連載小説
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中編:月の無い夜の追跡劇
 俺が謎の美女、ノイア=ファントムと同棲し始めて、もうすぐ一年になる。
結婚はまだだけど、今はとても幸せだ。
しかし…同棲を始めた頃は、色々と疑問や違和感があった。
まず、曇りの日や、新月の日などの月の見えない日には、なぜかどこかへ行ってしまう。
それに、なぜか自分の詳しい過去を話したがらない。家族の名前や、知り合いの話とか。
自分の事を好いてくれる人を疑うのは気が引けるが…少し怪しみ始めていた。

 しかし、ある日を境に、その怪しい所が綺麗に無くなった。
月の見えない日でも、帰宅すると普通に彼女が家にいたし、
俺が彼女について質問しても、はぐらかさずにしっかりと筋の通った答えを貰えた。
何だか、急に謎がなくなったのもそれはそれで怪しいと思ったが、
怪しんでてもキリが無いし、何より、変に疑って今の生活を壊したくない。
…そういえば、彼女の怪しい点が消え去ったあの日、いつものように仕事をしていたら、
何やらものすごい悲鳴が聞こえたような気がしたが…アレは何だったんだろう?

「ラエちゃん、もうすぐノイアちゃんと同棲一周年やな。」
「そうですね。何かパーティーとか、プレゼントでも贈ろうかな…。」
「そして、アタシの酒場で働くようになって、五周年目でもあるな。」
「そういえばそうだった!いつもご苦労様です、マスター。
 それも併せて、なにかお祝いしないと…」
「…なあ、ラエちゃん。」
「何ですか?」
「アタシ、まだラエちゃんに言うてへん事があるんや。
 ずっと隠しとったけど、五年もたったし、もうそろそろ話とかなって思ってな。
 ちょうど誰もお客さん居てへんし、ちょっと話してええ?」
「いいですけど…どうしたんですか?改まって。」
「ラエちゃん、今まで、ずっと隠してきとったけど…」

 そう言うと、マスターの黒髪が、狐の毛並みのような色に変わり、
頭からは髪と同じ色の、二つの尖った狐耳が飛び出し、さらに彼女の背後からは、
一、二……七本もの狐の尻尾がふさっと生えてきた。

「実はアタシ、『稲荷』ゆう、狐の魔物やねん。」
「えええッ!?」

 マスターは魔物だったのか…。道理で、ずっと若々しい姿のままだったり、
男を誘うような言葉遣いをしたりしていたのか。

「あ、勿論本気やないで?癖や、癖。アタシには旦那も居るし。」

 その上、心も読めるのか!?

「いや、ラエちゃん今口動いてたさかい…」
「あ、そうだったんですか。…あんまり驚いたからかな?」
「んで、今見たとおり、アタシは魔物や。今までずっと人に化けとったけどな。
 …実はアタシ、もともとこの町を親魔物の体制に変える手引きの為に、ここに来てん。
 まあ、『すぱい』?みたいなモンやな。
 体制が変わった去年までずうっと機会を伺っとったんやけど、あのお堅い前町長、
 全然隙が見えへんし、ホンマ難儀やったわ…。」
「へぇ…。でも、なんで俺にそれを話したんです?」
「体制も変わったし、ホンマは前々からみんなにばらしたかったんやけどな。
 昔いっぺんだけ、教団の人にアタシが魔物やないかって疑われた事があったんやけど、
 みんな、アタシの事をずっと人間やって信じて、かばってくれてたもんやから、
 それを裏切ってまうような気がしてな。
 アタシの旦那には、もちろんもう話したけど…
 町の皆には、もうちょっと秘密にしときたいねん。
 でもラエちゃんなら、口も堅いし、優しいし、偏見もないし、魔物と暮らしとるし、
 付き合いも長いし、ラエちゃんにだけならもう話してもええんやないかなーと思って。
 でも、それだけが理由とちゃうで。
 この後の話を滑らかにする為にも、正体を明かす必要があるんや。」
「…ちょっと待って。魔物と暮らしてる?俺が?」
「せや。」
「家にはノイア以外居ませんけど?」
「せやから、そのノイアちゃんが魔物なんや。」
「そうだったのか…。確かに、魔物かもしれないと思う位美人だったけど、やっぱり…」
「嫌いになった?」
「そんな事ないですよ!それぐらいで嫌ったりしません!」
「そか。良かったわ。それじゃあ、ここからが本題や。
 …ラエちゃん。ノイアちゃんの事、ホンマのホンマに愛しとる?」
「勿論ですよ!」
「ノイアちゃんがどうなっても、何が起こっても、愛する自信はある?」
「はい。きっと、愛し続けます。」
「…うん、嘘はついてへんみたいやな。それじゃ、話すで。
 ノイアちゃんは、魔物や言う他にも、ラエちゃんには言えへん秘密を抱えとる。
 でもそれは、ラエちゃんがこれからもノイアちゃんと暮らしていく上では無い方がええ、
 とっても重大な隠し事なんや。」
「どうして、それをマスターが知ってるんですか?」
「偶然見えてもうたからな。せやから、お節介心が働いた言うか…」
「…どんな秘密なんですか?」
「焦ったらあかん。それは、あの子らから直接聞き出したほうがええ。
 …でも、忠告しとくわ。それをあの子らから聞いてもうたら、
 恐らくもう、今まで通りの関係では居られへん。その覚悟はある?
 ちょっと考えてみ。そんで、少しでも後悔するかも知れへんなら、止めといた方がええ。
 無理強いはせえへんし、この話をしたゆう記憶も消したるさかいな。」

