かにわざわざ積極的に彼を狙っている者はいないのだが、それにしても当たらない。風にたなびく彼の黒いトレンチコートにすら、穴一つ空けられない。
 やがて男は戦禍の最中、悠々と背負っていた大きな木箱を地面に置く。それと同時に縛っていた縄が解け、ふたが開く。
 中には齢十ほどの少女がいた。濃い夜空のような紫のマンダリンドレスを身に着け、澄んだ水のように薄く青い肌の少女。目を引くのは、額につけられた札である。人体と、魔力の流れる経絡が描かれた物々しい札。
 ピィン・フゥ、それが彼女の名。その場にいる全員が己の命運を察した。
「では師父。お願いします」
 男は言った。
「あいあいさー」
 ゴキリと、少女の関節が駆動する。固さを持っていた体がほぐれていく。首を二回小気味よく鳴らして、消えた。
「まずいぞ!!」
 悲鳴が上がったのは、まずスーツ姿のマフィアの方からだった。
 いつの間にか銃撃部隊の最中にいた彼女は両の手で一人ずつ打ち、失神させる。
「撃て! さっさとそいつを倒せ!」
 だがマフィアも黙って見ているだけではない。すかさず三人が拳銃を向け、撃つ。
「おおっと。危ない」
 三方から迫る内二つを掌で受け止め、残る一つは高速のハイキックで打ち返した。それはそのまま持ち主の額に当たり、貫かれはしなかったものの、当たり所が悪くその場に倒れる。
「呀!」
 残りの発砲者に詰め寄り、下から飛び上がって掌底で打ち、そのままねじ伏せる。ついでに彼女はそいつらから拳銃を二丁奪い取り、アクセサリーのアンクレットに装着する。
 すると、武骨で無機質な銃が、禍々しく歪み、輝く魔具へと変化する。
「野郎ども! さっさとぶちのめせ!」
 しかし、そんな怒号が放たれる前に、彼女は回し蹴りで辺りを薙ぎ払った。魔具と化した銃から、桃色の弾丸を高速でバラまきながら。
「ぐあああああ!」
 ある者は腕に、ある者は腹に、ある者は頭に、その魔力がこもった弾を受け、気を失っていく。
 そしてなんとか彼女の銃弾から逃れたとしても、待っているのは彼女の打撃であった。後ろに吹っ飛ぶ者、真上に吹っ飛ぶ者、そして転ばされ足蹴にされ弾丸を食らう者。
 五人、十人、二十人と次々に再起不能にしていく。しなやかな肢体から繰り出される打撃銃撃は舞のようであり、その動きに惑わされ誰一人として彼女を傷つけられはしなかった。
そして残ったのは、その部隊の中でも地位が上らしき、丸々と太った男であった。
「ち、ちくしょう! 邪魔しやがって! てめぇら何様のつもりだ!?」
「知っとるくせに……まぁいい。百聞は一見に如かず。百見は一験に如かず、じゃ」
 足元の拳銃二丁を、蹴り上げて手にする。合計で四丁の魔具を装備する。これが、彼女の銃を使う時のスタイルである。
「こ、このババアが! 失せやがれぇ!!」
「無駄じゃ」
 拳銃を構え、一、二、三発と発砲。だが、それを桃色の弾丸が正確無比にも撃ち抜く。
「ひ、ひぃぃ!」
 四発、五発、それもまた撃ち落されて――ついに弾切れ。
「ぐっ……がぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 自棄を起こした男は咆哮しながら、突貫する。その手にはメリケンサックが。
「ふふ」
 まっすぐ顔面へと飛ぶ右拳。フゥはそれをはじき返す。その体躯に似合わぬ力で拳を返され、彼は体を開いてしまった
「お主には、ちょいと深く食らってもらわんとな」
 ステップで踏み込み、その勢いで彼の心臓付近に銃口を食い込ませる。そしてそのまま引き金を引き、直に銃弾の魔力を浴びせる。
 吹き飛ぶ男の体。ずしんと大きな音を立てて、地面に転がった。
 この男も含め、誰も彼も、死んではいないが、今後まともに悪いことを出来る状態にはなかった。心身共に。
