読切小説
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娘会!
時刻は19:00、とある繁華街。
その中にある一軒の居酒屋に4人はいた。

「では、娘会開始だ!かんぱぁい!」
4人はテーブル中央でグラスを合わせる。チンと音が鳴ると各々は自身の飲み物に口をつける。
「ぷはぁ!やっぱり仕事終わりはビールよな!」
から揚げに手を伸ばし、ぱくっと口に放りまたアルコールを煽っている、乾杯の音頭もとった発言者の名はヘルハウンドの名里籐 茜華(なりとう せんか)。黒い体毛に赤い目持ち、頭には犬型の獣耳が生え、大きな手足には立派な爪が生えている。
今回招集をかけた人物でもある。
「全くですわ。通常生きるのには必要のない成分が心身に染み渡るのが切に感じられます。」
そう言ってワイングラスを傾けるのは十邁 清雛(とまい きよひな)だ。ヴァンパイアである。見た目は人間とほとんど変わらないが身体能力は人間のそれをはるかに超える。昔は貴族位につく種族であったが現代では名家程度に収まる。
「ワインなんて軟弱なもん、飲んでても酔えねぇぞ!」
茜華は茶々を入れるが清雛は動じない。
「感覚が鈍い茜華ではこの深みは理解できませんわね。あなたの隣の方の飲み物はどうなんですの?」
指摘を受けた者は言い返す。
「私は辛いお酒や苦いお酒は苦手なのだ!文句をつけるのはやめるのだ!」
飲んでいたのはカクテル。主、レッドキャップの蝦夷 カムヤカ(えみし かむやか)はぐむむという顔をする。見た目は小さいがそれでも鬼である。トレードマークは何といっても大きな帽子だ。カムヤカの物は、今は白いが欲求不満が溜まるにつれて赤く染まっていくという種族である。
「そんなこというなら癒翔はどうなるのだ?飲んでいるのは水みたいなものではないか!」
カムヤカの正面におり、標的にされたのは茜華と同じように爪の生えた大きな手足に丸い獣耳を持ち、猫科特有の長い尻尾をゆらゆらと揺らす人虎。名を樹稻 癒翔(いきな ゆと)という。
高潔でクールな種族であるかのじゃたち。飲んでいるのはもちろん水ではない。
「なんだカムヤカ。水が良いなら私に言って欲しい。もちろん飲ませてやる。」
(持っているのはお猪口だし、そもそもさっき麒麟山という名前を聞いていなかったのか。)
オーダーを取っているときは全員揃っていたし、癒翔は大学生のころから日本酒・焼酎が好きであったではないか。心の中で茜華は思うが日本酒を飲んだカムヤカを見たいので口は閉じたままだ。
「やめなさいな、癒翔。カムは子供なんだから。」
「むっ!?今子供って言ったか!私の種族が小さいだけで私は大人なのだ!」
清雛の他意はない言葉にムキになり癒翔がさし出すお猪口をとって口へと近づける。
しかし、流石に独特な重いにおいが鼻につき飲むまでには至っていない。
「どうしたんだい、カムヤカ。止めておいた方が良いと言う親友の言葉を尊重して飲まないでおくか?」
人虎は非常に理性的で頭の良い種族でありカムヤカの逃げ道を作る。
「そ、そうだな!ヒナが言うならそれをしょんちょうするのだ!」
(噛んだな。)
(噛みましたわね。)
(そこで噛んでこそカムヤカという感じか。)
そっとお猪口を大きな手に返し自分の飲み物をとる。絶対に面白かったのにと残念がる茜華を察して癒翔は話題を提供する。
「そう言えばこれは何の集まりといったか?何か聞きなれない言葉で誘われた気がするが。」
「そうですわね。集まり自体は大学仲間ということなんでしょうが。」
質問に乗っかる清雛。
「娘会って言ったろ?巷で噂の。知らないのか?」
「知っているのだ!じょしか・・・」
「女子会とか言って集まる連中いるだろう。あれの魔物娘版だ。」
「あれってしっかりとした定義あるんですの?」
カムヤカは自分が説明できると思った場面を逃しガーンというSEが聞こえてくるような雰囲気だ。ポテトを口に運びもごもごしている。
対面に座る人虎が落ち込む小さい頭を撫でる、と同時にスマホを開き話題にも参加する。
「ウィKI・ペディAによると女子会とは女性だけで集まって飲食をしたり、話しをする会合で本音トークや秘密トークが可能で他に女性同士だから共感してもらえる点やストレス発散が出来るものだと。つまり娘会とはこれの亜種か。」