「……………後悔は、しません。
 彼女がどんな隠し事をしていても、必ず受け止めて見せますッ!!」

「ええ返事やな。…その言葉、信じるで。
 でも、あの子らはガードが固いから、アタシが真実を聞き出す方法を教えたげるわ。
 もうすぐ新月やろ?その日は休みにしたるさかい、早うに床について、
 目ぇつぶって寝たふりしてみ。ええか?寝たふりやで。ホンマに寝たらあかん。
 そんで、何か変わった事があったら、そっと目ぇ開けるんや。
 …その時、全部分かる事になると思うから。」
「はい。やってみます!」
「うんうん♪」
「それにしても、どうして俺にその事を?」
「狐は人を化かすもんや。せやから、あの子らとは何だか他人な気がせえへんねん。
 さっきも言った通り、ただのアタシのお節介やけどな。
 …でも、正直、あの子らが心配で仕方ないんや。種族柄、臆病な性格みたいやけど、
 それにしたって、あの子らは臆病すぎるんや。だから、自分から幸せになれへん。
 自分に自信がなさ過ぎるせいで、幸せが目の前にあっても捨ててまう。…難儀な事やで。
 これは、魔物として、同じ仲間としてのお願いや。
 あの子らを、助けたって。ラエちゃんなら、それができるって信じてるから。」
「…頑張って、期待に応えてみます。」
「あ、せや。念のため、ラエちゃんに渡しとこ。」

 そう言うとマスターは、俺の腕に白い玉が連なってできた腕輪をはめた。

「何ですか、これ?」
「アタシが作った数珠…つまり、お守りや。
 それ腕にはめてたら魔法が効かへんようになるから、寝たふりする時に着けとき。
 魔法とか使われたら、失敗してまうかも知れへんからな。」
「凄いな…ありがとうございます!」
「ええって。でも、しっかり頑張りや。」
「…そういえばマスター、あの子『ら』って…?」

「どうもー!、マスター、今日も綺麗ですねぇ。」
「あら、嬉しい事言ってくれるやないの♪」
「そしてラエール、今日も煮え切らねえな。
 さっさとあの美人さんと結婚しちまえよ。もしくはもげろ。」
「誰がもげるか!」

 その答えを聞く前に客が入ってきてしまい、結局聞き出せなかった。
…まあいいや。彼女が何であろうと、次の新月の夜に、全て明らかになる。
そして…彼女が隠さなければならなかったことを、俺が全部受け止めて見せる。
人であれ魔物であれ…俺は彼女を愛してるんだから。














 そして、新月の夜。

 彼女には、朝に、今日は休みを貰ったと言っておいた。
理由を聞かれたが、『最近働きすぎだとマスターに言われた』と言い訳しておいた。
最近は月の見えない夜になっても、彼女がどこかへ行くことは無くなったのだが、
今日はなぜかまたどこかへ行ってしまった。まさか…気付かれた?
しかし、やらずに判断するのもいけないし、まずはやるだけやってみよう。
俺はマスターに言われた通り、早くにベッドに入り、お守りを着け、寝たふりをした。
目をつぶっているから、今頼りになるのは耳だけ。
何か変わったことがないか、集中して聞き取らなければならない。

 …こうして集中すると、今まで聞こえなかった色んな音が聞こえてくる。
虫の声、風で木の葉が揺れる音、外に居る人の話し声…
それらの音に耳を済ませていると、不意に、寝室に近付く足音が聞こえてきた。
しかも二つ。その上、片方は馬の蹄の音とそっくりだ。まさか、彼女が馬を連れ込んだ?
だとしたら、何で馬を?馬で、しかも室内で何をするつもりなんだ?
俺がそれまで以上に集中して聞いていると、その足音がドアを開け、入ってきた。
そして俺のベッドの側で足音が止まると、次に何やら二人の女性の声が聞こえてきた。
どちらも綺麗な声だと思ったが、彼女の声とは違う。
もうこのまま目を開けてしまっても良さそうだが、あえてもう少し聞いてみる事にした。