「はぁ、手ごたえ無いのぉ。まぁ、少しは体はほぐれたか、な?」
 コキコキと体を鳴らし、大きくため息をついた。
「リャン。片付いとるかのぉ?」
「終わってますよ」
 振り返ると、もう一つのマフィアも皆倒れており、先ほどの老齢の男が廃車を乗り越えて、フゥの元へと歩いてきた。
「よい。じゃあ、また運んでおくれ」
「了解しました」
 そう言うと、彼女はまた固くなり、動かなくなった。
 そんな彼女を箱に再び収納して背負い、リャンは夜の闇へと消えた。


 『調停士』。キョンシーのフゥ、そしてリャンの二人はそう呼ばれ、英雄とも悪鬼とも扱われていた。
 話し合いは無用。争いは圧倒的な暴力にて踏みつぶす、それがこの二人のモットーであったのだ。善悪とは別次元の純粋な力、故に彼らの評価は様々な調子が含まれていた。

「ふっ、ふっ、ふっ」
 それがどこかにあるのかは誰も知らない、一室。リャンは天井に取り付けられた取っ手を掴み、体を持ち上げて鍛錬をしていた。
 齢五十を越す彼だが、その体は筋骨隆々でとても老いた者と呼べるものではなかった。が、その体に刻まれた物には、確かに長い年月が封じ込まれている。
「なぁ〜リャン、まだか〜」
「ふっ、もう少し……待ってくださいよっ、と」
 既定の時間、また回数に達し、彼は静かに床に着地した。タオルで汗を拭き、片隅で人形のように置かれたフゥの元へ。
「暇ならテレビでも見ていればいいのに……」
「だって、ほら、のぉ。お前の肉体は目を離しがたいくらいに、そそるし」
「はぁ、まったく、こんな老いた体を見て何が楽しいんだか。僕には理解できませんよ」
「それ、儂の前以外で言うなよ」
 謙遜にしてはあまりにも行き過ぎた発言である。二十代よりも若々しいといっても過言ではない肉体なのだ。これを老いていると称すならば、若い体などこの世には存在しないだろう。
「どうします? 僕としてはシャワーを浴びたいところなんですが」
「だぁめ。その火照った魔力を冷ますようなことはせんでいい。はよう、はようお前の精を味あわせておくれ」
「仰せのままに」
 フゥを持ち上げ、寝室へ。
 ベッドに置くと、彼は服を脱ぎ全裸になった。
「まあ、儂は後でいいじゃろうな。脱がせにくいし」
 彼女の姿勢は長座前屈の屈む前の姿勢である。硬直もあり脱がせにくいのだ。
「じゃあ、どうします? 師父」
「まずは口でしておくれ」
 そう言うと、少し体を前に突き出し、口を大きく開けた。口内にはじんわりと唾液がにじんでいた。
「ほうら、口が疼いて仕方ないんじゃよぉ。早くお前のざぁめんのみたいんじゃよぉ」
しかし、リャンの肉棒は勃たない。
「あーもう、わかったわかった。『はようこのネクロロリババアのとろとろ口マンコ♥じゅっぽじゅっぽオナホにしてお主のどろどろのーこーざぁめんミルク吐き捨てて胃袋孕ませておくれ♥』」
 娼婦顔負けの隠語を口にし、ようやく勃起する。
「まったく。真面目一辺倒なのに、どうしてこんな性に関しては倒錯してしまったのかのぉ…………あー儂のせいか」
「八十点ですね。胃袋の下りが変に生々しいです」
「師に対して採点までしおった――とにかく、さっさとするのじゃ」
 舌を突き出し、催促する。リャンはようやく肉棒を彼女の舌にあてがった。
「れろ……さり……んれろ、れる、じゅる」
 まずは先を丁寧に舐りつくしていく。唾液の分泌が加速し、十分に濡れたところでリャンは口内へと肉棒を突き入れていく。
「動かします、よ」
「ろうろ」
 太く、長いペニスが、彼女の幼く狭い口内を抜け、喉へと到達する。
 そこからはもう、本当にその管を性具のように扱い、性器を扱いていく。
「んぐっ、がぽっ、じゅるるる、んくっ、じゅぽっ、じゅぽっ、じるる、ぶちっ、ちゅる、ぶちゅる、ぐぽっ、ぐぽっ、ぐぽっ、じゅるるるるるるる」
