読切小説
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うたたねの木陰
 外で遊ぶのは嫌いだ。それをするくらいなら図書館で本を読んでいたい。
 僕の学校は週に一回、中休みに外で遊ばなければならない日が設定されている。すごくめんどくさくて嫌な日。
僕はその日が来ると、毎回、サッカーとか野球とかのスポーツから隙を見て抜け出し、校庭の隅の木陰に座り込む。
休んでいても、どうせ出番のないスポーツをやっても、暇になることには変わりないのだけれども、けがをする可能性がほとんどない方を僕は選ぶ。最悪、気分が悪いっていう言い訳もできるし。
実際、今日はちょっと気分が悪かった。寝転んでそのまま眠ってしまおう。
仰向けになって、そして気が付いた。
「うわぁ!?」
 頭上に、人……いや、魔物娘が逆さにぶら下がっていた。
 腕が翼のようになっていて、それで体をくるみながら寝ていた。ワーバットという種族だ。
「ん……」
 申し訳ないことに、僕の悲鳴で起こしてしまったようだ。軽くあくびをしながら彼女はゆっくりと地に立った。
「いつもの五年の子……? わたし、六年の翼。よろしく」
 またあくびをして、彼女は自己紹介をした。
「いつものって……翼は前からここでぶら下がってたの?」
「翼『お姉さん』。年上だから。そして、そう、わたし、君がここでさぼってるのずっと見てた」
 すごく眠そうでか細い声だけども、威圧感があった。
「翼お姉ちゃんも同じなの? 外で遊ぶの嫌いなの?」
「嫌いっていうか無理。うまく体が動かせないの」
 校庭で繰り広げられる試合を見つつ、彼女は僕の隣に体育座りをした。また、あくび。
「いつも退屈で寝てるんだけども……やっぱり退屈ね。起きなきゃよかった。もう一回寝るね」
「ええっ! せっかく話し相手ができたと思ったのに。もうちょっと起きてよ」
「君も寝ればいいでしょ……おやすみ」
 そういって彼女は寝転がって寝てしまった。
「どうしよう……」
 見たくもない、興味のない試合を見るならば、当初の予定通りに寝ることにしよう。
 木陰のスペースが狭くて、翼お姉ちゃんと体がくっついてしまって恥ずかしいけれども、日が当たるのは辛いので仕方ない。
「んん……おやすみなさい」
 恥ずかしいから背を向けて寝ようと思った――のだけれども。
「ん……」
「えっ……」
 寝転がる僕に、眠っているお姉ちゃんが抱き着いてきてしまった。抱き枕だと思っているのだろう、ぎゅっと僕の頭を、少し膨らんだおっぱいに押し付けてきた。
「……」
 柔らかくて、いい匂い。
僕の心臓は高鳴りっぱなしで、ぜんぜんねむることができなかった。

 そして、翌週。
「やっほー」
 今度は、最初から木の下で座っていた。しかし眠そうなのは相変わらずで、しきりにあくびをし、目を擦っている。
「君が来て、騒がしくなるなら、いっそ最初は寝ないどこうと思って」
「最初は……?」
「すぐ寝るよ。一緒に寝たければどうぞ」
 正直全然眠くないから積極的に寝たくはない。
 とりあえず、その辺の草をちぎって、草相撲を提案する。
「んー、いいよ」
 しかし長くは続かず、五戦目くらいで飽きた。
「つまんない……寝るー」
 どきりとした。
 また、抱き着いてくるかもしれない。あの柔らかさと香りに思わず期待してしまう。
「そ、そう。じゃあ、僕、サッカーに混ざってくるね」
 どぎまぎしながらも、僕は立ち上がった。
 あのドキドキは体に毒だった、次は耐えられそうにない。
それにお姉ちゃんに対して申し訳ないと思う気持ちもあった。胸に顔を埋めるなんてすごくえっちなこと、絶対にするべきじゃない。彼女からしてきたことだけども、寝ぼけていたみたいだし、それを振り払うのも眠りを邪魔してしまうことになる。だから、一緒に寝るべきではないのだ。
「そ。じゃあ、また来週〜」
「うん、また来週」

 その来週までに、僕はお姉ちゃんを飽きさせず、眠らなくても済むような遊びを考えた。
 図書館に置いてあるゲームブックのいじわるクイズを暗記したのだ。
 でも、お姉ちゃんもその本を読んでいて、全部難なく正解してしまった。
 そのまた次の週、僕はこっそりおはじきを持ってきた。
でも、持ってこれる量にも限界があり、そうなると遊びはすぐ終わってしまった。

