シロナ番外編「Engage Ring」
俺がシロ姉と結ばれてから数年、魔界の研究所でシロ姉と共に働いていた
まだ籍は入れられていないけど、もう親も公認で結婚しているようなものだ
しかし仕事が忙しく、恋人であるシロ姉と二人の時間があまりとれないことがある
仕事でずっと一緒にいるとはいえ、恋人と個人的な時間がとれないのは辛い
でもシロ姉はそういう素振りを見せずに、俺の仕事を一生懸命に手伝ってくれている…本当に自分には勿体無いほどできる女性だ
「タクマさん、大丈夫ですか？ボーッとしてますが…」
「…ん、あぁ、どうにか効率よく仕事できないもんかと思ってな」
「うーん、これ以上の効率上昇は望めないと思いますよ？ただでさえタクマさんがありえないくらい効率上げてるんですから…」
「…そうやけど」
仕事を早くこなせばそれだけシロ姉との時間が増えるし…それにもう一つ仕事を早く済ませてしまいたい理由がある
もうすぐ俺とシロ姉の結ばれた日、いわゆる婚約記念日みたいなものだ
以前までの記念日は研究の仕事が忙しくて、シロ姉に何かをしてあげるなんてことができなかった
…たしかその日は仕事が終わった後にいつもより交わっていたくらいか
だから今回こそは、シロ姉に何かしてやりたいのだ
何か特別なプレゼントでもしてあげれば、シロ姉も喜ぶはず
「タクマさん、そろそろ仕事を切り上げて大丈夫だと思いますけど…」
「もうそんな時間か…じゃあ、シロナさんは先に部屋に戻ってて大丈夫やで」
「タクマさんは、またお出かけですか？」
そう、俺はシロ姉に贈るプレゼントのために仕事が終わってから毎日のように出かけているのだ
そのため、帰りがかなり遅れてしまうからシロ姉には先に寝るようにいつも言っているのだけど
「まぁ少し…研究を手伝ってくれてる魔物からの打ち合わせがな。ご飯は帰ってきてから食べるから先に寝といて大丈夫やで」
「…はい、美味しいご飯作って待ってますね」
シロ姉はいつも俺が帰ってくるまで寝ないで、しかもおいしいご飯を作って待っていてくれる
そんなシロ姉だからこそ、俺はシロ姉が喜ぶようなプレゼントをあげたい
「じゃあ、行ってくるでシロ姉」
「…いってらっしゃい、たくまちゃん」
俺は研究棟から出て、少し先の繁華街へと足を運ぶ
プレゼントのためにある魔物と待ち合わせをしているのだ
「来た来た、おーい！」
「あ、すいません今来たところで…」
「なに、気にするでないぞ。お主は我がサバトの研究によく貢献してくれているからのぅ」
子供のような小さな身体に頭の大きな角、そして四肢は動物のようにフサフサの体毛に覆われているこの魔物はバフォメットのメルルさんだ
俺たちの魔界での研究に協力してくれている、サバトという組織のトップで魔界でもかなり地位が高い魔物だ
「早く済ませてしまおうかの、嫁さんが待っておるのじゃろう？」
「えぇ、まぁ…」
俺はメルルさんと繁華街のある店を尋ねる
「おー、らっしゃい！今日も生が出るねにーちゃん！」
「ええ、もうすぐですからね」
これまた小さな身体で身に合わない金槌を軽々持ち上げているこの魔物はドワーフのアムさん
繁華街で装飾品や金属加工を取り扱っている店の職人で、研究機材などにもお世話になっている
「しかし、にーちゃんの奥さんは幸せ者だな！こんなプレゼントを用意してくれる男、なかなかいないぞ？」
「いえ、俺個人じゃできないですし…お二方の協力で初めてできるものですから」
「ふむぅ、確かにお主一人では魔力の結晶化は無理ではあるが…そう謙遜することではないのじゃよ？お主の発想はもしかしたら今後のアクセサリー界に革命をもたらすかも知れないんじゃ」
俺はシロ姉に、世界で二つと無い俺だけが渡せるプレゼントを渡そうかと思っている
魔界では大気中や地中にも魔力という力が含まれており、それが積み重なると魔石という塊になり結晶化する
それを人間の中にある魔力でもできないかと思ったのだ、そうすればその結晶を使った装飾品などは他には無いただ一つの特別な物になるだろう
というわけで、研究で知り合った魔力の扱いに長けたバフォメットのメルルさんと装飾品や金属加工に長けたドワーフのアムさんに協力を仰ぎシロ姉に内緒でしばらく前から製作しているのだ
「いままで魔力を込めた装飾品などは腐るほど見てきたが、純粋に魔力を結晶化させて作る装飾品などはあまり聞かんからのぅ…あったとしても自然から発掘された魔石を使ったものであって自らの魔力なんて発想はなかったのぅ。」
「魔力の扱いを知らぬ世界から来てるにーちゃんからそんな発想が出るとは普通思わないよなー」
「そ、そうなんやろうか…？まぁ、俺一人じゃ自分の魔力も使えないんでメルルさんよろしくお願いしますで」
「我らの世界でも、魔力を扱える人間というのもそう多くないからのぅ…まぁ我くらいのバフォメットとなると人間の魔力を扱うことくらい分けないがのう？」
メルルさんが俺の手を握る、こうしてメルルさんに俺の魔力を吸い出して貰っているのだ