『…寝て…ますよね?』
『多分…』
『でも、ワタシが家を出たことを知ってるのに、大丈夫なんですか?
 今日は流石に無理があるんじゃ…』
『大丈夫よ。買い物に行ってたって事にするから。
 あと、寝ようとしたけど、早すぎて眠れなかったって事にも。』
『そうですか…。では、お願いしますね、エイムさん。
 いつものように、起きた後のために、内容も聞かせて下さいね。』
『任せて、ノイアちゃん。』

 ノイア!?
一方の声の主が彼女だって言うのか?…それに、もう一人の声は何者なんだ?
これはもう…目を開けてしまってもいいだろう。
俺がゆっくりと目を開けると、そこには影のような黒ずくめの少女と、
紫のフードをかぶった、下半身が馬になっている女性が居た。

「……君たちは…?」
「…!!?!」
「ら、ラエールさん…ごめんなさいッ!『Iasanirumen-Aas』!」

 紫の女性が呪文を唱えた。恐らく睡眠魔法を使ったんだろう。
しかし、マスターがくれたお守りのおかげで、俺には通用しない。

「嘘…!どうして魔法が効かないの!?」
「それよりも、君たちは一体何者なんだ?」
「あぁ……見られた、見られちゃった…!!」

 二人は、今にも泣き出しそうな、驚愕と恐怖に満ちた顔をしていた。

「……ッ!!」

 そして…紫の女性は黒い少女を素早く自分の馬部分の背中に乗せると、
そのまま目にも止まらぬ速さで逃げ出した。

「あっ、ちょっと、待ってくれ…!!」

俺がそれを追って家を飛び出すと、外にはマスターが待ち構えていた。

「どうやら、うまく行ったみたいやな。」
「マスター。あの二人は一体…?」
「あの二人が、ラエちゃんと今まで暮らしとった美女、
 『ノイア=ファントム』の正体なんや。」
「えっ!?でも、彼女とは全然違いますよ!?それに二人だったし…」
「目に見えとる物だけが、真実やあらへん。
 紫の子は、男の夢の中に入り込んで、その夢を操って精をもらう力、
 黒い子は、恋敗れた男の好きだった女性に変身する力を持っとるんや。
 突然、夢の中で綺麗な女の人に抱かれた事…
 破れたと思った恋が、突然叶った事…ラエちゃん、どっちも心当たりあるやろ?」
「そういえば…!」

 突然、毎晩ノイアに犯される夢を見るようになって…
その夢を見なくなってから、ノイアの事を好きになり始めたのに気付いて、
『でも、彼女は現実には存在しない』って諦めかけた時に、現実にノイアが現れた…
マスターの言葉で、今までの出来事に合点がいった。

「でも、そうだとしたら、どうしてどっちも変身してないんです?」
「紫の子は夢の中でしか思った姿になれへんし、
 黒い子は、今日みたいな月の無い夜には変身が解けてまうんや。
 いつ何処で知り合ったのかはわからへんけど、そのお互いの欠点を補うために
 二人で協力して、今までラエちゃんの所におったんやろな。…これが真実や。」

 今まで、謎の美女『ノイア=ファントム』として俺のそばにいた人は、
全てあの二人が見せていた夢幻だったって言うのか…。少なからずショックを受けたが、
俺はマスターに質問を続けた。

「俺は…二人にとって、ただの餌場でしかなかったんでしょうか?」
「そんな訳ないやろ!!…そんなの、悲しすぎるやんか。
 あの二人は、ラエちゃんの事がホンマに好きやったからこそ、
 今まで一緒におったんやと思うで。
 ラエちゃんに嫌われたないから、自分を殺して、必死に演技してたんやと思う。
 別の女性として抱かれとることがわかってても…な。」
「…。」

 いや、まだそうだとは確信できたワケじゃないけど…
…もしも、そうだとしたら。
『自分』を隠し通し続ける。好きな人に、自分じゃない存在として抱かれる。
それは、どんなに辛い事だったろうか。俺ですら、想像に難くない。
俺は、それほどまでに彼女達に想われていたんだろうか。
そして…気付かなかったとはいえ、俺は何てひどい事をしてきてしまったんだろうか。

「そもそも魔物は、男の人の事を『ただの餌』やなんて絶対思わへん。
 それは、頭のお堅い教団の人たちの考え方やで。
 魔物の中には、偉そうにしとる種族もおるし、臆病な種族も、凶暴な種族もおるけど、
 ホンマはみんな、男の人ともっと仲良うしたい。素敵な恋人が、旦那さんが欲しい。
 好きになった人と、ずっと添い遂げたいって、心の底で思ってるんや。
 精を貰えへんと、生きていかれへんからとちゃう。
 魔物も…一人ぼっちは寂しいんよ。人間みたいに、恋がしたいんや。
 好きな人と結婚して、子供産んで、いっぱい抱いてもろて…幸せになりたいんや。
 人とは違う自分の事を、それでも好きやって言うてくれる、優しい男の人とな。」
「………、」

 …そうだよな。姿や記憶は嘘でも、彼女の態度は嘘じゃなかった。
彼女達は、少しも俺の事を餌だなんて考えてなかったじゃないか。
それなのに…俺は変な疑いをしてしまった。
マスターに言ったあの言葉を、自分で裏切ってどうするんだよ!?