 見た目幼女の口にペニスを、彼女の顔面が根元につくまで、喉がごりごりと勃起の形に膨らむまで突き入れるという行為を繰り返している。残酷にしか見えないが、呼吸の必要もなく、えずくという反射すらも遮断できる彼女にとって、これは苦しいことでもなんでもなく、むしろ性的な快楽を与えてくれる行為でしかなかった。
「出しますよ。飲んでくださいっ」
「んふーっ」
 びゅるるっ びゅくぅっ びゅばっ
 常人には決して出せない量を、彼女の胃に直接叩きつけていく。フゥもそれに応じて、喉を蠕動させ、最後の扱き上げを行っていく。
「んくっ、ごくっ……ちゅるる、じゅるり」
 吐精が収まり、引き抜かれようとする肉棒の先に、彼女は名残惜しそうに吸い付く。
「くあっ!」
 まだ尿道に残っていた塊が、外へと導かれていく。
「んっ、ぐち、ぐちゅ、んむ、今日も濃くて、うむ、かにゅ、にゅち、くちゃ、美味しいのぉ」
 噛み砕かれ、舌で攪拌された子種溜まりを、見せつける。ぶくぶくと泡立ち、汚らしく糸を引きどろりとフゥの口内を受精させんとしていた。
「ん……むぐ、こく、こく、こく……ごくん、ごっくん。ぷぁ」
 わざとらしく音を鳴らし、喉を震わせ、また、空になった口内を見せつける。彼の強い子種は食されたという証明のつもりなのだ。
「ふふふ。やはり、飲精はお前の性癖にドンピシャなんじゃな……また儂を犯そうとマラを立たせおって。もう既にお腹はたっぷたぷなんじゃがのう」
 柔くなった関節を曲げ、妊娠のジェスチャーのようにねっとりと腹をさする。
 今度こそ、フゥも服を脱ぎ始めた。露わになるのは、あまりに性的な魅力に乏しい屍肉の肉体。胸は平らで腹は膨らみ、尻も太腿も細い。
「『こんな老いた体を見て何が楽しいんだか。』先ほどの言葉、そっくりそのまま返す」
 実際はこんなに幼い体もないのだが、彼女の体は百年を超える時代を過ごしている。老いているというよりは、単純に古いのだ。
「ほぅら、見ろ。ほとがもうこんなに濡れておる。老婆を待たせるものではないぞ、この倒錯した餓鬼め」
「言ってくれますね。この死肉婆」
 ただならぬ言葉を交わすも、二人は愛おしそうに口づけをした。軽く啄むようなキス。本番はまだ先だぞ、とでもいうような前座。
しっとりと既に濡れている性器に、正常位で肉棒を突き入れていく。
「か、ひゅ……ん、んん」
 本来なら性交はありえない体格差。フゥの一本筋は強烈な剛直を迎え入れ、裂けんばかりに歪む。
「おっ……おおっ、んひぃ」
 だが、柔軟に、彼女の幼膣は肉棒に絡みつく。絡みつき、扱き上げ、吸い付く。
「ああぅっ、いいっ、お前の、来てるぞっ」
 ちゅぷりと、鈴口が子宮口に吸い付かれる。まだその先へは入れない。肉棒は半分ほどまで彼女の膣にうずまっていた。
「ははは、相変わらずえげつない……ほれ、腹に浮き出ておる」
 ぼこりと、不自然に膨らむ箇所があった。彼女はそのコブを愛おしそうに撫でる。
「う、うごき、ますよ」
「おう。くれぐれも、早打ちは止せよ」
 肉棒が引き抜かれる。ちゅぽんと子宮口は亀頭を放す。だが、蜜壺の襞は熟しており、とろりと、肉棒ととろけあって一体化しそうなほどに密着していた。
「あ、あ、あ、あ、んんっ、おぅ」
「師匠も、さっさと果てる、なんてことの無いように」
「わ、わかって、おっ、るっ、あくっ」
 ゆったりとしたまぐわい。まだ潤滑が不十分であり、ことを急ぐと壊れてしまいかねないからである。
だが、それがフゥにとってはもどかしかった。彼女は今現在、感度を全開にまで上げていたのだ。このなめくじのような速度でも、普通の成功と同じくらいの快楽。だからこそ、この先に早く達してしまいたい。破滅願望とも似たそんな焦燥感が駆け巡るのだ。
「なぁ、ぁ、リャン」
「はい、師父」
 言うまでもなく、応えてくれた。