吸い出された魔力をメルルさんが結晶にして少しずつ大きくしていく、人間の魔力だけだと魔力が少ないために本当に少しづつしか結晶は大きくならない
しばらく前からやっていって、ようやく今日の魔力分で指輪の装飾に使えるくらいの結晶になったのだ
「ふむ、あとはアムが加工するだけじゃな」
「よろしくお願いします、アムさん」
「ふふん、任せてくれたまえよにーちゃん！きっと奥さんが喜ぶものになるぞ！」
手早くアムさんが俺の魔石を使い加工を進めていく、指輪の材質から形も俺が研究の合間に考えて書き起こしたものをアムさんは忠実に形にする
そうしてできた、鈍い紫の光沢を持つ魔石の指輪は他には無い神秘性を感じる
傷付かないように白衣のポケットに小箱にしまっておこう
「その指輪の魔石、にーちゃんの魔力だけでできた魔石だからにーちゃんの思いそのものみたいなものだぞ。こんな物貰えるなんて奥さんは羨ましいなぁ」
「そうじゃのぅ、我もこんな旦那様が欲しいのう」
左右に2人がぴったりとくっついてくる、やっぱり身体は子供だよなぁ
「そういえば魔界じゃ重婚は合法なんじゃよなぁ」
「あーあー、近くにいい男いないかなー」
腕よじ登ってきたよ、何してんのこれ
「あのー、何してるんですかね…？」
「鈍いのぅ、誘っとるんじゃよ」
「たまには小さい子もいいだろ？」
「いや、困りますよ…俺にはシロ姉が…」
「ふふふ、このままサバトへ持ち帰り幼い少女の背徳と魅力をたっぷりと教えてあげようかのぅ」
いや、そもそも子供に欲情するなんてことはしないんだけど
「ふ、ふざけるのも大概に…」
「ふざけるのも大概になさいっ！」
急に、メルルさんでもアムさんでもない声が響く
「え…し、シロ姉…？」
「たくまちゃんから離れなさい！」
何故この場にシロ姉が…などと考える間もなくシロ姉の身体に強く引っ張られて2人と引き離される
「し、シロね…ぐぇぇっ！」
「最近何やら出掛けることが多くて、何かあったんじゃないかと後をついて来てみたら…まさか浮気とは思ってもいませんでしたよ！」
う、浮気！？な、何言ってるんだシロ姉！？
「しかもこんな小さな身体の魔物に…！私というものがありながらっ！」
「う、浮気って何のことや！？」
「とぼけないで下さい！こんなアクセサリー店で、魔物を連れて…しかもあんなにひっついて！これが浮気以外になにがありますか！？」
シロ姉、俺がメルルさん達と浮気してるって勘違いしてるのか！？
「は、話を聞いて…！」
「えぇ、えぇ聞きますよ？何なりと言い訳でもなんでもして下さいよ、でもそれは部屋に戻ってからです。帰りますよ、こんな場所からはさっさと離れましょう」
乱暴にシロ姉が俺を引きずる、シロ姉が完全に我を忘れてしまっている…どうしよう
「お、お代は後日お支払いしますから…ぐぇぇ！」
「何してるんです、早く行きますよ！」
後でメルルさん達には詫びに行こう、とりあえずシロ姉をなんとかしないとなぁ…
「ふむぅ、何やら大変なことになっておるみたいじゃのぅ」
「やっぱり独り身の男性じゃなきゃだめかなー？」
…
今日もたくまちゃんは仕事が終わるとどこかへ出かけてしまいました、ここ最近はそのせいで貴重な二人の時間が少なくて辛いです…
でもたくまちゃんの仕事仲間の魔物との打ち合わせなので、そんな私の我儘は言えません…たくまちゃんは働き過ぎなくらい仕事を頑張っていますから
でも、仕事仲間との打ち合わせで…なんで秘書の私には何も言わないのでしょうか
「…仕事仲間の魔物と、二人きり…？」
…いや、まさかたくまちゃんがそんな他の魔物になびくなんてありえませんよ
たくまちゃんが私を愛してくれているのは、私が誰よりも分かっています
「…でも、一応…」
まだたくまちゃんが出てからそんなに経っていません、匂いを辿って後をつけることはできます
「…たくまちゃん」
ごめんなさいたくまちゃん、きっと浮気なんかしていないって分かってるんですけど…身体が勝手に…
「…こっちは繁華街の方ですね」
たくまちゃんに追いつき、後ろから後をつけます
そして…
「あれは、サバトのバフォメットさん…？」
確かにサバトの方々には研究でお世話になっています、なるほど…仕事仲間というのはバフォメットさんのことだったんですか
「二人は、一体どこへ…？」
再びたくまちゃんの後をつけます、すると二人はある店へ入って行きました
「ここは…魔界でも有名なアクセサリー店じゃ…」
なんで二人きりでこんなところに…
「入ってみましょう…」
中に入ると、もう一人魔物がいました…この店の職人のドワーフさんです
「たくまちゃん…なんで」
まさか、大人の身体の私に飽きて…バフォメットやドワーフのような小さい身体の魔物に…？
「いやいやいや、そんなはずはありません…ここからじゃ会話が聞こえませんが、たくまちゃんに限ってそんなことは…！」
たくまちゃんを観察していると、二人の魔物がたくまちゃんの腕に抱きついている姿が見えました
たくまちゃん…本当に浮気なんですか…？
私はいてもたってもいられなくなり、その場へ飛び出しました
…
俺は繁華街から引きずられて、部屋まで連れ戻された
