連載小説
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救出 (前編)
※注意書き
 この作品には暴力的表現が含まれています。
 人も魔物もひどい目に遭いますので、そのような内容が苦手な方は回避をお願いします。


























































少女が眼前で開いた本。

それは今まで読んでいた本とは異なる物だった。

著者が異なるその本には、条約が有効であった時代に起きた、とある事件についての逸話が、当事者達の記録から書き起こされていた。



――――――――――――――――――――

・聖皇暦320年、春

国境沿いのとあるスラム街に彼女達は居た。

「あ……ぁぁっ…!」

薄暗い地下に響くのは嬌声。

3日前、スライムのセリアティ、レッドスライムのアルセ、ハーピーのリーゼは所属するギルドからの指示を受け、人身売買組織の調査に当たっていた……



戦乱が収まり早5年、既に反魔物派領に取り残されたであろう魔物の保護は順調に進んでいた。

だが、ここに来て、親魔物派・反魔物派双方を悩ませる事案が生じていた。

それが、人間や魔物の少女を狙った誘拐と人身売買だった。

被害が報告されたのは去年の冬から、その分布は親魔物派・反魔物派の両方に及び、今までで、既に60人程が行方を眩ませている。

彼女達の末路は想像に難しくない、少女ばかりを狙い、その身を売り飛ばすというのだから、彼女達は娼婦として売られていったのだろう。

戦乱が収まり、仕事の無くなった傭兵やならず者達が暗躍しているのではないか、と魔物や人間達は考えていた。

そこで命じられた任務が先に挙げた3人による、情報収集であった。

が、しかし、紆余曲折あり、彼女達はまとめて捕らわれてしまう。

捕らわれる前に、辛うじてギルドへの報告を行うことが出来たので、救助が来るのは間違いなかったのだが……

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場所は親魔物領・反魔物領の国境に沿うように立ち並ぶ、今はうち棄てられたスラム街。

戦乱の際に主戦場となり、荒廃の一途を辿った街の跡は、時間の経過と人心の衰退によって完全に朽ちている。

現在は仕事の無い傭兵や、そもそも違法な行為で生計を立てている連中、そんな底辺に程近い人間が、砂糖に群がる蟻の用に、このスラムに集まっていた。

彼らがまるで生ゴミに群がる虫やカビのように集まる理由…それはこのスラム街を中心として行われているある事業の為だった。

内容はいたって単純、親魔物領・反魔物領それぞれにおいて、人間や魔物の少女達を拉致し、違法に運営されている娼館に高値で売りつけるというものだ。


だが、ここで誤算が生じる。
ギルドから送りられた3人に場所を突き止められ、詳細を報告されてしまった事、そして彼女達を殺さずに捕らえてしまった事だった。

スラム街の中にあるとある廃屋、その地下室が彼等の根城であった。
元々教会の人間が魔物や親魔物派を拘束し、拷問を加えるための地下牢が有る場所だ。

今は拉致してきた少女を監禁し、陵辱し、売り払うために使われている。
そこでは10人ばかりの体格のいい、だがみすぼらしい男達が、1人のスライムを陵辱していた。

既に何度と無く犯され、青い体は白が混じり、水色を更に白くしたような色になっている。
それでも、男も魔物も交わりを止める様子はない。

「はぁっ…あっ…お腹…空いた…の……ご飯…ちょぉらい…」
「ひひひ…この淫乱、自分から腰振ってるじゃねぇか」
「おい…早く代われよ、まだ後つかえてんだからよ」
「まあ、そう焦るなって…うっ…出る…」
「んぁ…あああぁぁぁぁぁぁっ!!!」

2人はほぼ同時に達した。
白濁した粘液が、彼女の身体に混じってゆく。

それでもセリアティの飢えは収まらない。
それは、首に取り付けられた魔法具が原因だった。

『首輪』には魔力を吸収する魔晶石が仕込まれており、首輪をつけた者から魔力を吸い上げる仕組みになっている。
このため、首輪を付けられた魔物は延々と襲う空腹に精をひたすらに求めるようになってしまうのだった。