「・・それって普段の昼食や、飲みの席とどう違うんですの?」
清雛は癒翔へ投げかけるが、対象も頭にはてなマーク浮かべている。
「癒翔の言ったことの魔物娘版をするんだ。いやぁ、やっぱりお前らは可愛くないなぁ。そんなの名前ありきでキャピキャピすりゃいいんだろう!」
「私は得意なのだ!いつも若々しいと言われるからな。」
小さな胸をはって自慢気なカムヤカだがすぐさま茜華の茶々が入る。
「若いと幼いは全く別物なのだがな。」
「やめなさいって、茜華。久しぶりに会っても大学からのノリは変わらないのね。」
そう、彼女たちは学部こそ違えど同じ大学で4年間つるんでいた中なのである。
茜華がカムヤカをからかい、清雛はそれを制止するがカムヤカも挑んでいき所々癒翔が茶々を入れる。その流れは変わっていなかった。
「大体、娘会などといって恋人の愚痴とかはやめて欲しいわ。もう仕事で聞き飽きていますもの。」
ぐったりした感じで清雛はいう。
「やっぱりお医者さんというのは忙しいものなのか?ヒナは精欲科だったよな?」
弄られるのは慣れている子鬼は既に立ち直っていた。
「忙しさは覚悟の上でしたが・・・やはり内容が応えますわね。」
精欲科。性欲の関する問題を精神、肉体両面で診る医者だ。
現在は夫婦の中を保つことが難しいという人々がいる。人間のモノであればセックスレスがメインである。薬での解決や話し合い、心理的な問題の除去など方法はさまざまである。しかし魔物娘が伴侶のカップルとなると話は変わる。どうやって性欲を抑えるか、最低限TPOを守った生活ができるようになる目的を持った患者が毎日のように来るのだ。
「一応順を追って問題があるところを調べなきゃいけないから。その、所謂惚気話を永遠聞かなきゃいけないの。」
「そ、そりゃ大変だな。」
「大変そうなのだ・・・。」
楽観的で明るい茜華も流石に青ざめる。カムヤカはよく分かっていないが雰囲気が怖かったのでプルプルと震えていた。
「仕事が片付かなくて家に帰っても寝て起きだけの日だってあるのに。将善とだって出来ませんわ。」
ぶつぶつと文句を言ってグラスを空にする。すかさず茜華は店員にグラスワインを注文した。ちなみに将善(しょうぜん)とは清雛の夫にあたる。
「将善君は元気なのか?」
癒翔が聞くとヴァンパイアは雑に答える。
「元気ですわ!懸命にお父様の手伝いをしてそれはもう!私のことなんて気にかけてないくらいです!!」
一人称が“わたくし”である社長令嬢の清雛と結婚した将善はその父親の企業活動を日夜手伝っており多忙であった。世間一般ではまだ新婚と呼ばれる部類に属する、しかも魔物娘の、ヴァンパイアの不満は積りに積もっていたのだ。
地雷を踏み抜いてしまった。冷静な癒翔はそれ以上ツッコまない。すると今度は茜華が口を挟む。
「癒翔はどうなんだよ。仕事の方は。」
イカの刺身を頬張っている癒翔は静かに答える。
「別にどうってことは無いさ。ただ、マンネリ気味というかネタ切れ感はある。」
口をもごもごさせながら自身の仕事に関して話していく
「アトラク=ナクアに見合った部屋なぞ、どうすれば良いのやら。」
部屋、そう癒翔の仕事は部屋のデザインである。フリーのデザイナーであり単純に新居の部屋設計をする仕事である。だがこのご時世、結婚するのは人間同士だけではない。人間と魔物娘の夫婦もいるわけだ。単純にヒト型、フーリー、キョンシー、アオオニ等、であれば良いのだ。が、何かしら特徴のある、先に出たアトラク=ナクアのような、魔物娘の使用する家については、デザインを依頼主・大工との相談に凄まじい時間を要するのだ。
「あの頃に戻りたいよ。私にはあちらの方が向いていた。」
「あたしは勘弁してほしいぞ。もし、たまたま入った部屋が親友の設計した部屋なんてムズ痒くてヤってられんからな。」
簡単に言えば、癒翔はフリーになる前はラブホテルの部屋専門でやっていた時期があった。
「ここら辺は特に多いぞ!」
癒翔は得意に話すが苦い顔になる他のメンバー。
「私も嫌なのだ!」
「そんなにか?まぁ、ここに居る者が使うような部屋はそんなに設計してないはずだ。」