そしてシロ姉に見下ろされている
「たくまちゃん、私が怒っている理由が分かりますね？その上で何か言い訳があるならいくらでも聞いてあげますよ」
「いや、だから誤解なんやってば…浮気なんかしとらへんねんって！」
「あんな状況でよくそんなことが言えますね、ではあそこであの魔物達と何をしていたのですか？」
それは…と答えようとして口ごもる、指輪のことはまだ秘密にしていないと…
「ほら、何か言えない邪なことがあるんですよね？」
「ち、ちがっ…！」
「私は、たくまちゃんが好きです。だからたくまちゃんが私に何するのも構いません、でも他の女に現を抜かすのは幾ら何でも認可できません！確かにたくまちゃんは顔も良くて背も高くて性格も良くて気配りもできるから言い寄ってくる女が現れるのは当たり前ですが、私以外の女に目を向けるなんて許されません！」
シロ姉の身体が俺を緊縛する、いつもの抱擁とはわけが違う力強い締め上げだ
「しろ、姉…」
「たくまちゃんは私をもう愛していないのですか…？だからあんな魔物なんかのところに…」
「そ、そんなことあらへんよ！俺はシロ姉を愛してる！」
「だったら…なんで側にいてくれないんですかっ！なんであの魔物達の側にいるんですかっ！」
シロ姉の瞳から涙が溢れる
「…私、たくまちゃんのこと…信じてたんです、でも…たくまちゃんが、他の魔物と一緒にいて…！」
｢…シロ姉｣
つまりあれだ、嫉妬ってやつだ
白蛇を含むラミア種の魔物は物凄く嫉妬深い、いくら俺思いのシロ姉とは言え白蛇には変わりないわけで
それで俺が他の魔物のところにいて、嫉妬で冷静さを失っていた…原因は全部俺だな
｢ごめんなさい…こんな嫉妬なんて…こんな感情、だめだって…わかってるんです！こんな、こんなのじゃ、私…っ！でも…たくまちゃんを、取られなくなくてっ！｣
｢あー…｣
猛省だ、自分勝手に動いてて俺は全くシロ姉のことを考えてなかった
シロ姉のことだ、プレゼント渡すことより俺と長く一緒にいた方が幸せなはずだ
勝手に一人で舞い上がってて、結局シロ姉を泣かせてしまった…俺は馬鹿だ
「ごめん、シロ姉…俺が馬鹿やったよ」
「たくまちゃん…」
「確かにシロ姉の気持ちを考えないで自分勝手に動いてた…でも、本当に浮気やないんや！信じてくれ！」
「本当に…？」
「あぁ、シロ姉に誓って！なんならあの魔物達やその関係者に聞いてもらってもいい！」
「私に、私の身体に飽きて…小さな魔物のところへ靡いたわけじゃないんですね…？」
「なんでそんな考えになったか知らんけど、それもない！」
「う、ぁ…ぁぁぁぁっ」
うわぁぁぁぁシロ姉がさらに号泣したぁぁぁぁぁぁ！
「ご、ごごごごめんなさいぃぃぃ！今回のことは天よりも高く海より深く反省しててやな！？」
「わ、わたっ…わたし…、一番…たくまちゃんをっ、信じてあげなきゃ…い、いけなかったのにっ…！し、嫉妬、なんかでっ、ひ、酷いこと…言ってぇ…ごめん、なさいぃぃ…」
｢…いやシロ姉、ええんやで嫉妬もさ、『愛』あってこその物なんやし。全然悪いこととちゃうで…？｣
｢ふ…ぁ、うぅっ…｣
シロ姉の緊縛が少しだけ緩む、泣き止むようにシロ姉の頭を撫でてあげる…シロ姉がよくしてくれるように
｢嫉妬はしてもいいんやで…好きなだけヤキモチ妬いてくれ。好きなだけ拗ねてくれ…俺は、その度に、全力でシロ姉を愛してあげれるから｣
｢っ…たくまちゃん…！｣
｢…っ｣
やばい、今のシロ姉超可愛いかったんだけど…
普段大人っぽい所為か、こういう反応がとても可愛いらしい
｢…シロ姉は、我慢しすぎなんや…もっと俺にも甘えてな。俺にもっと我儘言ってええんやで？｣
「…っ、そ、そうです！元はと言えばたくまちゃんが紛らわしいことするからこんなことになったんですよ！私が我慢してるのに他の女のところになんて行くから…！」
「ぐぇぇ…！ご、ごめんなさいっ…！」
シロ姉が泣き止みはしたが、再び強く締め付けられる
「謝ってもダメです、たくまちゃんは私のものという自覚が足りないです！私はいつだってたくまちゃんのことだけを考えてるのに…！」
シロ姉の目が深紅の輝きを帯びる、どうやら魔物娘としてのスイッチが入ったらしい
「そんないけない子には、おしおきが必要ですね」
「お、おしおき…？」
あ、あのいつも俺が何か失敗した時とか1番に庇ってくれたシロ姉が俺におしおき…？
「ふふ、そんなに怯えなくてもひどいことはしませんってば…ただ今以上に私しか見られなくなる気持ちいいおしおきです」
「し、シロ姉…待って、そんなことしなくても俺はシロ姉しか…！」
「知ってますよ、でも…おしおきですから」
シロ姉の右手に青白い炎が灯る、これは…白蛇の炎だ
この炎は白蛇の魔力でできており、夫に嫉妬したときに自らのものだと教え込む為に夫の身体に埋め込むのだという
「大丈夫ですよー、絶対に嫌がるようなことはしませんから…気持ち良過ぎて気絶するかもしれませんが、その時は私が目一杯看病して差し上げますから」
「ちょっ…まっ…！」
静止する間も無く、シロ姉が俺の身体へ炎を埋め込む