「俺は…!」

 正直、まだ気持ちの整理はついていない。でも、やるべきことはもう決まっていた。
彼女達が俺をどう思っていようと、俺はあの二人の事が好きだ。
…それで十分。
たとえ何があっても、正体が何であろうと、
俺は、俺に女性の温もりを教えてくれた彼女を愛し続けると誓ったんだ。
相手が一人増えたところで関係ない。どちらも、いっぺんに愛し続けてみせる。
そして、彼女達の…本当の笑顔が見てみたい!!

「もう迷いません。例え、正体がどんな姿だろうと……二人だろうと…
 本当の彼女達を受け止めて、本当の彼女達を愛し続けて見せますッ!!」

 それを聞いたマスターは、満足そうに頷いた。「うん、よく言うたッ!
 それじゃアタシが、最後の手伝いをしたるわ。ちょっと大人しくしとって…」

 マスターは、俺が着けていたお守りを外し、
代わりに俺の足に何かお札のようなものを貼り付けると、呪文を唱え始めた。

オン・イダテイタ・モコテイタ・ソワカ…
 健脚の神韋駄天よ、我は稲荷、ジパングの八百万神の末席に名を連ねる狐神である。
 我ここに嘆願す。この若者に、風を切り山を飛び越える、強き足を与えたまえ…!!


 すると、俺の両足が光輝き…まるで浮き上がりそうなほど足が軽くなった。

「ラエちゃんに姿を見られてもうた以上、あの二人は自分から戻って来おへんと思う。
 アタシが今、ラエちゃんの足をめっちゃ速く、強くしたったさかい、
 どこか遠くへ行ってまう前に、急いで二人を探すんや!」
「わかりました。何から何までありがとうございます!
 必ず、あの二人を見つけて、連れ戻してきますからッ!!」
「頑張りや!
 失敗なんかしたり、二人を不幸にしてもうたら、クビにしてまうからな!!」
「はい!!」

 この町は、西と東、二つの出入り口がある。
さっき二人が向かったのは、東の方の出入り口。
確かあっちは、途中で深い森を貫く、かなり長い一本道に繋がっていたと思う。
この足で今から追いかければ、十分追いつけるはずだ!

「今行くからな…!」

 俺が地面を蹴ると、途端に俺の家がどんどん小さくなっていった。
面白いほどのスピードが出る。どんな駿馬でも、一瞬で追い越せてしまうかもしれない。
その上、全然疲れないし、息切れすらしない。まるで自分の足じゃないみたいだ。
しかし、そのスピードに酔いしれている暇は無い。
彼女達に追いつくために、俺はただひたすら一本道を駆けた。
徒歩では二時間以上かかる距離を、一時間もしないうちに駆け抜け、
そのまま、俺は森へと突入した。でも、まだ二人の姿は見えない。急がないと…!

「ハァ〜、ほんと夜警ってダル……!!男ッ!?」
「男だ!」
「男よねッ!?しかも見た所一人!」

「「「夜警組と捕獲部隊、緊急集合〜ッ!男が来たぞぉぉぉッ!!」」」

 まずい…!いきなり、しかも凶暴なホーネット達に見つかってしまった。
こんな所で毒槍を打ち込まれ、巣に連れ去られるわけにはいかない。
追い払う手段は無いから…俺はこの足を信じて、彼女達を振り切るしかない!

「さあ、大人しく…って、何アレ!?速くない!?追いつけないよ!」
「先回りして、槍を投げて突き刺すんだ!」
「数が必要そうね。アタシ、他の部隊のみんなも叩き起こしてくるッ!」

 一本道とは言ったが、この森の道は結構曲がりくねっている。
空を飛べる上に、この森に住み、この森を知り尽くしているであろう彼女達にとって、
先回りできるポイントなんていくらでもあるはずだ。
しかも、彼女達のうちの一人は、さらに増援を頼みに行ってしまった。
状況はどんどん悪くなっていくばかりだ。この足でも、流石にヤバイか…?

「よーっし、投擲準備!…始めッ!!」

 そして、彼女達の本格的な攻撃が始まった。

「わっ!」「あわッ!?」「うおっ…!!」

 紙一重で避けながらも、スピードを落とさずに走り続けているが、
もし一本でもに当たったら。いや、かすりでもしたら、その瞬間に毒に冒されてお終いだ。
果たしてどこまで耐え切れるだろうか…

「クソッ!」

 ガキンッ!

「ぅあっと!」

 ガッ!!

「当たるかッ!!」

 カァン!