何週間か経った頃に、翼お姉ちゃんがこう言ってきた。
「君はそんなに遊びたいの?」
「え……うん」
「それなら最初から向こうに混ざればいいのに」
 それは違う。僕は正確に言うと、眠りたくないのだ、お姉ちゃんと一緒に。
 でもそれを正直に言ってしまうのは……なんだか相手を傷つけるような、失礼な感じになってしまう気がする。
「いやでも、僕がしたいのは、そういう遊びじゃなくて……」
「ふぅん……変なの……」
 僕らはしばらく黙った。ただ、全然見たいとは思わない試合を観続ける。
 でも、不思議なことに、お姉ちゃんは眠らなかったし、それどころかあくびもしていなかった。
 そして、ちらちらと僕の方を時たま見るのだ。でもそれはただ見てるんじゃなくて、こう、じっくりと熱を持った視線だった。
 試合はなおもだらだらと続いていた。あきらかに中だるみしているように見える。
「ねぇ」
 そんな時に、お姉ちゃんがついに話しかけてきた。
「すごく楽しい遊び……してみない?」
「遊び……」
「そう。こっち、来て」
 今更何があるのだろうか。疑問に思いながらも、お姉ちゃんに身を寄せていく。
「絶対、眠れない、楽しいこと……しよう」
 そう言って彼女は、僕にキスをしてきた。
「んんっ!」
 僕は身を引いて逃げようとする。でもお姉ちゃんは僕の肩に爪を食いこませ、強く強く引き寄せる。
「んちゅ……ちゅる……れろ、んれろ」
 舌が入ってくる。ディープキス、だった。
「んんん……あっ」
 それがエッチなことだとはすぐにわかってしまい、自然に勃起してしまった。
「ちゅじゅ……んはぁ……固くなってる」
 その勃起したものを、お姉ちゃんは愛おしそうに服の上からさすり、鋭い爪でカリカリと引っ掻く。
「んあぁぁっ!?」
「気持ちいい?」
「うんっ! うんっ!」
 息が、苦しくなるほどの気持ちよさ。口の端からよだれが垂れ、目が熱くなって涙がにじみ始める。
「でもまだだよ……まだまだ、気持ちよくなるから」
 ついにお姉ちゃんは僕のズボンを脱がし始めた。
「ダメ……お姉ちゃん。見られちゃう……」
「誰も見てないよ……みんな遊んでる」
 確かにそうだった。みんなキックベースで遊んでて、こちらのことなど目に入っていない。
 でもだからといって、このまましてしまっていいのだろうか……?
「はぁ、む」
「うひぃっ!! お姉ちゃん! そ、そこ、汚いよ!」
「ちゅるるる、じゅるるっ」
 お姉ちゃんの口の中は温かくて、ぬるぬるしてて、にゅるにゅるしてて、とても気持ちよくて……
「ううぅっ!」
 びゅるり
 と、あっさりチンコから漏れてしまった。
「あっ……あ」
 体から力が抜け、チンコも柔らかくなる。でも心臓は破裂しそうなくらいにばくんばくんと膨らんでいる。
「ん……んべぇ」
 お姉ちゃんは、口を開けてこちらに見せてきた。綺麗な顔、だけれども、口の中には真っ白なドロドロがあって、口の端にも少し同じようなものがこびりついていて汚い。
「ぐじゅる……ぐち、ぐちっ……んう」
 舌でかき回し、時々そしゃくして、とろとろと唾液と混ざっていく精子。
 あれが、卵子とくっついて子供を作るのだと思うと、嫌な気分になる。
「ごっくん……おいしい」
 美味しいわけないのに……お姉ちゃんはそう言った。
 その時だった。

「あ! ボールが!」

 キックベースの球が、こちらの方に向かって飛んできそうになったのは。
 見られる――っ!
 しかし、次の瞬間には僕らはあの人たちの視界から消えていた。一瞬にして、お姉ちゃんは僕を抱えあげて、木の枝に逆さまにぶら下がったのだ。
「ここなら安心……だよ」
 そう言って彼女は、キスをしてきた。今度は軽い。
「最後まで、しよ」
 最後まで。
「最後までって、そういうことだよね」
「うん。さっきのより、もっと気持ちいいよ」
「したい……したいしたいっ! お姉ちゃんと、子供作りたいっ!」
「いいよ。作ろう?」
「うん!」
 僕らは、大人になった。


「おーい翼ちゃーん!」
「昴くーん!」
 授業が始まり、まだ姿の見えない二人を探す魔物の教師がグラウンドを歩き回っていた。やがて教師は隅にある木の近くまでやってきた。
「あらら」
「あらあら」
 見上げると、深くつながった二人が、すやすやと抱き合って眠っていた。
19/06/19 23:26更新 / 鯖の味噌煮

■作者メッセージ
お題SSでした
時間かかってしまいました
すみませんorz

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