「うぁっ…ぐ、ぅぉ…！？」
身体の内側から燃え上がるような性欲が襲ってきた、シロ姉をめちゃくちゃにしてしまいたいという劣情が思考を支配する
しかし俺の身体はシロ姉により動かすことができない、どうにか身体を自由にしようと思うが全く解ける様子がない
「ふふ、まるでオオカミさんですねー？きゃー、食べられちゃいますー♪」
「ぐ、ぅぅぅ…し、ろ…ねぇ…！」
「獣みたいなたくまちゃんも野生的でかっこいいですねぇ、私も早く交わりたいのですが…ちょっとだけ待ってくださいね」
「ぁぁぁぁ…は、やく…！」
シロ姉が懐から、赤色の小さな飴が入った小瓶を取り出す
「魔界で売られている一時的に昔の姿へ変えてくれる魔法の飴ちゃんです、これを…あむっ」
シロ姉が赤い飴を一つ取り出し、口に入れると…
「…ふふ、ほら昔の小さなお姉ちゃんですよー？」
昔の、まだ小さな頃の姿へシロ姉が変わった
「どうですかたくまちゃん、これなら私も小さな魔物の仲間入りですよー？」
「あ、ぁ…し、シロ姉ぇ…！」
身体が小さくなった為にシロ姉の拘束は解けたので、身体が自由になる。
「ぁ…もう、たくまちゃんったら乱暴なんだから…♪」
愛おしいシロ姉を前にして俺は本能のままシロ姉に飛びかかった
…
「はぁ…！はぁ…！」
「たくまちゃん、大丈夫ですか？」
「あー…やばい、全然治まる気がしないで…」
もうかれこれ1日は交わり続けていた、休憩を挟みはさみでとはいえ一向に俺の燃え上がる劣情は治まることを知らない
シロ姉も俺に合わせて体位を変えてくれたり、趣向を変えた格好をしてくれたりしてくれている
「ふふ、白蛇の炎はそう簡単に消えたりしませんからね。どうしますか、次は何か別の格好で交わりますか？それとまた小さくなりますか？」
「いや、ちょっとだけ…少しだけ気持ちが落ち着いたから、これを…」
俺は脱ぎ捨てていた白衣のポケットから小箱を取り出す
「これは…？」
「その…開けてみてや」
困惑の顔で小箱を開けるシロ姉、中の指輪に目を丸くする
「あの、これ…」
「ほら、その…今までプレゼントとか、したことなかったから…シロ姉との記念日も近いやろ？まぁ、あれや…婚約指輪ってやつや…」
「も、もしかして…この為に毎日…？」
「ご、ごめん！その、宝石の部分…俺の魔力で出来てて、メルルさん達に協力してもらったんや…でも指輪に使える大きさになるまで時間がかかって…毎日少しずつやってたんや」
「たくまちゃん…」
「ご、ごめん…その、だから…今回シロ姉を喜ばせようと思って…こんなことになっちゃったのは本当に反省してて！」
「ズルいですよ…たくまちゃん！」
「おわぁっ！？」
シロ姉に押し倒された、目が凄いギラギラしている
｢ああもう好きです！大好きです！好き好き好きぃ！大好きですもう！あああああもうワケわかんない！好きすぎておかしくなりそうなんですよ！なんでこんなにたくまちゃんが愛おしいんですか！たくまちゃんの全部が私の一番好きなポイントにドンピシャなんですよ！？なんなんですかもう！大好きですぅ！！｣
「し、シロ姉落ち着いて！」
「これが落ち着いていられますか！たくまちゃんが悪いんですよ！？あむっ…ぢゅる、ちゅっ…んんんっ…！」
「ちょっ…ふぁっ…んっ！？」
「はぁっ、はぁっ…！うれしいです、とても嬉しいですよたくまちゃん！」
シロ姉が俺を巻き上げて持ち上げる
「もうダメです、私も抑えが効きません…たくまちゃんも理性、飛ばしちゃいましょう？」
シロ姉の両手に青白い炎が灯る…まさかまた俺に流し込むつもりじゃないだろうか
「し、シロ姉…まさか」
「えいっ！」
やっと落ち着いてきたと思ったのに、また意識を劣情に蝕まれる
「ぐ、ぅ…！」
「もう一回、行っときましょうか♪」
え？
「えいっ♪」
「ああああああああああ！！」
シロ姉が再び炎を流し込んだ瞬間、俺の意識は完全に消えた
そして、起きた時には時間が2日経過しており研究が大幅に遅れてしまい…
「あぁ、それはそこの機械に！そっちは片付けて！」
「タクマさん！書類の方を纏めておきました！」
「ありがとうシロナさん！あぁ、そっちじゃなくて向こうの機材使ってくれ！」
「タクマさーん！材料が足りないそうですー！」
あの2日…いや3日の遅れを取り戻すために大量の仕事に襲われている
研究が停滞してしまった分取り戻すのは当然とはいえ、まさに地獄のような有様だ
「くそっ！シロ姉を悲しませた罰だとでもいうのかぁぁぁぁぁ！」
「タクマさん！口より手を動かしてください！」
「ひぇぇぇぇ！堪忍してくれぇぇぇえ！」
俺は決めた、もうシロ姉に白蛇の炎は使わせないと
多分次あんなことがあったら3日ではすまないだろう…これからはシロ姉との時間をなるべく多く取るようにする
シロ姉も指輪を付けていてくれてるし、今回のことはもう大丈夫だと思う
(あの時のたくまちゃん、凄かったです…またしばらくしたらやりましょうかね)
シロ姉はやる気満々みたいだけど、俺はそんなことには流されない
…流されない、と思いたい