 地面に突き刺さった槍を一本貰い、避けきれない槍はそれで捌く。
しかし、武器を使った経験なんて、子供の頃にやったチャンバラごっこ位。
槍のエキスパートの大群を相手にし続けられるなんて到底思えない。
頼む、諦めてくれ。俺にはもう恋人が居るんだ。頼むよ…!!

「増援来たよー!」
「よし、直ちに整列!これで仕留めるぞ…一斉投擲ッ!!」

 もう、増援が来たのか…。その号令が、俺にとっては死刑宣告にも感じた。
そして…俺の目の前に、今までよりも遥かに大量の槍が降ってきた。

「う…うわっ、うわっ、うわああぁぁぁぁッ!!」

 避けなきゃ、避けなきゃ、避けなきゃ、避けなきゃ…!!
その時、俺の足はさらに輝きとスピードを増し、槍のカーテンを全て潜り抜けてしまった。
少し恐ろしくなるほど凄いな…この足。まるで、足に神様が宿っているようだ。
それも、教団の奴等が崇めるあの主神様なんかより、よっぽど話のわかる神が。
…しかし、喜ぶ俺をあざ笑うかのように、
その先には、地上に降り立ち槍を構えた蜂娘のバリケードがあった。

「さあ、もう逃げられないわよ?」
「と…通して…くれないよな?」
「当然。
 女王様にはもう夫君が居るけど、あたし達は数え切れないほどいっぱい居る。
 そして、みんな夫が欲しいのよ。
 男を捕まえるのに一番貢献した子が、その男と結ばれる。
 けど、まず捕まえられなきゃどうしようもない。だからこうして、みんなで競争するの。
 いい男は、一人でも逃すわけにはいかないわ!」
「…俺だって、こんな所で止まってられない。
 恋人が居るんだ!恋人を追わなくちゃならないんだ!!」
「えっ…?」

 叫んだ直後に、ここを突破する方法が、一つだけ浮かんだ。
この足が、こんな事までできるのかは分からないが…もう、この手段しかない。
俺は気付かれないよう、こっそり息を吸い込み…

「………、

 あっ、あっちにイケメンの集団がッ!!

『!?』

 動揺した彼女達に、一瞬できた隙をついて、思いっきり助走をつけ…


  跳ぶッ!!


「と…跳んだ!?」
「人間って、あんなに高く跳べるもんなの!?」
「ひ、怯むな!全員、槍を投げろ!!
 羽も無い者が、空中で槍をかわせるわけが無い!」

 …あー……そうだよな。あのリーダー格の真面目そうな子の言うとおりだ。
飛び越えたのはいいけど、槍を投げられたら、そりゃ避けられないよな。ハッハッハッ…
…なんて言ってる場合じゃない!もう、四方八方から槍が飛んできた。
彼女達に追いつくまで、諦めるわけには行かない。こんな所で止まってられない。
絶対に、当たるわけにはいかないんだ!
幸い、移動して避ける事はできなくても、体は動く。
こうなったら、投げられた槍を…全て、弾き飛ばすしかない!
神様…もし俺の足に宿っているなら、俺に力を貸して下さいッ!!

うぅぉああぁぁぁあぁ、らぁぁぁぁァァァぁあああぁッ!!!

 気付けば俺は、自分を鼓舞するためなのか、いつの間にか物凄い雄叫びを上げていた。
そして同時に、時間の流れが極端に遅くなったように感じられた。
今なら、普段できないような動きもできるかもしれない…!
俺は足を振り回して、腰を中心に体をメチャクチャに回転させ、槍を思いっ切り伸ばした。
槍と槍の間にある隙間に足先を突っ込み、そこから掻き分けるように蹴り飛ばす。
同時に上半身でも、槍を使って、投げられた槍を掻き分け、弾き飛ばす!
激しく回転しながら、何度も何度も、その命がけの作業を行う。
地上に着くまでの間、一本でも逃してはいけない…!
普段の俺なら動揺してしまうかもしれないが、なぜかその時はやたらと落ち着いていた。
これもこの足の力なんだろうか…?

「跳ね返されてるよ!?」
「もっとどんどん投げろ!今までマグレで避けられたようだが、
 見た所相手は戦闘の素人。数打てば当たるはずだ!」

 槍を弾くたびに、地面は少しずつ近付いてくる。
俺に向かってくる槍の幕も、少しずつだが、数を減らし始めていた。
あと少し、あと少しだ、最後の一本…………やった、全部捌けた、やった!!
そして、地面にぶつかる直前に足を回転と逆周りに振り回し、
その反動で回転を止め、ベストな着地体勢で地面に降り立った。
嬉しくて、思わずポーズをとってみたりした。本当に凄い足だな…。思ったとおりに動く。
神様、そしてマスター…本当にありがとう!必ずお礼します!!