現在の仕事と同じように特徴のある魔物娘用の部屋を多く作ってきたからだ。
サハギンやマーシャークのような者のためのプールがメインの部屋やサンドウォームのために砂地が存在する部屋等真面目なものがメインである。
「でもぉ…私は結婚して家を建てるなら癒翔にお願いしたいのだ。」
「あたしも売り上げに貢献してやるかな。」
「私も早く将善と二人で暮らしたいですわ。」
何だかんだで乗り気な三人に嬉しさを隠すようにお猪口を傾け続ける癒翔。
「みんな大変なんだなぁ。私は毎日いっぱいの人の幸せな姿を見れて楽しいぞ!」
カムヤカは結婚式のコンサルティングをする仕事だ。
「もちろん、みんなの結婚式は私が携わるのだ。」
清雛も籍を入れただけで式は上げていない。
「えぇ、ぜひお願いしたいわ。」
「まぁ仕方ないよな。」
「あぁ、仕方ないな」
後半二人の言葉の意味は依頼にしか取れないカムヤカは非常に自慢げだ。
「任せておくといいのだ!んで、一番早いのは誰なのだ?ヒナか?」
さっと目を伏せるヴァンパイア。
父親からのGOサイン待ちだとは言えない。
「も、もちろんですわ!」
茜華と癒翔は察して苦笑いだ。これ以上は清雛が可哀想だということで茜華が口を開く。
「カムヤカはどうなんだよ。守嗣(もりつぐ)とは結婚できるのか?」
「当然だ!あとはプロポーズを待つだけなのだ!」
それは結婚できるというのだろうか。
三者は思ったがもちろん口には出さない。カムヤカはこういう言事に関しては繊細なためだ。
「というか皆はちゃんとしているのか?」
癒翔が口を開く。
「何のことなのだ?」
「恋人との関係だよ。デートなりセックスなり喧嘩なり。」
飲み屋で回りもある程度のボリュームで反しているため少し猥談くらいならば大丈夫だ。真っ先に反応したのは清雛だった。
「最後に“した”のは3日も前ですわ・・・。新婚なのにあり得ます!?」
酔っているのか、普段から思っていることだからか、ボルテージが上がっている。
「そもそもしっかりした子で普通に営業マンでも私の稼ぎと合わせて十分に食べていけたのに!お父様は会社を辞めて自分の所で修業しろだなんて。別に将善と一緒ならヒモでもいいですのに!!」
カシラの串焼きにかぶりつき、ワインで流す。
「店員さん!八海山持ってきて頂ける?」
普段飲まない日本酒をチョイスするあたりもう焼けッパチという感じだ。
「あなた方、最後はいつしたんですの?」
この状況で答えずらい質問だがカムヤカは我先にという。
「もちろん、昨日の夜なのだ!毎日欠かさずに求めてくれて本当に嬉しいぞ!」
他意のない笑顔に清雛は何も言えなかった。が、追い打ちがかかる。
「あたしは今日の朝だ。残念だったなカムヤカ。」
茜華のどうでも良い張り合いに純粋に悔しがるカムヤカだがまだ続く。
「私はここに来る前だ。」
フンと勝ち誇ったような癒翔。癒翔もその恋人も変則的な時間の仕事をしているため休日はまちまちなのだ。
「なんなんですのーー!」
ついに咆哮が上がる。
「あなた達ばっかりズルいですわ!私だって愛して欲しいです!でも将善は慣れない環境で辛いでしょうし。もう、どうすれば良いのよ!」
混んでいる居酒屋だから許されるであろう流石に声量に慰めが入る。
「…まぁホントのことを言えば、あたしだって泰華に最近ヤリすぎだって怒られて実は今日の朝は禁欲2日目に入ったのを無理やりヤったんだ。結局泰華もノってきたが。」
少し落ち込んでいる茜華。長い付き合いの三人でも滅多に見ないような。
「帰ったら怒られるだろうが…仕方ないさ。また時間をかけて解決しないとだしな。」
「そ、そう。でもそれって大丈夫なの?愛想つかされたりしない?」
茜華は自信満々に言う。
「だって、私たちは愛し合っているからな!それはお前たち夫婦も変わらないんじゃないか?」
どんな二人でも問題の一つや二つは抱えてるもんさ。ある種諦めに似た雰囲気で笑うヘルハウンドに清雛は言葉が出ない。
「わ、私だって!毎日ヤったって帽子がすぐに赤くなるのだ。守嗣も疲れているのに迷惑ばっかりかけてしまう・・・。」
自分のふがいなさを思い出し俯く。が、すぐに上がったその顔は清々しいものだった。