まだ籍は入れられていないけど、もう親も公認で結婚しているようなものだ
しかし仕事が忙しく、恋人であるシロ姉と二人の時間があまりとれないことがある
仕事でずっと一緒にいるとはいえ、恋人と個人的な時間がとれないのは辛い
でもシロ姉はそういう素振りを見せずに、俺の仕事を一生懸命に手伝ってくれている…本当に自分には勿体無いほどできる女性だ
「タクマさん、大丈夫ですか？ボーッとしてますが…」
「…ん、あぁ、どうにか効率よく仕事できないもんかと思ってな」
「うーん、これ以上の効率上昇は望めないと思いますよ？ただでさえタクマさんがありえないくらい効率上げてるんですから…」
「…そうやけど」
仕事を早くこなせばそれだけシロ姉との時間が増えるし…それにもう一つ仕事を早く済ませてしまいたい理由がある
もうすぐ俺とシロ姉の結ばれた日、いわゆる婚約記念日みたいなものだ
以前までの記念日は研究の仕事が忙しくて、シロ姉に何かをしてあげるなんてことができなかった
…たしかその日は仕事が終わった後にいつもより交わっていたくらいか
だから今回こそは、シロ姉に何かしてやりたいのだ
何か特別なプレゼントでもしてあげれば、シロ姉も喜ぶはず
「タクマさん、そろそろ仕事を切り上げて大丈夫だと思いますけど…」
「もうそんな時間か…じゃあ、シロナさんは先に部屋に戻ってて大丈夫やで」
「タクマさんは、またお出かけですか？」
そう、俺はシロ姉に贈るプレゼントのために仕事が終わってから毎日のように出かけているのだ
そのため、帰りがかなり遅れてしまうからシロ姉には先に寝るようにいつも言っているのだけど
「まぁ少し…研究を手伝ってくれてる魔物からの打ち合わせがな。ご飯は帰ってきてから食べるから先に寝といて大丈夫やで」
「…はい、美味しいご飯作って待ってますね」
シロ姉はいつも俺が帰ってくるまで寝ないで、しかもおいしいご飯を作って待っていてくれる
そんなシロ姉だからこそ、俺はシロ姉が喜ぶようなプレゼントをあげたい
「じゃあ、行ってくるでシロ姉」
「…いってらっしゃい、たくまちゃん」
俺は研究棟から出て、少し先の繁華街へと足を運ぶ
プレゼントのためにある魔物と待ち合わせをしているのだ
「来た来た、おーい！」
「あ、すいません今来たところで…」
「なに、気にするでないぞ。お主は我がサバトの研究によく貢献してくれているからのぅ」
子供のような小さな身体に頭の大きな角、そして四肢は動物のようにフサフサの体毛に覆われているこの魔物はバフォメットのメルルさんだ
俺たちの魔界での研究に協力してくれている、サバトという組織のトップで魔界でもかなり地位が高い魔物だ
「早く済ませてしまおうかの、嫁さんが待っておるのじゃろう？」
「えぇ、まぁ…」
俺はメルルさんと繁華街のある店を尋ねる
「おー、らっしゃい！今日も生が出るねにーちゃん！」
「ええ、もうすぐですからね」
これまた小さな身体で身に合わない金槌を軽々持ち上げているこの魔物はドワーフのアムさん
繁華街で装飾品や金属加工を取り扱っている店の職人で、研究機材などにもお世話になっている
「しかし、にーちゃんの奥さんは幸せ者だな！こんなプレゼントを用意してくれる男、なかなかいないぞ？」
「いえ、俺個人じゃできないですし…お二方の協力で初めてできるものですから」
「ふむぅ、確かにお主一人では魔力の結晶化は無理ではあるが…そう謙遜することではないのじゃよ？お主の発想はもしかしたら今後のアクセサリー界に革命をもたらすかも知れないんじゃ」
俺はシロ姉に、世界で二つと無い俺だけが渡せるプレゼントを渡そうかと思っている
魔界では大気中や地中にも魔力という力が含まれており、それが積み重なると魔石という塊になり結晶化する
それを人間の中にある魔力でもできないかと思ったのだ、そうすればその結晶を使った装飾品などは他には無いただ一つの特別な物になるだろう
というわけで、研究で知り合った魔力の扱いに長けたバフォメットのメルルさんと装飾品や金属加工に長けたドワーフのアムさんに協力を仰ぎシロ姉に内緒でしばらく前から製作しているのだ
「いままで魔力を込めた装飾品などは腐るほど見てきたが、純粋に魔力を結晶化させて作る装飾品などはあまり聞かんからのぅ…あったとしても自然から発掘された魔石を使ったものであって自らの魔力なんて発想はなかったのぅ。」
「魔力の扱いを知らぬ世界から来てるにーちゃんからそんな発想が出るとは普通思わないよなー」
「そ、そうなんやろうか…？まぁ、俺一人じゃ自分の魔力も使えないんでメルルさんよろしくお願いしますで」
「我らの世界でも、魔力を扱える人間というのもそう多くないからのぅ…まぁ我くらいのバフォメットとなると人間の魔力を扱うことくらい分けないがのう？」
メルルさんが俺の手を握る、こうしてメルルさんに俺の魔力を吸い出して貰っているのだ
吸い出された魔力をメルルさんが結晶にして少しずつ大きくしていく、人間の魔力だけだと魔力が少ないために本当に少しづつしか結晶は大きくならない