「ぜ…全部弾かれた……!?」
「ありえない…!!あの子、何者なの!?人間じゃないの!?馬鹿なの!?」
「…あ、また逃げる!みんな、追いかけろー!」

 まだまだホーネット達の追跡は終わらないようだ。
引き続き逃げるが、攻撃の手は緩まない。
…どころか、完全に本気にさせてしまったようで、むしろさらに激しくなった。
何か、魔法とかナイフとか石とか丸太とか爆弾とか獣の糞まで飛ばしてくる奴も居るし…
目的変わってないか!?もう完全に殺す気だよな!?

「捕まれェェェェェッ!!」
「嫌だっつってんだろォォォォッ!!!」

 クソッ、まだ森から出れないのか!?こんなに長い道だったっけ?
あっちも男一人捕まえるのに、どんだけ執念燃やしてんだ!そんなに飢えてるのか!?

「頼むからもう諦めてくれよ、マジで………ん?何だアレ?」

 何か前方から、角と翼と太い尻尾を持った、大柄な魔物が歩いてきた…

「〜〜♪…うむ、やはり夜の散歩は気分のいい物だな。
 月は見えないが、この星々の輝きはどんな宝にも劣らん……!?何だアレは…?」
「す、すいませぇぇん!!どいて下さいいいぃぃぃッ!!」

 どんな魔物かは暗くてあまり分からないが、俺は必死に注意した。

「何だ、人間ではないか。この我に向かって退けとは…」
「どいてくれ、頼むどいてくれ!巻き込まれたくなかったら!!」
「我に向かって、その態度は何だ?命知らずめ。我はド…」
「ああああッ、もうダメだ!!ホントすいませぇぇぇぇんッ!!!」

 人命のためとは言え止まるに止まれない俺は、彼女の横を通過してしまい、
俺の代わりに、彼女が槍&その他沢山の攻撃の集中砲火をモロに浴びてしまった。

「あ…」←蜂軍団
「あー…」←俺

 しかし幸いというか何というか、彼女の体には傷一つ付いていなかった。
……いや、アレで傷一つ付かない、翼や太い尻尾を持つ魔物と言うと、まさか…

「…貴様等、いきなり我に攻撃を仕掛けてくるとは、いい度胸ではないか…」

「ま、まさか、貴女様は…」←蜂一同

「そうだ。どういう了見かは知らんが…
 ドラゴンである我に襲い掛かるという事がどれ程の事か…分かっているな?」

 本気で怒っていらっしゃる…
何処からか、ゴゴゴゴ…と地響きのような音までしてきた。

「故意じゃないんです!ちょっと、退くに退けなくなっちゃったって言うか…ね?」
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ…」
「我の趣味を邪魔したこと…死ぬまで後悔させてやろう……!」
「いや、攻撃してしまった事は本当にすまないと思いますが、
 我々はただ、あの男を……って、居ない!?」
「問答無用だッ!貴様等全員、黒焦げにしてくれる!!」

ぎゃああああぁぁぁぁあああぁあぁぁぁッ!!!??

 …遥か遠くで、ホーネット達の悲鳴と、何か物凄い炎が燃える音が聞こえる。
ごめん。本当にごめん。でも、あそこでお持ち帰られるワケには、
いや、麻痺毒を受けて走れなくなるワケには行かなかったんだ。
許してくれ。そして、死なないでくれ。どうか。

「君らの犠牲は無駄にしないぞ…
 ……ホント、ごめん。」

 …こうして、地上の王者の思わぬ助け?のおかげで、ホーネット達から逃げ切った後、
特に障害もなく、割とあっけなく出口が見えるところまで来た。
そして、出口の先には、全速力で走る人影が見える。きっとあの二人だ!
逸る気持ちを抑えながら、俺はそのまま出口へ向か…

  (ぺた)

 …おうとしたが、なぜか突然、一歩も動けなくなった。
あれだけ頑張ってくれた足が、空回りして進めない。かといって、後ろにも下がれない。
上半身だけが、空間に張り付いたように動かないのだ。
何とかしようともがいている間にも、人影はどんどん遠ざかっていく…

「うふふふ…張っていきなり男がかかるなんて、お姉さん豪運ッ☆」

 道の脇から、蜘蛛のような下半身を持つ魔物が出てきた…

「アラクネ…!」
「あら、お姉さんの事知ってるの?じゃあ、これから何をするかも知ってるでしょ?」
「俺を…犯すんだろ?」
「犯すって言い方は失礼ね。
 糸なんか無くても離れられなくなるくらい、いぃーーっぱい愛してあげるだけよ?」
「頼む、放してくれ!」
「"Answer is NO"よ。アナタみたいなステキな男は、お姉さんも見逃せないの。
 ねぇ、ずっとこの森で暮らしましょ?自然暮らしはいいわよー、空気も美味しいし。
 まあ嫌って言っても、無理やりヤっちゃうけどね☆」
「ヤられてたまるか…くそっ、離れろ!糸!」

 この足を使って全力で暴れても、足が空回りし、地面が削れるだけ。
槍を振り回しても、アラクネが離れてしまえば意味が無い。
両腕と上半身は、全く離れそうも無い。
アラクネの弱点だと言われる火なんてないし、俺は魔法も使えない。