「守嗣はこんな私に『カムさんは毎日、僕に最高の時間をプレゼントしてくれてます。今のままの、このカムさんでいて下さい』と言ってくれるのだ!」
今度はその時のことを思い出してれてれと笑うカムヤカ。
「私は何も無いがな。」
茜華、カムヤカ共に癒翔を見る。責めるつもりはないがその視線は何かを訴えている。少しの間お猪口を傾けた癒翔だが観念したように話し出す。
「・・・いつプロポーズしてくれるのかな、とは思っているが。」
ぽろっと出た本音に次々と言葉が連なる。
「もう、付き合った年数も相性も、何も問題ないはずなんだがなぁ。と、思わんことも無い。ことも無い。」
曖昧に曖昧が重なっているが不安があるのは確実のようだ。
「ほらな♪清雛だけが特別じゃないんだよ。あたしらぐらいのレベルでも不安なことはついて回るのさ。」
清雛は慰めようとしてくれている茜華に謝罪しようと思った。が、言葉は紡がれる。
「それを乗り越えられる二人だから恋して、今一緒に居るんだろう?なら、心配なんてしなくて良いんだよ。二人のペースでさ。」
そう言って店員にビールのお代わりを頼む茜華。
ヴァンパイアの伝えたいことは変わっていた。
「ありがとう、茜華。元気づけられましたわ。」
照れたように笑いフンと鼻を鳴らす。
「珍しく、センが良いこといったのだ。」
ここぞとばかりにカムヤカは日頃の仕返しをする。
「こら、チビッコ。またいじめて欲しいのか?」
「わ、私は虐められるのは好きではないのだ!」
本気で嫌がっている素振りではない。
何かおかしいと思った茜華と癒兎はゆすりをかけてみる。
「まぁ、Mでもなければそーだよなぁ」
「そーゆうプレイは良くないことではあるかもな。」
わざと深刻な雰囲気を出す二人にカムヤカは不安になる。
そんな中、清雛は普通に質問する。
「カム、なんかあったの?」
うむむと悩んでから答えだす。
「私は変態なのかもしれないのだ。温泉旅行に行った時、その、守嗣が・・・。」
またも口ごもる。茜華はもどかしくなり口を挟む。
「カムヤカを選んでる時点でロリコンなのは間違いないんだから大丈夫だ!」
「むっ!守嗣は大人な私が好きだと言ってくれているのだ!泰華君こそよく茜華を選んだな。手足がでかくて全然可愛くないのだ。」
「なんだと?泰華は『茜華さんの大きな手大好きです。いっぱいしごいてくださぁい!』っておねだりしてくるんだぞ!」
「んっ?うちの可愛い薬真だって、この爪でカリカリしていっぱい虐めてくれと懇願してくるが。」
「守嗣だって頑張って頬張る私が最高に可愛いと言ってくれるぞ!!」
「将善だって私が一番かわいいって・・・。というか声が大きいし何で張り合ってるんですの・・・」
だいぶ酔っていているのだろう。つまみもなくなってきたので馬刺しと牛タン、ビールとウォッカと赤ワインにカルーアミルクを頼んだ。
「それで、温泉でなにしたんだよ。」
何だかんだで気になっているのは三人とも同じなので静かになる。
「目隠しで、ヤったのだ。凄く凄く、良かった。」
思い出したのかぽっと赤くなる子鬼。
「目隠しかぁ。確かにしたことないな。どんな感じだったんだよ?」
「何も見えないのに温かいというか。ジワジワくるのだ。」
各々は自分のパートナーとで想像する。
(『癒翔さん、気持ちいいですか?ほら、感じてください。』ふむ、悪くないか?)
(『ヒナ、いっぱい感じて気持ち良くなってね。』将善、待ちなさい。あっ・・・。)
(『茜華さん、怖くないですか?そ、それじゃ触りますよ?』。・・・うーん、うちの目隠しはあたしじゃなくて泰華かな。)
「なんかヒナもセンもユトもエッチぃのだ。」
カムヤカの声で我に戻る三人。少し顔が熱いと感じているのは自分だけではないかとひやひやする。
「そろそろ発情期だったかな。帰ったら試してみるか。」
「おいおい、正気か癒翔?ま、まぁならあたしも試そうかな。」
「私もヤりたいですわ!!」
流石は魔物娘というべきか、軽い想像だけでもうヤル気は満々だった。
「なんか皆ずるい!私にも何か教えて欲しいのだ!」
ここ一番でカムヤカの本気の声であり、性については貪欲なことが分かる。
「分かったよ。そうだな、少し前にベランダで・・・」
こうして飲み会はさらにヒートアップしたのだった。