しばらく前からやっていって、ようやく今日の魔力分で指輪の装飾に使えるくらいの結晶になったのだ
「ふむ、あとはアムが加工するだけじゃな」
「よろしくお願いします、アムさん」
「ふふん、任せてくれたまえよにーちゃん！きっと奥さんが喜ぶものになるぞ！」
手早くアムさんが俺の魔石を使い加工を進めていく、指輪の材質から形も俺が研究の合間に考えて書き起こしたものをアムさんは忠実に形にする
そうしてできた、鈍い紫の光沢を持つ魔石の指輪は他には無い神秘性を感じる
傷付かないように白衣のポケットに小箱にしまっておこう
「その指輪の魔石、にーちゃんの魔力だけでできた魔石だからにーちゃんの思いそのものみたいなものだぞ。こんな物貰えるなんて奥さんは羨ましいなぁ」
「そうじゃのぅ、我もこんな旦那様が欲しいのう」
左右に2人がぴったりとくっついてくる、やっぱり身体は子供だよなぁ
「そういえば魔界じゃ重婚は合法なんじゃよなぁ」
「あーあー、近くにいい男いないかなー」
腕よじ登ってきたよ、何してんのこれ
「あのー、何してるんですかね…？」
「鈍いのぅ、誘っとるんじゃよ」
「たまには小さい子もいいだろ？」
「いや、困りますよ…俺にはシロ姉が…」
「ふふふ、このままサバトへ持ち帰り幼い少女の背徳と魅力をたっぷりと教えてあげようかのぅ」
いや、そもそも子供に欲情するなんてことはしないんだけど
「ふ、ふざけるのも大概に…」
「ふざけるのも大概になさいっ！」
急に、メルルさんでもアムさんでもない声が響く
「え…し、シロ姉…？」
「たくまちゃんから離れなさい！」
何故この場にシロ姉が…などと考える間もなくシロ姉の身体に強く引っ張られて2人と引き離される
「し、シロね…ぐぇぇっ！」
「最近何やら出掛けることが多くて、何かあったんじゃないかと後をついて来てみたら…まさか浮気とは思ってもいませんでしたよ！」
う、浮気！？な、何言ってるんだシロ姉！？
「しかもこんな小さな身体の魔物に…！私というものがありながらっ！」
「う、浮気って何のことや！？」
「とぼけないで下さい！こんなアクセサリー店で、魔物を連れて…しかもあんなにひっついて！これが浮気以外になにがありますか！？」
シロ姉、俺がメルルさん達と浮気してるって勘違いしてるのか！？
「は、話を聞いて…！」
「えぇ、えぇ聞きますよ？何なりと言い訳でもなんでもして下さいよ、でもそれは部屋に戻ってからです。帰りますよ、こんな場所からはさっさと離れましょう」
乱暴にシロ姉が俺を引きずる、シロ姉が完全に我を忘れてしまっている…どうしよう
「お、お代は後日お支払いしますから…ぐぇぇ！」
「何してるんです、早く行きますよ！」
後でメルルさん達には詫びに行こう、とりあえずシロ姉をなんとかしないとなぁ…
「ふむぅ、何やら大変なことになっておるみたいじゃのぅ」
「やっぱり独り身の男性じゃなきゃだめかなー？」
…
今日もたくまちゃんは仕事が終わるとどこかへ出かけてしまいました、ここ最近はそのせいで貴重な二人の時間が少なくて辛いです…
でもたくまちゃんの仕事仲間の魔物との打ち合わせなので、そんな私の我儘は言えません…たくまちゃんは働き過ぎなくらい仕事を頑張っていますから
でも、仕事仲間との打ち合わせで…なんで秘書の私には何も言わないのでしょうか
「…仕事仲間の魔物と、二人きり…？」
…いや、まさかたくまちゃんがそんな他の魔物になびくなんてありえませんよ
たくまちゃんが私を愛してくれているのは、私が誰よりも分かっています
「…でも、一応…」
まだたくまちゃんが出てからそんなに経っていません、匂いを辿って後をつけることはできます
「…たくまちゃん」
ごめんなさいたくまちゃん、きっと浮気なんかしていないって分かってるんですけど…身体が勝手に…
「…こっちは繁華街の方ですね」
たくまちゃんに追いつき、後ろから後をつけます
そして…
「あれは、サバトのバフォメットさん…？」
確かにサバトの方々には研究でお世話になっています、なるほど…仕事仲間というのはバフォメットさんのことだったんですか
「二人は、一体どこへ…？」
再びたくまちゃんの後をつけます、すると二人はある店へ入って行きました
「ここは…魔界でも有名なアクセサリー店じゃ…」
なんで二人きりでこんなところに…
「入ってみましょう…」
中に入ると、もう一人魔物がいました…この店の職人のドワーフさんです
「たくまちゃん…なんで」
まさか、大人の身体の私に飽きて…バフォメットやドワーフのような小さい身体の魔物に…？
「いやいやいや、そんなはずはありません…ここからじゃ会話が聞こえませんが、たくまちゃんに限ってそんなことは…！」
たくまちゃんを観察していると、二人の魔物がたくまちゃんの腕に抱きついている姿が見えました
たくまちゃん…本当に浮気なんですか…？
私はいてもたってもいられなくなり、その場へ飛び出しました
…
俺は繁華街から引きずられて、部屋まで連れ戻された
そしてシロ姉に見下ろされている
「たくまちゃん、私が怒っている理由が分かりますね？その上で何か言い訳があるならいくらでも聞いてあげますよ」