「う〜ん、元気よく暴れるわねぇ、そういう人、好きよ☆」
「俺はこんな所で止まってられないんだ。離れろ、放してくれよ…!」

 これは…詰んだかもしれない。
頼みの綱である足も、今やえぐれてしまった地面には届かず、
しかも、彼女が新しく出した糸に、足も槍も絡められてしまった。
ここまで…なのか?
折角マスターにも手伝ってもらったのに、あの二人に何か言う事すらできず…

「うっ…ぐ…ちくしょうッ……」

 不甲斐ない…。こんな形で終わってしまうなんて…
俺は、湧き上がる悔しさと悲しみに、いつの間にか涙を流していた。

「わわっ、泣かないでよ!何?よっぽど未練のある事でも?」
「頼む、放してくれよ、お願いだ!俺には、もう恋人が…!!」
「あら、恋人が居るの?」
「ああ…。しかも二人もだ。俺はその二人を追って、この森を…」
「……もしかしてそれって、
 さっき森を抜けてった、ナイトメアとドッペルゲンガーの二人組?」
「多分、その二人だと思う…。」
「その二人も、なんか泣いてるみたいだったけど…アナタ、何かしたの?」
「俺が彼女達の正体を見て、そのせいで二人は逃げちまったんだ。
 引き止めるために、今まで二人を追いかけてたんだよ!」
「そうだったの…。
 ……ん〜〜ッ、どうしようかな……NTRは後味悪いし…でも折角のチャンスが…
 …あの子達も可哀想だし…………仕方ない。許したげるわ。」
「あ、ありがとう…!」

 アラクネも凶暴な種族だと聞いたが…意外と話せるじゃないか。
それとも、彼女が特別、人がいいだけか?

「そ・の・か・わ・り。」
「その代わり…?」
「誰か、代わりの男紹介してよ。いるでしょ?友達の一人や二人。」
「そりゃ居るけど…」
「それをお姉さんに紹介してくれれば、開放するし、何なら協力もするわ。
 あたしも、ちょっと水差して悪い事しちゃったと思ってるし。」
「それは有難いけど……誰かいたかな…」

 突然言われても、パッとは浮かばない。
ましてや、俺の都合だけで誰かを差し出す約束をしていいのか?
…でも、この糸がある以上逃げられないし…決めなきゃ、俺もあの二人も…
誰かいたかな…この人(この蜘蛛?)に差し出しても良さそうな奴…

『ラエール、お前まだ結婚しねえのか?』
『お前にだけは言われたくないな…』
『この町には、俺の好みに合う人がいねえんだよ…
 かといって、仕事も愛着もあるから、この町からは出たくねえし…』
『お前の好みって…何だっけ?』
『ん?そりゃお前、切れ長つり目の、ボンテージが似合いそうなお姉様系で、
 俺を縛って、一方的にいたぶってくれるようなSかと思ったら、
 ごくたまーに優しさを見せてくれて……って、何引いてんだお前ッ!』
『いや、そりゃあ引くよ…って言うか、よく人前で言えるな、そんな事…』
『いいだろ、好みは自由なんだから。…あ、もうこんな時間か。
 悪いけど、今日もお代はツケで!』
『またかよ!?いい加減にしろ、甲斐性無し!』
『全く、しゃあないなぁ…』
『イエス!やっぱマスターは優しいなぁ♪』
『マスターは甘すぎです!…ったく、ちゃんと働いてるくせに、どこに金が消えるんだ?
 次ツケにしたら、力ずくで取り立てた後、縛って森に捨てるからな!』

 ……いた。酒場の常連で、ピッタリな人間が。
人身御供は気が進まないが…すまない。でも多分、お前にとっても悪い話じゃない筈だ。
本当にすまない。俺達のために犠牲になってくれ。

「…一人いた。あんたが喜びそうな、Mで明るい奴。」
「あら、それは嬉しいんだけど…
 …アナタ、意外と薄情ね。友達をそんなホイホイ差し出すなんて…」
「友達は友達だけど、俺の働いてる酒場でいっつもツケで飲むんだよ。
 この機会に、ちょっと懲らしめてやろうかと思って…」
「お姉さんはお仕置きの道具じゃないのよ?そりゃお仕置きは大好きだけど。」
「そんな事言わずに、頼むよ。そんなんだけど、完全に悪い奴ではないんだ。
 顔も別にあんまり残念じゃないし、恋人でもできれば、甲斐性も出るかもしれないし…」
「ん〜……まぁ…仕方ない。その人で手を打つわ。」
「ありがとう!次の休みに連れて来るから。」
「決まりねッ☆…ちゃんと約束守ってよ。破ったら、ホントにNTRに行くから。」
「約束は守るさ。だから、そっちも約束どおり協力してくれないか?」
「分かってるわよ。それじゃ、糸切るから、大人しくしてて…」