――――――――――――――――――――――――

22:30。
普通の飲み会には早いが愛するものが待っている彼女たちには十分に遅い時間だった。
ありがとうございましたー!
元気な掛け声を背に店を出た4人。
「いやぁ、飲んだな。お前ら一人で帰れるのか?」
「確かにな。迎えを頼むか。」
そう言ってスマホを取り出そうとした瞬間。娘たちに声がかかった。
「茜華さん!」
「カムさん。」
「癒翔さん。」
「ヒナ。」
そこには先ほどまで話していた4人の男性陣。
「どうしたんだ、泰華。なんで皆いるんだ?」
「お迎えに来たんですよ。そうしたら皆さん次々と。」
駆け寄って茜華の手を握る。
「癒翔さん、飲み過ぎちゃいますから。」
「すまんすまん。ありがとうな。」
癒翔は薬真の肩に手を掛ける。
「カムさん、頭とか痛くなってませんか?」
「ん!私は大人なのだ!!・・あいたたっ。」
言わんこちゃないとカムヤカを抱きかかえるのは守嗣。
「将善、仕事はどうしましたの?」
「いやぁ、お父様に怒られちゃったよ。嫁より仕事が大事なのかって。ごめんよ、僕が足りてないばっかりに。」
「・・・バカ。」
清雛は将善に抱き着き顔を埋める。
「そんじゃまぁ、今日は解散にするかな!」
そう言ってそれぞれの帰路につくのであった。