「いや、だから誤解なんやってば…浮気なんかしとらへんねんって！」
「あんな状況でよくそんなことが言えますね、ではあそこであの魔物達と何をしていたのですか？」
それは…と答えようとして口ごもる、指輪のことはまだ秘密にしていないと…
「ほら、何か言えない邪なことがあるんですよね？」
「ち、ちがっ…！」
「私は、たくまちゃんが好きです。だからたくまちゃんが私に何するのも構いません、でも他の女に現を抜かすのは幾ら何でも認可できません！確かにたくまちゃんは顔も良くて背も高くて性格も良くて気配りもできるから言い寄ってくる女が現れるのは当たり前ですが、私以外の女に目を向けるなんて許されません！」
シロ姉の身体が俺を緊縛する、いつもの抱擁とはわけが違う力強い締め上げだ
「しろ、姉…」
「たくまちゃんは私をもう愛していないのですか…？だからあんな魔物なんかのところに…」
「そ、そんなことあらへんよ！俺はシロ姉を愛してる！」
「だったら…なんで側にいてくれないんですかっ！なんであの魔物達の側にいるんですかっ！」
シロ姉の瞳から涙が溢れる
「…私、たくまちゃんのこと…信じてたんです、でも…たくまちゃんが、他の魔物と一緒にいて…！」
｢…シロ姉｣
つまりあれだ、嫉妬ってやつだ
白蛇を含むラミア種の魔物は物凄く嫉妬深い、いくら俺思いのシロ姉とは言え白蛇には変わりないわけで
それで俺が他の魔物のところにいて、嫉妬で冷静さを失っていた…原因は全部俺だな
｢ごめんなさい…こんな嫉妬なんて…こんな感情、だめだって…わかってるんです！こんな、こんなのじゃ、私…っ！でも…たくまちゃんを、取られなくなくてっ！｣
｢あー…｣
猛省だ、自分勝手に動いてて俺は全くシロ姉のことを考えてなかった
シロ姉のことだ、プレゼント渡すことより俺と長く一緒にいた方が幸せなはずだ
勝手に一人で舞い上がってて、結局シロ姉を泣かせてしまった…俺は馬鹿だ
「ごめん、シロ姉…俺が馬鹿やったよ」
「たくまちゃん…」
「確かにシロ姉の気持ちを考えないで自分勝手に動いてた…でも、本当に浮気やないんや！信じてくれ！」
「本当に…？」
「あぁ、シロ姉に誓って！なんならあの魔物達やその関係者に聞いてもらってもいい！」
「私に、私の身体に飽きて…小さな魔物のところへ靡いたわけじゃないんですね…？」
「なんでそんな考えになったか知らんけど、それもない！」
「う、ぁ…ぁぁぁぁっ」
うわぁぁぁぁシロ姉がさらに号泣したぁぁぁぁぁぁ！
「ご、ごごごごめんなさいぃぃぃ！今回のことは天よりも高く海より深く反省しててやな！？」
「わ、わたっ…わたし…、一番…たくまちゃんをっ、信じてあげなきゃ…い、いけなかったのにっ…！し、嫉妬、なんかでっ、ひ、酷いこと…言ってぇ…ごめん、なさいぃぃ…」
｢…いやシロ姉、ええんやで嫉妬もさ、『愛』あってこその物なんやし。全然悪いこととちゃうで…？｣
｢ふ…ぁ、うぅっ…｣
シロ姉の緊縛が少しだけ緩む、泣き止むようにシロ姉の頭を撫でてあげる…シロ姉がよくしてくれるように
｢嫉妬はしてもいいんやで…好きなだけヤキモチ妬いてくれ。好きなだけ拗ねてくれ…俺は、その度に、全力でシロ姉を愛してあげれるから｣
｢っ…たくまちゃん…！｣
｢…っ｣
やばい、今のシロ姉超可愛いかったんだけど…
普段大人っぽい所為か、こういう反応がとても可愛いらしい
｢…シロ姉は、我慢しすぎなんや…もっと俺にも甘えてな。俺にもっと我儘言ってええんやで？｣
「…っ、そ、そうです！元はと言えばたくまちゃんが紛らわしいことするからこんなことになったんですよ！私が我慢してるのに他の女のところになんて行くから…！」
「ぐぇぇ…！ご、ごめんなさいっ…！」
シロ姉が泣き止みはしたが、再び強く締め付けられる
「謝ってもダメです、たくまちゃんは私のものという自覚が足りないです！私はいつだってたくまちゃんのことだけを考えてるのに…！」
シロ姉の目が深紅の輝きを帯びる、どうやら魔物娘としてのスイッチが入ったらしい
「そんないけない子には、おしおきが必要ですね」
「お、おしおき…？」
あ、あのいつも俺が何か失敗した時とか1番に庇ってくれたシロ姉が俺におしおき…？
「ふふ、そんなに怯えなくてもひどいことはしませんってば…ただ今以上に私しか見られなくなる気持ちいいおしおきです」
「し、シロ姉…待って、そんなことしなくても俺はシロ姉しか…！」
「知ってますよ、でも…おしおきですから」
シロ姉の右手に青白い炎が灯る、これは…白蛇の炎だ
この炎は白蛇の魔力でできており、夫に嫉妬したときに自らのものだと教え込む為に夫の身体に埋め込むのだという
「大丈夫ですよー、絶対に嫌がるようなことはしませんから…気持ち良過ぎて気絶するかもしれませんが、その時は私が目一杯看病して差し上げますから」
「ちょっ…まっ…！」
静止する間も無く、シロ姉が俺の身体へ炎を埋め込む
「うぁっ…ぐ、ぅぉ…！？」
身体の内側から燃え上がるような性欲が襲ってきた、シロ姉をめちゃくちゃにしてしまいたいという劣情が思考を支配する