 焦りを紛らわすための、口吸い。だが今度は、遠慮のない本物の口吸い。
「んちゅ、れろ、ちゅちゅ、ちゅう、んれろ、んふ、くぷ」
 死人故、少ない唾液が、弟子によって補われていく。その感覚が、フゥは好きだった。彼無しでは生きていけないような気分にさせられる、被支配の快楽。
自分が所有されている、と思えることに彼女はひそかに快楽を感じていた。故に彼女は運んでもらうのだ。魔力の節約などという理屈をつけてはいるが、単にあの木箱は彼女の性癖なのである。
実際、彼女は彼に所有してもらわねば、ろくな生き方ができないのだ。だが、彼には悟られないように必死に隠している。それはプライドや虚勢などではなく、『知られてしまったら、彼にどう扱われてしまうのだろう』という下卑た妄想を膨らませられるからなのだ。
(本当は、儂こそが、倒錯しておるんだよなぁ。倒錯死肉婆)
 自分で言っていて、ぞくりとした。そう彼に罵られる光景を想像してしまったのだ。
(あぁ、儂は変態じゃ。どうか、気づいてくれんか? そして力いっぱい罵っておくれ、リャンよ)
 気が付けば、ピストンは激しくなり、彼女の望む暴力的な快楽が、じりじりと襲い掛かってきていた。
「あぅ、あっ、リャン、リャンぅ、はげしっ」
「弱く、しますか?」
「う、うぅん、そのままで、いい」
 死肉に似合わない、生々しい水音が、寝室に流れていた。
 愛液は結合部から溢れ、太腿と尻を伝い、シーツを濡らしていた。そのせいでばぷっ、ぱぷっと下品に空気の抜ける音が聞こえる。
「スパート、かけますよ」
 耳元でそう囁かれ、フゥは全身総毛立つのを感じた。
 今の彼女は生者以上に生きている、そう実感できた。
 子宮口が、しきりに鈴口と口づけを交わし、そして緩み切ってついに迎え入れた。
「ほごっ! ……おぉっ!」
 子宮が、直接犯される。女体で最も神秘な聖域が、雄々しい略奪者の侵入を許してしまった。
「あ゛っ! りゃ、ん゛ぅっ、かひゅっ」
「出しますっ!」
 子宮の奥深くに、それは放たれた。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん˝ん˝ん˝ん˝んんんんぅぅぅぅぅぅっっ〜〜〜〜!!!!」
 満たされる。もう動くはずのない部屋が、熱い子種に、犯される。
 それはすぐに溢れ、結合部から漏れだす。
(あぁ、もったいない……)
 孕みたい。
 生きている間には思いもしなかったことが、願いとなっていた。


「さぁて、今日もドンパチやってますね。師父」
「そうじゃの。しかも今回は魔物も一枚噛んでいると見える。腕が鳴るのぉ」
 自動車の中、運転席にはリャン、助手席にはフゥの入った木箱が積まれている。
 目的地は、今走っている長い橋の先にあった。
「魔物ですか。勝てるか不安ですね」
「ふふ、お主なら余裕じゃろ」
「そうだといいんですけどね……おっと、目的地が見えてきましたね」
「お、そうか」
「今日はどうします? 派手に行きますか?」
「もちろんじゃとも」
 目の前には蟻の魔物と蜂の魔物たちが争っている。この前の人間どもとは明らかに格が違う。
 だから、きっと、このまま車で突っ込んでも死にはしない、そんな謎の信頼があった。
「人死あって、平和なし」
「もちろん、じゃな」
 皆が平等に生きて、そして平等に力に抑えられてなければならない。
 それが、調停士としての理想。
 リャンはアクセルを踏んだ。
19/11/05 23:39更新 / 鯖の味噌煮

■作者メッセージ
いろいろと書きたいものが重なって、ごちゃ混ぜになった闇鍋小説
霧の大陸をこんな風に書いていいものなのか
もしかしたらこのSS消えるかもしれない

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