 あれほど絡み付いていた糸を、彼女は簡単に剥がしてくれた。
これで自由になったが、彼女はそのまま俺を抱きかかえて離さず、
周囲で一番高い木に登って辺りを見回した後、
木と木の間に別の巣を張ると、そこに俺を移動させただけだった。

「どういう事だ?協力してくれるんじゃ…」
「だから協力してるんじゃない。いいから大人しくしてなさい☆」
「『あたしの夫になれば、もう追わなくて済むわ』って言う協力じゃないよな?」
「あら。お姉さん、そんなに性格悪く見られてるのかしら?心外だわ。
 第一そのつもりだったら、わざわざ糸を外さないでしょ?」
「…それもそうか。ごめん。」

 さっきの巣とは違い、こっちはほとんど粘着力がない。
どうするつもりなのかはまだ分からないが、本当に協力してくれるつもりらしい。

「まあ見てなさい。すぐにあの二人のところに送ってあげるわ☆」

 彼女は俺の背後に回ると、俺のわき腹を両手で掴み、巣ごと後ろに引っ張り始めた。

「見た感じ、まだそんなに遠くへは行ってなかったわね。
 今日は風もないし、横に角度つけなくても大丈夫そうね…」

 あれこれ呟きながら、彼女はなおも俺を引っ張り続ける。
それにしても、よく伸びる巣だな…。まるで太いゴム紐だ。

「う〜ん、…引っ張るのはこれぐらいでいいか。縦角度もオッケー。
 これなら、あの二人の所に当てられるはず…」

 彼女は、何かを慎重に狙っているようだ。………まさか。

「…俺を、パチンコの弾にする気か?」
「大正か〜い☆」
「放せぇぇぇッ!!」
「平気平気。故郷じゃ、近所の子供達にもやってたぐらいだし。
 その足で走るよりもかなり速いはずよ☆」
「…ちょっと待て、大人は飛ばした事あるのか?」
「そろそろ発射するわねー。」
「おい、大人は!?」
「ええい、男ならグダグダ言わない!
 信じるものは救われるんだから。お姉さんを信じなさい☆
「初対面の相手を信じきれるかー!!」
「そこを信じてこそ真の男よッ!さあ、発射準備!」

 暴れたとしても、彼女には糸がある。すぐに抵抗できなくなるだろう。
それに、彼女の機嫌を損ね、再び糸で捕まったら、本気でどうなるか分からない。
もはや調理される直前の魚である俺に、拒否権は無かった。

「3…、2…、1……発射ッ!!」

 ギョインッ!!

あああぁぁぁあぁぁああああぁぁぁぁ………」

 生い茂る木の葉を貫き、枝を弾き、俺を守ってくれた槍が手から離れ…
俺は森を飛び出し、宙に投げ出された。
俺の視界には、わずかな雲と、月は無いが、満天の星空が広がった。
あぁ、綺麗だなぁ…。
星空と一緒に、何だか俺の過去の記憶が沢山見えているような気がするけど…

「アハハハ、あの星の横で婆ちゃんが笑ってる…」

 …しかし、そんな現実逃避も、長くは続かなかった。
視界はどんどん下へと下がっていき、地面がどんどん近付いてくる。
しかも、その先に映ったのは…俺がこれまで必死に追いかけ続けていた二人。
紫の下半身が馬の女性と、その背に乗った黒い少女だった。
あのアラクネの狙いの正確さに感心したが、そんな暇は無い。
このまま行ったら…激突する!!

「二人とも、避けろおおおおおぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

 とにかく、必死に叫ぶ。今晩よく叫ぶな、俺…
すると、俺の声が届いたのか、二人が振り向いてくれた。
二人とも泣いていたのだろうか、目尻に大粒の光と、頬には光る筋が見える。
彼女達を安心させて、涙を止めてやらないと…
でも、まずは…着地だな。
俺は体を回転させて、着地体勢に入ろうとした…
…が、うまく動けない。それどころか、あの足の輝きも無い。一体どうして…
……ああッ!思い出した!あのアラクネが俺の足から糸を外してくれた時、
一緒にあのお札も剥がれて…くそっ、何てこった!こんな時に…

「うわっ、うわああああぁぁぁぁぁッ!!?」

 あの足の無い俺は、もうただの一般人に過ぎない。
幸い彼女達は道の脇に避けたようだが、俺は体の回転を制御できず、
むちゃくちゃに回りながら…

 ドザザァァァッ!!

 …彼女達がいた地点ピッタリに、大量の砂煙と共に『着弾』した。

 
11/12/22 23:54更新 / K助
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■作者メッセージ
 はい、中編です。
…前後編じゃないのかよ!?無駄に引っ張って、本当にスイマセンッ!!
後編では、頑張って再び告白&エロシーンに挑戦します。
次…は、来週…には何とか…したいです。
さほどご期待せずにお待ち下さい。

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