しかし俺の身体はシロ姉により動かすことができない、どうにか身体を自由にしようと思うが全く解ける様子がない
「ふふ、まるでオオカミさんですねー？きゃー、食べられちゃいますー♪」
「ぐ、ぅぅぅ…し、ろ…ねぇ…！」
「獣みたいなたくまちゃんも野生的でかっこいいですねぇ、私も早く交わりたいのですが…ちょっとだけ待ってくださいね」
「ぁぁぁぁ…は、やく…！」
シロ姉が懐から、赤色の小さな飴が入った小瓶を取り出す
「魔界で売られている一時的に昔の姿へ変えてくれる魔法の飴ちゃんです、これを…あむっ」
シロ姉が赤い飴を一つ取り出し、口に入れると…
「…ふふ、ほら昔の小さなお姉ちゃんですよー？」
昔の、まだ小さな頃の姿へシロ姉が変わった
「どうですかたくまちゃん、これなら私も小さな魔物の仲間入りですよー？」
「あ、ぁ…し、シロ姉ぇ…！」
身体が小さくなった為にシロ姉の拘束は解けたので、身体が自由になる。
「ぁ…もう、たくまちゃんったら乱暴なんだから…♪」
愛おしいシロ姉を前にして俺は本能のままシロ姉に飛びかかった
…
「はぁ…！はぁ…！」
「たくまちゃん、大丈夫ですか？」
「あー…やばい、全然治まる気がしないで…」
もうかれこれ1日は交わり続けていた、休憩を挟みはさみでとはいえ一向に俺の燃え上がる劣情は治まることを知らない
シロ姉も俺に合わせて体位を変えてくれたり、趣向を変えた格好をしてくれたりしてくれている
「ふふ、白蛇の炎はそう簡単に消えたりしませんからね。どうしますか、次は何か別の格好で交わりますか？それとまた小さくなりますか？」
「いや、ちょっとだけ…少しだけ気持ちが落ち着いたから、これを…」
俺は脱ぎ捨てていた白衣のポケットから小箱を取り出す
「これは…？」
「その…開けてみてや」
困惑の顔で小箱を開けるシロ姉、中の指輪に目を丸くする
「あの、これ…」
「ほら、その…今までプレゼントとか、したことなかったから…シロ姉との記念日も近いやろ？まぁ、あれや…婚約指輪ってやつや…」
「も、もしかして…この為に毎日…？」
「ご、ごめん！その、宝石の部分…俺の魔力で出来てて、メルルさん達に協力してもらったんや…でも指輪に使える大きさになるまで時間がかかって…毎日少しずつやってたんや」
「たくまちゃん…」
「ご、ごめん…その、だから…今回シロ姉を喜ばせようと思って…こんなことになっちゃったのは本当に反省してて！」
「ズルいですよ…たくまちゃん！」
「おわぁっ！？」
シロ姉に押し倒された、目が凄いギラギラしている
｢ああもう好きです！大好きです！好き好き好きぃ！大好きですもう！あああああもうワケわかんない！好きすぎておかしくなりそうなんですよ！なんでこんなにたくまちゃんが愛おしいんですか！たくまちゃんの全部が私の一番好きなポイントにドンピシャなんですよ！？なんなんですかもう！大好きですぅ！！｣
「し、シロ姉落ち着いて！」
「これが落ち着いていられますか！たくまちゃんが悪いんですよ！？あむっ…ぢゅる、ちゅっ…んんんっ…！」
「ちょっ…ふぁっ…んっ！？」
「はぁっ、はぁっ…！うれしいです、とても嬉しいですよたくまちゃん！」
シロ姉が俺を巻き上げて持ち上げる
「もうダメです、私も抑えが効きません…たくまちゃんも理性、飛ばしちゃいましょう？」
シロ姉の両手に青白い炎が灯る…まさかまた俺に流し込むつもりじゃないだろうか
「し、シロ姉…まさか」
「えいっ！」
やっと落ち着いてきたと思ったのに、また意識を劣情に蝕まれる
「ぐ、ぅ…！」
「もう一回、行っときましょうか♪」
え？
「えいっ♪」
「ああああああああああ！！」
シロ姉が再び炎を流し込んだ瞬間、俺の意識は完全に消えた
そして、起きた時には時間が2日経過しており研究が大幅に遅れてしまい…
「あぁ、それはそこの機械に！そっちは片付けて！」
「タクマさん！書類の方を纏めておきました！」
「ありがとうシロナさん！あぁ、そっちじゃなくて向こうの機材使ってくれ！」
「タクマさーん！材料が足りないそうですー！」
あの2日…いや3日の遅れを取り戻すために大量の仕事に襲われている
研究が停滞してしまった分取り戻すのは当然とはいえ、まさに地獄のような有様だ
「くそっ！シロ姉を悲しませた罰だとでもいうのかぁぁぁぁぁ！」
「タクマさん！口より手を動かしてください！」
「ひぇぇぇぇ！堪忍してくれぇぇぇえ！」
俺は決めた、もうシロ姉に白蛇の炎は使わせないと
多分次あんなことがあったら3日ではすまないだろう…これからはシロ姉との時間をなるべく多く取るようにする
シロ姉も指輪を付けていてくれてるし、今回のことはもう大丈夫だと思う
(あの時のたくまちゃん、凄かったです…またしばらくしたらやりましょうかね)
シロ姉はやる気満々みたいだけど、俺はそんなことには流されない
…流されない、と思いたい
15/05/05 03:52更新 / ミドリマメ
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