≪将善・清雛≫
車の中。しばらく無言だったが、清雛が口を開く。
「今日愚痴っちゃたわ。あまりにもお粗末なあなたとの生活に。」
「本当にごめんよ。」
将善の真摯な謝罪にそれ以上は責められなくなる。しかして収まらない気持ちもあるが故に言葉は続く。
「もう、許しませんわ。今日から毎日ずっと一緒に寝るんです。でなければ、もう将善なんて知りません。」
我儘を言っている自覚はある。でもそれ以上に言わずにはいられなかった。もう我慢できないと。
「分かった。」
「えっ?」
清雛が予想していた言葉は無理を言うなとか、善処するとか否定のモノだった。
「昨日なんて血をあげるだけで疲れて寝ちゃったもんね。本当にごめん。実はお父様はそんなに厳しくしてないんだ。でも、僕はふがいなくて遅くまで仕事をしていた。そうしたら今日見つかって。『お前は何が大切なんだ?本末転倒なことをしてないかって』。バカだったよ。これからは毎日一緒に寝る。なるべく一緒に居るから。」
アルコールのせいだ。流れそうになる涙に自分の中で良いわけをつけて答える。
「寝るだけじゃダメですわ!今日いっぱい色んなプレイを聞いてきたんだから!・・・毎日私を愛してくださいな!」
「分かったよ、清雛。」
答えを聞く前に将善の頬に柔らかいものが当たる。
「今は運転中だからこれだけですわ。早く家につかないかしら。」
普段は自分からなど絶対にありえないヴァンパイアの行動に男はいっそう気を引き締めるのであった。
ピロリン。その時スマホが鳴った。
「何かしら。・・・結婚?」


≪薬真・癒翔≫
「いやぁ、飲んだ飲んだ。」
「楽しかったですか?」
電車に乗るために二人は駅まで歩いていた。
「まぁまぁだろう。流石にみんな変わらなくて、何というか仲間は良いもんだな。」
「良かったですね。何を話していたんですか?」
ふっと脳裏をよぎったのは、唯一言った愚痴だった。
「別に・・・何でもないさ。」
「そうなんですか?あっ、そう言えば、聞きましたか?泰華さんたち結婚するらしいですね。」
・・・へっ?
普段他者からクールだとか常に冷静だとか言われる、自分は素でいるつもりの、癒翔が頓狂な声を出した。
「き、聞いてないんですか?あれこれっていってはいけない事だったのかな。」
少し焦っている薬真に安心しろと促す。
「あの阿呆は自分で集合を掛けたのに本来の目的を忘れていたのだろう。全く・・・。」
(結婚か・・・。)
隣の男を見るが良いですね、めでたいですねなどと他人事だ。
「二人のペースで良いか。」
「何か言いましたか?」
「何でもないさ。」
(いつも私のペースに合わせてくれるこいつが好きなんだ。だからこれくらいは私が合わせないとな。)
「待っているよ。いつまでも。」
「?」
はてなを浮かべる男に人虎は微笑む。そこにピロリンとスマホが鳴った。
「誰からですか。」
開かずとも答えは分かっていた。
「茜華からだろうね。」

≪守嗣・カムヤカ≫
「カムさん、お水買ってきましたよ。」
コンビニの前でふらふらしている小さな恋人にミネラルウオーターを渡す。
「楽しかったのだ!」
「何よりです。あっ、こぼれてますよ。」
とっさに手を出すが服にしみる。しかし、守嗣は良いと思っていた。なぜなら、あまり酒の席が好きではない恋人がこの集まりだけは機嫌よく参加しているからだ。
「も〜り〜つ〜ぐ〜。おんぶして欲しいのだぁ。」
普段なら子ども扱いだとして絶対にさせないことをねだってくるあたり恐ろしく機嫌がいい。
「そんなこと言っているとまた茜華さんにからかわれますよ。」
いいのだぁとさらに甘えてくる。全く重くないし家も遠くないので構わないのだが。
「茜華さんたちにはリードされちゃいましたね。おめでたいことですが。」
「ん?なんのことら?」
呂律も少し回ってない恋人に驚いて聞く。
「結婚のことくらいは酔っていても覚えていてくださいよ。」
おんぶの形をとるが体重がかかって来ない。
「どうしたんですか?」
「け、結婚?だれがするのだ??」
「誰って茜華さんと泰華さんですよね?まさか、聞いてなかったんですか?」
ピロリン。スマホが鳴る。
「違うのだ!センは言ってなかった!もう、こんな時に誰なのだ!」

