連載小説
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-after-


―どうして?

困惑する彼女は、新たに生まれ変わった自身の身体に問い掛けた。
仲間達が幼い姿へと変わっていく中、自分だけが、皆と異なる姿へと変貌した事実。
頭からは長い耳が生え、足は関節が逆向きに、身体は至るところが毛深くなっている。

おまけに、耐え難いほどの胸の高鳴りを彼女は感じていた。
心音は全身に響き渡り、どくどくと流れる妖の血が、肌を火照らせてゆく。
息苦しい胸。深く、熱っぽい呼吸を繰り返しながら、彼女は周囲を見回した。
変化を終えた仲間達は、まるで何かに導かれるかのように、学舎から飛び出していく。
ある者は窓から、箒に跨って空を飛び。またある者は、転移の魔法を唱え、その姿を消しゆく。
どちらも、見習いの術師が扱える魔法ではない。それなのに、彼女達はいとも容易く。

いったい、何が起こっているのか。
分からない。分からないが、彼女はしばらくして、周囲の異変が気にならなくなった。
それよりも、この苦しさをどうすれば静められるか。それだけで頭がいっぱいになった。

不意に。ガラリと、教室の引き戸が開かれた。
教団の兵士達。剣を携え、鎧に身を包んだ彼らが、大挙して乗り込んできたのだ。

されど、そんな突然の訪問者に、仲間達は驚きもせず。
むしろ…彼女達は、面食らう彼らに飛び掛かり、皆々馬乗りになった。
阿鼻叫喚。男達の叫び声。女達の誘い声。狂乱犇く場で、ふと、彼女の目が留まる。

視線の先には、一人の兵士。術師達の襲撃に驚き、腰を抜かした若い男性。
知っている。彼女は、彼を知っている。彼女の幼馴染。幼い頃から、ずっと。
優しくて、ちょっぴり間が抜けていて、勉強が苦手で、いつも笑顔の…。

瞬間。一際大きく、彼女の胸が打ち鳴った。
彼は彼女にとって、とても大切な存在だった。
その心中には、幼馴染みという仲では満足できない想いがあった。
しかし、彼女はそれを口にできず、今日という日まで、ずっと燻りを抱えていた。
闇商人から買った、妖しい呪文書を開き、夜な夜な自身を慰めるほどの焦がれがあった。

助けないと。自身を蝕みつつある呪いも忘れ、彼女はそう思った。
彼女が困ったとき、彼はいつも助けてくれた。笑顔を見せてくれた。
その思い出が、小鹿のように震える彼女の足を、一歩、前に進ませた。
慣れぬ異形の脚。歩くことすらままならない。それでも、一歩。また一歩。

そうして、何とか彼の前まで辿り着いたとき。
彼は、眼前に迫った彼女を見て、目を見開き…問い掛けた。

彼女の名を。

彼の言葉。彼女の長い耳が、それを余すところなく捉え、脳へと伝えゆく。
好き。そんな言葉が聞こえてくる。愛してる。異性の名を呼ぶとは、つまりそういうこと。
いつの間にか頭に植えられた、彼女の新たな常識が、秘めていた想いに薪をくべていく。
熱。熱。熱。膨張す。顔がかあっと熱くなり、舌は渇いて、下腹部に疼きが湧き上がる。

彼の一言に、とろんと瞳を蕩けさせた彼女は。
口をだらしなく開けて、その端から唾液を垂らし、パクパクと宙を食み始めた。
とうとう全てが魔に侵されて、正気を失ってしまったのか。
それとも、言葉では表しきれぬ想いを、彼に伝えようとしたのか。
どちらなのかも分からぬまま、事態は…彼女は、次のステップへと移っていった。

そう。愛し合った男女が、こうして向かい合っているのならば。
次に行うことは、たったひとつ。それが、彼女の導き出した答え。

彼女は目を細め、にっこりと笑みを浮かべると。
己が身を纏う、邪魔な布地を取り払い、惜しげもなく…そのたわわな乳房を露わにした。
目の前にある光景に、驚愕し、息を呑む想い人。僅かな恐怖と、大きな好奇心。
太股を伝う滴の感触に、彼女は、ゾクゾクとした快感を覚えながら。
濡れた瞳を向けて、飢えた口を動かし、愛する彼へと語り掛けるのだった。

―私が、貴方を助けてあげるね♥
15/11/10 20:43更新 / コジコジ
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