そして、取り込んだ魔力は直ぐに奪われてしまうため、力も魔力も通常時よりも弱くなるうえ、一部の魔物については繁殖も封じられてしまう。
出元不明のこの道具は大戦中に開発された物らしいが詳細は不明である。

スライムは身体に流し込まれた精液を分解し、魔力に変換するが、それは直ちに首輪に吸収されてしまう。
一瞬だけ戻った正気は相棒の心配に費やされてしまった。

「ア…ルセ…ちゃ…ん…逃げて……ぁん!!」
「休んでる暇なんてねぇぞ、まだまだ控えてるんだから、とっと股開けや!!」
「ひっ……」

彼女が隣の牢の相棒の心配をするのもつかの間、あっという間に次の男の肉棒を差し込まれてしまう。

「あっ…あんっ…」
「お…すげぇな……5人目だってのに全然締まりが衰えねぇぞ」
「だろ?、この前の人間の女より全然具合が良いぜ」
「こりゃ…高く売れそうだな」

男達が下卑た笑いを浮かべ、セリアティをいくらで売り飛ばすか、相談していた。

3人に自分達の根城を突き止められたのは確かに誤算ではあったが、辛うじて彼女達を捕獲できたし、品物の供給量がだんだんと少なくなっている中で、転がり込んできた上玉だった。
そんな事を考えながら、男達は次に売るのはこのスライムにしようと結論を出していた。
既に、ハーピーはとある娼館に売り払われ、今頃望まぬ男に抱かれるている事だろう。

だが、男達は生活の糧として行っているつもりで、罪悪感など感じていない様子だった。


5人目の男がセリアティの体内に精を放つ頃に、隣の牢で、アルセが目を覚ました。
彼女の傍には男が1人、柵越しに覗き込んでいる。

「くっ……ここ…は」
「おはよう、お嬢さん」
「!?」

何のつもりか、アルセはそう問いた。
アルセの身体は特に拘束はされていなかったが、柵中に結界が敷かれているのが分かった。

「……私の仲間をどうした?」

自分の周りを確認し、仲間がいない理由を聞いた。
彼女は問いかけながら思い出していた。

スラム街に偵察にきて、根城にしている廃屋を突き止め、上司へ連絡を付けたところで、彼女の意識が消えている。
仲間の様子は不明だったが、おそらく同じ結果になったのだろう。

アルセが睨みつけている男はニヤリと笑うと、視線を横に流した。
彼女がそれを追いかけるように視線を移すと、そこには6人目の男に犯される同僚の姿があった。

「!!?」
「と、まあご覧の通り、お前の仲間の1人は今俺達とお楽しみ中だぜ」
「な…なんて事を…」

同僚の痴態にショックを受けるアルセだったが、もう一人の仲間を思い出して、表情を強張らせた。
起き上がった姿勢のまま、柵のところまで飛びつくように移動すると、男に向けて叫び声を上げた。

「リーゼは…リーゼはどうした!?」
「リーゼ…?、ああ…あのハーピーか、丁度買い手が居たからさっさと売り飛ばしたぜ…ひひひ…最後の最後まで泣き叫んでたぞ」
「!」

この屑!、そう叫びながら、彼女は柵の隙間から手を伸ばす。
が、手が届くはずも無く、結界のせいで身体が抜けることも無く、彼女の手は虚空を切った。

「ふんっ…そんな様で何が出来る、あのスライムもお前も同じだぞ、結局は俺らに売り飛ばされる運命なんだよ」
「ふざけるな!!」

彼女は吼えるが、男は怯みもしない。
適当にアルセを一瞥すると、男はセリアティのいる檻に歩いて行った。

「くそっ…冗談じゃないわ…」

彼女は1人で毒づく。
ここを脱出する方法、リーゼを助ける方法、いろいろなことを一気に考えてしまい、考えがまったくまとまらない。

そうこうしている間に、10人全員がセリアティの肢体を堪能し終わったらしく、彼らがアルセの居る檻に向って移動してくるのが見えた。

「…今度は…私か?」
「察しが良いな、安心しろ、こいつをつけたらお前らは理性なんて吹っ飛んじまうから、後先なんてわからなくなるさ」
「くっ…」
「どうした?、今更、誰も助けに来ないし、明日にはお前らは売り飛ばされるんだ…諦めろ…化け物」

