読切小説
[TOP]
あけまして……
『ポッポッポッピーン……たった今、新年を迎えました!あけましておめでとうございます!』

テレビの中で魔物娘のアイドルユニットMMG48が元気よく挨拶をしている。

俺と、大切な恋人であり妹(風)のバフォメット・なずなはこたつの中でのんびりと新年を迎えていた。

「あけましておめでとうなのじゃ。今年もよろしく頼むぞ、兄上」
「こちらこそ。あけましておめでとう」

お互い姿勢を正さず、こたつで向い合せにぐでーっと上半身を伸ばしながらのあいさつ。気楽でいいもんだ。

「兄上、兄上」
「んぁ?」
「んひひぃ」
「なんだそれ」

なんか、こっちを見てにへら〜っと笑っている。普段もあまり意味のあることをするほうではないが、今回のこれはダントツトップで意味がない。どうしたのだろうか?

「兄上は兄上じゃの〜。みゅふふ」
「は?」
「いや、兄上が初めて兄上になった時の話を思い出したのじゃよ」

はて、俺が初めて兄上になったとき……か。ふむ……

あれは今年の……いや、そう、まさにぴったし去年。一年前のことだな。

「お前がいきなり俺の部屋にドロンと出てきた時だっけ?」
「そうそう。いや、の?ワシの世界に別世界から来た怪人が来たという話が合ってじゃな。その召喚式の逆を組めばできると思ってやってみたら……まあ失敗しての〜」
「んで、その怪人とは縁もゆかりもないこの世界の俺の部屋に出て……」
「帰れないことがわかってびーびー泣きわめいてしもうたの〜」

他のバフォメットがどうか知らないが、うちのなずなは所謂、「ダメっ娘」だ。何をやってもうまくいかず、失敗続き。そのせいで部下につくはずの魔女とやらが一人もいないサバトを経営していて、借金まみれになり、挙句の果てにほとぼりが冷めるまで別世界に逃げて帰れなくなるというダメっぷりだ。本人ももはやそのダメっぷりに開き直ってるらしく、リーダー然としている他のバフォメットに比べればかなりあまえん坊……いや、「依存症」だ。何に?俺という兄に。

「で、一月こそはバイトして金をためるんだよn」
「あーあー。みかんがうまいの〜」

この調子である。一応、借金は(俺がたまたま宝くじに当たっていたから)返すことができたのだが、その分の金を返せというと、この調子だ。全く……

「おもち〜おもち〜日本のおもちはうまいのじゃ〜。ジパングとやらに行くまもなく日本に来たから食い比べができぬ〜」
「……」

まあ、このしまりのない顔を見ると何となく毒気が抜かれて文句が言えなくなる。これも一種の惚れた弱みというやつなんだろう。本当に、笑えない。

「まあ、わしのおかげでこっちの世界の男は出会いの場が百倍(当社比)に増えたのじゃから、ある意味経済的な意味でワシは働いて」
「……」バシッ
「あいた……うぅ〜」

更に性質の悪いことは、こいつには言い訳としてこれが用意できる点だ。

さっきも言った通りこいつは「偶然」「失敗して」未開拓であるこの世界に召喚された。そのことはあっちの世界で相当ニュースになったらしく、こっちにいる魔物娘の一部に、こいつは所謂、先遣隊と認識されているらしい。しかも、勇敢にも単身で来たという。ダメっ娘のくせに生意気な。

「うゅ?ひゃにをしゅるのひゃあにうぇ〜〜〜。いひゃいのひゃ〜」

もにゅもにゅと餅をむさぼっていたもち肌ほっぺをびろーんと伸ばす。うむ。気持ちいい。

「いひゃい〜」グスッ
「……これぐらいで泣くなよ上級悪魔」
「ワシなんてどうせ下級じゃもん」

いじけてしまった。

「兄上〜アイス食べたい。買ってきて。ハーゲ●ダッツ」
「はぁ?お前、今元旦だぞ。アイスって……」
「それ買ってきてくれたらご褒美あげるのじゃ」
「……」

三分で買ってこようか。

ちなみに俺とこいつは普通の魔物カップルよりはプラトニックだ。っていうか、この半年俺は童貞のままだ。友人からは童帝(わらしべのみかど)と呼ばれている。すごいだろ。まあ事実はこいつがあまりにもゆるいからお互いそういう気分にならないだけだけど。

「おぉ、ありがと。うまそーじゃ」
「……」
「ん〜♪うまい!甘い!冷たい!」
「……」

こいつしばいてやろうか。人が、ご褒美を、期待して……

「さて、風呂に入るかの。ご褒美はそのあとじゃ」
「買ってきて……ん?風呂のあと?」
「んむ。その……じゃな。わしら、これでお付き合いして一年じゃろ?」
「お、おぅ」
「じゃから、その……ステップを上げようと……な?」

その瞬間の上目遣いは……俺の理性をぶちこわすのには十分すぎた。

そして夜は更けていく……




次の日ー


「……初日の出、きれいじゃのー」
「……ソーデスネ」
「兄上と見れてわしは幸せじゃー」
「ソーデスネ」

まさかの添い寝だけ。いや、確かに普段から布団別々だけどさ……これは……


「いくらなんでもひどすぎるー!」

ダメっ娘魔物にご用心。
14/01/01 00:00更新 / しんぷとむ

■作者メッセージ
ちなみに彼の初夢は彼女とキスする夢でした。現実ではまだですが


いやー。いつもよりひどいヤオイ話だった……満足した。

TOP | 感想 | RSS | メール登録