≪泰華・茜華≫
「久しぶりにこんなに飲んだなぁ。」
「良かったですね。」
家路を歩く二人。
茜華も相当に酔っているようで泰華の後ろから肩から両手を回して抱きかかえるようにして歩いていた。
「全く持って、やはりあいつらと飲むのは中々だ。」
「娘会は成功だったんですね!」
嬉しそうな泰華の声に「別に普通の飲み会と変わらない」と言おうとして気が付いた。

“女子会とは女性だけで集まって飲食をしたり、話しをする会合で本音トークや秘密トークが可能で他に女性同士だから共感してもらえる点やストレス発散が出来るもの”

(魔物娘で集まって飲食して、いつもはしない愚痴に共感したり本音の話をしたり。)

もちろん魔物娘なので恋バナが多いわけか。
「ククッ、娘会とはよく言ったもんだな。」
一人で納得しているヘルハウンドに小さな恋人が言う。
「それにしても、皆さん祝福してくれました!僕、凄くうれしかったです。」
「祝福?」



“秘密トーク”



「…あっ。言ってない。」
「…?も、もしかして結婚することを言ってないんですか?僕もう男性陣の皆さんにはいちゃいましたよ!?」
慌ててスマホを開く。一つの大きな土産話として持って行った自らの結婚話を忘れるなど、茜華にはあり得ないことだ。
これもまた気心に知れた仲での集まりに浮足立っていた証拠であろうか。

≪LINNE≫
せんか<すまん、すっかり忘れていた。あたし結婚するから。
メッセージを飛ばすと同時に既読が三件つく。
ユト<たった今聞いたよ。おめでとう。出来れば本人様から聞きたかったが。
カムなのだ!<おめでとうなのだ!式は私に任せるのだ!
清雛<あなたという人は・・・


「あらかた知られた後みたいだ。」
「す、すみません。」
「いや、今回は完全にあたしが悪い。」
そしてスマホに戻る。


せんか<今度改めて言わせてもらうよ。本当にすまなかった。
ユト<もちろんだ。存分にいじらせてもらう。今度はカップル4組で飲もうじゃないか
カムなのだ!<ぜひ行きたいのだ!なんなら旅行でもいいぞ!
清雛<全く・・・。でもおめでとう。また直接祝わせてもらうわ。
せんか<皆ありがとな。

「ふぅ、まぁ良いか。楽しかったし。今度8人で飲むかという話が出てるぞ。カムヤカは旅行とか言っているな。」
「良いですね!ぜひ行きたいです!」
「それじゃぁ、計画立てるか!」

せんか<今日は楽しかったよ。また、娘会、やろうじゃないか。男性陣も入るから夫婦会?なのか笑
ユト<そうなるな。では今度はぬれおなごが女将の居酒屋に行こう。
カムなのだ!<私は遊びに行きたいのだ!
清雛<わたくしはオシャレなバーが良いですわ。
せんか<おう!全部行こう!

“これからもずっと皆で!”


18/03/08 00:24更新 / J DER

■作者メッセージ
なぜでしょう。
僕は知人に勧められ載せているだけなので他の投稿者様と違い読める文章ではないのですがvoteを入れてくれる方がいます。
本当にありがたいことですし励みになります。
コメントをくれる方々にも感謝です。
何より新しいモノをあげて過去の閲覧数が伸びることが一番うれしいです。これからも頑張ります。

宜しければ、以前の物もお読み頂ければ幸いです。

では最後に皆様の余暇のお供になれることを願いましてー。

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