10人は全員服を脱いでおり、そのうち1人は手に首輪を持っている。
あれを首に嵌められれば、あの同僚と同じように肉欲に乱れてしまうだろう。

そして、10人に代わる代わる犯され、気が付いたら娼婦として売り飛ばされる事になってしまう。
それだけは…それだけは避けたかった、だが目の前で檻の入り口を開け、10人がかりで自分に首輪を嵌めようとしてくる男達を見て、気丈な彼女はたった一粒だけ、涙を流した。

脳裏に浮かんだのは学院生時代に世話になったエキドナの笑顔だった。
そして、その笑顔をもう一度見るため、彼女は諦めなかった。

「さあ…観念しろ」
「私に……触るな!!!」

男の1人が手に持った首輪を嵌めようと、アルセに一歩近づいたその時、彼女の足元の水溜りから、赤い剣山が飛び出した。

「!!」
「近寄るな!」

彼女の足元から飛び出したのは彼女の身体。
足元に溜まる水溜りの部分を高密度・硬質化させ、下方から貫く技。
特に防御に徹する際にこの技を使う事がある。

魔王交代前には大型スライム(後のクイーンスライム)がこの状態となり、教会騎士団の手を焼いた。
アルセの身体はそれと比べれば遥かに小さいが、これでも人間を貫くことくらいは出来る。

「くそ、なんて事しやがる」
「…」

乱立する赤い水晶のような剣山に囲まれ、アルセの表情は良く見えない。
男達は防御を固める彼女にどのような手段で首輪を嵌めるか、考えていた。

スライム種には打撃・斬撃の類は一切通用しない。
コアを傷つければ殺すことは出来るが、それでは意味が無い。

とある男が、方法を思いついた。
それは…

「なあ…こいつスライム種だし、あれが効くんじゃないか?」
「あれ…?、ああ…あれか…ひひっ…いいぜ、持って来いよ、たっぷり痛めつけてやろうぜ」

5分と経たずに先程言い出した男が持ってきたのは、白い粉の入った袋だった。
皮の袋であったが、袋の口から粉がこぼれて後を残していた。

「何よ…薬漬けにでもする気?」
「そんな事はしないさ」

ほらよ、と掛け声を上げながら、袋を持った男は皮袋の中身を掴み、アルセにぶちまける様に振りかけた。
キラキラと壁に掛けられた松明に照らされ、粉が輝いていた。

粉の正体は…

「!!、熱い!!!」

脱水剤だった。

「痛いィィィ!!!!やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「ハハハ、ざまあねぇな」

アルセの肌に付着した脱水剤はあっという間に彼女の体表面を侵し、水分を奪い、代わりに熱を孕んだ痛みを加えていく。
そんなじりじりと肌を焼かれるような痛みに、彼女は唇を噛み締めて耐えていた。

悶え苦しむ彼女に追い討ちをかけるべく、男は皮袋から脱水剤をもう一掴み彼女の身体に撒いた。

「ンギィィィィィィ!!!!」
「…すげぇな…獣みたいな声上げてるぞ…」

アルセの身体は徐々に縮み、赤い剣山もボロボロになってきた。
だが、それでも瞳に宿る力は失われていない。
剣山は減らず、一本が崩れて折れると新たに一本を構成し、守りを崩さない。

それから10分程の間、彼女は脱水剤に身を焼かれ続けた。

〜続〜
10/07/04 16:55更新 / 月影
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■作者メッセージ
少し長くなってしまったので前・後編に分けます。

痛々しい話ですが、こんな人間も存在する世界ということで…
後半は魔物のターン。
いろいろと鬱憤を晴らして回ってくれるようです。

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