連載小説
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山奥の小屋にて
 おや珍しい、旅人さんかい、こんな所までよく足を運んだねぇ、そろそろ日が沈むね、こんな山奥で野宿なんかしたら魔物に食われちまうよ、さぁさぁ入った入った。


 よく食べるねぇ、良い事だ、いっぱい食べて何かあったら頑張っておくれ、ん、なんだい? お前はそれだけで足りるかって? ふふふ、大丈夫だよ、女はこれだけでも持つもんさ、はい、もう一杯お食べ、ここらは食べ物で溢れてるからね、遠慮は無用だよ。

 
 魔物だって? 人の肉を食べる? 生き血をすする? 目玉の首飾り? ここら辺にいるのは私くらいだよ、そんなの聞いたことないし、見たこともない、 趣味が悪いねぇ、誰だいそんな話を作ったのは。


 そんな気味の悪い話なんかしないで一杯どうかな、良いのが手に入ったんだよ、魔物退治に支障が出る? 良いじゃあないの、誰々がさらわれた訳でもないし、畑だって荒らされてる訳でもないでしょ、そうでしょ、じゃあ良いじゃない、では一杯だけ? 一杯だけで収まるかなぁ、ふふふ、まぁ飲めば分かる事だね、さささ、どうぞ。


 んくっ、んくっ、はぁ、あはははは、そうかいそうかい、そりゃ良い事だね、あははは、え? なんだって? 尻尾? 尻尾がどうした、あっ、あはははは、私に尻尾なんて生えてないよ、本当だよ、じゃあ見せようか私のお尻、ふふふ、うわぁ顔真っ赤にして、茹でタコみたいだ、ははは、ごめんごめん、ささ、もう一杯。


 へぇ、大変なんだね、ん、そうそう飲んで忘れてしまえ、こらこら、私の分も残しとくれよ、ふふふ、良いねぇ、人と飲む酒は滅多にないから新鮮、へ? 何? 耳? 耳がどうしたって、あっ、あっははは、気のせいじゃないかい? ほらっ耳なんてないよ、撫でて確かめてごらん、ふぁ、ああ、もうちょっと撫でて、喉元も撫でて欲しい、んぁ、もう少し下の所、そうそこ。


 にゃははは、ちょっと飲みすぎたかにゃ、おみゃあさんは中々酔わないにゃ、ああ? にゃんだって? 猫っぽい? にゃ、にゃははは、よく猫っぽいと言われるにゃ、どこを見たらそう見えるのかにゃ? え? 尻尾と耳を見れば分かる? だ、だから気のせいにゃ気のせい、あれ? 術が上手くできにゃ、ふにゃ、ふぅぅ、せめて、し、尻尾と耳は優しく扱うにゃ、ううう、ばれたにゃ、酔いつぶれた所を襲おうかと思ったのに。


 こうなったら仕方がないにゃ、力づくでにゃふ、にゃ、にゃにをぉ、こらっ、そんなに所に手を入れるにゃ、ふにゃああああ。


 ううう、美味しく頂こうとしたのに、美味しく頂かれたにゃ、にゃふ、にゃに? 一緒に来るかって? 恥ずかしいから言わないにゃ、どうしても返事が聞きたいなら。
 
 もう一度可愛がるにゃ。
15/04/18 21:54更新 / ミノスキー
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